管理人 海外へ行く
〜セネガル編〜
街の大渋滞
第4日目 （3月27日 その2）
１．高速道路を走って
納得のいかない話だが、ラックローズへ行きたいので渋々35,000フランでやってもらうことにした。
ところで、ラックローズって何だと思われる方。英語表記ならば「The Lake of Rose」ということで「バラ色湖」という湖だ。ここは光の当たり具合によって、湖面が鮮やかなピンク色見えるという場所だ。また、この湖は海岸沿いにあり、かの有名な「パリ-ダカールラリー」のゴール地点でもあったのだ。そもそも、ダカールに来た理由が「パリダカのダカールってどんな所だろう」という単純な疑問を解くためなのだから、ここは外すことはできない。
さて、今日はホテルで言われた通りに「余計なことはしゃべらない」つもりで、都合の悪いことは「わからないフリ」をしなくてはいけない。もちろん、車内でも黙っておく。
それにしても、ダカールの交通事情は混沌としている。ポルトガルでもそうだったけど「譲り合い」なんて言葉は存在しない。ここではさらに「空いている場所の取り合い」がなされている。つまり、少しでも車間距離があれば、自分が先に行くために突っ込んでくるということだ。最初のうちは「うぁ〜ぁ、ぶつかるぅ〜」と思っていたが、そんなことはなく、際どくすり抜けていく。昔、レースを観ていて、優勝するドライバーはガードレールや縁石スレスレのところを器用に通っていたが、それに負けないぐらい「上手い」運転だ。
道の状況にも慣れてきたので、流れていく景色を車窓から楽しむ。街から出れば渋滞はなくなるのだが、街に入ると途端に流れが悪くなる。これは、前述の「かまぼこ」が設置されていることに加えて、道路に対して車の数が多すぎること、人が縦横無尽に道路を渡っていて速度を上げられないこと、日本では考えられないことだ。
そう考えていると、前方に料金所が見えてきた。お、、高速道路を使ってくれるのか。やるじゃあないか。そう言えば、料金の交渉をしている時に「高速も使うんだぜ」と言っていたな。また、非常に混沌とした状況でも割合と安全に、乗客を気遣った加減速をしていたし、この運転手は案外信用できるかもしれない。
しかし、料金所もグチャグチャで、我々が並んでいる列は一向に進まない。一応ETCらしきものを装備しているのだが、システムがうまく働いていないようだ。ここで運転手がしびれを切らして、バックを始めて隣の列に入っていく。おいおい、本線料金所上での後退って、恐ろしいんだけど。しかし、よくよく周りを見てみると、皆が先を争うように列を並びなおしている。
高速道路に入ると渋滞はなくなり、スイスイと走れるようになった。しかし、一体どれくらいの速度が出ているのかな、えええー、メーターが動いてないじゃあないですか。これでは自分が何�勸榮阿靴燭里�もわからないじゃないか。詐欺だぁーーーーー！！
心の中でそんなことを思っても、もう遅い。料金は、35,000フランで交渉が成立しているのだから。「もう知らんわ」と開き直り、車窓から景色を見る。しかし、ステップが広がるだけで、あまり面白くはない。
２．街を抜けて
どっしりと座って前方を見ていると「Lac Rose」と書かれた案内標識が見えた。あれ、1時間30分はかかると言っていたのだが、まだ40分ぐらいだぞ。随分早いな。
車はインターチェンジで降りて、ラウンドアバウトで左（北）に針路を変えて、茶色い砂の砂漠の道を進んでいく。すると、街に入っていき、再び渋滞だ。後で調べてみると「ニアガ」という名前で、人と車であふれかえている。
I.C．から見た高速道路の様子
この辺りまで来るとだいぶ暑くなってきて、疲れてきた。「おい、まだかよ」と言いたくなったが、運転手の機嫌を損ねるとバスで帰らなくてはならなくなりそうなので、こらえておく。
さて、ニアガの街はとても活気がある。ここも砂漠の中の街だが、沿道には様々な店が出ている。食料品店やレストランはもちろんだが、意外にもバイクや車の修理屋が多く見られる。
街の交差点
（セネガル名物のミニバス「カール・ラピッド」）
人々が車をすり抜けながら歩いていく、いや、車が人をすり抜けながら歩いていくように街を抜ける。おっと、対向車線には古臭い牽引車やトラックが迫ってくるが、運転手はギリギリのところをスイスイと通り抜けていく。何？その間をバイクがすり抜けようとしているジャン。
ボンネット・トラックが来た
「ぶつからないでよ〜」と心で叫んでいるが、運転手はそんなことは知らないだろう。街を過ぎれば、再びステップが広がる道を進んでいく。街中もそうだが、郊外はさらに舗装状態が悪くなり、ドンドンと突き上げられつつ「Lac Rose」を目指す。
３．LAC ROSE到着
そして、ホテルを出て1時間ちょっと過ぎた所で「着いたよ」と運転手が言う。車はバスターミナルである「ガラージュ」の向こうから道路から外れて、右に入っていく。すると、左手に湖が見えた。これが「Lac Rose」だ。
「やっと着いたか」と思っていたら、おっさんがやって来て運転手と何か話した後、助手席に乗り込んでくる。多分地元のガイドなんだろう。あれこれと金を巻き上げようとしているに違いない。そう思って警戒していると、車が止まった。
外へ出ると、後から乗ってきた男が「船に乗って向こうへ行こう」と言う。今思えばそれも良かろうだが、昨日ボラレタのでそんな気になれなかった。「いや、今日は１人で見たいんだ」と言うと、おっさんは「なんだ、そうか」という顔をしてどこかへ行った。
そして、それと入れ替わりに、土産物を頭のカゴに乗せてオバサンがやってきた。「塩はいらんかね。5000フランだよ」と言う。ここは「わからないフリ作戦」で両手のひらを見せて「ワッカリマセン」という仕草をする。もちろん、オバサンはあっさりと引き下がった。
この後、運転手とオバサンが何やら話しているが「・・・アンガリ・・・」と言っていることに気がついた。多分「今日の客は怒っている（angry)だ」と言っていると推測された。
オバサンが離れると、運転手は気を遣ってくれたのか「どうだ、いい眺めだろう？この湖の底には塩が堆積していて、船に乗ってすくっているのさ」と言って、ジェスチャーを交えながらガイドをしてくれる。確かに、風は涼しいし、ほのかにピンク色になった湖は綺麗だ。船にはセネガルの国旗もはためいていて、旅情をそそる。
Lac・Roseに並ぶ船
さらに「でもな、船で働いている人々はセネガル人じゃあないんだ。ガーナとか、ブルキナ・ファゾとか、マリ、ニジェールとかから出稼ぎに来ているんだ。そして、採取した塩はそれらの国々、そしてヨーロッパにも輸出されているんだ」と。
ガイドはさらに続く。湖の向こうは海岸になっていて、パリダカの「アライバンス」だったと。ああ、「ゴール」のことね。もちろん、それを知っててここに来たのだのだよ、ヤマトの諸君。
パリダカと聞いて黙っているわけにはいかず「ミツビシだろ、ニッサンだろ」と切り出すと「オー、ニッサン」と運転手も乗ってくる。そして「ランクル」と言うので「ランクルはトヨタだよ」と返答する。「オー、トヨタ」って知っているのか。「俺はトヨタの仕事をしていたし、トヨタ市の近くに住んでいる」と付け加えた。
そんな話をしながら水際を歩いて、白いものが積み上げられて、いくつもの山になっている場所へやってくる。これが船の上の人が「たけみ」ですくった塩である。こうして積み上げて、乾燥させているそうだ。
全部塩の山
「手に取って見てみろよ、日本のものとは違うと思うぜ」と言うので、手のひらで広げてみる。確かに、かなり荒い粒だ。また「なめてみろ」と言われ、その通りにしてみる。んー、なかなかマイルドな味だ。料理に使えば良い味が出るだろう。
さらに歩いていくと、袋がたくさん並んでいる。それには「SEL」と書かれているが「SALT」のことだろう。発音は「サル」だそうだ。「どうだ、すごい量だろう」と運転手は自慢げに言っている。確かに、岸はずーっと向こうまで続いているのだが、そこがすべて白く見える程だ。「1枚写してやるよ」と運転手はカメラを持って、管理人を塩袋の前でシャッターを押してくれる。
塩の袋が並ぶ前で
ところで、右手にはバンガローが並んでいる。これは宿泊施設で、ヨーロッパ人がたくさん来るそうだ。また、時々荷台に屋根と長椅子を取り付けたトラックが通り過ぎる。「ツーリズムの車で、道は悪いし、団体でなかったらメチャクチャ高いし、時間もかなりかかるんだぜ」と。いやいや、あんたのタクシー35,000フランも高いだろうし、さっきのボートも高いんだろうよ。
さらに向こうには、塩の袋をトレーラーの荷台に積んでいる人々が見える。「あれはマリとか、ニジェールとかに行くんだよ」と運転手が言う。因みに、隣国のマリでも、到着には２日か３日はかかるということだった。おいおい、あんな荷台がしなる程に過積載で大丈夫なのか？？？一袋が25�圓筏�載があるが、それを300か400ぐらいは積んでいるようだ。
塩の山とトラック
ほのかにピンク色になった湖面、その向こうにはパリダカのゴールになった海岸。山のように積みあがった塩、アフリカのそのまた西の端に来て見るものは、全てが目新しいものだ。今日は割合と「合法的な」観光を楽しめているので、とても良い気分だ。
確かに、ピンク色
（この向こう岸に「パリダカ」のゴールとなった海岸がある）
13時頃まで湖と塩を見た後、運転手が「ちょっと反対側の岸へ行ってみよう」と言い出した。「35,000フランだろうな？」と聞き返すと「もちろんだ、ノープロブレム」と言う。本当はあまり金のことばかり言いたくもないが、何かあってから「払え」と言われるのも嫌だ。
車に乗って、湖岸にあるちょっとした街を通る。すると、客引きがワーッと集まってくる。これには現地人の運転手ですら圧倒されていて、また呆れている。そりゃ、俺みたいな気の弱い日本人ならば、ひとたまりもなかろう。
「ここはリゾート地で、ホテルが何軒かあって、店も出ているんだ」と解説をしてくれ、何とか湖岸の道へ抜け出せた。右手には、今歩いてきた岸が見える。
すると、ラクダが何頭か繋がれている所へやってくる。運転手はそこの人に呼び止められて、何か話しているが、当方が「ケチ」な日本人だとわかっているようで、あまり相手にはしていなかった。たぶん「あいつはラクダには乗らないよ」って言っていたんだろう。今思えば、ラクダに揺られて、パリダカの海岸へ行ってみるのも悪くなかっただろう。因みにだが、ラクダは「キャメル」だが、フランス語では「シャメル」と発音するようだ。
湖のほとりにラクダ
少し行って「この辺で帰るとしよう」と言うので、「わかったよ」と了解して引き返す。先程の「シャメル」を見ながら舗装路に出て、来た道を進んでいく。
対岸は砂漠