管理人 海外へ行く

〜セネガル編〜

 

2017年 3月24日〜4月3日

免税店エリアにある、比較的華やかな店

第9日目(4月1日 その2)

1.空港へ向かう

19時前に部屋を出て、ロビーに下りると「電話の清算をしてくれ」と言われて動揺する。「航空会社は無料の通話だと言っていたが・・・」と言う。すると「いやいや、ただサインをしてくれればいいんだ。支払いは無い」ということで、安心した。

工事現場のような門の外には、新車のハイエースが止まっている。セネガルではボロボロの車しか乗っていないので、綺麗な車に乗るのは嬉しいものだ。しかし、このハイエースは、大きさは日本で見るものと変わらないが、座席数がやけに多い。全席に3人だろ、次の列は4人だろ、次も、次も4人掛けだ。15人乗りのハイエースって、仕事でその存在は知っているが、これが本物かと驚いてしまう。

定員いっぱいのハイエースに乗る

車はホテルを出て通りを右へ曲がり、その後も大きな通りを進んでいく。運転は相変わらず特攻スタイルで、事故にならないのが不思議なくらいである。そして、しばらくすると渋滞がひどくなってくる。運転手がここで気を利かせて狭い未舗装の路地へ入り、ガッタンガッタンの道を行く。その脇には露店がいっぱい出ていて、食べ物、飲み物、家電、なんでも揃いそうなぐらいだ。ただ、家々はガタガタであり、どうもスラム街を通っているようだ。こんな所は、まず一人では来ることはできないだろう。

前述のように、アディスアベバは近代的な高いビルが見えるが、一方でこんなガタガタの家に住む人もいる、貧富の差が激しい街だ。昨今は日本でも格差が問題になっているが、ここのそれは日本の比ではない。

隣の席には中国人氏が座っていて「今日はコーヒーを飲みに、街へ行ってきた」と話している。そして「とても安くて、旨いコーヒーだった」と話してくれた。

再び大きな通りへ出て、いくつかラウンドアバウトを通過すれば「ボレ・国際空港」へ到着だ。この空港は2003年の改修工事がなされ、新国際線ターミナルが完成した、比較的新しい空港だ。それを表すように、外観はトラス構造を成す柱が入り組み、その隙間に入れられたガラスからは、煌々と明かりが差している。

2.保安検査

駐車場でハイエースを降りて、空港の建物へ入る。この時も、多くのゴロツキがおり、とても怖い。大勢でなければ、とても通れないだろう。

建物へ入ると、いきなり保安検査をさせられる。普通は出国時の審査の前に行われるのだが、この国では空港に入るだけでも検査を受けるのだ。やっぱり治安的に問題があるのだろう。え、靴も脱ぐのか??戸惑いつつ、酒の瓶が入っているリュックをX線検査に流すため、係員に渡す。すると「パソコンは入っているか」と聞かれるので「いや、入っていない」と答える。すると、コンベアの方へ投げやがった。「おいおい、酒の瓶が入っているんだぞ」と言うが、無視しやがった。腹立つなぁ。

さらに、金属探知機を通りリュックを受け取ろうとすると、女の係員が「中を改める」と言う。「ああ、好きにしてくれ」と自らチャックを開けてやった。そして、袋に入った土産の木彫りを取り出し「これは何だ」と言うので「たぶん木彫りだ。開けてみるか??」と言うと「いやいやいや、それはいい」と言う。さらに扇子を出しては「それは日本の折り畳みうちわだ。見るか??」と袋からだしてやろうとすると「いやいやいや、それもいい」と言う。そして「手間を取らせてすまない」と謝ってきた。「いや、仕事熱心なことだ」と嫌みを言ってやると、苦笑いしている。してやったりだ。

今日は預け入れの荷物もないし、切符も発行されているのでエチオピア航空のカウンターへは行かず、そのままイミグレーションで出国の手続きをする。何も聞かれずあっさりと通過し、出国のスタンプを押してもらう。同日の出国、入国のスタンプが押された、おもしろいパスポートとなった。

そのまま免税店エリアへ入り、まずは電光掲示板で成田行きのゲート番号を確認しておく。1番のゲートで22時20分発だ。これを確認しておけば、落ち着いて店を見て回ることができるというものだ。当てもなくウロウロするが、それほど広いわけでもない。端から端まではほんの数分程だったと補記しておこう。

ここでエチオピアの特産品である「コーヒー」を購入する。他にも化粧品やら民芸品やらいろいろと売られているが、すべて「見てるだけ」である。

免税店エリア

カフェでコーヒーでも飲んでゆっくりするかな、と思って掲示板を見ると「ゲートへ進め」となっている。何だよ、まだ時間はあると思うが、従っておかないと本当にアフリカ大陸に取り残されてしまうぞ。

再発行された切符と電光掲示板のゲート番号が「1」であることを確認し、搭乗ゲートへ向かう。え、ここでもセキュリティチェックをするんですか?余程ハイジャックに気を付けているようだが、それもそのはずだ。以前、1996年にコートジボワール行きの飛行機がハイジャックされ、海上に不時着水したことがある。また、その時の機長は、それ以外にも2回、ハイジャックに遭遇している。

こんなことがあれば、エチオピアでなくても厳重に警戒するのは当然のことだろう。今回は進んで靴を脱いで荷物の中身を見せたので、あっさりと通過できた。

3.搭乗まで

エリア内は店も無く、何もすることはない。そこで、鉄製の細かい穴の開いた長椅子に座って、この旅をふり返りつつメモをつける。それでも時間が余るので、遠くを見たりしてボーっと過ごす。すると、そこへダカールで一緒になったアジア人がやってきた。

目が合ったので、会話が始まる。彼は韓国人であり「パク」さんという名前だ。名刺をもらったので見てみると、会社の社長さんだ。また、日本の電話会社でも働いていた経験があるそうで、積極的に色々な経験を積んできたようだ。年齢的には、当方よりも若く見える。

「ダカールで同じ飛行機だったね。遅れて大変だったな」と言うと、堰を切ったように話し始める。「ああ、まったくだ。セネガルでは3か月ぐらい滞在していたんだけど、大変だったよ。あいつらはいつも「No problem」って言うけど、All problemだったよ」と、結構大変だったようだ。因みに、彼の会社はセネガルから海産物を買い付けて、それを国内でさばいているようだ。日本でも、タコなんかは「モロッコ」や「モーリタニア」産が流通しているが、それは韓国でも同じようだ。

アフリカの西の端で飛行機が飛ばないという、ちょっとした出来事があり、アジア人という見えない繋がりで、韓国人、中国人、フィリピン人と話す機会ができた。国内では、韓国や中国なイメージが悪いのだが、人間ひとりひとりでは、そんなことは全く感じない。ただ、政治レベルや集団になってしまうと、前述のような摩擦が生じるということなのだろう。

そんなハプニングも何とか過ぎ去り、今はこのエチオピア、ボレ国際空港の出発ゲートにいる。ここから飛行機に乗れば、それは日本の成田行きだ。つまり、乗り換えなくても日本に帰ることができるのだ。何と嬉しいことだ、1日待たされただけに、余計にうれしく感じるじゃあないか。

ゲートの待合所にて

4.やっと日本に帰れる

22時前になって、空港名物の巨大バスがやってきた。思いがけずにやってきたエチオピアとも、そして1週間滞在したアフリカともこれでお別れだ。バスに乗り、隣の人と話をする。彼はガーナの人で、日本で自動車整備士として働いており、日本語も上手だ。ちょっとした冗談も通じて、面白い人だった。

飛行機の前でバスを降りて、恒例の機体番号の確認をする。今から成田まで乗客を運んでくれる機体は、ボーイング787-8型機であり、登録番号はET-ARFである。調べによれば、この機は787型機としては216番目に製造され、2014年の10月に登録されている。また、エンジンはジェネラル・エレクトリック製のGEnx型である。

ET-ARF機

エチオピア航空の職員が気をきかせてくれたので、「31L」の窓側の席を得ることができた。振り替えの便の席については何も要望はしていなかったのだが、あの「香港行き」の切符を出した職員は、なかなか良い仕事をしてくれたと、改めて実感する。因みに、隣には中国人と思われる若い男、通路側には・・・。巨大な黒人のおばちゃんが陣取っている。あんた、エコノミークラスはちょっと狭すぎるんじゃあないか??と思うが、このままドアが閉まり、いよいよ22時45分のほぼ定刻で移動開始となった。

窓の外には、エチオピア航空の機体がずらりと並んでいる。ほとんど、エチオピア航空国際空港の装いだが、それもそのはずで、同社はアフリカでは一番大きな航空会社だ。機体の保有数が100程度、その中には今乗っている最新のB787が20機程度、A350だって数機含まれている。787については、ANAの次に受領しているし、機数についても半分ぐらいにのぼるのだ。

くどいようだが、やっと日本に帰ることができると思うと、アフリカを発つのはちょっと寂しい。アフリカに取り残されている時は、早く脱出したいと考えていたのだから、人間とはつくづく勝手なものだ。

そう考えていたら、整備場が見えてくる。ここは滑走路07の端に当たり、いよいよ正対して離陸準備に入るのだ。今日も07Rに機首を向けて、エンジンの回転が上がる。787型は2回目の搭乗だが、同規模の767型に比べて作動音が本当に静かだ。前者が「ゴォ〜〜〜〜」とすれば、後者は「シュイ〜〜ン」である。

ガタガタとした振動がなくなり、機種が上向いたら一気に高度が上がる。ありがとう、エチオピア。さようなら、アフリカ大陸。そんな言葉が心に浮かんできて、街の明かりは小さくなっていく。

座席のモニターで離陸時刻等を確認すると、22時51分で、経由先の香港までは10時間近い飛行となる。この間、絶対にトイレに行くことは避けられないのだが、通路側には巨大なおばちゃんが・・・。どうしたものだろうか。いや、そんなことはエコノミークラスに乗っている乗客ならば、誰だってわかる。それが嫌ならば、金を払ってビジネスクラスやファーストクラスの席をとればよいことだ。どうも当方はそういうことで要らない気を遣い、疲れてしまうことが多々ある。そのあたりは傲慢にならず、しかし、堂々と申し出ればよい話だ。

そう考えていると、機は水平飛行に移り、ベルトサインも消える。同時に、食事のサービスが始まる。長距離の飛行機と言えば、やはり機内食である。今日のメニューは選択無しの、きしめん風のスパゲティである。そして、いつものライスサラダ、丸パン。このサラダであるが、スパゲティのソースをからめると、旨くなる事を発見した。これは、ダカール行きの飛行機で、隣のおっさんがやっていたことで、それをマネしたわけだ。因みに、単品で食べると酸味があり、食欲が刺激される、いわゆるアピタイザーであると補記しておこう。

きしめん風のスパゲティ

食事しながらモニターを監視すると、ソマリアの上空を通過している。これでアフリカ大陸とはお別れだが、まだまだ先は長い。食事を終えると、アメニティが配られて、アイマスクと耳栓をして眠りにつく。疲れていたので、あっという間に寝てしまった。

アフリカ大陸よさようなら

第10日目(4月2日)へ続く