オープンスポットから
A320 OE-LBK機へ搭乗
スポットに入り、搭乗橋が繋がる。それと共に「ポーン」とチャイムが鳴り、他の乗客達は急いで降機しようと席を立つ。しかし、当方は少しでも長く機内に居たいので、座ったまま通路が空くのを待つことにする。周りの乗客たちがほとんどいなくなり、いい加減自分が最後になった頃に席を立つ。荷物を収納スペースから取り出して出口へ向かい、例の赤い制服のCAさん達に見送られて搭乗橋を歩いていく。さすがに、10時間も飛行機に乗っていたので疲れてしまった。しかし、それはとても嬉しい疲れだと言える。
それはそうと、もう一回乗り換えをしなくてはいけない。ええと、サラエボ行きはと、最初に見た電光掲示板で、20時20分発OS759便サラエボ行きのゲートを確認する。一応「G」ということだが、詳細は18時40分頃に案内となっている。オーストリアに入国する人の列を横目に、指示通り「G」の看板に従って脇の通路を歩いていくと、パスポートコントロールのブースがある。実は知らなかったのだが、通常パスポートは入国する際にのみ提示し、空港内の移動ではその必要はない。しかし、EU圏の空港では乗り継ぎ時もパスポートを見せて、国を移動する毎にスタンプを押してもらえるのだ。後々に紹介するが、これを知らなかったので、復路でちょっとしたトラブルに見舞われることになる。
狭い通路とエスカレーターで上の階に上がる。そして、ここで保安検査を受けるのだが、さっき機内でもらったばかりの水を没収されてしまう。別に制限エリア内で手に入れたものだから良いのでは??と思うが、どうやらこれが世界標準のようだ。日本は検査が甘いのだろう。
右の通路へ
中央は入国者の列
乗り継ぎのエリアに入ることができたし、時刻はまだ18時だ。出発までには1時間以上あるので、この階を探索してみることにしよう。ここは免税店やら喫茶店、食堂などがたくさん並んでいて嬉しくなってしまう。あの有名な「ザッハトルテ」もあり、とても旨そうだ。ジロジロと見ていると、民族服の店員から「御用ですか」と話しかけられる。ここはお得意の「ミーテールダーケー」で切り抜ける。
華やかな免税店エリアの様子
それはそうと、なんだか腹が減ってきた。ここらでお茶しようと思うが、ゲートから少し離れた場所にいるので、ここで食事をすると「乗り遅れはしまいか」と心配になる。ということで、発表になった「G21」の前にある店で何か食べることにする。関係無いが、掲示板には現在位置からゲートまでの徒歩での所要時間が記載されている。これは嬉しいサービスだ。いや、これを見ておけば、遠くの店で食事をしても焦ることはなかったのか、しまった。
サラエボ行き G21ゲート付近にて
何にしようかな、おお、このバゲットサンドが旨そうだ。でも7ユーロ「900円」って、やはり空港は観光客価格だね。あと、さっき水を没収されてしまったので、ひとつ買っておこう。この店では2本で5ユーロ(600円)、1本なら3.2ユーロ(420円)となっている。それならばと2本購入して、全部で12.5ユーロ(1,630円)を払う。あと「トーストするか」と聞かれるので、お願いしておく。
席についてサンドイッチにかぶりつくと、やっぱり旨い。何が旨いかって、まずパンが旨い。海外に出るといつも思うのだが、日本のパンは本当にマズイ。いや、今食べているパンをパンとするなら、日本のパンはパンじゃあないと言えよう。日本のパンは「パンのような見かけをした食べ物」である。パンは本来、小麦の風味がして、適度なふくらみと歯ごたえがあるものだ。しかし、日本のものは風味は無いし、やけにフワフワしている。つまり、小麦の量を極限まで少なくして、膨らし粉をバンバンに入れて無理やりかさを増やしているのだ。あと、日本の野菜もまずい。どうも味が薄いような気がする。ある統計によれば、ほうれん草に含まれるビタミン類などは、50年前に比べると7割程度しかないということだ。日本は豊かな国と思っていたが、こうして海外で何てことないものを食べるだけでもそれが「幻想」だと思い知らされる。いくら工業製品が溢れていても、食べるものがショボイ国は果たして豊といえるのだろうか。
全部で12.5ユーロ
食事をした後、出発時刻が迫って慌てないように、ゲート付近の長椅子に座ってくつろぐ。すると、隣のオッサンが話しかけてくる。この人はイギリスから仕事で来ているらしく、同じくサラエボに行くようだ。「暇なら向こうで会わないか」と誘われるが、今回も「電話を持っていない」ということで、丁重に断る。たまにはこういう誘いに乗ってみるのも悪くないが、ダカールでの失敗があるので勇気が出ない。また、断る時も丁重ではなく「NO」とはっきり言う方が、かえって失礼がないのかもしれない。
これについて、今こうしてレポートを書きながら思うのだが、誘いに乗らなくて正解だろう。だって、騙されて金を取られたりしていた可能性があるからだ。イギリスから仕事に来ている?そんなものなんの確証もないし、だいたい、初対面の人間のことなんか信用できない。日本人の「人情」からすればものすごく冷たい感覚だが、海外ではこれで良いのだと思う。
そんな感じで過ごしていると「サラエボ行きは交通状況の問題により、30分遅れます」と放送が入る。「交通状況の問題」って一体何なんだろうか。空港のスポットが混んでいるのか、着陸待ちの機が並んで渋滞しているのだろうか。詳細はわからないが、とにかく遅れだ。また、どこからか「おいおい、交通の問題って何だ?」と不満げな声も聞こえてくる。確かにその通りだ。まあ、当方は遊びなので、時間的制約はずっと少ない。ちょっと遅れたくらいは問題なかろう。
それはそうと、当方の旅行記を読んで下さる皆様はお気づきのことと思うが、飛行機に乗るたびにその「登録記号」を必ず記録している。もちろん、今回も実行しているのだが、今から乗るサラエボ行きOS759便の機体もチェックしておきたい。しかし、どれがサラエボ行きなのか。事前の調査では機種が「A320」ということが判明しているのみだ。そこで、周辺のスポットに駐機されている同型機を撮影しておく。これならば、後から見返すことができるからね。いやいや、まだ搭乗する機体は到着していないのだから、そんな無駄なことをしなくてもよいのでは?と思われそうだが、全くその通りだ。旅行に出て気持ちが舞い上がっており、そんなことも忘れているのだ。
そう思って待っていると、20時50分過ぎにゲートが開いて搭乗開始となる・・・が、何と沖止めの機体に乗るようで、お馴染みの巨大空港バスが下の階で待っている。こいつは嬉しい誤算だ。だって、主翼の下から写真を撮れるからね。バスで5分程度移動して、東の方にあるオープンスポットへ到着する。そこで待つ機体は、調査通りのエアバスA320-200型機であり、登録記号はOE-LBKである。この機体は2003年に製造されており、同年の2月にLTUというドイツの航空会社に納入されている。また、A320としては1,931機目の機体であり、のオーストリア航空には2013年1月にやって来たようだ。。
前述の通り、主翼の下に潜って写真を撮った後、後ろのドアから機内に乗り込む。今回は25Aと後方の座席を指定しているのだが、これは単に主翼付近が空いていなかったためだ。しかし、実際乗り込んでみると空席が目立つ。何だ、結構空いているじゃあないか。
主翼を下から
これが沖止め乗りの特権か?
こうして、21時30分頃に移動開始となり、小さな管制塔の前を通って行く。この頃には雨が降り出しており、またひどく眠たくなってくる。それもそのはずで、日本時間ならば朝の4時30分になっているからだ。DHC-8の横を通って、R/W29から手荒い操縦で離陸する。また、気流が良くないこともあり、上昇中は左右のみならず上下にも結構揺れていたのだが、眠かったせいもありあまり覚えていない。「遅れてゴメン。飛行時間は45分程度を予定しています」というアナウンスを聞いてから暫く寝ていたようだ。
機は順調に飛行を続けており、予定通りに30分遅れでサラエボに到着する予定である。それにしても、この便は前述のように、搭乗率はあまり良くなさそうだ。だいたい65%ってところだろう。一応採算ラインのギリギリという線なのだが、これはシーズン・オフだからなのかもしれない。こんなことだったら、有料で座席指定をすることもなかったね。そう、オーストリア航空は、座席指定が有料なんです。これは今まで利用した航空会社の中では初めてのことで、なんか「意外とケチ」という印象が残ってしまう。因みに、追加料金は約15,000円と補記しておこう。
時刻表では1時間10分の旅と、名古屋‐成田間と同じ時間である。しかし、ご存知の通り、これよりも早く到着することもしばしばあり、今回もそのようになりそうだ。だんだんと高度を下げ始め「♪街の灯りがぁ~」見え始める。そうだ、俺はついに「あの」サラエボに降り立つのだ。そう考えると気分は高まるが、如何せん眠い。時刻は22時を回っているので、日本ならば朝の5時というわけか。そう思っていると空港が見え、雨のサラエボ国際空港のR/W 12に着陸する。時刻は22時過ぎであり、そのまま移動して搭乗橋のあるスポットに定刻22時20分頃に到着した。結構飛ばしてくれたおかげで、やはり定刻よりも少し早かったようだ。
さて、サラエボ空港の印象だが、滑走路が1本だけの典型的な地方空港という趣だ。また、適度に古くなっていて、ちょっと旧共産圏の空港という雰囲気を感じる。OE‐LBK機に別れを告げて、空港内を歩いて入国審査を受ける。もっとも、これはほぼ形式だけの顔パス状態であったと記載しておこう。日本のパスポートのおかげか、はたまた審査が甘いだけなのか、理由はわからない。
やっとサラエボに到着
念願のサラエボのスタンプをもらって、パスポートを受け取る。そして、セントレアで預けたスーツケースも、すぐに拾うことができ順調だ。おっと、現金を手に入れておかないと、ということで、ATMに寄り現地通貨である「コベルティビルナマルク(KM)」を100KM(6,000円)手に入れる。もちろん、今回もプリペイド式のクレジットカード(マネパカードとNEOマネーカード)を持参しているので、問題は無しである。
それはそうと、昼間なら市街地と空港を結ぶバスがあるようなのだが、時刻は既に22時40分である。ここはタクシーでホテルまで行かねばならないだろう。しかし、空港の一番大きいと思われる出口にも、タクシーが1台も見えない。こいつは困ったなと思って、喫煙所でタバコを吸っているおっさんに「タクシーはどこで待てばよいのか」とたずねてみる。すると「ここで待っていれば、5分で来るよ」と教えてくれる。果たしてその通り、数分もするとタクシーがやって来る。そして、運転手が出てきて「タクシー?」というので「ああ、ホテルハヤトまで頼む」と答え、地図を見せる。「ああ、ここね」と場所を確認して、いざ出発だ。
因みに、この国のタクシーは屋根にアンドンをつけているものが正規営業のものらしいので、それをしっかりと確認したのは言うまでもない。そして、そのタクシーの車種は「Tヨタのアヴェンシス」であり、もちろんディーゼルエンジン搭載車だ。
タクシーの助手席に乗り、空港を出発する。運転手は饒舌で「日本はクールだ」とか「高いビルがたくさん建っているんだろう?」とか「工業製品は日本製が良い」と言っている。また、車の話を振ると「Tヨタは頑丈で良い。仮に壊れても、修理が安く済む」と日本びいきである。また「日本ではヒーブリッドの車がたくさん走っているのか。俺もヒーブリッドが欲しい」と言う。「ヒーブリッドって何だろう??」と考えるが、なんだ「HYBRID」のことか。「ああ、そうさ。たくさん走っているよ。俺はそういった車のマニュアル類の原稿を書く仕事をしていたのさ」と答える。
さらに「どうしてサラエボに来たのか」とたずねてくるので「子供の頃にオリンピックがあったし、内戦も終わったので見てみたくなったのさ。日本のスピードスケートの選手でクロイワという人がいて・・・」と続けていく。すると「クロイワ、俺も知っている」と言う。こいつは絶対にウソだ。この運転手、大丈夫か??それはそうと、タクシーの料金を聞いていなかった。そういえば、メーターも無い。ガイドブックには「メーターを確認すること」と書いてあったな。しまった、これは「ボッたくられる」パターンだ。しかし、今となってはもう遅い。ダカールであれほど痛い思いをしたのに、ボスニアでまたやらかしてしまったか・・・。
もうどうにでもなってくれ。そういう気持ちになるが、運転手は相変わらず「あれはアヴィス・タワーだ」とか「ラジオから流れている音楽は、この国では有名なものさ」などと、流ちょうにガイドをしてくれる。こうして、ホテルのある旧市街地「バシチャルシア地区」に入ってくる。「この坂を上って、ここを入ればホテル・ハヤトだ」と言って、玄関前につけてくれる。
さて、いよいよお楽しみの料金支払いだ。「いくらだい?」こちらから仕掛けてみると「40マルクだよ」って、おいおい、ガイドブックには「20マルクが相場だ」と書いてある。深夜だし、スーツケースもあるので追加料金があるとしても、せいぜい25か30マルクぐらいじゃあないのか。しかし、交渉する元気も根拠もあまりないので、渋々40マルクを支払う。悔しぃ~。ただ、運転手は荷物はホテルの玄関まで運んでくれ、サービスは良かった。当たり前だ、相場より高い料金を払っているんだからね。
ホテルのフロントで「日本から来た、管理人だ」と申し出ると、大きな部屋割り帳を見て名前を確認し「いらっしゃい。よく来たね」と歓迎してくれる。そして「Second Floorの部屋です。朝食は7時からで、WiFiのパスワードは・・・」と説明を受けて鍵をもらう。果たして、2階に行くが、鍵に書かれた番号の部屋はない。ああ「Second Floor」って、イギリス式なら「3階」じゃん。そう気がついて3階に行くと、やはりその通りでした。そうか、こちらの英語はイギリス式を習っているのか。
そんなことを思いつつ、部屋に入る。まあ、ちょっとボロで電気が1つしか点かないが、6泊して240マルク(15,000円(朝食付))なのだから仕方なかろう。しかし、シャワーからはちゃんとお湯も出るので一安心だ。いやあ、疲れた。今日はひとまず寝るとしよう、ということで23時(日本時間では朝6時)に就寝となった。
値段の割には良い部屋です
本日の移動距離
6,500海里ぐらいだろうか