管理人 海外へ行く

〜セネガル編〜

 

2017年 3月24日〜4月3日

搭乗予定のB767-300ER

 

 

 

第8日目 (3月31日 その1)

1.やっと帰れるのか

朝は4時30分過ぎに起床した。昨夜は本当に暑くて、目が覚めると汗でベタベタになってしまった。仕方ないので、本当に最後の水シャワーを浴びる。ただ、毎日繰り返していたので、すっかり慣れてしまった。まあ、こんなものかな。

買っておいたお菓子の残りを食べて、初日に12本買った水の最後のボトルを開ける。確かに、宿の従業員が言っていたように「長期滞在するのだから、まとめて買っておいた方が良い」という助言は正しかった。この旅では本当にホテルの人に世話になり、困難を克服してきた。人のつながりというのは、大切である。ともすると「自分一人で何でもやればよい」と考えがちだが、それではすぐに限界がきてしまう。人は助け合っていくことも必要なのだろう。

ほぼ1週間世話になった部屋を見渡し、お礼を言って入口を閉めた。そして、フロントへ下りていく。すると、怖そうな大男達が4、5人おり、玄関を警備している。こういうことをするのは、やはり治安に懸念事項があるからだろう。いやいや、何もなくてよかったよ。

ホテルの部屋を出る前に

清算は済んでいる旨、一番まともそうな人に伝えて領収書を見せる。すると、ゴチョゴチョとパソコンを叩いて調べた後、行ってヨシとなった。また、空港へ行きたいのでタクシーを止めてもらうように頼む。すると、ちょっとガラの悪そうな男が表へ出てくれた。そして「料金は1,000だよな」と確認すると「1,000払えばよい」というようなことを言っている。この人は、あまり英語は得意ではないようだ。いや、ここはフランス語圏なので、本当は当方がフランス語を話すべきだろう。

タクシーに乗り「エアロポルト」へ向かう。ほんの数分で駐車場へ着くが「2,000」と言ってくる。馬鹿言うな、という気持ちで「1,000しか持っていない」と言うと、あっさり諦めてくれて「OKだ」となった。やっとタクシーにも正規料金で乗れるようになったが、ダカールの流儀とも今日でお別れだ。

タクシーを降りると、薄明りの早朝にも関わらず「両替するよ」の闇両替商の応酬に遭遇した。もうかんべんしてくれよとオッサン達を蹴散らすと、建物の入り口で軍人に「パスポートを見せろ」と言われる。そして「どこへ行くんだ」と聞かれたので「アディスだ」と言いつつ、パスポートを見せた。もちろん、行ってヨシだ。

建物に入ると正規の両替屋も営業をしているが、本当にドルにしてくれるのか甚だ疑問だ。いや、本当はこの出発ターミナルの建物の両替屋ならば、ドルにしてくれたのかもしれないが、その件は昨日ホテルの「My Friend」が解決してくれたので、問題は無い。

出発ターミナルの様子

数日前に教えられたように、エチオピア航空のカウンターへ行く。そこで、オバサンが紙に打ち出されていた乗客名簿とパスポートを照らし合わせていたので、E‐TICKETも見せて、無事に搭乗券が3枚発行された。因みに、復路では香港でANAに乗り換えて成田に向かうという、嬉しい演出もある。というのも、この日はエチオピア航空ET672便は香港止まりであり、その先はANAが運航するコードシェアのET1600便なのだよ、ヤマトの諸君。

エチオピア航空のチェックイン・カウンター

指示に従って進むと、スーツケースを預ける場所だ。ここではオッサンが重量を測って、タグを発券してくれる。そして「トウキョウに行くのか??」と珍しそうに聞かれた。そりゃそうだ、そんな遠くへ行く人も少ないのだろう。ここではパスポートの裏にタグを貼ってくれる。

次にセキュリティチェックで、機内持ち込みのバッグをX線の機械に通す。そこでは役人が「ペットボトルはダメだ、よこせ」としっかり見張っていた。おお、そうだった。ゴメン。手渡そうとすると、投げてくれりゃあいいという仕草で合図してくれた。この間、何人かのパイロットや軍人がフリーパスで通って行く。

出国審査のブースでは10分も待たずして順番がきて「管理人さん、いつセネガルに来たんだ」、「どのホテルに泊まっていたんだ」、「トウキョウに帰るのか」などと、一般的な質問をされる。まあ、見た目は怪しいが、怪しいことはしていないという判断だろう。そして、審査官はそれら質問の答えをキーボードからカタカタと入力していたのだが、何か意味があるのだろうか。

2.問題なくセキュリテイエリアに入る

その後は、指紋読み取り機に人差し指を乗せてカメラの方を向いて記録される。これで無事にセキュリティチェックは終了なので、エリアに入っていよいよ出国を待つばかりだ。前回のポルトガルの時は随分と名残惜しかったが、今回は「やっと日本に返ることができるんだ」という、達成感を覚える。そりゃそうだ、買い物をしてもおつりが出なかったり、タクシーに乗れば運転手と料金を交渉し、ちょっと出かけると客引きが寄って来るし、ひったくりなどに遭わないかびくびくして街を歩いたし、結構大変だったんだから。

免税店のエリア入る。しかし、成田や中部、リスボン、イスタンブール、どこもきらびやかでたくさんの店が並ぶのだが、ここダカールは・・・。5、6軒の店があるだけだ。

最初に見える民芸品を売る店に入り、商品を眺める。すると、ゴレ島で見た木彫りとほぼ同じものが売られている。それも3,000CFAフランと、当方が交渉して値切った価格と同じだ。つまり、最初に提示された10,000はボッタクリ価格で、交渉した結果妥当な価格になったというわけだ。ここで先輩インストラクターへ木彫りと、友人へのTシャツを手に入れる。それらの代金で、残っていた5,000CFAフランのを使い切ることに成功した。

ショボイ免税店だ

さらに進むと、タバコや酒、化粧品などの店が見えたので、友人に酒とたばこを購入した。ここではドルで支払をしたのだが「おつりが無いので、CFAフランでいいか」と言われる。おいおい、苦労してフランを使い切ったのに、そりゃないよ。そこで「ユーロでもいいぞ」と当方にしては珍しく機転をきかせたら、渋々6ユーロぐらい返ってきた。ユーロならば、またの機会に使えるからね。それでも「足りない分があるので、それはCFAフランでいいか」だって。好きにしてくれよ。さらに、100フランのコインが出てきたよ。こういうところは、なぜか律儀なんだよな。

こちらはちょっとマシかな

それにしても、この国は空港でもおつりがないのだ。そりゃ、街中ではおつりが出ないわけである。それも、今日で終わりかと思うと、とても嬉しいではないか。

そう思って免税エリアから、出発ゲートへやって来る。やれやれ、後は飛行機を待つばかりだ。そう思ったら腹が減って、喉が渇いてきた。そこで、近所の店で買ったウエハースを食べ、ゲート近くにある店で水を購入する。もちろん、支払はユーロだが、案の定「おつりがないから、後で取りに来て」ということになった。最後までこれかよ。

待合室にて出発を待つ

しばらく椅子に座って待っていると、ヨーロッパ人の団体がその店に押し寄せ、サンドイッチやらジュースやらを購入していった。これはチャンスだと店に戻ると、店員の女性は「おお来たか」と言う顔で、おつりをくれた。ところで、この国ではこういう所は妙に律儀なのだが、平気でボッたくろうとする。まったく、面白いね。

時刻は6時30分なので、飛行機の搭乗まではまだ30分以上ある。そこで、空港に駐機されている飛行機を撮影しようと、待合室の一番端まで行って、パシパシとシャッターを切る。天気は悪くないが、ちょっと視界が悪いようだ。あ、あれが今から乗る、エチオピア航空の767‐300ERだ。あっちにはボンバルディアのDHC-8や、CRJ200?らしき機体も見える。

DHC-8の貨物機

 

3.嫌な予感がする

後は椅子に座って、周りを見る。今日の乗客にはアジア人もいるようだが、日本人はいない。さて、そろそろ搭乗時刻の7時15分だが、沖に留め置いてある飛行機にはパイロットが乗っていないようだ。おかしいなぁ、もうとっくに飛行準備をしていなければならないはずだが、動きがない。時刻は既に7時30分を回っている。そろそろバスが来て、飛行機に乗せてくれるはずだが・・・。

8時になったが、まだ搭乗案内がない。ゲートを間違えたかと思うが、この空港には5、6箇所しかないので間違えることはないはずだ。おかしいと思っているとスピーカーから「ブー」とブザーが鳴り、なにやらゴチャゴチャと案内が流れてきた。

どうやらフランス語のようなので、内容はさっぱりわからない。しかし、周囲の人達がザワザワとし始めて、ふんぞり返っている職員に詰め寄り出した。いったいどうしたのだろうか、事態をつかみかねる。隣には音楽を聴いている、いかにも金持ちそうな人がいる。この人なら英語がわかるだろうと踏んで「何かあったのか」とたずねた。すると「出発が遅れるってさ」といつものことさ、という感じで悠然としている。「何時間遅れるんだろう」と聞き返すと「さあね、11時か12時か、16時か、・・・」と曖昧な返事だ。

おいおい、今日の夜には、アディスアベバから成田行きの飛行機に乗らなくてはいけないんだぞ。乗り継ぎ時間は2時間ぐらいなんだから、それ以上遅れたら大変じゃあないか。彼は続けて「あの人に聞いてみな」とふんぞりかえっているデヴの女性を指さしたので、早速行ってみる。すると「乗り継ぎは問題ないよ。(あんたの心配は)わかってるよ」とそっけない返事だ。

まいったなぁ、と思っていると中国人と思われる人が話しかけてくる。こういう時は、アジア人同士で結束するようだ。彼は「荷物はどうなるんだろうか」と心配している。

そこで、もうちょっとまともそうな職員を見つけて、色々と質問をすることにした。「ちょっとすいません」と言うと「ああ、お前、4、5日前に事務所で会ったね」と言われる。ああ、リコンファームをしてくれ、郵便局の場所も教えてくれた、あんたか。ちょうど良い。俺たちはどうなるんだと聞いてみる。すると「絶対に大丈夫だ。飛行機には乗れるし、乗り継ぎも問題は無い。代わりの便を手配するから心配するな。詳細はアディスで聞いてくれ」ということだ。しかし、具体的なことは何もわからない。

「どうだった」と中国人氏が聞いてくるので「代わりの便を手配するから大丈夫だって言ってるよ」と答える。「荷物はどうなるんだ。アディスはヘボ空港だから、ロストバゲッジになるぞ」とかなり心配している。

ひとまずここは座って、落ち着くことにする。さて、当方のような暇人ならこれも一興だが、この中国人氏は携帯電話の仕事でセネガルに来ているようで、飛行機の遅れは仕事の遅れになるから困るということだ。それりゃそうだ。

4.一旦落ち着いて

9時15分頃に機内食を乗せたカート押して、職員がやって来る。本来ならば機上で食べる朝飯だが、今日は待合室での食事となる。

機内食を待合室で食べるとは・・・

朝飯を食べつつ、今後のことについて考える。だいたい、何でこんなに遅れるのか、飛行機は目の前に来ているし、整備をしている様子もない。エチオピア航空の職員に理由をたずねると「乗組員の休息時間確保」ということだ。なんじゃそりゃと思うが、パイロットや客室乗務員が来ていないのだから、飛べるはずもない。この件について帰宅後に調べてみたら、前日にアディスからやってきたET909便が、夜中の3時に到着していることが判明した。つまり、パイロットはそこから最低でも7時間か8時間かは休息しなければならない。それで、出発時刻がズレ込んでいるというわけだ。

それならば、最初にチェックインする時に教えてくれれば、もうちょっと観光なり、何なりができたのに。まあ、エチオピア航空なので、こんなものなのだろうか?サービスや安全は金で買えと言われる航空業界なので、文句を言っても仕方なかろう。

さっきの、リコンファーム頼んだ職員がやってきて「11時30分には飛ぶから、心配するな」と伝えてくれる。それでも3時間30分の遅れだし、アディスの乗り継ぎは無理だろう。ここまでくれば、後は野となれ山となれである。

中国人がやってきて、色々と話をする。彼は出国時に役人から「わいろ」を請求されたようだ。何でも、パスポートを提出したら、それを隣の役人と見てなかなか返してくれなくて「返してほしかったら、何かよこせ」と言われたらしい。まあ、毅然とした態度をとったら返してくれたのだが、これについて「中国人はどうも嫌われているようだ」と言っていた。そんなこともあるのかな。

ところで、日本人でも中国人が嫌いな人は多いと思うが、個人的に話をすれば問題は何もないし、この人そのものは紳士的な人だ。問題なのは集団になったり、国と国の話し合いになったりする時だ。こうなると、国民性や考え方の違いから摩擦が発生し、行動様式に不快感を覚えたりする。

だが、よくよく考えると、日本人だってモラルの低い人は大勢いるし、年寄りの旅行集団のマナーの悪さに辟易することもしばしばある。結局、その人の人間としての出来栄えが一番問題なのであって、○○人だからということは関係ないのかもしれない。

暇なので、建物のガラス戸にへばりついて飛行機を見て、写真を撮る。おや、あれは旧ソ連製らしき機体か。見たことないよと楽しんでいたら、怖そうなデヴのおばさんが「ちょっと来い」と手招きをしている。そして「ここは入ってはいかん!!」と怒られてしまった。ヒー、スイマセン。

TRANSAIRのERJ-145(右)とDASSAULT FALCON(左)の珍しいショット

CRJ200とアフリカン・ルネッサンス像

搭乗開始の11時30分となるが、何の連絡もない。この頃、パイロットやCAが空港に出勤してきた。おいおい、出発が11時30分じゃあないのかと思うが、この時間に乗組員が出勤してきてるってことは、あと2時間以上は待たなくてはいけないだろう。気が遠くなってきた。

椅子に座ってうたた寝をしたり、カメラの写真をチェックしたりして時間を潰す。そして、12時を過ぎるが、何の案内もない。一体どうなっているのかといぶかしがっていると、隣のゲートから出発する、13時30分発のTAPポルトガル航空リスボン行きの、搭乗前セキュリティチェックが始まった。その内容たるや驚きの厳しさで、列に並ばせて上着を脱がせて万歳をさせて、ボディチェックをするというものだ。「何でここまでやるのか??」とチェックを受けているヨーロッパ人も呆れ顔である。

一方、当方等が乗る8時発のアディス行きは、相変わらず何の案内もない。これに対して、13時30分発のリスボン行きは順調にフライトの準備が進んでいるようだ。いったいどうなっているんだと半ば切れそうになるが、怒っても仕方ない。ポルトガル行きの乗客は、バスに乗って飛行機に向かっていった。

第8日目(3月31日 その2)へ続く