管理人 海外へ行く
〜セネガル編〜
ゴレ島の様子
第5日目 （3月28日 その2）
１．散策開始
島に入ると、普通に住んでいる人がたくさんいることに気がついた。そりゃそうだ、四国の小豆島が観光地となっているが、住んでいる島民は多数いる。因みに、ガイドブックによれば、島内には車は走っていないそうで、舗装された道路もない。
そのまま住宅地を歩いて坂を上っていくと、ある建物の入り口に「MITSUBISHI」の文字を見る。これは日本の援助で建設された学校である。
日本の援助でできた学校を示す看板
さらに進んでいくと、道沿いに多くの絵が展示してある。これは、島在住の画家が描いているようだが、果たして商売として成り立っているのか、かなり疑問である。
絵が飾られている通り
さらに行くと、監視塔らしきものがあり、その前の広場では子供達が元気に遊んでいる。その奥には、なんと巨大な砲台が見える。近寄ると「本物」だ。これは、フランス統治下時代に建設されたもので、現在では飾りである。
島の端に設けられた砲台
砲台の周りには店が出ていて、木彫りがたくさん置いてある。何か良いものはないかと見てみると、カゴを頭に乗せた、ベタな木彫りがある。ここで店主が登場し「手に取って見てみろ」と言わんばかりに、それを渡してくる。んー、まあまあかな。そこで「いくらだ」とたずねると「10,000」って、そんなことはなかろう。
他にはないかと商品をみると「土偶」の木彫りがあるじゃあないか。「こっちの方が好みだ」と言って、そちらを手に取る。悪くないじゃあないか。そこで電卓を出して「2,000」と提示すると「安すぎる」と言う。じゃあということで、電卓を渡すと「5,000」と提示してくる。いきなり半額かよ。そこで「2,500」と折れると、それでも「安すぎる」という。すると「3,000」と返してきた。「まあ、この辺りが妥当だな」と思い、OKを出して、お買い上げとなった。
露店が出ている
初めて思惑に近い値段で物を買うことができて、ちょっと嬉しい。因みに、値段の交渉術については、友人のN氏から助言を得ている。それによると「最初は半額以下から提示して、徐々に妥協点を探すのがコツ」ということだった。それを実践したわけだ。
２．暫し休息を
嬉しいが少々疲れたので、高台から海をながめることにする。対岸にはダカールの街が見え、意外にも高層ビルが多く並んでいることに気がついた。フェリーの発着所がある港湾地区には「セーファーフラン」を発行する中央銀行のビルもあるのだ。また、対照的に、左手の「マニュエル岬」付近は建物があまりない。
ダカールの市街地を望む
（空気が汚いのか、霞んでいる）
一方、島の全体もここから見ることができる。フェリーの桟橋周辺が島の中心部のようで、ここには綺麗なヨーロッパ調の家々が並ぶ。おそらく、フランスの影響を受けているのだろう。
高台から見る島の様子
ちょっと良い気分で、掘立小屋（家？）の前に洗濯が干してある斜面を歩いていく。猫もおり、ここが特別な場所ではないことを表している。そして海岸まで下りると、人けのない「モスケ」に出てきた。この時間は礼拝がないようで、静まり返っている。
斜面に建つ小屋
人気の無いモスケ
強盗に遭わないか不安になるが、この島の入り口には警察署があって、治安はかなり良い。雰囲気もダカールの市場のようにピリピリしていないので、安心して観光できる場所だ。
狭い路地を歩いていく。人通りは無いが、店も出ていて店員はこちらを見ている。また、前述のように島内はのんびりした雰囲気なので、落ち着いて観光できる。
裏通りを行く
子供達がサッカーで盛り上がる広場に出た。これもこの国では日常の風景なんだろう。歓声を聞きながら、島の中心部にある市場を眺める。そこにパンが山積みされていて、写真を撮ろうとしたら、オバサンが大声で怒ってきた。ひー、失礼しました。これもこの国ではよくあることで、宗教的、呪術的な理由から、写真に撮られたくない女性がいるのだ。また、島にはキリスト教の施設もあり、セネガルの多様性を感じる。因みに、90％以上はイスラム教を信じているのだが、数％はキリスト教徒もいるということだ。
さらに島を北側に進むと、フェリーの桟橋が見える漁港に出てくる。ここでも、特徴的な長細い船が何隻か停泊している。
漁港の様子
奥はフェリーの桟橋
２．今日のメイン
そうだ、大切なことを忘れていた。この島で必ず見ておきたい「奴隷の家」に行ってなかった。地図を見ておおよその場所を確認して、そちらの方向へ向かう。この時警察署の前を通るので、ついでに「奴隷の家はどこか」とたずねてみた。すると、警官は親切に「そこから入ったところだ」と教えてくれる。
教えられた通りに細い路地を入り、風情のある雰囲気を楽しみつつ歩いていく。すると、ペリカン君に出会った。この旅では2回目のことなので、この国ではよくあることなのだろう。
ペリカンさんに遭遇
さらに行くと、人が集まっているのが見える。ここが「奴隷の家」だろう。門を入ると切符が売られている。やはり、金を取れそうな所で商売をしている。500フランを払って中に入ると、ピンク色の建物が見えた。これが世界遺産とはちょっと疑わしいが、端にある事務所には額縁に入った証明書が掲示されている。
奴隷の家
さて、ここは1Fが奴隷の部屋、2Fは役人の部屋となっている。部屋と言っても、1Fについてはただの仕切られた空間だ。そして、それぞれに「女性」とか「子供」などと表札が出ている。また、それぞれの部屋には出口があるのだが、それは海に繋がっている。つまり、出口＝目的地に送られるということで、完全に拘束されているということだ。
女性奴隷の部屋
出口は海側にしかない
そこから海を眺めるが、ここから船に乗せられた奴隷の人達はどんな気持ちだったのだろうか。もっとも、生きていくために好んで奴隷になった人もいたようで、奴隷＝不幸という図式は必ずしも成り立たないらしい。
ところで、奴隷といえば大概は黒人をイメージする。しかし、よくよく考えてみると人類の起源はアフリカにある。また、15世紀以前まではガーナやマリには王国があり、前述のマリ王国の首都である「トゥンブクトゥ」においては、学術的研究が相当に進んでいたのである。それでも、大航海時代にやってきた列強各国に支配されてしまうのだから、歴史とは残酷なものである。
そんなことを考えつつ2Fに上り、展示物を見る。首輪や足枷、銃などがあるが、驚くべきは奴隷を捉える場面を描いた挿絵だろう。棒を振りかざして、思いっきりぶん殴ろうとしているので、ちょっと目を背けたくなる。非人道的という言葉があるが、まさしくその通りである。
奴隷を捕獲・拘束したと思われる道具類
奴隷を捕える手順を示したパネルより
（フランス語なので全く読めない）
こうして「奴隷の家」にいて、部屋や展示を見ていると、秋に行ったポルトガルでのことを思い出す。スーパーの店員、掃除をする人などは黒人の労働者が多いのだが、この人達の先祖もこうしてアフリカで捕えられて、強制的に送られてきた人なのかなぁと考える。そう思うと、何とも理不尽な話だ。自分ならば「何も悪いことをしていないのに、なんでそんな目に遭うのだろうか」と大いに反抗するだろう。
ちょっと悲しい気持ちになり、奴隷の家をでる。そして、再び狭い路地に出て、あてもなく歩いて回る。セネガル国旗が出ている家、病院、教会、島内はそれほど大きくないが、様々な公共施設が揃っている。
警察署
警察署の前を通り、再び海岸に出て海を眺める。わりと高めの波があるのだが、例の細長い船に乗って、沖へ出ようと一生懸命漕いでいる。いったいつになったら漁場へ到着するのだろうか。
漁師が漁場へ向かう
３．戻るとしようか
この先にも島が100ｍ程度続いているが、観光客が寄り付かない雰囲気なのでやめておく。時刻も12時を回ったので、そろそろ食事にしようか。いや、落ち着いて食べられられないので、やはりホテルに戻ってからにしよう。そう考えていると、フェリーが桟橋にやってきた。あれに乗って戻るとしよう。
桟橋で切符を見せて、船の後端にある長椅子に座る。なかなか平和な島だったので、今日は比較的観光を楽しむことができたな。ひとりで悦に入っていると「そこはしぶきが当たるから、こっちに座りな」と地元のおじさんが親切に教えてくれた。ありがとう。
船は出航し、島が遠くなっていく。こうして一日ずつ時間が過ぎていくので、残りは少なくなっていくと思うと少し寂しい。しかし、そんな感傷に浸っている暇はない。これからホテルに戻るのに、タクシーの値段交渉が待っている。気合を入れていこう。
それはそうと、海から見ると、街には大きな建物が副都心よろしくいくつか建っている。ダカールは西アフリカ最大の都市であり、その中心となっているのだが、それを象徴するようだ。
船上からみるダカールのビル群
船が進むと、港に停泊する大きな貨物船や、行きに見た大きなフェリーが見えてくる。あ、フェリーには「Liaison Maritime Dakar⇔Ziguinchor」と書かれているので、ダカールとジガンショールの往復フェリーだとわかった。
停泊中の長距離フェリー
フェリーを降りて、街へ出る。相変わらずピリピリした雰囲気であり、ちょっと歩いて観光してみようという気も失せてしまった。また、帰国後にわかったことなのだが、港湾地区はダカールでも一番治安が悪い場所の一つであるそうだ。自分はそれを感じ取って、不用意に歩くことを避けたというわけだ。旅の直感は大事にしよう。
４．闘いの始まり
タクシーを探して、フェリー乗り場周辺を見て回り、わりとまともそうな車両を発見した。よしと気合を入れて、交渉に臨む。まずはホテルからもらった名刺を運転手に見せて「ここに行きたいんだ」と言う。すると即答で「10,000」と言う。馬鹿な事を言うな、おれは１/4の値段でここまで来ているんだ。「2,500」と電卓で示すと「5,000」と返してくる。いきなり半額を提示できるんだったら、最初から10,000なんて言うんじゃあないよ。
そう考えて、やはり「2,500」を提示し、こちらも譲らない。すると「安すぎる、4�劼�5�劼盥�んだ道を走るのだから5,000だ」と言う。ああ、もう話にならないので「他をさがすわ」と車を降りようとしたら「4,000」でどうだときた。それでも高いが、「2,500」は500円だし「4,000」は800円なので、手を打つことにした。