2021年北海道ツーリング
~5年ぶりの北海道~

2021年9月11日~9月18日


浦幌町内 道道1038号線にて

9月17日(第6日目)

1.起床

昨夜は早めに寝たので、朝は6時20分頃に目が覚める。天気が気になるので、確認すると・・・。やはり、未明から雨のようだ。これは困ったなぁ、ただ前述のように名寄より北は何とか曇りのようだが、明日は苫小牧からフェリーに乗らなくてはならない。雨が上がるのは午後遅い時間から夕方ということなので、暗くなってからフェリーターミナルに向かうことになるなぁ。

ひとまず起床して、今後の様子を見ていくとしよう。それはそうと、霧多布に泊まったのは初めてのことなので、周囲を散策してみよう。昨日は暗くなりかかってから到着したので、建物の外観もよく見ていない。ああ、こんな外観だったのか。趣のある建物で、最果ての宿という感じだ。


エトピリカ村の入口付近

バイクを止めてある駐輪場には、カブやMT-03 などが見られるが、カバーをかけてあるものもある。わざわざ持ち歩いているのだろうか、とても大切にしているということが良く伝わる。道に出てみると、何か視線を感じる。よくよく見ると、エゾ鹿の一段がこちらを見ている。おお、驚いた。


鹿の一団がこちらを見ている

岬方面を見るとキャンプ場や灯台などが見えているので、霧多布岬はすぐそこのようだ。一方、道を下った海岸方面には、昨日道を間違えて通った漁師小屋みたいなものが見えている。今思うと、この時間を使って岬に行っておくべきだったが、しばらくして中に戻る。

居間にはご主人がみえて「ラッコがいたよ」と今写してきたばかりの写真を見せてくれる。「ラッコって北海道にいるんですか」とたずねると、普通にいて、繁殖しているということだ。因みに、こちらのご主人は植物や動物の観察や調査も仕事にしているようで、こちらに宿を構えているようだ。また、後で知ったことだが、その分野でテレビにも出演しているそうだ。

そうこうしていると、7時30分になって朝飯の時間だ。昨日、泰寺コントロールのR1-Z氏に連絡したところ、エトピリカ村さんは朝飯が有名だと話していた。ああ、そうなのかと思っていたが、実際に提供されたものを見ると、確かに綺麗な盛りだ。これは嬉しいなあ、いただきます。おお、美味しいじゃあないですか。いつも朝はパンしか食べないのだが、おかずが多いと力がつきますな。ただ、パンが一枚なのは残念、もう一枚欲しかった。


エトピリカ村の朝飯

それはそうと、ご主人の話によれば、こちらの宿は通年営業していて真冬でもお客が来るそうだ。ただ、お客が来ない日はもちろん休みであり、そうでなくても敢えて休みの日を設ける時もあるようだ。「そうでもしないと、体がもたないよ」とは、奥方の談である。そりゃそうだね、俺だったら毎月一週間は休みにしてしまうだろう。そんな宿には客が来なくて潰れてしまうか?そうかもしれない。

さて、ここでゆっくりして行きたいところだが、今日も移動距離があるのでそろそろ出発するとしよう。荷物をまとめて、準備を整える。お世話になりました、また、機会があればお願いします。

2.出発

荷物をマシンに搭載していくが、6日目ともなれば慣れたものだ。チューブをかけて、ストレッチコードでたすき掛けして、最後にネットを被せる。最初の半分以下の時間でできるようになったかな、さらに隣のカブさんと話をしながらでも余裕だ。

当方はいつも仕事で乗っているので、プライベートでカブに乗ることはないなと思いつつ、カブ氏の安全を願って宿を後にする。まず向かうのは目の前の霧多布岬だが、今日も寒い朝だ。Vスト温度計では11℃を表示しているので、間違いなく一桁の後半だ。そう思っていると、岬の駐車場に到着だ。

マシンを止めて、歩いて先端まで行ってみよう。まず、いつも驚くのは看板の写真だ(下の写真右上参照)。これは2010年公開のガッキー主演「ハナミズキ」のロケ地を知らせるものだが、あまりにも美しくて同じ場所だと思えない。季節が違えばこんなに綺麗な場所なんだと思うと、その時期に来たくなる。おそらくこれは、5月か6月ぐらいに撮影したものではないのか。尚、正式名称は湯沸岬灯台(とうぶつみさきとうだい)だそうで、霧多布岬と同義で使われる名称なのかな?


霧多布岬灯台の比較

目玉が良く見える灯台脇を通り、その先の遊歩道を下りていく。ガッキーもここに来たんだと思うと、ちょっとうれしくなる。そういえば、最近結婚したようだが、年齢が32歳ということだ。ええ、もうそんなになっていたのかと驚いた。まあ、自分が48歳なのでそんなもんか。

そう思いつつ、先へ行く。この道は両脇が海になっていて、さみしげに波が押し寄せている。それはそうと、ラッコはいないのかと目を凝らして探すが、見つからない。早朝でないと見ることはできないのだろうか。

さらに遊歩道を歩いて、岬の先端までやって来る。ここには松浦武四郎の歌碑が立っている。その内容は「かねてより あらきしほ路と きいたふの 島根にたかく よする志らなみ」と書かれている。「きたたふ」は「きりたぷ」、「しほ路」は「潮路」、「志らなみ」は「白波」のことらしい。なんとなく言わんとすることはわかるのかな。因みに、彼は三重県は伊勢の出身らしく、北海道はもちろん、樺太や北方領土にも行って調査等をしているよ。


霧多布岬に立つ管理人

今日は歌のように荒ぶった海ではないが、荒涼とした雰囲気だ。松浦が来た時の状況を歌から推測しつつ、冷たい海風に吹かれる。当方も何回かはここに来ているが、晴れだったのは1回か2回だけで、曇りの日が圧倒的に多いような気がする。その名の通り、霧多布だったこともある。ここら辺りの霧は本当に濃霧で、200m先も見えないような状況になる。もちろん、カッパを着ていないと服はビタビタになる。

この道東の岬は特に目立ったものはないのだけれど、なぜかいつも立ち寄りたくなるなぁ。それは、この物悲しさのせいかもしれない。これを感じるためにわざわざ来るのだろう。訪れたことのある読者の方は、その時どう思われただろうか。

3.ひとまず西へ向かう

昨日から霧多布岬に泊まり、今日もあさイチで岬にこられたので大満足だ。ここからは西へ向かうことになるので、気合を入れていこう。まずは霧多布の市街地を道道1039号線で抜けていくのだが、時々ルパンとその一味の等身大看板を見かける。ちょっと写真を撮って、このツーリング記のネタにすべきだったなぁ。少し後悔だ。因みに、ルパンのアニメは夏休みの再放送をよく観ていたのだが、特にパート3が印象深い。当方は次元が結構好きで、銃で脚を打たれた女を助けたり、都合によりできなかった果し合いをしたり、歌の歌詞ではないが「男の美学」を体現してるように思う。

帰宅してから少し調べたのだが、前述の市街地だけでなく、浜中町にあるJRの駅や温泉施設「ゆうゆ」などでもパネルを出しており、Tシャツなどの商品も販売されているということだ。モンキーパンチ先生の功績を称えつつ、観光資源としても活かしていくのは良いことなのではなかろうか。

街を抜けると、一気に風景が変わる。この辺りは霧多布湿原であり、葦原が広がる。道道142号線から808号線に入り、少し行くと駐車帯があるので写真を撮ってみる。釧路湿原ほど大きくないが、その広がりは地平線の向こうまで続いている。


霧多布湿原 四番沢S.A.にて

湿原センターという施設を通り、道道599号線で行くと茶内の市街地で国道44号線に出る。ここを左折して、西に向けて進む。天気は曇りで時々陽が差してくるが、寒く感じる。さらに進むと、昨日渡った厚岸の海上橋が見えてくる。

厚岸の街を過ぎて次は尾幌の街だが、その手前は速度取り締まりがあると、マップルには記載がある。こういう時は前の車についていくのが定石であるが、単独や列の先頭になった時は特に注意する必要があろう。そう思っていると、対向車線にパトカーが隠れている。こちらの警察はこのように車ごと隠れていて、通過した時に車に内蔵の速度計で計測するようである。コーンなんかも出ていないので、本当にわからないので注意が必要だ。

次は別保という街だが、ここからは高規格の無料自動車道があって、釧路の街をショートカットできるようだ。これは使わない手はないでしょう。しばらく来ないうちに、このような高規格の道がどんどん建設されて、北海道も便利になりつつあるようだ。

左手に釧路の街を見ながら、順調に35ノットで進んで行く。右手は昨日見た釧路湿原だが、この辺りではあの雄大な風景を見ることはできない。こうして、この自動車道の終点「大楽毛(おたのしげ)」にやってくる。ここからは通常道路の国道38号線に戻り、海沿いを進んで行く。少し行くと、道の駅 白糠恋問が見えてくるので休息がてらに入る。

4.ここで重大な決断

さて、休憩=トイレであるので、まずは余分な水分を解放して落ち着く。さらに、今回は一度もアイスナメナメをしていないので、甘いものが欲しくなったついでに「白い恋人ソフト」を購入する。しかし、外で食べると寒いので、屋内のマスコットがいる前の椅子に座って食することに。白い恋人ソフトという名前だが、チョコレート味というわけでもないようだ。

それはそうと、この「恋問」の名前の由来が書かれている説明書きがあるので、それを読みながらアイスを食べる。なになに、説明書きによれば「タコとイカが出会って恋に落ちて・・・」とある。タコとイカってのが何か間抜けというか、ピンと来ないが、まあそんなものなのだろうか。


白い恋人ソフト
背景にはイカのマスコット

ちょっとコーヒーを買おうかなと、自販機に向かう。管理人はいつもブラックを買うのであるが、何を間違えたのか「つめた~い」のボタンを押してしまう。仕方ない、これは後で温まってから飲むとして、もう一本「あたたかい」を購入する。無駄遣いをしてしまったなぁ。

ここでもう一度天気を確認するが、やはり明日は一日雨のようだ。ということは、北海道にいても行くところが限られて、いつぞやのように温泉で一日過ごすということになる。どうしようか。明日のことを考えると、今日中に雨が降らない北へ逃げる必要がある。その方法として、ここ白糠の市街地から国道392号線で足寄方面、さらに士幌から三国峠を抜けて旭川、名寄という雨よけのルートも考えている。しかし、名寄で夕方まで待機して、そこから暗くなる道を苫小牧まで下りるというのもどうかなぁ。

ということで、白糠は重要な分岐点なのだ。明日の雨は確実で、昼間は待機となることが確実だ。それならばいっそのこと今夜のフェリーで帰ってしまえばよいのか。そうだな、それもよかろう。今日の夜に帰ることにする。バイクに戻って切符を取り出し、フェリーターミナルに電話してその旨を伝える。最初にも記載したが、新日本海フェリーは1回だけは変更ができるのだが、2回目以降は有料となる。その1回は敦賀便を舞鶴便に変更することで使っているので、これは2回目の変更になる。しかし、今はコロナウイルスが蔓延しているので、その制約を取り払っているようだ。「今回だけだよ」という念を押されつつタダで変更ができた。


道の駅 白糠恋問にて

5.耐久レースの始まり

日程を1日早めるなんてあまり気が進まないが、雨が降っては楽しみが半減してしまうので仕方なかろう。そうなれば、雨が降る前に苫小牧へ着きたい。ここからは耐久レースの始まりだ。ということで、道の駅を出発して、引き続き西へ向けて走り出す。そうだ、まずは燃料を搭載しなくてはいけない。そう思っていると、ちょうど市街地でホクレンを発見する。

こちらも珍しいフルサービスの店で、店員さんにガソリンを入れてもらう。その時に「今日は寒いですね」と言うと「え、こんなもんですよ」とあっさり返されてしまう。そうか、地元の人にとってはこのくらいが当たり前なのか、失礼しました。

さて、燃料は15.2Lの搭載となり、前回の給油から510㎞を走行しているので、燃費は33.5㎞/Lである。今回も高燃費を記録しているので、V-STROMのツーリング性能を改めて実証している。因みに、普段仕事で乗っているカブだが、30㎞/L には届かない。もちろん、ストップ・アンド・ゴーの繰り返しなので一概に比較はできないが、Vストの燃費がいかに良いかということはおわかりいただけるだろう。

これで苫小牧までは通しで飛行できるので、心配事がひとつ減る。そう思って走り出すが、すぐに国道392号線との分岐がやってくる。くっそー、明日が晴れなら右折を選択できたのにぃ~、と思いながら直進する。英語で言えば、典型的な仮定法である。

淡々と走り、音別を通過する。昔はここに駅があったが、いつの間にか廃止になったようだ。さらに行くと尺別地区だが、その高台に尺別の丘がある。ここからは鉄道が走る姿が見えて、撮り鉄の撮影ポイントになっているようだ。また、前述のガッキー主演の映画の1カットにも、ここから撮影した列車が走るシーンがある。興味のある方は覗いてみてはいかがだろうか。

その尺別にも駅があったが、こちらも廃止になったのか。また、その駅の裏には、映画でガッキーと薬師丸ひろ子と住んでいた家として登場した建物がある。こちらは個人の所有であるのだが、自由に見ることができた。今はどうなっているのだろうか。

さらに進むと、以前宿泊したライハである「ミッキーハウス」の前を通る。こちらは食堂もやっていたのだが、さすがにもう閉店しているのだろうか。おおそうだ、ここも重要な分岐点だ。襟裳経由か、帯広経由かで異なるルートを選択するからだ。

今日は時間もあるので、襟裳経由にしよう。まあ、南の方は天気が悪いようなので心配だが、ダメならば引きかえせばよかろう。というわけで、ここは道道1083号線を要求して左折する。そのまま国道を行けば帯広直行だが、こちらは海沿いを行く道だ。

最初は牧場や森の中を通り、それを抜ければ太平洋が現れる。しかも、道路のすぐ下が海岸なので海までの距離が近い。ここも前述のガッキーの映画のロケ地で、自転車に乗るガッキーが見られる。それにしても、今日も波が高いので、砕けて舞っている。また塩分が付着しそうなので、後で拭いておこう。

ん、ちょっと尿意を催してきたので、一旦止まって用を足すことにしよう。おっかしいなぁ、さっき白糠の道の駅で行ったばかりなのに、もう行きたくなるなんて。全く困ったものだよ。ああ、車が来たよ。見ないでぇ~。まあ、そんな感じで長~く続く海岸を見て「今日で北海道もお別れか」と残念に思う。いや、船に乗るまで、家に着くまでは旅の途中なんだ。そんなことは思わなくてもよいのさ。

冒頭と写真は、ここで撮影したものだと補記しておく。

6.ルートの選択

道道1038号線を行くと、昆布刈ダートの入口を過ぎて、国道336号線の分岐点にやって来る。まっすぐ行く手もあるが、ここも左折して、襟裳行の海沿いコースを選択する。相変わらずの雲天で肌寒いから、速度は控え目の37ノット維持とする。何とかVストの防風効果で風はあまり当たらないので、寒さも耐えられそうだ。

淡々と走っていると、後ろから徐々に近づいてくるマシンがミラー越しに見える。何だろうなぁと思いながらも、速度は維持して走行する。数キロ走った所で後ろにつかれてしまうので、先に行ってもらう。その方がいろいろな意味で楽だからね。あら、スクーターだったのか。昔ならばムキになって抜かれないようにしただろうが、そんなことをする必要もなかろう。彼をペースメーカーにして42ノットで走行を続ける。

ペースメーカーと共に湿原のような場所を駆け抜けていくが、腹が減ってくる。時刻も既に13時を回っており、そろそろ昼飯にしたいところだが、周りには店はない。10㎞ぐらい行けば晩成温泉もあるので、温泉に入りつつ飯を食べることもできそうだが、日没が早いので苫小牧にできるだけ近づきたい。

そこで、道路脇のバス停跡地にマシンを止めて軽く食事をとることにする。ちょうど、さっき間違って買ったコーヒー、おやつ用のカロリーメイトもある。ふう、やれやれ、ほぼ最東端からの苫小牧だから、距離があるなぁ。今までだと足寄とか、和琴、川湯、なんだ、結構遠くからでも苫小牧に到着しているのか。だいたい前日は富良野に泊まって翌日に備えることが多いので、今年は異例だと思っていたのだが、過去の記録を調べてそんな事実も明らかになる。


簡単な昼飯

食事も済んだので、このまま国道336号線、通称ナウマン国道を走り出す。ペースメーカーのスクーター氏はとっくに行ってしまったので、また35ノットを維持で淡々と走行する。行先は襟裳岬だが、どうも雲が怪しい。今までは高層雲とか巻層雲とか空高くできる雲が多かったようだが、ここにきて乱層雲と思われる雲が多く見られるようになる。しかも、だんだんと空気が湿っぽくなってきているので、雨が降り出すかもしれないなぁ。

ともかく、行ける所まで行くことにしよう。さて、この辺りは大樹町という行政区になるのだが、この名前はどこかで聞いたことがある方が多いと思う。そう、かのHエモンが宇宙開発らしきことをしている拠点がある街だ。地図によれば、海岸沿いにロケットの発射場なんかもあるらしい。また、街のシンボルとなる絵はロケットだ。

どんどんと進んで行くと、豊似町に入る。ここではまたルート選択をしなくてはならない。そのまま襟裳岬を目指すのか、天気が怪しいので帯広方面に転身するのか。さあ、どうする。管理人はかなり優柔不断なんだけど、考え疲れて結局間違った選択をすることがほとんどだ。天気が心配ならば、最初から帯広を目指せばよいのに、アホだからそのまま襟裳岬を目指すことにする。

防災ステーションの所を左折して、機首を210°に向けて、国道336号線を行く。おっと、国道236号線こと天馬街道で、襟裳をショートカットしていく手もあるな。ますます迷うが、ここは直進を選択する。豊似川を渡り、しばらく行くと広尾の街だ。ここは言わずと知れた、国鉄広尾線の終着駅があった場所だ。現在では駅舎が残っていて、バスのターミナルになっている。通過時に遠まきに見てみると、あれ、駅舎が建て替えられたのかな?ちょっと調べてみると、2018年に老朽化により雨漏りなんかもあったため、建て替えられたということだ。なんか建物が違うなと思ったら、そういうことだったのね。

国道は海沿いの道となり、黄金道路と呼ばれる区間に入って来る。すると、やはり雨がパラパラと降ってくる。ん、この先はさらに降りそうなので、音調津(おしらべつ)地区でUターンして帯広方面に転身する。な、アホでしょう?

やっぱり死ななきゃ治らないんだなぁとがっかりして、帯広行きを要求して、元来た道を戻る。結局天馬街道の先も雨になりそうなので、そのまま直進だ、致し方あるまい。さっきの豊似の防災ステーション前を通って、国道236号線で北に向かうことにする。

7.天候が悪化して

時刻は14時を回っていて、天候もだいぶ悪化してきている。何とか苫小牧まで持ってくれることを祈りつつ、帯広に向けて先を急ぐ。陽の光もなくなりうすら寒くなってくるし、時間は過ぎるし、天気も悪くなるし、今日はちょっと大変な日になりつつある。こういう時はくだらないミスを犯しがちなので、十二分に気をつけて走行することが大切だ。

だいぶ無駄に走ってしまっているが、この辺りは順調に距離を稼ぐことができている。時々ペースメーカーとなりうる4輪なんかも現れて、65ノットぐらいで飛ばしていく。しかし、途中でやはりトイレに行きたくなり、大樹町のコンビニに滑り込む。やれやれ、歳を取ったなと思いつつ、暖かい飲み物を買って一息入れることにしよう。

飲み物の暖かさで手を暖めながら外に出ると、変なオッサンが乗っている車の窓を開けて首を出し、ニヤニヤしながら管理人のマシンを見ている。ああ、これは面倒臭くなる状況なので、目を合わさないようにしよう。用心してタンクバッグからマップルを取り出そうとすると、案の定嬉しそうに話しかけてくる。「どこから来たの?名古屋?」と言ってくるので「いいえ、違います」とウソを言う。すると「何だ違うのか」というようなことを言って、どこかに行ってしまう。申し訳ないが、ちょっといろいろ考えなくてはいけないので、独りにしてくれ。

ふう、肩の力を抜きつつ、マップルでこの先のルートと航法を確認しておく。まず、虫類からはバイパスに乗るだろう、その先は2日目にジンギスカン白樺の後に通った道で、更別、中札内、幸福と飛ばして、芽室帯広I.C.で降りるのか。その後は右折して、国道38号線で十勝清水へ向かうのか。

地図で見るとそんなに遠くないように見えるのだが、ここは北海道なので騙されてはいけない。上記の区間だけでも70㎞はあるので、1時間はかかることになる。まあ、焦らずに淡々と耐久レースを走るとしよう。人間の補給も済んだので、だいぶ落ち着いた。エンジン始動許可を得て、走行再開だ。

それはそうと、この大樹町の市街地はこの辺りの街としては栄えている。これは、雪印メグミルクの大樹工場があるからなのだろう。大樹町を過ぎるて、虫類からバイパスの帯広広尾道に乗り、ペースを上げる。この道は片側1車線が基本で、時々2車線に広がる所もある。関係無いが、以前、ここを走っていて、直後にパトカーにつかれていたことがある。もちろん、制限速度プラスアルファで走っていたから問題はなかったのだが、一歩間違えば挙げられるところだった。

時々ペースメーカーについて38ノット程度まで速度を上げるが、基本は32ノット程度に抑えておく。ところが、横をすごい速度で走り抜ける営業車が現れるので、これはチャンスとコバンザメよろしくくっついていく。速度的には65ノットは出ており、これならば芽室帯広もすぐに到着できそうだ。

この辺りは周囲に何もなく、農場が延々と続く区間だ。今はまだ良いが、冬なんてどうやって生活しているのだろうか。全くもって不思議だが、そんなのはこの辺りの人が「街の人はいったいどうやって生活しているのか」という疑問を持つことと同じレベルの話なのだろう。

意外と早く帯広広尾道の終点に到着したので、ここで予定通りに国道38号線に乗り換えて、機首は270°に向ける。この区間は流れが緩慢で、バイパス路のようにはいかないから、流れに乗ってトロトロと進む。ん、また尿意が、ということで、十勝清水の市街地で右折し、国道273号線に沿いのセイコマに入って休息を取る。

8.まだまだ先は長いよ

急いで水分を開放し、ついでのおやつのポッキーを購入する。今日はガッキーに縁のある日だが、本人と当方は全く面識はない(当たり前か)。ポッキーと飲み物の残りを飲んで作戦を考える。この先は十勝山脈を越えなくてはならないので、けっこうな峠を行かなくてはいけない。なのに、天気はさらに悪化していて、山の上は絶対に雨になっていそうな様相だ。これは仕方ないということで、ここでこのツーリング初のカッパ装着だ。しかし、これが意外にもなかなか暖かいので、良いかもしれないと思えてくる。

さあ、これで準備は完了だ。かかってきなさい、日勝峠よ。気合を入れて同国道を走り始める。時刻は15時を回っているので、時間が過ぎるのが早すぎると文句を言うも、そんなものはむなしい反抗だ。市街地を抜けて高度を上げていくが、この先の雨の降り方が心配だ。このような場合、対向車の濡れ具合を観察することが重要となってくる。

はたして、対向車は全く濡れていない。また、電光掲示板によれば「濃霧」ということだけなので、おそらく雲の底がかかっているだけで、雨は降っていないと推測される。安心してスロットルを開けて、早いところ峠を越えようと急ぐ。しかし、ここで迂闊にも前走のトラックを追い越してしまう。ああ、しまった。

こうなっては後の祭りである。ヤバいなぁと思っていると、ミルクセーキに頭を突っ込んだような濃霧に見舞われる。おいおい、100m先も怪しいのではないかと思う程の濃霧だ。関係ないが、飛行機の場合では一番高性能な着陸支援装置を装備する空港(成田、中部等)では、濃霧でも最低50mぐらい先が見えていれば着陸できるそうだ。Youtubeなんかでも、操縦席からほぼ何も見えていないのに、するりと着陸する飛行機の様子が見られるよ。

それはそうと、Vストはいくら優れたマシンだと言っても、操縦に関しては全て人間の判断で行わなくてはいけない。ライトはハイビームにして対向車に存在を知らせ、センターライン等を頼りにしてコーナーの曲率を推測し、速度を調整していく。幸いにも当方の前にも後ろにも車はいないので、自分のペースを守って走ることができる。

そして、5合目、6合目と現在の標高を示す看板が次々に出てきて、気温も下がって来る。そして、頂上に来た時温度計に切り替えてみると11℃を示している。まあ、今はカッパを着ているので寒さに関しては問題はないし、霧の中を走行してきても濡れることはない。

後は下るだけなので、いずれ霧も晴れることだろう。しかし、速度の出し過ぎには注意しないと、ガードレール下の崖に転落してしまうかもしれない。引き続き目を凝らして慎重な走行を続ける。

どのくらい走っただろうか、4合目付近で雲の底を抜けだしたようだ。そして、その代わりに西日が差してくる。ああ、こちら側は比較的天気が良いようで、良かったなあと安堵する。おそらく、道東は太平洋高気圧から暖かく湿った空気が入り、上空の冷たい空気とぶつかって雲が出やすい状況だったのだろう。北海道では、西と東では天気が異なることはよくあることだ。

こうして、日高町の中心部にやって来る。ここには道の駅 樹海ロード日高があるのでピットインすることにしよう。

9.先が見えてくる

ちょうどセイコマがあるので、こちらにマシンをつける。まずはカッパを脱いで、片づける。ちょっと濡れたが、ここまで来る間に乾いたようだ。この時点で、気温は17℃となっているのでだいぶマシだが、体が冷えてしまったようだ。

甘くて暖かいものを飲もうかと探すと、コーンポタージュがある。まだ9月だけど、こちらでは普通に販売されているのが嬉しい。迷わずこれを選択して、マシンの所で一息入れる。ふぅ、五臓六腑に染みわたるではないが、力が抜けて温まるな。さて、ここからは例年通りに国道237号線で南下するだけだ。時刻は既に17時30分近くになり、暗くなりつつある。しかし、だいぶ先が見えてくるので、気持ちも楽になる。

地図を見て航法や距離などを確認していると、セローのライダーに話しかけられる。こんなご時世なので珍しいというか、このツーリングでは初めてかもしれない。そして、Vストについていろいろと聞かれる。重心の高さや足つきに多少気を遣うが、走りについては大満足していること、特に燃費には驚かされていると報告しておく。とはいえ、当方も250時間程度しか経験がないので、それ程詳しいわけでもないが。

セロー氏は帯広に単身赴任で、自宅のある札幌郊外に戻るということだ。そうか、今日は金曜日だからな。

こうして、お互いの無事帰還を願いつつ、それぞれの帰路に就く。ここで機首を南に向けて、前述の国道237号線を走りだす。例年ならば富良野で遊び、この道を通って苫小牧を目指すので、ここでいつものパターンに戻ることができた。

燃料もまだメーター読みで半分あるので、このままならば自宅まで通しで飛行可能な量だ。苫小牧が近づくにつれて心配事も減って来るので、気持ち的にも楽になる。ただ、日没の時刻も過ぎてしまって暗くなりつつあるので注意が必要だ。

しばらく行くと、トレーラーの頭が40ノット付近の速度で走行している。これをペースメーカーにすれば安心だ。すると、さらに後方からそれを上回る速度で2台の2輪車がやってくる。これは好都合だと先に出すと、一台はドカのムルチストラーダで、もう一台はCB600のようだ。

この2台は仲間なのかわからないが、適度に間を空けて追いかける。トレーラーの頭さんありがとう。ムルチは当方に気がついたのか、さらに速度を上げて70ノット以上でかっ飛んで行く。既に二風谷付近までは来ているので、この調子ならば富川までは20分ぐらいで到着できそうだ。

しかし、この2台は平取で道道59号線に入っていてしまう。この道はフェリーターミナルのある厚真までの近道だから、そちらを選択したようだ。実は、当方は訳あって苫小牧直行ではなく、晩飯を食べる予定だから富川経由だ。

10.ツーリングの仕上げに

こうして、日高自動車道の高架をくぐると、富川の市街地へ入って来る。ええと、この辺りだったと思うが。ああ、ありました。寿司処 政村さん。駐車場に車はないものの、暖簾も出ていて電気もついているから営業はしているようだ。店内に入ると「誰か来たな」と言う様子でご主人が出てくる。そりゃそうだ、今は緊急事態宣言下にあり、飲食店はその影響をまともに受けているのだから。

ここで当方は「ししゃもはありますか」とたずねる。すると「いやあ、全然獲れてないんだよね、今年はさんまもさっぱりでさぁ」と無常のお言葉。なんだ、それは残念だ。まあ、せっかくなのでこちらでお寿司を食べて帰るとしよう。まずは並を1人前食べて、それからちょっと追加していこうかな。

ここのご主人は比較的饒舌な方で、いろいろと質問に答えてくれる。さて、さっきからししゃもと言っているが「そんなもんスーパーにいくらでも売っているじゃあないか」と言われそうだ。しかし、あれはカラフトシシャモと言って、今話しているシシャモとは違う魚だ。ご主人が言われる「本物」は、この北海道の太平洋側でしか獲れなくて、カラフトシシャモではない。生物学的分類も異なるし、形も味も全然違うものだ。

その味だが、刺身で食べると絶品で、同じ白身魚のキスやさよりよりもずっと味が濃いのだが、それもとても上品な味だ。歯ごたえはそれ程ではなく、心地良い程度である。また、この魚は漁獲量も少なくて、この北海道太平洋側にしか出回らないそうだ。それ故に、我々本州に人間はその「本物」を見ることはまずないだろう。しかし、現在はネット販売もあるので、一部の店が干物を取り扱っているようだ。

それはそうと、今年はさんまも全くダメで、寂しい秋となっているそうだ。ご主人は毎年毛筆で書いたさんまやシシャモの入荷を知らせるビラを作成しているのだが、今年は出番がないよと嘆いておられた。

そんな話をしていると、寿司が出来上がる。並は7貫と巻物3個でそれ程お得というわけでもないが、トビウオの卵(トビッコ)やソイも含まれていて北海道を楽しむことができる。もちろん、これだけでは足りないので、追加でサーモン、つぶ貝、今日のおすすめを追加する。今日のおすすめは「まぐろの子供」だそうだ。話によれば、鮭漁の網にかかっていたそうで、正真正銘の近海まぐろということだ。これは期待できる。

それぞれ旨いのだが、このまぐろは絶品だ。普段は冷凍ものしか食べていないが、生の近海産はまるで別物だ。味は濃いし、歯ざわりや感触も良い。何より「冷凍してました」というあの風味が無いので、まぐろそのものの味がよくわかる。


今日食べたお寿司
(写真は合成)

ああ、食べた。お会計をしてもらうと2,400円ということなので、まあ標準的な値段だろう。それにしても、シシャモがなかったのは返す返す残念だ。機会があれば次こそはシシャモを食べたいところだ。

今日は暇なのか、店を出る時にご主人も一緒に外へ出てこられる。厚真のフェリーターミナルへ行くというと、30分もあれば行けるということだ。ご主人はバイクに興味があるようで、しげしげ眺めておられるので写真も撮っておく。後でお送りしてもよいかな。


寿司処 政村さんにて

こうして、政村さんを出発する。空は曇りだが、雲は厚くないので雨は降らないようで安心だ。少し来た道を戻り、日高道の日高富川I.C.から乗り、苫小牧方面へ走り出す。流れは良く、周りは50ノットぐらいで走っている。思いのほか速い速度で走ることができるので、20分ぐらいで厚真I.C.を降りる。

ああ、これで北海道を走るのも終了かと寂しく思いつつ、国道235号線を横切り踏切を渡ると、遠くに灯りが見えてくる。苫小牧東港のフェリーターミナルだ。敷地内に入ると、係員が誘導している。今日は新潟行が既に出航しているので、行先はたずねられないで列に並ぶように促される。時刻は20時前であるが、バイクは数台並んでいるだけだ。後からどっと来るのだろう。

乗船手続きは20時45分からということなので、1時間ぐらいある。その間に売店で土産を購入しようと思うが、コロナ禍で営業時間を制限しているようで、21時からの営業となっている。ということで、待合所の椅子に座ってメモをつける。今日は無駄に遠回りしてしまったせいで、かなり走ったなぁ。襟裳岬を経由しても、それ程雨にも降られなかったのかもしれないし、帯広直行にしておけばよかったのかもしれないし、天気の予測など判断がイマイチだったなぁ。機長を名乗っているが、まだまだだ。

メモをつけ終えてテレビを観ていると、安住アナの番組をやっている。この人は管理人と同じぐらいの年齢なんだけど、ずっと独身だ。見た目は悪そうな人でもないと思うし、管理人と違ってちゃんとした仕事もあるので、独身とは不思議だ。ただ、ネット上などではいろいろ言われているので、それが原因なのかもしれない。また、この番組に時折、米倉涼子が出演しており、親交があるようだ。でも、それ以上の関係にならないのはそういうことなのだろう。

時間が来たので、乗船手続きを行う。乗船日を今日に変更したので、新しい切符を発行してもらう。そして、その後に売店で土産を購入する。白い恋人など、定番のものを友人や親戚に購入しておく。因みに、持って帰るのは大変なので、自宅に宅配便で送っておく。それにしても、白い恋人はどこでも買えるようだ。事実、飛行機に乗る時に制限エリア内の店をのぞくと、ほぼ100%置いてある。ありがたみが減少してしまうが、売り上げ増を目指さないと従業員が離れてしまうので、致し方あるまい。

11.別れ

その後、やることもないのでゆったりと待合室で過ごす。あとは乗船を待つばかりだ。そうしていると徐々に混みあってくるのだが、これにより意外にも旅行者が多くいることを知る。また、外に出てバイクの並び具合を見ていると、平取でペースメーカーだったムルチの姿も見える。ナンバーも管理人の居住地の近隣だったので、同じ船に乗っても不思議はない。また、台数的には往路の半分ぐらいだろうか。曜日が中途半端なので、こんなものかもしれないね。

こうして、23時00分ぐらいにアナウンスが入り、乗船開始となる。天気予報では、苫小牧は夜は雨ということだったが、結局日付が変わってから降るようだ。これは運が良かったと慎重にタラップを上っていき、北海道に別れを告げる。次はいつ来られるだろうか。


乗船を待つ

車両甲板では荷物棚の前まで誘導されて、バイクは固定される。相変わらず荷物を下ろさない人達が多いが、船体が動揺する可能性も十分あることから、やはり荷物を降ろして棚に乗せておく。そして、お風呂セットなど小分けした荷物を持って、トレーラーの貨物部が並ぶ間を歩いて客室へ上がっていく。

復路も往路と同じツーリストAの寝台だが、部屋が入口から一番遠い場所だ。ちょっと面倒だが、今回は同部屋の人はおらず、窓側で当方の貸し切りだ。寝台を確認して寝床を用意し、すぐに風呂へ向かう。今日はあまり人が乗っていないせいだろうか、風呂には数人の人しか見えない。

体を洗って露天風呂の湯船に浸かっていると、ちょうど出航の時刻23時30分となったようで、船が動き出す。もちろん、目隠しがしてあるので外は見えないが、下の隙間から少しだけ港が離れていくのが見える。あばよ、北海道。また逢う日まで。

風呂から出てさっぱりして、24時30分頃には就寝となる。今日はよく走ったな。

本日の走行 510 ㎞

9月18日 第7日目(最終日)へ続く

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