管理人 海外へ行く
〜セネガル編〜
道端に止まる「タタ」製バス
第4日目 （3月27日 その3）
１．帰りはやけに時間がかかるな
途中でたくさんのバスとすれ違う。「あのバスは「タタ」製だ」と言っているので「そうだ、あれはインドのタタ製のバスだ」と返した。「タタは日本じゃあないのか？」と運転手は驚いていたが「日本製なら、ヒノとかミツビシが多いよ」と言ってみる。「そうなのか」とまたまた、運転手は驚いている。
それから、運転手は徐々に口数が増えてきて「あ、タタのバスだぜ」とか「ミツビシの車だ」と話しかけてくる。当方も持てる知識を動員して「あのミツビシはタイタンと言って、タイ製なんだ」とか解説を加えていく。
運転手はさらに気を良くして「あ、後ろから塩を積んだトラックが来た。写真を撮るか？」と言って、路肩に車を止めてくれる。何だか知らないけど、サービスが良いなと思い、カメラを向けてみる。んー、やっぱり過積載で、荷台がしなっていて、右に傾いている。これだけの重量を積んでいたら、何かあっても絶対に止まれないだろう。
右に傾くトレーラー
再び「ニアガ」の街を通過する。よくよく見ると、道路の端には茶色い砂が堆積している。ここはサハラ砂漠の端だということを、改めて認識した。
ニアガのメインストリート
街は相変わらずの混乱で、往路では発生していなかった渋滞に巻き込まれる。原因はダカールの街と同じように、道路に対して車の数が多過ぎること、所々で路面がかまぼこになっていて、速度が落ちることだ。まあ、高速に乗れば渋滞は関係ないだろう。
そう思って、車窓に流れていく街を眺めて過ごす。
「ニアガ」の街を過ぎるが、高速に乗る気配がない。いや、明らかに往路とは違う道を走っている。「見てみろ、下道はあんなに混んでいるから、3時間はかかるぞ」と運転手は言っていたが、今はその下道のド渋滞の真ん中だ。街の名前はわからないが、ラウンドアバウトでは、完全にフンズマリ状態である。
それでも、わずかな隙間が空いていれば、運転手は頭を突っ込んでいく。そうでもしないと、この交差点の向こうにはいけないのだ。ぶつからないのかって？そりゃあミラーを2、3回他の車両にぶつけたが、そんなことは大した問題ではないようだ。もちろん、歩行者も同様であり、車と車のあいだをスイスイと歩いていく。轢かれたらどうするんだろうか。
街を抜ければ渋滞は無くなるが、次の街では再び車の流れが悪くなる。そして、ラウンドアバウトでは完全に動きが止まるのだが、こういう場所で商売を営んでいる人が大勢いることには驚かされる。袋に入った水、通称「水袋」や、ポン菓子みたいなもの、ピーナッツ、Tシャツ、何でも売っている。
当方みたいな旅行者は真っ先に目を付けられそうなので、こういう時は帽子を深く被って、下を向いてやり過ごす。もっとも、運転手がそのあたりはうまくやっているようで、あまり商売人が寄ってくることはなかった。そこで「あんたはいい運転手だ」と褒めておく。すると、機嫌も良くなって、調子こいて先を急いでくれるようになった。
街では街道沿いには様々な店が出ていて、個人的には車やバイクの修理屋が興味深い。オンボロの乗用車のみならず、トラックまでもがバラバラにされて、それらを補修部品としているようだ。つまり、この国では「動かなくなるまで使い、その後は分解して使える部品は再使用」ということなのだろう。ある意味「エコ・フレンドリー」だ。
バイク屋
トラックも解体中
いくつもの街を越えて、渋滞の波をいくつも乗り越えていく。ある街では、サイレンを鳴らして4輪の隙間を縫っていく「白バイ」を見た。車両はBMWやYAMAHAなどであったと補記しておこう。
BMWの白バイが抜けていく
また、2輪用のヘルメットを売る露店を見かけたのだが、商品にはなぜか「SUZUKA」と文字のステッカーが貼ってある。意味をわかっているのか甚だ疑問だが、世の中そんなものだろう。
何とか渋滞を過ぎて、いよいよダカールの街に戻ってきた。サンゴール・スタジアムを過ぎて、空港の滑走路36R端を過ぎれば、ホテルはもうすぐだ。こうして空港前のラウンドアバウトを過ぎて、ホテルの前にタクシーは止まった。
２．昼飯にはあれを
最初に約束した通り、35,000フランを支払う。すると「また機会があったら呼んでくれ」と言って、銀行ATMのレシート裏に電話番号を書いたものをくれた。「ああ、ありがとう」と言って車を見送った。
14時頃にホテルに到着し、フロントで「Lac Rose」の感想をたずねられた。そこで、1枚ずつ撮影してきた写真を見せつつ、話をする。
「わあ、写真撮るの上手ね」と褒められてしまい、さらに饒舌になってしまった。本来は素直に喜べばよいのだが、懐疑心の強い当方は「お世辞を言われて、つい乗ってしまった」とヒネクレタことを思ってしまう。
さて、今日は今までで一番長い時間外出していたので、喉がいがらっぽい。正確には「毎日いがらっぽい」のだが、今日は特別だ。と言うのも、ダカールでは車の通行量が多く、慢性的に渋滞が発生している。さらに、走っている車がとても古い。20年ぐらい前の車もバリバリの現役だ。加えて、整備状況も非常に悪いので、黒煙を出していたり、1気筒死んでいるようなマシンもザラだ。そういうわけで、大気汚染が酷く、社会問題にもなっているのだ。
このままでは喉をヤラレテしまうので、日本から「イソジン」を持参しているのだよ、ヤマトの諸君。さらに、前にも紹介したが、アルコール除菌のできるウエットティッシュも持ってきている。シャワーを浴びて砂やススを落とし、うがい薬でよーく「ガラガラ」して、ウエットティッシュで手はもちろん、鼻の穴もよく掃除しておく。ウワ、鼻の中は真っ黒じゃあないか。
日本のこんなものが役に立ちます
水を飲んで一息つくが、どうも落ち着かない。そうだ、昼飯を食べていなかった。今日こそはセネガルの国民的料理である「ティブジェン」を食べたい。問題はどこへ行くか・・・、である。日曜日に行った屋台でも良いが、衛生的にイマイチなので、そのうち腹を壊しそうだ。もう一つはアフリカ本土最西端にある「Point Des Armadis」というレストランだが、またタクシーに乗るのは疲れる。
ここは楽をして、ホテルのレストランへ行くことにしよう。ここなら徒歩で10秒、つまり同じ階にあるのだ。扉を開くと、朝にはいなかった男性のウエイターがいる。「部屋番号14の者だ」とカギを見せると「お好きな席へどうぞ」と。そしてメニューを見て「Regional Dish 4,000CFA」というものを発見した。ウエイターに「これは何か」とたずねると「今日はティブジェンだよ」と入口の黒板を示した。おお、日替わり定食ってことね。
何と運が良いのだろう、ということで「ティブジェン」を注文した。「飲み物はどうする？」と聞かれるので「オレンジジュース」にした。
待つこと20分、ティブジェンがやってきた。何じゃこの量はと驚いたが、かなり腹が減っているので、問題なかろう。手を合わせて、いただきまーす。
さて、ここで「ティブジェン」の作り方を紹介しておこう。たっぷりのピーナツ油でオクラやトマト、魚などの具を煮込み、取り出す。その残り汁で長粒米を炊くのだ。つまり、ご飯も具も旨味たっぷりというわけである。
ご飯を一口食べると、トマトの風味と魚の出汁の味が広がり、旨いことこの上ない。魚は白身で、キンキのようだ。また、大きく豪快な人参や大根？、キャベツもそれぞれ異なった味である。バクバクと食べていき、完食するつもりだったが、残り20%で急に苦しくなってきた。前にも書いたが、セネガルでは大量の油を使って調理するので、腹にたまるのだ。結構頑張ったが、少し残してしまった。今思うと、もったいないことをしてしまったな。
憧れの？ティブジェン
セネガルの代表料理である「ティブジェン」を食べて、満足である。料金は4,000 CFAフラン、オレンジジュースが1,000CFAフランなので、合計5,000CFAフランを「ツケ」にして、レストランを出た。これで、日本円に換算すると1.000円にもならないのだから、ホテルで食べても全く問題はない。それにしても、ちょっと食べ過ぎた。
３．問題を解決したい
1時間ぐらいゆっくりした後、初日におろし過ぎた現金をドルに戻すことができるかどうか、心配になってきた。また、15時30分過ぎからは太陽が西に傾いてきていて、西日が厳しい。部屋は西向きなので、日没まではかなり暑いんだよね。そこで、散歩を兼ねて、外へ出てみる。
屋外は案外風が涼やかだ。マリのバマコなど、内陸は40℃以上になるのは北緯10度辺りだから当たり前だが、ダカールは海に挟まれた半島にある。それ故に、気温的にも30℃止まりだし、前述のように、海風が気持ち良いのだ。
通りを歩いてタクシーのホーン攻撃をいなし、空港に入る。すると、いつものように違法両替のおっさん達が寄ってくる。「ドルはないかね？」と言われるが「ワッカリマセン」作戦で通過。次は警察官に止められるので、こっちから「ちょっと両替に来た」と申し出る。すると、ジェスチャーで「行け」と示されるので、帽子を取って頭を下げて事無きを得る。
本当は出国のロビーに行くべきだったが、入国後のロビーへ入り、3軒並ぶ両替屋の前にやって来る。今回は真ん中の店を選んで「ドルに替えられないか」とたずねてみた。すると「ダメダメ、外だ、ソト」と言われる始末。ええ、外ってあの「違法両替商」のオッサン達じゃん。そんなもん、軍隊や警察の前で両替できるわけないだろう。こんなアフリカの西の端で警察沙汰になりたくないよ。
仕方なく諦めて、空港を出る。20万CFAフランも使えないし、持ち出しもできないだろう。いったいどうなってしまうのか。しかし、ここで悩んでも仕方ない。ひとまずは保留にして、晩に食べるおやつを買おうと、昨日歩道橋の下に見つけた食料品店へ向かう。
店に入ると、16か17くらいのニイチャンが店番をしている。左手にはコカコーラ製品が入っている縦長の冷蔵庫、正面から右にかけては、腰の高さくらいのガラスケースに外国製（おそらくフランスとか、イタリア製だろう）の綺麗に包装されたお菓子が並んでいる。しかし、この店はとても品揃えが豊富で、ニイチャンの背後は2m以上はあろう棚に、缶詰、コーンフレークなどの食料品だけでなく、洗剤などの雑貨がびっしりと並んでいる。
どれにしようか、ガラスケースを眺めて、ウエハース、バタークッキーを指して「これとこれをくださいな」と言う。「これ？」という仕草でたずねてくるので「そうそう、それ」と言うと、袋に入れてくれて、電卓で数字を打ち込み、それを見せてくれた。締めて1, 000フラン、日本円で200円にもならない。ついでに「写真を撮っていいか」と言うと「OK」ということだった。
店の様子
財布から2,000フラン札を出して待っていると、隣からどでかいオバサンが当方を押しのけるようにやってきて、床に売られているたまねぎをケースの上に置いた。「ヒェ〜」と圧倒されてしまい、思わず逃げ出してしまった。
「びっくりしたなぁ」と心臓バクバクで歩き出す。すると「ヘ〜イ、ジャポーネ、おつりを忘れているぞ」と声がする。ちょうど居合わせた別の客が、わざわざ追いかけてきてくれ、1000フランのおつりを受け取った。「タクシーとかはあんな悪どい商売をするのに、こういうところは律儀なんだなぁ」と変に感心してしまう。
道沿いに歩いていくと、空港のラウンドアバウトに何軒か露店が出ている。「ネスレ」のコーヒースタンドもあるが、セネガル名産のピーナッツを購入することにした。
握りこぶし程度の袋に入ったピーナッツを指して「いくらだ？」とたずねてみた。すると、店の奥にふんぞりかえっているジイサンが「10,000だ」と言う。「おいおい、そんなわけないだろう」と言おうとしたら、おかみさんが「あんた、バカなことを言うんじゃあないわよ」という顔をして、硬貨を何枚か取り出した。「いいわね、これよ、これ」と言って、200フラン硬貨を示している。「そうだろう」と納得して、財布から200フランを取り出した。
ホテルに戻り、部屋の鍵を受け取る時に両替についてたずねてみた。
管理人：現金をおろしすぎてしまった。ドルに戻せるのか
フロントの女性：空港でできるわよ。
管理人：いや、さっき空港の両替所に行ったら「外の両替商に言え」って言われたよ。
フロントの女性：あれは違法だから、ダメよ。おかしいわねぇ。一体いくらあるの？
管理人：・・・20万・・・。
フロントの女性：（そんなにおろしちゃったの？？という顔で）でもね、まだ何日かダカールにいるんだし、いろいろ出かけてお金を使うでしょう。最終日にホテルの支払いを済ませてから、残りを換金すればいいのよ。
管理人：大丈夫かなあ。
フロントの女性：大丈夫よ。
そう言われて納得し、部屋に戻る。そして、エアコンを効かせて「EURO NEWS」などのテレビを観たり、日没をながめたりしてくつろぐ。「この夕日は、アフリカで一番遅い夕日かな」と思うと、改めて自分が地球を半周してきたことを感じる。
お菓子を食べつつ、日記をつけて今日をふり返る。タクシーの交渉、酷い渋滞、路面状況、大気汚染、両替・・・、とても疲れたよ。耐えられず、20時頃にはすっかり眠くなってきた。あまり眠れていないのかもしれないと思い、今日に耳栓をして床に就く。と言うのも、部屋は2階とは言え、道路に面しているからだ。
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