管理人 海外へ行く
〜セネガル編〜
突起状雲の上を飛行中
第10日目（4月2日）
１．南回りで香港へ
エチオピア時間の朝6時ごろに、朝飯の匂いで目が覚める。6時間ぐらいは眠れたので、まあ良いとしよう。それはそうと、朝飯はなんだろうか。ビジネスクラスの配膳が終わって、エコノミー席の方へ乗務員がやってくる。 今回も選択無しで、あんかけラーメンのようなものが出される。あとは、果物やマフィン、丸パンなどである。朝から結構重たいものであるが、そこは旅の楽しみなので大して気にならない。もちろん、すべて食べて完食である。 機内で出された朝食 食事後はモニターで現在位置を「リクエスト・ポジション」である。ちょうどインドの空域を離脱して、バングレディシュからカンボジア辺りを飛行している。関係無いが先日、友人がインドシナ半島をバス横断したそうだ。特筆すべきは、ヴェトナムとカンボジアの国境付近がスリリングであったと聞いた。帰国後に「俺にはできんなあ」と話したら、彼は「いやあ、アフリカなんて行けませんよ」と返されてしまった。人のことは言えないようだ。 インドシナ半島に差し掛かる 窓の光の透過率を変えようとスイッチを操作するが、集中管理されているようで、変更ができなかった。仕方ないので、そのまま飛行中の翼を写真に収める。このB787型機は、重量ベースで考えると、50％が炭素繊維強化樹脂、要するにプラスチックでできている。翼も例外ではない上に、製造は日本の三菱重工業が請け負っている。しかも、当方が住む名古屋地区の工場で生産されているのだ。そんなことを思いながら、複雑に捻りが加えられ、離陸と共に反り上がった、いかにも効率の良さそうな形状に見入ってしまう。 細長く複雑な形状を成すB787の翼 しかし、それもあと数時間で終わりなのだ。少々さびしく思っていると、びっしりと広がっていた雲が徐々に晴れてくる。そして、中国の陸地が見えてきて、途中経由地の香港が近くなってくる。 ２．香港へ着陸 途中でマカオの上空を通過し、どんどんと高度が下りてくる。ボーっと外を眺めていると、長ーい橋が見えてきて、R/W07Lに着陸した。時刻はエチオピア時間だと8時26分だが、香港時間では13時26分だ。ここで日本との時差は1時間となり、アジアに戻ってきたと実感する。 幸いなことに、通路側に座っていたドでかい黒人のおばちゃん、隣の中国人は降機していった。やれやれ、これで心おきなくトイレに行けるというものだ。どうせなら、成田まで誰も乗ってこなければいいなと思いつつ、往路と同じように席番号が書かれたシールを貼ってもらい、離陸を待つ。 荷物扱いとなる管理人 機内には清掃員が入ってくるが、あまり丁寧な作業ではない。けっこうシートには細かいゴミが残っているが、その辺りは日本の航空会社ではないのでご愛嬌というところだろう。 窓の外ではキャセイ・パシフィックのケータリング会社のトラックがやって来て、荷物を積み込んでいる。恐らく、成田往復分の機内食を積んでいるのだろう。ところで、キャセイ社は日本航空と同じ「One World」のグループで、エチオピアはANAと同じ「Star Alliance」のグループである。系列が違うのに、こういうところでは協業しているのは、何か違和感がある。 さて、香港からの乗客が乗ってくるが、隣には日本人の家族が座る。今日は4月2日なので、春休みの終盤だ。家族で香港旅行とは、何とも羨ましい話だ。「ご家族で旅行とは良いですね」と話すと「家族サービスですよ」という返事だった。お父さんにすれば「お前は1人旅でダカールか、いいなぁ」というところかもしれない。 それにしても、香港の空港はでかいなぁ。管制塔は高いし、ターミナルもとても広い印象だ。また、ここはキャセイ・パシフィックのハブ空港なので、周りは同社の機体ばかりだ。また、系列のキャセイ・ドラゴンもよく見られる。 香港国際空港の管制塔 ３．成田へ向けて 1時間30分程の滞在の後、ドアが閉まり移動が始まる。いよいよ日本までの最終レグである。帰国後に地図を見て調べたのだが、どうやら当機は空港の東端のスポットに入っていたようで、R/W07Rに沿って進んでいく。途中の整備地区では、UPSやキャセイ・カーゴのジャンボ機、香港・エクスプレスの機体などがよく見える。そして、比較的静かなエンジン音の割には強力な加速でR/W07Rから離陸していく。 眼下には高層ビルがたくさん見えて、いかにも「賑わってます」という雰囲気が機内まで伝わってくるようだ。「時間ができたら、香港に来るのも悪くなさそうだ」とそれらビル群に再会を誓い、機はぐんぐんと上昇していく 香港を眼下に見て離陸・上昇中 香港を飛び立ったので、あとは成田空港まで4時間程度である。アフリカの西の端にいたせいか、ここまでくれば帰ってきたも同然という気持ちになってしまう。しかし、まだ3,000�卍�度の距離があるので、飛行機の旅を楽しむとしよう。 離陸から30分も過ぎれば、機は40,000ft辺りで水平飛行に移る。この辺りではジェット気流の後押しもあるのか、対地速度は時速1,000�劼魃曚┐討い襦Ａ芦鵑離櫂襯肇�ルの時もそうだったが、帰りの東向きの方が飛行時間が短くなるのだ。 最初は海しか見えないが、天気も良いので、台湾上空にさしかかると、地上の景色もよく見える。モニターによれば、台湾南部上空を飛んでいるようだ。その台湾であるが、内陸は結構な山がそびえ立っていて、海と山とが同居している、日本に比較的近い地形をしているようだ。 台湾の急峻な山々を飛び越えて 順調に飛行を続けて、日本の領海に入った頃に最後の機内食がやってくる。カンボジア辺りを飛行していた早朝に食べて以来なので、マチカネタンホイザである。今回は鶏肉のパスタであり、もちろん味もイケる。 この旅最後の機内食 複雑な形状の雲が並ぶ、ちょっと芸術的な眺めを楽しみつつ、食事をする。また、九州南部を横切りる頃には、陽も傾いてきて、空もオレンジ色になってきた。旅をしていると、この時間帯に一番旅情を感じることができる。影が長くなり、空の色が変わるというのは、今日が無事に終わるという象徴である。なぜなら、無事で、心穏やかでなければ、この情景を楽しむことはできないからだ。 あっという間に夕暮れ 外を眺めていると、オレンジ色はさらに濃くなり、やがて暗闇に飲み込まれてしまう。また、明日お会いしましょうと、太陽も水平線のかなたに隠れてしまった。 18時30分頃には名古屋の沖合を通過していくのだが、ここで名古屋にダイバートしてくれないかと思うが、そんな簡単に行くはずもない。それよりも、今日乗る予定だったANA399便が、そろそろ出発時刻だ。ひょっとしたら、放送で「搭乗予定のOOさん、XX番ゲートまでお急ぎください」とか呼ばれているかもね。 ET672便のET-ARF機は、いよいよ房総半島の沖合いで、北向きに針路を変える。残念だが、高度をぐんぐんと落としていて、成田空港へ着陸する準備が着々と整いつつあるようだ。ああ、俺の旅も終わってしまうのか。アフリカを出る時は「やっと帰れる」と思ったが、旅の終わりはやはり物悲しい。 おっと、今日は南風のようで、成田は北からの進入になるようだ。機は空港を一旦通り過ぎて左旋回し、R/W16Rに19時45分頃着陸してスポットに入る。周りの人達は急いで降機していくが、当方はゆっくりと余韻を楽しみ、多くの人が降りた後に重い腰を上げた。ここまで俺を運んでくれた、B787-8、素晴らしい飛行機だったよ。ありがとう。 ４．着陸したけど・・・ さて、9日ぶりに日本に帰ってきたので、日本語の「おかえりなさい」などの看板を見ると、とてもうれしい。何だかんだ言っても、俺は日本人なんだよな。 成田空港に到着 さて、預けておいたスーツケースを拾わなくてはならないので、「ET672」の表示があるターンテーブルの前で待つ。続々と荷物が出てくるのだが、当方の蛍光イエローのバンドを巻いたスーツケースが出てこない。「まあ、焦ることもないさ」と思っていたら、本当に出てこない。ウソ？？何で？？？ 結局、吐き出し口から荷物が出てこなくなるまで、目を皿のようにして見ていたのだが、やはり当方のものがない。これはもしかして「ロストバゲッジ」というやつか。おいおい、勘弁してよ。仕方ないので、近くにいるANAの係員にその旨を伝える。ここは日本語で通じるのは精神的な負担は軽いが、内容としてはかなり重い。 係り員のネエチャンは、無線で荷物の特徴を伝えたり、コンテナに残っていないかなどをたずねている。やっぱり「ない」ようだ。おいおい、ということは、日本円の入った財布とか、そういうものは全部手元に届かないというわけか。勘弁してよ。 結局乗ってきた飛行機には、当方のスーツケースが同乗していなかったようだ。いったいどこで迷子になったのだろうか、ひょっとしてアディスで取られちゃったとか？？？あーー、何てこった。 悪い予感がするが、係員に促されて紛失の手続きをする。既定の書類に記入していくのだが、さすがはANAの職員であり、対応は丁寧である。しかし、荷物がないということは、変わりのない事実だ。 ロストバゲッジの手続きは済んだが、今日は荷物が届かない。ひとまずは、セキュリティエリア外に出ようと係員の指示に従って、リュックと酒の瓶を検査してもらい、入国のスタンプが押されれば、帰国となる。 第1ターミナルの南ウイング入国エリアに出てきた時は、既に21時を回っている。おっと、まずは日本円を手に入れないといけない。手持ちの現金は52ドルあるので、これを京成銀行の両替カウンターで円に交換する。 ひとまず、5,600円になったので、これを持って上の階に上がる。食事をしようと思うのだが、大部分の店が閉まっている？？何でだろうかと思うが、地元との話し合いにより、成田空港は23時頃までしか旅客便はないのだ。 ５．ホテルへ 仕方ないので、予約しておいた「スカイコート成田」へ行ってから、何らかの方法を探ることにしよう。再び1階の到着ロビーへ下りて、ホテルのバスが来る辺りで待つ。同ホテルは30分に1回迎えが来てくれるので、次は22時30分時だろう。 果たして、その通りにマイクロバスがやってきて、ホテルまで乗せてくれる。今回は当方だけが乗車したので、運転手さんに店がないかたずねてみる。すると「コンビニがあるよ」と教えてくれた。疲れているのでちゃんとしたものを食べたいが、この際は仕方なかろう。 20分ぐらいで、およそ空港の喧騒とは関係が無さそうなホテルに到着する。1日遅れでチェックインすると、フロントの男性は「お疲れ様でしたね」と丁寧に対応してくれる。また「ご友人の方から電話が入ってます」と、教えてくれる。そりゃそうだ、エチオピアで1日足止めを食らったので、予定していた日には帰国できなかったのだ。中には心配する人もいるだろう。 この後、件のコンビニに行って、サンドイッチやドーナツ、お茶などを購入して、ホテルに戻る。時刻は23時30分を過ぎている。やれやれと部屋に戻り、友人やオヤジに電話したり、クレジットカードや保険会社にも連絡をしておく。 保険会社の話では、荷物に関して10万円まで中身が保障されること、また航空券に関しても、2万円までは保険金が下りるそうだ。それならば、成田-名古屋間の航空運賃はほぼまかなえるので、嬉しい話だ。 やれやれ、何かと忙しい日だったが、何とか終了して25時頃には就寝となった。
