大型二種免許取得記

〜まだ受からないの? トリデ二校作戦第二弾(その2)〜

 

自動車教習所の車両

(いすゞ製エルガ)

 

1.へたれ受験者

 

2月25日の試験後、緊張の糸が切れてしまった。ところで、ここまでの投資額を計算してみると、

 

平針自動車練習所 教習料金:9,500円X12回=114,000円

試験申請料:4,500円X2回=9,000円

貸車料:3,100円X2回=6,200円

 

合計=114,000+9,000+6,200=129,200円

 

結構金額を使ってますなぁ。平針一発はちょっと精神的にも技術的にもきつい・・・。さりとて、中止するにはもったいない。さてどうしようか。おっと、そういえば、平針一発で技能試験に合格しても即日免許交付にはならない。それは、二種免許の取得者講習という、応急処置のやり方などを学ぶ座学をを公認の教習所で受講せねばならないからだ。この件について、4年前に大特一種で利用した名古屋自動車学校に電話して、確認してみたところ、

 

・基本的に技能試験に合格した人でないと、受付しないこととしている

・料金は3万円程

・開催は3ヶ月後

 

という回答だった。いろいろと他にも予定もあるので、技能試験にいつ合格するのか、講習はいつ受けられるのか、という不確定要素が2つ存在することになるとちょっと面倒くさい。考えた挙句に、「そうだ、教習所へ逃げよう」ということになってしまった。そうすれば、少なくとも上記13万円は全くの無駄にはならないし、取得者講習の受講も卒業要件になっているので、平針合格組よりも優先的に受講が可能だろう。ただ、教習料金が25万円近くかかることだけが難点だ。「なぁ〜んだよ、最初から教習所へ行けよ」と後悔しても後の祭りだ。

 

2.教習開始

 

結局、翌日には前述の名古屋自動車学校、天白校に入校申し込みをしたのだが、取得希望免許と既得免許について尋ねられた。当然、大型二種希望で、1月に取得したばかりの「大特二種」免許等を筆頭に答える。しかし、モデルプランが記載されている料金表には、そういう事例が掲載されていない。これについては、応対してくれた受付の若いおねえちゃんが慌てて、「少々お待ちを」と言い残して奥に座っている人に相談に行ってしまった。ゴメンネ。

 

するとその偉い人自らが出てきて、「珍しい免許をお持ちですねぇ。年に一人くらいはお持ちの方を見かけますが」と評された。そりゃあそうだろうよ、日本全国に5万人程度しか保持者がいないのだから。さらに、「他の免許も試験場で直接受験されたのですか」と尋ねられたので、「いえいえ、自動二輪の中型限定解除と、この大特二種のみが直接受験です」と答えた。当方にはそんな根性がないから、ここに来ているのさ。

 

その偉い人から、まずは料金について説明を受ける。基本的に学科教習19時間が11時間免除となるのだが、この残りの8時間には二種免許の取得者講習6時間が含まれており、さらに身障者の乗降のお手伝い方法、他の教習生と一緒に教習を受けて、その内容を話し合う時間が1コマが必須である。この分を料金に換算すると6万円程になるのだ。「大特二種のおかげで、安くなった」といっても、この程度の金額ではその取得費用と相殺されてしまうし、そもそもが平針練習場での大二教習費13万円は既に余計な出費となってしまっている。結局当方の要領の悪さが露呈したことには変わり無い。

 

そして、教習の予定について、「春休みは自動車学校の稼ぎ時なので、ちょっと時間がかかる」ということであった。確かに、女子高校生と思われる娘がたくさん出入りしている。しかし、その間隙を縫うように仮スケジュールを立ててくれて、見極めが全てうまくいったとして3月17日(木)の卒業検定を受けるようにしてくれた。もっとも、これは最短の時間数なので、確定ではない。

 

こうして、大型二種免許は大幅に金額の高い免許となってしまうのだが、若い女の子がいる環境は悪くない。オヤジ化は確実に進行している。

 

2.1.第1回、第2回教習 (2月26日)

 

この日は入校説明だけの予定だったが、当日の卒業検定が早い時刻に終了したということで、早速2時間の教習を受けることになった。ところで、この自動車学校には3台の大型バス教習車が用意されているのだが、当方は501号車に乗るように指示された。教官はN教官で、ちょっと意地の悪い平田満みたいなオッサンだ。

 

さて、この車両であるが、遠目には大して古くないようだし、ギアシフトレバーも電子制御方式が採用されている。因みに富士重工製の車両だ。富士重工は既にT社の傘下に入ってしまっており、バス生産事業からは撤退している。そんなことはひとまずおいてき、車両に乗り込む。そして、主電源ノブ、エンジン始動方法、ギアシフト方法など説明を受ける。一応平針練習所で、同じような車両で路上練習まで進んでいたのだから、一通りは知っているのだが、おとなしく話を聞く。ただ想定外だったことは、リバースギアの説明で「ノブを押し、保持しつつ左に動かして上方に入れる」ということに加えて、「この車両は市営バスの払い下げでスイッチが磨耗しているのか、あまり左側いっぱいまで動かさないで、中途半端な所で上方に動かしてね」と、よく解らないコツを伝授された。

 

市営バスの払い下げって、100万kmとか走っているってことか。随分長持ちだなぁと思いつつ、エンジンを始動して走り出す。なんだかギコギコと嫌な音(ハーシュネス)がするし、タイヤからの情報が全く伝わってこない。さらに、ブレーキやギア系統を作動させる圧縮エア圧が下がリ気味だし、コンプレッサーの作動音もうるさい。なるほど、払い下げ車両ってことがよく解ったよ。まあ、ヘタクソはこれで練習しろということだろう、そう考えてみると、平針自動車練習所は気前が良い。最初っから最新式の「いすゞエルガ」に乗せてもらっていたわけだから。

 

こうして、外周路を周ったり、右折、左折を繰り返したり、鋭角、方向転換、坂道発進と一通りの課題走行をこなしていく。余裕とまではいかないが、一応12回も練習しているので、それなりのことはできているように思える。

 

教習所のメインストリート

 

それにしても、教習所の指導は親切だ。今までなんとなく動かしていたバスの操縦特性について、詳細に渡って解説してくれる。「前車輪が自分の1m強後ろにあり、・前車輪がコーナーの角を過ぎるように見える頃にハンドルを切ると、上手く後輪が追従してくる」とか、「乗用車の感覚では、車線左に寄りすぎてしまう。常に意識する」など。さらに、運転方法を詳しく解説した教本もあり、これが理解しやすい。運転教習を受ける前に予習して、終了後に読み返す。これを繰り返せば確実に上手くなることうけあいだ。

 

ここで感じたことは、「結局のところ平針練習所においての練習では、車両の操縦特性がよく解っていなかった」ってことだよ。当然、試験場一発試験に合格するレベルではなかったということだ。公認教習所に鞍替えして正解だった。

 

2.2.第2回、第3回教習(2月27日)

 

今日も2時間、一時間目はW教官という若い人だ。昨日は行わなかったクランクやS字を練習する。因みにこれらは本番の試験では行われない課題なので、平針はもちろんのこと、15年前に大型一種免許取得時以来全く走行したことが無い。おかげで上手く進入できないし、ミラーをポールにぶつけてしまったり、縁石に内側の後輪が乗り上げたりと散々の結果だった。

 

そして二時間目はT教官だ。この時間は前の時間の課題に加えて、「あい路」という課題を行う。これは、直角に交わる狭い交差点の向こう側に、車幅ギリギリの間隔で引いてあるオレンジ色の線の中へ車体を収めるものだ。もちろん、車両先端をそろえる線も引いてあり、さらには切り替えしの時に越えてはならない線、交差点を曲がる時にも越えてはならない外側の線も決められている。これは案外うまくいったのでよかった。

 

前述のように、これら課題は卒業検定では省略されるのだが、教習ではきちんとできるようにして欲しいとのこと。クランクやS字を進入から失敗しているなんて、やっぱりバスの操縦特性を解っていなかったってことね。修行がたりませんなぁ。

 

さて、実際に卒検で成功しなければならない鋭角であるが、平針試験場のものよりも随分と小さい気がする。さらに、ハンドルを切り始める位置を把握する一番奥の縁石が無い。つまり、左右両外側の縁石が尖った形で交わっているのだ。とういことは、平針方式は使えない。これは困った。どこでハンドルを切り始めたら良いのだろうか。

 

鋭角路全景

(右側に見えるオレンジのラインがあい路)

 

仕方ないので、全くの勘でハンドルを切っていく。そして向こう側の外側縁石と車体が直角になる頃にハンドルを中立に戻す、ってその前に前輪が縁石に当たってますよ。この件に関してもは平針方式が使えないのか。本当にタイヤの位置を確認しつつ、コースに合わせてハンドル操作をしないといけないのか。そんなこと当然なのであるが、初心者にそんな余裕は無い。

 

結局3回の切り替えしで脱出できたのだが、いつもこういくとは限らない。また、縦列駐車も行うが、これは平針方式と同じで、車体左側に1m50cmくらいの間隔を空けておき、後輪がL字になったポール郡の角に来たらハンドルを左へ切り始め、ミラーで後ろにあるポール群の一番左側が見えるところでハンドルを中立にし、さらにL字のところをミラーが通過したらハンドルを右へ切り、うまく調整してリアバンパーとポールとの間隔を50cm以内にして停止する。こちらはこの通りに操作して上手くいった。

 

縦列駐車場所

(後方には、大特一種取得時に使用したリフトがある)

 

今日のポイントであるが、

 

・あい路は、前輪が駐車帯の中央付近になった辺りでハンドルを切り、後輪と内側の線が重なったらハンドルを戻し始めるとよい。

・クランク、S字は進入時に車線内側に寄せないで、目一杯外側から入る。そして、縁石に沿って前輪が進行するようにハンドル操作をする。

 =ミラーとポールの間隔が一定になるようにする。

・鋭角は・・・どうしよう?

 

一応教本を確認すると、内側の縁石の交点に後輪がさしかかる、ちょっと前にハンドルを切るくらいが目安のようだ。それにしてもこの教本、役に立つ。

 

2.3.第5回、第6回教習(3月2日)

  

今日は再びN教官の指導で、2時間連続教習を受ける。最初は「やりたくないけど、急制動をやるね」ということだ。え、こんなでっかい車両でそんなことしていいの?ああ、だからやりたくないってことね。

 

妙に納得できたので、安心して40km/hから目一杯ブレーキを踏んでやった。その直後「さて、どのくらいの距離で停止できた?」と尋ねられたので、ミラーでブレーキ開始地点と今の位置を確認して、車両の長さ11mと比べてみる。「15mくらいでしょうか」と答えると、「いい線だね」ときた。もっと限界までやると12、3mで停止できるそうだ。ってことは、走行中は車体長くらいの車間距離がないと追突の危険性がある、ということか。おう、なんか怖いじゃん。

 

さらに続けて、乗客にやさしいブレーキとコーナリングについて学ぶ。これは、当方が握り手につかまって、教官がわざと荒い運転をし、その怖さを体験するものだ。自分では解っていたつもりだが、それ以上に繊細に操作すべき必要があると実感した。また、ある市バスの運転手氏の「座席に正座するバアサンがいると、怖くて仕方ない」という逸話を聞く。ちょっと荒いブレーキをかけようものならば、そのバアサンは確実に座席から転落してしまう。悪くいくと骨折か?=人身事故となる。おお怖い。因みに椅子に座ると足が床に着かない子供も同様だ。事業用免許って実は怖いものなのね。

 

また、二時間目は場内課題走行を練習する。相変わらずクランクとS字はガタガタ。「もっと後輪の位置をしっかりと把握して、縁石にぶつけないように」とアドバイスがあった。わかってるんだけど、それができないんじゃん。とにかく、ここの自動車学校では、かなりギリギリでないとこれら課題は通過できないようになっているのか?そう考えておいた方がよさそうだ。

 

その他ポイントとして、

 

・坂道発進は、ちょっとアクセルを開けて速度を出しておき、ブレーキを使って停止(当たり前だけど、できない時があった)

・クランク、S字は前後タイヤの位置バランスをよく見ること。もちろん、前輪は自分よりも1m強後ろにある

 =狭路では運転席が縁石上にあることは当たり前。

・鋭角は切り返しの後退時に、後輪が後方縁石に接触する寸前にハンドルをまっすぐにして停止する。また、必要以上に後退することはダメ

 =かえって失敗する可能性を大きくしてしまう。

 

まだまだ先は長いよ。

 

2.4.第7回、第8回教習(3月5日)

 

今日の1時間目はY教官という、2輪もやっている人の指導だ。当方も2輪乗りなので、こういう人だと嬉しい。また、概して2輪乗りは気持ちが伝わりやすい場合が多いので、思い切ってS字、クランクの進入、鋭角攻略の具体的な方法について尋ねてみた。すると、

 

・S字、クランクは進入時、前輪が内側縁石を越えたように見える辺りから素早くハンドルを切らないといけない。

・鋭角は3回切りかえして良いのだから、それを目標にする。やや突っ込み気味の方が、浅い突っ込みよりも修正しやすい。

・とにかく、前輪は自分よりも1m強後ろにあるのだから、それをしっかりと認識しておくこと。課題走行時には、

 縁石とタイヤの距離を一定にするようにハンドル操作をする。また、とにかくリアタイヤが通過できるようにすることに集中すること。

 そうすれば困ることはない(確かに)。

・右回りの鋭角は、進入路が鈍角についているので、早めにハンドルを切り、左側に寄せるとよい。

 

と当方の希望した、具体的目標物等を目安にした答えが返ってきた。やっぱりバイク乗りは話せるね。

 

また、方向転換では最後の決めポーズとして、リアバンパーとポール郡の間を50cm以内に収めるのだが、目視で確認することはもちろん、いんちきラインを覚えておくことにする。つまり、地面あるものを目印にしておくということなのだが、丁度運転席から見やすい所に小さな長方形の電気制御盤がある。それを越えて、半円状のものを支えているポールに対し、自分が真横に来た時だ。

 

また、縦列駐車ではコンクリートの切れ目の5mmくらいの黒いタールが流してあるのだが、「もう少しかな」と思われる時に見えるタール線上に自分が来た辺りだ。

 

 

方向転換場所

 

こうして、なんとか工夫を重ねて、それなりに課題をこなせるようになったので1段階は終了し、次回からは2段階へ進むことになった。いわゆる見極め合格というやつだ。

 

2.5.第9回、第10回教習(3月6日)

 

今日から第2段階へ移行する。つまりは路上教習を行うということだ、T教官の指導で路上Aコースを周回する。路上教習では、ある程度の余裕があるので、教官と世間話をしたり、率直な意見を聞くことができる。

 

T教官はざっくばらんに、教習所の近況を離してくれた。それによると、最近の教習所はトコロテン方式にどんどんと卒業生を輩出して、回転をよくすることが経営上の命題となっているらしい。つまりそれが「効率」が良いということになるのだが、実際に教習所では運転操作、つまりは走る、曲がる、止まる以外にも重要である、「状況判断」等の細々したことも教えなくてはならない。しかし、これはかなり難しいとは教官の弁。車線変更、アクセルを戻す、ブレーキで減速する、加速する、様々な場面で適切に行わなければならない。なるほど、対向車が来ているとして、対向車線に駐車車両がいるとしよう。こちらにはみ出してくる可能性が高いので、早めにアクセルを戻すなり、加速して先にその地点を通過するなり判断が必要だ。「つまりは危険な状況に陥らないということを認識することが必要だ」と。

 

ところが、こういうことをこと細かに教えていると時間がかかる。さらには「なかなか卒業できない」とか「厳しい」、ひどい場合は「理由無き制裁」、いわゆる「いじめ」だとか言ってクレームになることもあるとか。結局のところ「理由も解らないで操作だけ覚えられれば良い」という考えで自動車学校に来る人が多いし、自動車学校側もそれで「効率よく回す」ということになってしまうそうだ。

 

これについては、当方が初めて教習所で免許を取得した時代も、今もこのことは変わっていないと思われる。しかし、この教官はちょっとした自分の政策を持っているようで、「それでは社会にとって良くない。もう少し本質に迫った教習をしたい」と思っていて、いつもジレンマを感じるとか。なるほど、教官の中にもこういう考えの人がいたのか。こういうポリシーを持っている人ならば、言い方も変わってくる。どうりで、この人の教習は的を得ていると感じたわけだ。

 

逆に考えも無く、ストレス発散とばかりに大口をたたいていた奴もいた。しかし、これらの人とT教官のような人を見分けるには、20歳そこそこの人では難しい。結局同じ種の「うるさい教官」となってしまう。もちろん、今でこそ当方もこういうことを考える余裕が多少はあるが、若い頃は区別はできていなかっただろう。結局教習所の教官は「黙って送り出す」ことを求められるとか。それじゃあ教習の意味がないじゃんか?

 

そんな話をしながら9回目は終了した。

 

続けて10回目であるが、今度はN教官だ。今回は場内で、「焦った時に犯しがちな失敗」を学ぶ。つまりは、課題コースをいかに短い時間で周ることができるかに挑戦して、焦りとミスの関係に気づきましょうということだ。

 

この回はあまり指示が出ないので、こちらから教官に質問してみた。

 

管理人:先生は何年くらい教習所の教官をしているのですか

教官: 25年くらいかなぁ

管理人:最近の若い者はなんていつの時代も言われていますが、教習生に限って言えば、今と昔の若者に違いはありますか

教官: うーん、本質的には変わらないと思うよ。横着な人もいれば、大人顔負けにしっかりした人もいるからね。

     ただ、昔ほど車に乗ることが重要ではなくなってきているように思う

管理人:俗に言う車離れってやつですか?

教官: そうそう、今は娯楽が多様化しているからね。車は移動手段以上のモノにはなり得ないようだ。

管理人:あ、そうですか。確かに携帯電話やゲーム機がありますものねぇ。

教官:そうだね。

 

そんな感じでコース周回3本行い、1分程の時間短縮に成功した。

 

ところで、この教習にはもう一つの意味がある。例えば、乗客に急病人が発生した時に、仮に近くの病院まで搬送することになったとしよう。そういう場合に、どうすれば合法的に、安全に、時間を短縮することができるか、ということを考えることだ。まあ大して差はないが、他の乗客に断った上で、加減速を大きめにしたり、安全確認や右左折をテキパキとこなすなんてところか。でも、それではやはり、安全上の問題が大きくなってしまう。結局は「状況的に病院が目の前だ」という時以外は、無難に「救急車の手配」ということになってしまうかな、という結論に至った。お粗末。

 

2.6.第11回、第12回教習(3月13日)

 

教習所の都合で一週間空いて、教習再開。今日は2名まとめて、2時間連続で高速道路教習を行う。ところで、今日は名古屋国際マラソンが開催予定だったのだが、東北地方を襲った地震の影響で中止となった。そこで、T教官の代替コース案は破棄されて、いつもの高速教習コースとしたそうだ。ところで、全く関係ないのだが、地震の被害たるや想像を絶するものであった。当方には何もできないが、一日でも早い復興を願わずにはいられない。また、亡くなった方々の人数も不明であるが、冥福を祈って黙祷。

 

さて、高速教習といえば、当方が普通免許を取得した時以来である。当時のことはほとんど覚えていないが、受けるか受けないかは選択できたと思う。また、追加料金は発生しないと言うことだったので、「受ける」ことにしたのではなかったかな。

 

そんな話をしつつ、堀田I.C.から名古屋高速3号線に乗る。高速道路なんて、今までバスの運転では経験したことのない交通の流れだ。強烈に速く感じる。しかも、入り口は追い越し車線からの合流だ。思わず「流れに合わせた方がよいですか」と教官に尋ねたら、「自動車学校の車だから、交通法規通りに運転する技術を見せてくれ」ということだったので、左車線へ乗りなおして30ノットを維持する。

 

このまま鶴舞南J.C.まで走り速度を調整しつつ慎重にカーブを曲がり、環状線に乗り換えていく。さらに、山王J.C.も同様にしていくと、だんだんと目が速度に慣れてきたせいか、先ほどよりも滑らかに走行ができてきた。結局のところ、高速道路は構造的に広さなどに余裕を持っているので、慣れてしまえばこちらのものだ。明道町カーブなども最小限の減速で通過していく。

 

こうしてループを一周してから東片端J.C.で1号線へ乗り換え、黒川I.C.で一旦名古屋高速を降り、適当な場所を見つけてハザードランプ点灯、パーキングブレーキ、ギアニュートラルの停車措置を採る。ここで同乗の方と運転を交代して、再び黒川I.C.から名古屋高速1号線、環状線と繋いでいく。方や当方は、緊張から解放されて高見の見物である。

 

それにしても、なんかこの方の運転の方が上手いように見える。というのも、非常に落ち着いており、操作も正確で滑らかだ。当方は平針で12回も練習した上でこの自動車学校へ来ているのだが、それでも操作の安定性がイマイチだ。俺ってやっぱり下手なんだよなぁ。これくらい練習していて丁度良かったのかもしれないな。さらに、教官のすぐ後方の席に座っていたので、彼の原簿が見えてしまった。なんと「仮免許」が入っている。ってことは、普通車などからいきなりの大型二種挑戦ということか。驚いた。

 

彼の運転に関心しつつ、ループから3号線へ乗り換え、往路で当方が利用した堀田I.C.で名古屋高速を離れていく。ここからは一般道路だが、仮免氏は滑らかに、しかもアクセルを大きめに開けている。当方は怖いものだから、本当にギリギリというかやや足りないというか、そのくらいのアクセル開度になってしまう。どちらが良いかは解らないが、これも一つの方法だろう。

 

他の教習生の運転も見ることができたので、なかなか楽しい教習だった。明日も「観察教習」という2名1組の教習があるとのこと。下手な所は見せたくないが、上手く見せようなんてことも良くない。通常の運転をして、評価をしてもらうとしよう。

 

2.7.第13回、第14回教習(3月14日)

 

今日は前述のように、「観察教習」という2名1組の教習を行うはずだったのだが、教習生が当方1名のみだ。よって、通常の教習を行う。指導員は引き続きT教官。1時間目はスキッドカーに乗り、「タイヤがグリップを失う怖さを体験する」というお題目が設定されている。ところで、レースをされる方はスキッドカーが何たるかをご存知と思うが、簡単に解説しておく。

 

スキッドカーとはその名の通り、横滑りを意図的につくり出す装置を備えた車である。原理は簡単で、通常の乗用車を載せることができる、車輪付きのフレームと、その車の地面からの高さを数段階に調整できる油圧式のジャッキで構成されている。つまり、車を地面から高くすればするほどタイヤのグリップが少なくなり、完全にグリップを失う(=タイヤが地面に接地しない)状態にすることも可能だ。これは「ハイドロ・プレーニング現象」と呼ばれる、タイヤと路面の間に水の膜ができる状態をも模擬体験できるということだ。因みにこの現象は、タイヤの溝が浅くなってしまい、路面の水をタイヤが完全に排水しきれない状態のことだ。タイヤの溝の深さが無くなるとタイヤ交換を必要とするのはこのためだ。もっとも、通常の速度では、完全に車体を制御できなくなるようなことは無く、一瞬ヒヤっとする程度で収束することが多い。さらに、この装置は、前後タイヤの接地状態を別々に変化させることも可能であると付記しておこう。

 

スキッドカー

 

さて、早速教習所内のコースを周回し始める。教官が次々に車両の状態を変化させていく。最初は圧雪路状態で、無用にアクセルを踏むとすぐにタイヤが空転してしまう。慎重に、緩やかにアクセルを踏んでいくと、何とか走れる程度だ。しかし、一旦停止してしまうと、発進できない。圧雪よりも酷い状態じゃあないのか。

 

そして次は、ある程度加速した後に、リアタイヤのグリップを完全に無くしてしまう状態にする。いわゆるドリフト状態に陥ってしまい、思わずカウンターステアを当ててみる。「やっぱり無意識にカウンター当てるんだねぇ」と他人事のように言う教官だが、教科書にも「雪で後輪が滑ったら滑っていく方向にハンドルを切る」と書いてあるよ。

 

その次は予告無しに、前輪がグリップゼロになるようにされてしまう。こんなもん何ともならないので、パーキングブレーキを引いて止めるしかないが、変な方向へ飛んでいくとも限らない。結局ブレーキを踏んで停車した後、その旨教官に伝えると「まあ、そんなところだな」と。

 

そしてこの時間のハイライト、ハイドロ状態の体験だ。これは全くの制御不能=アンコントローラブルになることであり、慣性の法則に従うしかなかろう。もっとも、どこかにぶつかる前に制御可能な状態に戻してくれることは、言うまでもなかろう。

 

ドキドキしながら直線へ入っていくと、いきなりハンドルもアクセルも、ブレーキも操作に全く反応しない。仕方ないので、ブレーキを踏んでカウンターステアを当ててみるも、前述の通り効果無し。そして、そろそろやばいか、という所でグリップを回復させてくれた。ところが、その瞬間、タイヤがロックしてしまう。即座にブレーキペダルを開放し、少々のお釣りをもらって停止する。

 

「お、ちゃんとブレーキ放したね」とT教官に言われるが、「タイヤがロックしたらブレーキを放して、グリップを回復させるものではないのですか。踏んだままではハイドロ状態と同じでは」と返してみる。すると「中にはアクセル踏む人もいてねぇ、車ぶっ壊しちゃう場合もあるんだよ」と。因みに車両には保険がかかっているそうだが、こういう場合は始末書を書かないといけないらしい。「自分等も例外なくサラリーマンなんだよねぇ」とはT教官の談。

 

2時間目は通常のバス教習であるが、突然乗り換えたので乗用車感覚で運転してしまった。ちょっと焦ってしまったというか、まだまだというか、全くの未熟者だ。コースはAコースの二人目用のものを逆向きに用いる。そして、今日の教習はコメンタリ教習と言って、考えたことや感じたこと、これから行う操作を言葉にしつつ運転をする。

 

さて、教官はこの回が最初で最後だったS指導員だ。この人は平針のS教官と同じ型の人で、自分の考えと少しでも違うと矢継ぎ早に指示を飛ばしてくる。こっちは上記のような未熟者なのでさらに焦ってしまうばかりだ。まあ、中には役に立つ助言もあったので、箇条書きしてみると、

 

・一つの所に意識を集中させるのではなく、常に周囲を見渡す余裕をもつこと

・バスは車幅、車長共にでかいので、道路が狭くても仕方ない=中央線をはみ出しても止むを得ない=道路は基本乗用車向けにつくられている

・狭い道では、対向車の種類や動きにも注意を払うこと=トラックなどが来たり、対向車線上に駐車車両があったりする場合には

 速度を変化させて上手く避ける(ハンドル操作では危ない)

 

あと、あまり車間を詰めないと言われるが、そんなにガバガバに空けたらかえってよくないと思うので、この件については無視しておいた。コメンタリ運転はどうしたのかって?そんなもんやらせてくれなかった、いや、やれる程腕が無いということか。

 

こうして教習時間が残り少なくなってきたのだが、未だBコースの2人目用部分は一度も走行したことが無い。いや、Bコース自体もまともに走ったことが無い。ということで、帰宅がてらにBコースを周回してみる。1人目用は鯛取通交差点も通過して、千竈通1交差点を右折する。さらにブラザー工業のある地下鉄堀田交差点も右折して、1人目用B1コースは終了。この辺りは一度だけ教習で走行したことがあるのだが、この先、新瑞橋を左折して、瑞穂運動場の交差点を鋭角に右折する。「これが当たったらちょっと面倒だぁ」と思いつつ、瑞穂公園交差点も右折する。え、ここ結構狭くない?しかもS字状にカーブしてるし。そして弥富通を右折して、新瑞橋まで戻ってから左折する。この辺りも1度だけ走行したことがあったか?

 

「一応見ておくか」と思い、走ってみたが、ぶっつけ本番だったら焦っていただろう。

 

2.8. 第17回、第18回教習(3月15日)

 

いよいよ、今日2回の教習を受けて見極めが出れば、明日は卒検である。今までの教官達の発言を聞いていれば、特に問題なく通過できそうな気配であるが、油断はできない。何せ、試験では何が起こるかわからない路上試験があるからだ。尚、場内試験に際しては、周りの教習車がこちらに都合良く譲ってくれるものと思われるので、安心だ。

 

お馴染みN教官の指示で発着所を出発し、教習車出入り口から路上へ出て行く。今日はAコースを走行するのだが、全部は無理なので、A1、つまりはAコースの一人目用のコースを走行する。

 

さて、ここで試験のやり方を説明しよう。平針試験場と教習所は基本的には同じ方法で試験を行うのだが、教習所では先に路上教習を行った後、場内試験に移るとのこと。試験場は逆だった。また、2名1組で検定を行うことには変わりないが、当方1人だけということも大いにありうるとのこと。因みにこの教習所では、年間50人程の大型二種免許取得者を輩出しているようだ。ということは、3〜5人/月くらいの計算となる。なるほどね、1週に1人いるかいないかということだから、当方だけの検定という可能性も十分にあり得るわけだ。

 

いつもの通り、東海通左車線に合流し、鯛取通4丁目の交差点を右折するために桜田中学を越えたら右車線に合流する。この辺は少し慣れてきたのか、早めにウインカーを出しておけば、周りの車は進路を譲ってくれる、というか退かしていると言う方が正しいか。もっとも、「路上教習中」の看板を出したバスに挑む人はいないだろう。

 

さて、大通りから一本入った、片側1車線の道路を走行していく。制限速度は40km/hが表示されているが、バスなんぞはちょっと人が出てきたり、駐車車両があったりすれば減速を余儀なくされる。さりとて、客を乗せていることを考えるとできるだけ加減速はしたくない。そこで、かなり遠くからアクセルを戻したり、車線を跨いだりして滑らかな走行を心がける。さらに、この道は微妙にうねっている。その結果、35km/hくらいで走行するのが精一杯である。当然後方は大渋滞である。

 

しかし、よく考えてみると、通常の路線バスはきっちりと制限速度程度を維持している。やはり運転で生計を立てている人って相当上手いのね。

 

こうして弥富通りを左折して、混雑している地下鉄新瑞橋(あらたまばし)駅を、駐車車両を避けつつ通過する。ここはいつも混んでいるので、ほぼ100%右車線を走ることになる。本番でこのコースを走る場合には覚えておかないと。こうして、教官の指示で、堀田のブラザー前の電柱と後方の乗降ドアを合わせて停車する。これは、バス停への停車を想定した練習であるのだが、合格基準はドアの幅以内に電柱があるようにしなければならない。この際、運転席から見て、ドアの中央と電柱を合わせていては通り過ぎてしまっている。ここで考えることは、電柱と車体の距離である。狭ければ狭いほど見た目と同じに近い所で停車するのだが、当然隙間があるので「少し手前か」という所で止めなければならない。

 

さて、教官はどうやって位置を確認しているのだろうか。実は乗降口にカメラがあり、運転席のモニター画面で見ることができる。自慢ではないが、当方は結構この項目には自信があり、ほぼいつも「ど真ん中」で止めることができる。ズレた場合でも「電柱1本分過ぎました」とか判断することもできる(こんなもん、ちょっと練習すれば誰でもできるので、自慢にならないが・・・)。

 

この後、地下鉄堀田交差点から国道1号線を南下して千竈通1交差点を左折する。これら交差点では、歩行者がいつも多いので気をつけないと「歩行者保護義務違反」を採られて、一発失格になる可能性がある。十二分に気をつけよう。

 

ここを過ぎれば間もなくA1コースは終了である。時間の都合があるのでこのまま教習所へ戻り、残った時間は鋭角や方向転換の練習をした。だが、ここにきてもどうも鋭角の突っ込みが甘くて、3回切り返えさないと脱出できなかったり、左後退での方向転のハンドルを切り始めるタイミングが合わなくて、入れ直しをすることになることがしばしばだ。「相変わらず下手だなぁ」と思いつつ、教習時間が終了した。大丈夫かいなぁ。

 

また、教習中にA2コースを制式に走行したことがないのだが、こちらの道は随分と狭い所を走らされる。対向車線にちょっと大きい車がきてしまうと、うまいこと速度調整をしてかわさないといけないし、そもそもこういう所に限って駐車車両があったり、歩行者がチョロチョロしていたりする。こっちが当たったらどうするのか。ええい。当たらないことを祈るのみだ。

 

2時間目も同様にN教官の指導だが、この最終回はBコースの触り部分を走行したら、場内課題のおさらいをするとのこと。それは有難い。そう思って、教習所を出てから野並二丁目、続いて白沢交差点を左折する。その後、下り坂の途中にある電柱にドアを合わせて停車する指示があったので、「あれですか」と尋ねながら走行していたら「これだよ」とすぐ近くまで迫っているものを指示される。急ブレーキをかけるわけにもいかないので、だいぶ通り過ぎてから停車したのだが、「とにかくすぐ停車してよ。そうでないと点数無くなっちゃうからね。」とちょっと怒られてしまった。明日Bコースが出ないことを祈りつつ、場所を把握しておく。

 

こうして教習所へ戻り、鋭角の左進入、左後退の方向転換、縦列駐車と課題練習を行う。後退では、ハンドルを早く切ってしまい、縁石に擦りそうになって何回かやり直した。また、縦列駐車では左後輪を縁石に擦ってしまった。「縦列は今まで失敗したこと無かったんだけどなぁ」、と凹んでしまった。N教官は

 

・後退時に左に寄りすぎたら、ハンドルを適切に戻して後輪が縁石を通過してから切り足せばよい

・縦列も同様で、左後輪が縁石に当たるということは、進入角度が大きいからだ。少しずつハンドルを戻して、

 後ろのスペースを有効に使用すればきちんと収まる。

 

「要するに状況把握と細かい修正方法が解っていない」

 

ということだ。これらの指示は落ち着いて考えれば、自分で操作可能なことだ。要するに焦っていることがまず良くない。明日はとにかく焦らないようにしよう。

 

こうして、最後の教習は、課題走行で鋭角以外は全て失敗してしまったのだが、あっさりと見極めが出た。いよいよ明日は卒業検定だ。13時集合と指示をされて教習が終了した。とにかく焦らないことを念頭に。そういえば、自二の中型限定解除でも同じことを何回も言われたような気がする。俺って頭悪いのね。

 

2.9.卒業検定(3月16日)

 

今日はオークラ氏の誕生日だ。おめでとうございます。さて、試験は午後からなので、午前中はリハビリに出かける。リハビリの題目は「音楽療法」というもので、要は歌を歌ったり、楽器を演奏したりしようというものだ。ところで、当方も3月が誕生日なのだが、事前にリハビリの職員から「歌のリクエスト」を尋ねられていた。これは、音楽の先生が当方の為にピアノで演奏してくれ、皆で歌う為に、好きな楽曲をお願いするというものだが、あまりマニアックなものでは皆が歌えない。かと言って、今時のチャラチャラしたものは嫌だ。少々悩んだ挙句に故村下孝蔵の「初恋」を、譜面と共にお願いしておいた。

 

時間になり先生が見えて、まずは当方の為に「Happy Birthday」を皆さんが歌ってくれた。こんなこと、ひょっとして初めてなんじゃあなかろうか。ちょっと目頭が熱くなってしまうが、下を向いて感謝する。

 

そして件の「初恋」であるが、音楽の先生曰く『最初はどんな歌か解らないで演奏していたんだけど、サビの所で「ああ、これね」って気がついた。超有名な歌ジャン』とのことだった。かなり昔の歌だが、元祖アイドル出身の梨園の妻、三田寛子に提供されたり、最近誰ぞがカバーしていてCMに採用されていたようだ。

 

ところが、実際に伴奏が始まり歌い始めると、当方以外には誰も知らないようだ。やっぱり選曲を間違えたらしい。

 

リハビリでちょっと良い気分になり、スタッフの方々からも応援を頂いたのでますます調子に乗ってきた。こうして、鼻歌交じりに国道302号線等を用いて自動車学校を目指す。ところで、この302号線はこの春開通する「名古屋第二環状自動車道」に沿って通っている。いまでこそ綺麗に舗装も終わり、本開通を待つばかりだが、当方が2月に平針試験場で大二免許に挑戦していた際は大工事中だった。しかも、路上試験コースがここを何回か横断するようになっていて、ソロリソロリと気を遣って通過したものだ。

 

そして、東海通に乗り換えていくのだが、ここも今月末に開通する地下鉄桜通線の延伸工事が行われている。もちろんここも平針の路上試験コースに入っている。全く悪い時期に試験を受けていたものだ。

 

そう考えつつ、自動車学校には12時40分頃に到着した。

 

原簿を出し、ロビーで待つように指示があったので、教本を見直しながら試験開始を待つ。因みに今日の午後は、大型一種と自動二輪の検定も行われるようだ。そして、各々が該当の試験官に呼ばれていく。当方は副校長に呼ばれて、教室で試験説明を受ける。どうやら大型二種は当方のみが受験するようだ。

 

ところで、今日は路上はA1コースが使用され、場内はパターン2のコースが用いられる。路上コースは一番走り慣れているものだが、場内のパターン2は鋭角が右側進入の左回りなのでよいが、方向転換が左後退だ。ちょっと不吉な予感がよぎるが、「とにかく焦らない」ことを念頭に置く。すると試験官も、「これだけ乗っている(=免許を持っている)なら大丈夫だね。ただ、信号の変わり目などで慌てないでよ」とさりげなく和ませてくれた。

 

こうして車両の発着場に駐車されている505号車に乗り込み、教官の運転で試験開始地点へと向かう。そこで運転を交代して、いよいよ試験開始だ。今日は慌てなければ大丈夫そうなので、ぶっつけ本番でコメンタリ運転を実践してみることにした。

 

「ギアニュートラル、チェック。パーキングブレーキ、チェック。ギア2速、パーキングブレーキ解除、ウインカー右、ハザードライト、オフ。車両周囲確認、チェック。後方確認、チェック、前方よし、発車します。駐車車両、チェック。ウインカー右、進路変更、・・・」、こんな感じで走り出す。すると、いきなり数百mの地点で、扉合わせの停車を指示される。はいはい、コース図で確認してあったので、大丈夫ですよ。「左ウインカー、左確認、進路変更」で電柱手前で減速、前方と電柱を交互に見ながらゆっくりと扉に合わせる。ま、こんなもんでしょう。「停止、ハザード点灯、パーキングブレーキ、ギアニュートラル」、すると試験官がモニターで電柱の位置を確認し、「はい、いいですよ」。一発目は決まった。これで少し気が楽になったか。

 

次は交差点右折だが、赤信号で待つ際には坂道で停車することになる。ここで、平針の路上試験で指摘された、「発車時の微妙な後退」に対処する為、常に半クラを当ててからブレーキペダルを離すように心がけた。これも決まり、やったね。

 

さて、最初の右折をした後、一旦左車線に入るのだが、2つ先の野並交差点は右折しなければならない。ということは、進路変更で右車線に車線変更せねばならない。運良くというか、都合良く、駐車車両をすぐに発見したので、「駐車車両、チェック。ウインカー右、車両右側、後方チェック、左オーバーハングチェック」で車線変更に成功した。

 

この後同交差点を右折する為に右折車線へ進路変更し、対向直進車の切れ目を待つが、右矢印信号になってしまった。しかし、ここは慌てずに、横断歩道、交差点周辺歩行者チェック。左オーバーハングチェック、右側チェックでゆっくりと右折する。

 

その後、東海通を西進していくのだが、右車線後方からトラックが抜いていく。ミラーを当てないように注意。そして桜田中学前で鯛取通四丁目交差点右折の為に、右車線へ進路変更。「右後方チェック、ウインカー右」、おっと、後方から乗用車が来ているので少し待ってみる。すると、譲ってくれているので、遠慮なく車線変更を行う。何回も言っているが、やはり「検定中」の看板を出したバスには寄ってくる車両は無い。

 

右折レーンで、「交差点周辺歩行者チェック、車両右チェック、左オーバーハングチェック、信号赤、注意して右折」、つまり、右折を待っている間に信号が赤になってしまったのだが、交差点に進入しているので注意して進行したわけだ。こういうときに焦るとロクなことが無いので、悠然と右折した。

 

この後、裏通り的なやや狭い道を走行し、銀行前の電柱にドアを合わせて停車するよう指示が出た。これも事前に確認済みなので、うまいこと決まった。これでだいぶ肩の力も抜けてきた。人間とは不思議なもので、緊張と弛緩のバランスが良くなると視界も広く見えてくる。当然のことながら、運転には最重要事項である。というのも、目からの情報は判断材料の6割とも7割とも言われているからだ。

 

こうして早め早めに駐車車両や、飛び出してくるババアの軽自動車を発見して、「駐車車両チェック、バアサンチェック」などと言いながら、微妙にくねっているやや細い道をクリアしていく。

 

この後、弥富通1の交差点を左折する。けっこうな数の歩行者横断歩道を渡っているので、車体をまっすぐにしたままミラーで後方からの人も見落とさないように注意して、人の流れが切れる時を待つ。

 

ここからは中央分離帯のある広い道なのであるが、次の新瑞橋交差点付近は必ず駐車車両がある。今回もその例に漏れず、しっかりと乗用車が停車(いやこれは駐車かな?)されていた。そこで、橋を渡りつつ、右車線へ進路変更をして交差点を通過していく。それにしても、いつも傑作というか、見栄っ張りというか、頭悪いというか、大概こういう所に迷惑駐車してあるものはドイツ製の「ベンチ」や「ベーム」、アメリカ製のライトトラックなどだ。どういう心境なのか、一度尋ねてみたいものだ。その際はオークラ氏に用心棒としてご同行をお願いしたい。

 

ここを過ぎればさらに道幅が広がり、片側3車線となる。しかし左車線には駐車車両がポツポツと点在しているので、このまま中央車線をそうこうしていく。結局、左車線に戻ることができたのは、左折すべき交差点の1区画前であった。さて、ここで最後の停車指示が出る予定だが、上記のように左車線に戻るタイミングが遅めになってしまった。どうなるかと思っていたら指示があった。ちょっとドキドキしてしまい、行き過ぎてしまった。「これはしまった」と思ったが、反省はエンジンを止めてからにしよう。そう考えているうちに、試験官がモニターで長めの位置確認をした後、「はいどうぞ」と発車指示が出た。「車両周囲チェック、ルームミラー確認」で発車するも、100m程前の左折する交差点が赤信号だ。ゆったりと停車して、車両周囲、交差点周囲の歩行者の動きに注意を向けておく。幸いにもあまり数が多くないので、少し待てば左折できそうだ。

 

この後は地下鉄堀田を無事に左折して、国1に乗り換える。しかし、交通量が多くて渋滞気味だ。結局次の信号が赤なので、市バスのバス停付近で信号待ちとなる。ここでも同様に車両周囲の状況や室内の様子を確認して待つのだが、「停留所の周囲10mは駐車禁止だったなぁ」という規則を思い出した。一瞬ヒヤッと素肌が喜ぶ香りよ、とびっくりしたが、これは単なる信号待ちなので、停車でも駐車でもない。堂々と待っていればいいのだ。ただ、バスの到着を待つ人達の視線が痛く感じたのは、自意識過剰というものだろうか。

 

そんなことを考えつつ国1を無難に走行して、千竈通1交差点の左折体制に入る。歩行者が1人いるが、急いで横断歩道を渡ってくれたので、手前で停車することなく曲がることができた。さて、ここまでくれば、後は検定終了地点までを無難に走行するのみだ。最後まで気を抜くなよと言い聞かせて、指示を待つ。

 

そして、電車の高架下付近で駐車措置の指示が出た。通常通りの手順に沿って道路左へ寄り、ハザードランプ点灯、パーキングブレーキ操作、ギアニュートラル、エンジン停止。やれやれ、疲れた。

 

ひとまずここで試験官と運転を交代し、教習所に戻る。そして、そのまま場内課題走行試験が開始された。今日は場内課題パターン2なので、西交差点を右折し、東交差点を左折、さらに踏み切りを通過してから鋭角左回りへ進んでいく。ところで、この教習所では、鋭角の突っ込みポイント指示用にパイロンが立ててあるのだが、左回りにはそれが無い。だが、心配ご無用、ご意見無用。縁石の形状が変化している所辺りへ車両の頭を持ってくればよい。もっとも、「リアタイヤが内側縁石と並ぶ直前くらいまで進入する」という判断方法もある。個人的に言えば、後者の方が実用的であると思うが、当方のような大型ペーパードライバーは前者の方がわかりやすい。

 

こうして切り返し2回で鋭角脱出に成功し、そのまま直進して方向転換へ向かう。ここもいつものように、「転換場所安全確認」を履行、やや長めに接近距離をとってから停止し、安全確認後、後退を開始する。さて、ハンドルを切るポイントはリアバンパーが縁石にさしかかる頃が良いのだが、どうもタイミングが早かったようだ。そういう場合はハンドルを戻してから、再び切りなおせばよいのだが、当方の判断で一旦後退を中断してやり直すことにする。ところがこの際、アプローチ距離が短かくなってしまった。結局慌しく後退して、左タイヤが縁石ギリギリ通過となってしまった。本当は15cmくらいがベストなんだけどなぁ。ここでも「反省はエンジン停止後」の原則に従って、試験に集中する。

 

なんとか車体をまっすぐにして、車両後方とポールの間の間隔が50cm以内となる場所までゆっくりと後退していく。これも、本当は目視で判断できると良いのだが、それプラスインチキ目標を独自に設定しておいたので、こちらも用いてみる。最初は目視で「このくらいか、いやちょっと広いか、75cmくらいか」と思い、インチキ目標で確認する。やはり、20cm程足りないようだ。こうして再び後退して推測35cmくらいの位置で停車措置をとる。

 

この後、試験官がモニターで位置を確認して発車指示を出したので、慎重に走行して発着地点で駐車措置をとる。これで全試験項目が終了した。いやぁ、疲れたよ。

 

試験が終了したので、試験官の講評を聞く。まとめると、

 

・概ね几帳面な運転をしていた(褒められているのか?注意されているのか?)

・左寄せの感覚がまだ甘い。また、寄せる技術がまだ未熟。方向転換では詰めすぎだし、交差点ではやや広かった。

 この辺りの技をさらに高めて欲しい

 

ということだった。左寄せの件は、人によっては「無理してギチギチに詰めることはない。側溝プラスアルファくらいが好ましい」という指示もあるし、今回の場合みたいに「基本的に、きっちり規定通りに詰める」という指示もある。どっちが良いかは状況次第という解釈をしておこう。

 

こうして、30分程待った後に「合格」の発表があった。そしてさらに30分後には卒業式らしきものがあり、卒業証明書を頂く。これさえあれば、後は試験場に申請するのみで免許が交付される。ただ、当方の場合は誕生日が丁度一週間後なので、それが過ぎてから申請した方が有効期限的に有利になる。というのも、公安委員会の解釈では、「誕生日を過ぎる回数=年数」と計算するからだ。つまり、極端な話だと、誕生日1日前に申請してしまえば、翌日1年経過とみなされてしまうわけだ。当方の場合は5年が有効期限なので、この場合だと実質4年で有効期限が切れてしまうというわけだ。この件について、試験場にも問い合わせたところ「誕生日を過ぎてから申請した方が良い」と同じ助言があった。

 

2.10.総括

 

今回の免許取得では、2輪の中型限定解除に匹敵するような緊張を強いられた。もっともあの頃であればムキになって、「あのオバサン試験官を黙らせてやる」くらいの勢いで試験場直接受験を続行しただろうが、今や37歳と364日23時間41分だ。当時のような勢いはすっかりと無くなってしまい、結局公認教習所に入り直すという失態を演じてしまった。が、これにより、これら2つの免許受験について同時比較することができたことはやや嬉しい収穫だ。以下にちょっとまとめてみよう。

 

運転免許取得における、試験場一発と教習所の利得及び内容の比較

 

 

試験場一発

教習所

 費 用

腕と根性次第では大幅に安い

規定の費用がかかる

 労 力

結構必要

・平日にしか試験が行われない

・別途練習所で練習も必要か?

比較的少なくて済む

・土曜日に検定が設定されている

・教習スケジュールをあらかじめ

 立ててくれる

合格基準

些細なことでも厳しく採点される

実用的な基準で採点される

教習(練習)内容

案外不親切

(これくらい知ってるよね的教習)

かなり親切

(口頭の指示+教本もあり)

雰囲気

ややピリピリし過ぎ感がある

かなりリラックスできる

達成感

非常に大きい(だろう)

まあ、それなりに

その他

・試験に合格しても普通二種免許が

 無い場合は、別途応急処置講習

 を受ける必要がある

・試験項目以外には何も無い

・最初から応急処置講習が

 スケジュールに入っている

・高速道路教習が含まれている

・乗客の立場から運転の良し悪しを

 体験できる

・バスの急制動を体験できる

・スキッドカーに乗ることができた

 (教習所による)

・事務の女性が若くてかわいい(主観です)

・教習生にも若い女性が多い(匂いも良い)

・適性検査で急かされない

 

 

 おおまかに言うとこんな感じだ。さらに補足しておくと、応急処置講習がなかなか厄介である。これは6+2時間の座学&模擬体の実技で構成されているのだが、当方の知る範囲では公認教習所でしか受けられないようだ。つまりは試験場で技能試験に合格するだけではなく、1日は公認教習所へ出向く必要があるわけだ。しかも、この講習はそれなりに人数(5名程度)が集まらないと開催しないようだし、当然ながらその教習所の生徒が優先的に受けられるようになっている。因みにこの件について、試験場練習生時代に公認教習所へ問い合わせた所、「3ヶ月後くらい後にしか枠がない」ということだった(技能試験の合格有効期限は1年?)。また、費用も3万円程度かかるとのこと。そして、「技能試験に合格していないと受付できない」ということだった。

 

当方のような免許取得が趣味ならば、免許交付が少々遅れても問題ないが、生活の糧にするつもりだと支障があるかもしれない。もっとも、技能試験に合格していなくても受け付けている教習所もあるようなので、その辺りは問題ないのかもしれない。多分、試験合格前に受講させてしまうと、後で試験に合格できない腹いせに「金返せ」的なことを言うアホがいるから、教習所が自衛措置として言っているのだろうと推測される。因みに講習は受けるのみでよく、試験等は無い。後日、受講証明書を試験場へ提出すると免許が交付されるということだ。尚、技能試験の合格有効期限は1年?らしい。その間に免許交付まで漕ぎ着けないと多々の苦労が水の泡と化す危険性あり。

 

教習料金(平針練習所): 9,500円*12回=114,000円

試験申請料: 4,500円*2回=9,000円

試験車貸車料: 3,700円*2=7,400円

教習料金(自動車学校): 242,100円

試験受験料: 2,000円(指定教習所卒のため)

免許申請料: 2,100円

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合計                :376,600円+ガソリン代(2,000円)

 

長々と大型二種免許取得記を綴りましたが、これにて完結。お付き合い、ありがとうございました。

 

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