管理人 海外へ行く

~オーストラリア編~

2017年11月13日~2017年11月21日

出発前の管理人

0.近況報告

2017年6月、1年半という長く苦しい失業期間を経て、近所の福祉施設に事務員として就職した。奇しくも、友人のひとりが「決まる時はあっけなく決まるからね」といつか言っていたが、全くその通りとなった。通勤時間は歩いて10分、収入面でも前職と変わらない、申し分ない条件だった。しかし、いざ入職してみると、内部はゴタゴタ、ドロドロであった。中でも驚いたのは、経営者と従業員の激しい対立だった。

これに気付いた時点でここは辞めるべきだったかもしれないが、前述のように長い失業期間を経験した後なので、なんとしても続けたいと思っていたのだ。今思うと、この判断が誤りであった。もっとも、そんなことを今さら悔やんでも始まらない。

最初こそはにこやかに迎えられたのだが、徐々に経営者からの暴言が心に刺さるようになってきた。それでも「鈍感力」という言葉を信じて、やり過ごしながら仕事を続けていた。しかし遂には「お前は必要ない」という言葉まで飛び出すようになる。いったい何のことなのか、当方には全く身に覚えはないのだが経営者には逆らえない。それに対して、従業員代表も擁護はしてくれない。彼女は対立の筆頭者と言えども、やはり経営者に雇われているのだ。

ここには記せないようなことも言われて、就寝時に天井が回るようなめまいも発症した。「これは困ったな」と感じて、近くの労働基準監督署に相談してみた。すると「それはいわゆるパワハラですね」と。そうだろう、やっぱりおかしいよなぁ。ここで張りつめていた糸は切れてしまった。

監督署の助けを得て何とか会社都合ということで退職することはできたが、トホホの無職に復帰である。笑ってる読者の皆さん、笑いごとではありません。この先の生活をどうすればよいのでしょうか。ここへ来て全く予想外の展開である。

本来ならば旅行に行っている場合ではないのだが、とても就職活動に入る気にはなれない。そこで、年末に予約していたこの旅行を前倒して出かけることにした。全くもってバカなことをしているのだが、当方は本当のバカなので仕方がない。

1.準備

さて、傷心の状態ではあるが準備を進めていく。今回の目的地はオーストラリア南部、ヴィクトリア州の「メルボルン」である。もちろん、初めての南半球であり、初めてのオーストラリア大陸である。ここへ行くには飛行機に乗って行けばよいのだが、どのルート、航空会社を選ぶかによって値段が大きく変わる。いつものように、ネット旅行社の中から「DeNA」で売り出されているものを購入した。

そして、もう一つ大事なことは査証を取ることだ。前回のセネガル、その前のポルトガルでは入国時の査証提示はなかったのだが、意外なことにオーストラリアではそれを求められるのだ。ただ、これはとても簡単なことであり、パソコン上で申請してクレジットカードで手数料を支払うことができる。今回は「テレキュート」に依頼して、1,260円の料金を支払ったと補記しておこう。因みに、オーストラリアの公的なサイトからだと20豪ドルかかるようだ。

また、いつものように「地球の歩き方」を購入して観光ポイントを予習しておく。この本が刊行されている国は情報が集めやすいので、とても楽だ。セネガルの時は海外のガイドブックである「LONLEY PLANET」しかなかったので、結構苦労をした。それにしてもメルボルンは見どころが多すぎる。もちろん、全部回ることはできないので、いつも通りに気の向くままに歩いていくことにしよう。

あと、スーツケースや機内で使うUの字枕などは既に購入済みなので、特別に用意するものはなかった。

こうして、今回も鬱々としたまま日々を過ごして、出発日である11月13日の前日に圧縮袋に着替えを詰めて、当日を迎えることとなる。

第1日目(11月13日)

1.出発

今回も空港に近い実家に前泊して当日を迎えた。相変わらず心が痛いのだが、今日からしばらくは旅のこと以外は何も考えないで行こうではないか。朝は6時30分に起床して準備を整えるが、本当は6時に起きるつもりだった。しかし、夜中に目が覚めてしまい、そこから寝付けなくなってしまった。そして、再び浅い眠りに入り、目が覚めるとこの時刻だったというわけだ。ただ、旅にでるということで気分が高まっており、目覚め自体は良かったと補記しておこう。

ゴソゴソしていると、オヤジも起きてきた。そして、最寄りの駅まで送ってもらう。オヤジは仕事を辞めた事には触れずに「楽しんでこい」と励ましてくれる。こんなデキが悪く、ダラダラと学生を続けて金を使わせたダメ息子にも優しい。最近はオヤジが見た目には小さく見えるのだが、その心は以前にも増して大きく思える。50年も同じ会社に在籍して定年まで勤めあげ、家も建て直して、最近は義母の分とまとめて新車を2台購入したようだ。オヤジは人間力、経済力、あらゆる面において管理人の師である。

6時45分に駅に到着すると、電車がホームに滑り込んでくる。運が良いなと思い、こいつに飛び乗って空港へ向けて走り出す。周囲には仕事の出張へ行くと思われる人々がおり、当方は大して働いていないのに遊んでいてよいものだろうかと自問する。いや、今日からしばらくはせっかくのオーストラリア旅行なので、そのことは言うまい。車窓に流れる景色を眺めつつ、セントレアこと、中部国際空港には7時30分前に到着だ。

今日は9時40分出発のキャセイパシフィック533便に搭乗予定なので、まだまだ時間がある。そこで、同社のチェックインカウンターDの位置だけを確認して、中央コンコースにあるフードコートへ向かう。ちょっ寝坊してしまったので、まだ朝飯を食べていなかったのだよ、ヤマトの諸君。時刻は7時40分前と早いが、同じことを考えている人々でなかなかの盛況である。さて、何を食べようかな。朝はあまり食欲がないが、喉が渇いていることが多い。こういう時は汁物がよろしい。そこで「ナポリ・ディア」という店で、マフィンとスープのセットを選択した。朝にトマト味のスープが良く合い、乏しい食欲を掻き立ててくれた。

おしゃれな朝食

腹も満たしたので、気分が良くなった。空港の楽しみと言えばこれに勝るものはなかろうということで、いつものようにスカイデッキへ出て飛行機の見物と洒落込む。あ、ちょうど滑走路端から勢いをつけて加速してくる機が見える。あれはANAの成田行き330便だ。遡ること半年程前に「ダカール」へ行った時に利用した、あの便だ。そうか、あれは当方の誕生日3月24日のことだったのか。今は晩秋の11月13日・・・、月日が経つのはあっという間だ。

感慨にふけりながら、遠くに見えるDHC-8群、本日搭乗予定のB777-200、名古屋に就航したばかりのエア・アジアのA320、そして同じく成田行きのJALのB787など、成田の数には遠く及ばないものの、朝のセントレアは賑やかで、見ていても楽しいものだ。

早朝の賑やかなセントレア
(右端は搭乗予定の機体)

2.搭乗

おっと、時刻が8時を回っている。ちょっと名残惜しいが大いにマニア心を満足させたので、先ほど確認しておいた国際線Dカウンターへ向かう。さて、キャセイパシフィック航空のエコノミークラスのカウンターは既に長蛇の列となっている。これも当然で、前述のように今日は777-200型機で飛ぶのだから、300人近くは同じ機に乗るわけだ。それにしても、上級の席の人は並ばなくてもカウンターへ行き着くのだから、優越感に浸れることだろう。

セントレアの国際線Dカウンター付近にて

前述のように、今回の航空券はポルトガル行きの時に利用した「DeNA」で購入したのだが、往路のものは予約クラスのコードが「L」となっている。これは購入して、E-TICKETを見て初めて気がついたのだが、座席指定が出発の48時間前にならないと行えない種類の券だ。まあ、安い航空券を選んでいるのだから仕方ないのかもしれないが、こういうことは最初に注意喚起してほしいものだ。だって、搭乗中の楽しみと言えば、機内食と景色だからだ。つまり、窓側の席を確保できないということは、楽しみを一つ削がれてしまうことになるのだ。幸いにも、2日前の土曜日の午前中に自宅パソコンからチェックインし、主翼後方付け根付近の窓側席を確保できたので、ヨシとしよう。

30分ぐらい待って順番が回ってきた。スーツケースを預けると共に、航空券を発券してもらう。一応自分のパソコンから印刷ができ、持参しているのだが、これは使わなかった。やはり、厚い紙で印刷された券の方が記念になるので、この方が好ましい。

この後、保安検査を受けるのだが、ちょっと海外旅行も慣れてきてうっかりしていたのだろう。ベルトを外すのを忘れていたので、金属探知機に引っかかる。ここで係員からボディチェックを受けるのだが、大学の時に同じクラスにいた「アンマキ」さんが当時の名古屋空港で、ボディチェックのアルバイトをしていたと話していたことを思い出す。

「ああ、こんなことをしていたのか。彼女は元気かな」と思い、ベルトを外して改めて探知機を通る。すると、今度は機内持ち込みのバックパックが、X線検査で引っかかる。どうやら、虫よけのスプレーが原因のようだ。しかし、これについては「医薬品」と記載があるので、持ち込みは可能であったと補記しておこう。

検査が終われば、次は出国審査である。こいつはパスポートと顔写真を確認したのみで、あっさり通過。気持ち良く出発ゲート17番へ向かうのだが、その間には免税店街がある。今までは成田空港で出国していたので、セントレアの免税店は初めて見た。もちろん、成田の規模にはかなわないが、結構な充実ぶりだ。ただ、これから出かけるので土産を買うことはないが、少し見て回る程度にする。それにしても、何で北海道名物の「白い恋人」や、東京の「ひよこ」やら「東京バナナ」があるのか不思議だが、日本だから良いのか。

旅の気分も盛り上がってきました

17番ゲートへ到着すると、先ほど見たB777-200が出発の準備中である。近くで見ると、ちょっと汚れていると感じる。ありゃ、こいつはER型ではない、基本型の-200型である。ということは、初期ロットでの製造で、だいぶ古いのだろうか。これについては、帰宅後に調べてみたところ、登録記号はB-HNB機はB777としては18番目に製造された機体であることが判明した。また、就航は1997年8月であり、これは当方が学生だった20年前であったと補記しておこう。

香港まで頼むよ

こうして、9時20分頃には搭乗の列に並び、定刻の30分前に前述の55Kの席に着いた。ところで、キャセイパシフィック航空は香港の会社であり、前から搭乗してみたいと思っていた会社だ。その期待通り、飛行機は古いものの、機内は清掃も行き届いており、伝統の赤いジャケットを着用したCAさん達はキビキビと仕事をしている。ターキッシュやエチオピアに比べれば、かなり仕事熱心という印象を受ける。また、見た目にも魅惑的な方々である。

機内の様子

座席の方も満足であり、古いながらも個人モニターが装備されている。もちろん、窓にひびが入って視界が悪いこともなく、ダカールへ行った時とは大違いである。

いつもの指定席に落ち着く

3.離陸

大いに喜んでいると、定刻から10分程度遅れの9時50分頃にドアが閉まり、移動が始まる。同時にエンジンが始動し、いよいよ出発という気持ちが盛り上がってくる。ただ、ちょっと飛行機が古いせいか、エンジン音がうるさいので、安全デモ映像の音声があまり聞こえなかった。ここは、字幕で何とか内容を確認する。

走行していると誘導路から滑走路に入る。通常ならばここで一度停止するのだが、今回は停止しないでそのまま離陸滑走に入った。いわゆる「ローリング・テイクオフ」と言うやつだ。因みに、初めての飛行機搭乗だったポルトガル行きの時もこの方式で、窓から外を見ていたら首を捻りそうになった。ただ、今回は慣れてきたのか、機体が古いからだろうか、そこまでの加速感はあまり味わうことができなかった。

いや、もともとB777はそれ程強烈な加速感はないのだが、いつの間にか速度が出ているというタイプの飛行機だと記憶しており、今回はそれを追認した形となった。窓の景色は流れ、スカイデッキが後方に行ったと思う頃、離陸決心速度から離陸速度に到達したようだ。機首が上がり翼をしならせて軽々と離陸していく。この瞬間は、旅の中でも大変気持ちが高揚する時である。

翼よ、あれがセントレアだ

一旦10,000ftぐらいで水平飛行になり、左旋回していく。すると、対岸の四日市、津の辺りが見え、そのまま紀伊半島を横断していく。今日は天気が良いので、コンビナートがはっきりと見えた。モニターの速度計を注視していると、向かい風が150ノット程度吹いているようで、対地速度は700㎞/hにも満たないようだ。窓からは青山高原の風車が見える。ぐんぐんと上昇して38,000ftで水平飛行になる。

遠くに見えるは四日市市

いよいよ機内食かと期待して待つが、しかし、最初はピーナッツと飲み物だけだった。今日は食事は出ないのかと心配するが、室戸岬をかすめて九州を過ぎた頃に、食事の提供も開始された。今回はパスタ、ライスの2種類から選択するようだ。「ようだ」というと違和感があるが、香港のCAさんは英語が得意なので当方のような普通の人では理解が難しいのだろう。

因みに、今回はパスタを選択する。さて、モニターを見ると、燃料を消費して機体重量が軽くなったのだろう、高度は41,000ftになっている。上空12,000mでいただく食事は、やはり格別である。さらに、今回は日本線らしく「そば」があり、また、デザートはアイスクリームで「ハーゲンダッツ」が出る。旨いアイスクリームを久々に食べた。

パスタメニューの機内食

沖縄を過ぎたころには雲が出てきて、景色は見えなくなる。もっとも、海の上は何もないので問題はないのだ。音楽を聴いていたら眠くなってくるので、そのまま目をつむって休むことにする。そして、いつものように揺れで起きると、既に台湾を過ぎて香港まで30分以内の場所まで来ている。もうすぐ着陸だが、空港が渋滞しているようで、沖合で旋回させされているのが、モニターの飛行軌跡で確認できた。

4.香港に着陸

ちょっと寄り道で、香港には現地時間の13時過ぎに到着した。それでも、定刻からは10分ぐらい早い到着なので、全く問題はない。半年ぶりの香港国際空港に降り立ったのだが、その印象はやはり「でかい」。今回は2回目なので、空港ターミナルの構造を覚えてきたので、到着した65番のスポットの位置を地図上で把握することができる。

久しぶりだな、香港国際空港

扉が開くと同時に他の乗客は先を急ぐように降機していくが、当方はそれが過ぎ去ってからゆっくりと席を立った。少し眠ったので頭はすっきりしたし、次のメルボルン行きCX135便は19時05分発である。また、搭乗手続きは済ましてあり、既に航空券も手元にある。一応2時間前までに搭乗口にいるようにしたいが、17時頃までは完全に自由時間だ。だいたい4時間ぐらいあるので、思い切って香港に上陸することにした。

ターミナルを歩いて、まずは次に搭乗のCX135便のゲート番号を確認しようと掲示板を探す。すると、ちょうどキャセイの乗り継ぎカウンターがあったので、ここでたずねてみる。すると男性職員が「まだ時間が早すぎるよ。17時頃には電光掲示されるから、それまで待ってよ」ということだ。ついでに「それまで香港の街へ出ていても大丈夫か」ともきいてみると「もちろん問題ないよ、この前のエレベーターで降りて入国審査へ行ってね」という回答を得た。

空港の長~い廊下

これで勢いに乗れたのだが、香港は何も予習をしてこなかった。そこで、看板と人の流れだけを頼りに入国審査場を目指す。下の階に下りて、地下鉄の駅へ出てくる。え、これに乗るのか??料金は??と思うが、周りの人は金を払わないでさっさと乗っていく。ああ、これは成田のシャトルバスみたいなもので、空港使用料を払っているからタダで乗れるわけね。

地下鉄に乗っていざ、イミグレへ

これに乗って数分、次の駅で降りて3階へ行きイミグレーションに出た。案内係の人がいるので「香港の中心街へ出るにはどうすればよいのか」とたずねてみる。すると、電車の路線図をくれて「香港駅があるのでそこへ行くといいよ」と丁寧に教えてくれる。さすがは観光立国である。そうだ、香港の通貨がないので両替しなくちゃ。こんなこともあろうと、セネガルの闇両替商から得たUSドルを持参しているのだよ、ヤマトの諸君。

このうち100ドルを換金してもらい、714香港ドルを手に入れた。これは、日本円なら10,000円ちょっとで、1香港ドルは18円程度だから計算通りである。また、レシートにサインをするのだが「漢字で書いてよいか」とたずねると「いいよ」ということだ。しかし、その表情からは「こいつは海外旅行の素人だな」という意味合いが読み取れる。全くその通りである。

お金も手に入ったので、次は入国しなくてはならない。周りの人を見ると、何やらハガキ大のカードに記入している。そういえば、機内でこれを配っていたなぁ。これを書いて、入国審査を受けるというわけだな。

項目を確認して、順を追って記入していく。おや、香港での滞在先を書く欄がある。もちろん、そんなものは無いので空欄としているが、これで良いのか。ちょっと戸惑ったが、何か言われたらその訳を説明すればよいだろう。また、記入台の反対側には日本人がいて「これでいいのかなぁ」と日本航空のページのコピーを見て奮闘している。「それで大丈夫だよ」と心の中で言いながら審査の列に並ぶ。

お金も手に入ったので、次は入国しなくてはならない。周りの人を見ると、何やらハガキ大のカードに記入している。そういえば、機内でこれを配っていたなぁ。これを書いて、入国審査を受けるというわけだな。順を追って記入していくが、香港での滞在先を書く欄がある。もちろん、そんなものは無いので空欄としているが、これで良いのか。ちょっと戸惑ったが、何か言われたらその訳を説明すればよいだろう。おや、記入台の反対側には日本人がいて「これでいいのかなぁ」と日本航空のページのコピーを見て奮闘している。それで大丈夫だよ、と心の中で言いながら審査の列に並ぶ。

順番が回ってきて、審査というよりは表情の確認だけであっさりと通過。これで香港に入国だ。ただ、期待していたパスポートへの押印は無く、小さな紙切れを渡されるのみだった。これには「滞在中は常に携帯しておけ」と書いてあるので、スタンプの代わりになるものなんだろう。

5.香港へ入国

香港は国名ではないが、実質1つの国みたいなものなので、入国と言うことにしておこう。さて、街へ出るために電車に乗るので、切符を購入する。先ほどの案内係の女性は「バスもあるよ」と言っていたが、渋滞で時間を気にするのは心臓に悪い。そこで「エアポート・エクスプレス」という高速鉄道を利用することにした。

高速鉄道の切符売り場へ

カウンターで「大人往復」と言うと、何やら早口で言ってくる。何を言っているのかさっぱりわからないので「え?」と言う顔をして聞き直すと、また同様である。どうも「往復で買わない方が安い」と言っているようなので、その旨を聞き返すと「あの日本人に通訳してもらえ」と言う。その日本人だが、その人もよくわかっていないみたいで、明確な回答を得られなかった。

結局215香港ドルで往復切符を購入して、プラットホームに行く。後日調べたことだが、その日のうちに往復する用の切符があることが判明した。これだと、だいたい半額になるようだ。因みに、当方が買った215香港ドル切符は、30日以内有効のものであったと補記しておこう。また、オクトパスカードというものがあり、これは「マナカ」や「スイカ」といったカードと同じ種類のもので、50ドルの保証金があるものの、当日内に空港に戻るならば帰りは無料になるもののようだ。そうなのか。そんなもん知らんわ。というか、英語の能力不足のためにそれがわからなかったのだ。情けない話である。

そんなことも知らないで、喜んで電車に乗る。こいつが至極快適で、滑るように線路を進んでいく。香港は生憎の雨模様であるが、初めて地上から見る香港のアパート群、貨物港、どれをとっても規模がでかい。道路も左側通行であり、日本と同じなので違和感がない。

雨模様の香港市街の様子

今回の旅はオーストラリアがメインだが、前回のセネガルの時に寄港した香港はとても気になっていた。そこで、思い切って入国してみたのだが、上空から見た景色の中に入ってみると、やはり活気があるというか、勢いを感じるというか、まさに国際都市という趣である。

いくつかの駅に停車後、香港駅に到着だ。エスカレーターで地上に出てみると、超が付く高層ビルが見える。案内所でもらった地図を見ると、ここは「金融中心」ということらしい。ナルホド、それでこんなバブルな雰囲気なのか。前述のように外は大雨なので、渡り廊下を伝って向いのビルに行ってみる。踊り場には大きなクリスマスツリーが出ていて、華やかな雰囲気だ。地元の学生らしき男女が揃って写真を撮っている。若いとは素晴らしき事なり、と横目に通り過ぎる。

「金融中心」のビル

ビルの中をウロウロ歩いては、香港の活気を感じて大喜びである。そのせいだろうか、ちょっと腹が減ったので飯を食べてみることにする。ちょうど踊り場付近に、景色が見える高級そうなカフェを発見した。まあ、メニューを見て、高そうならコーヒーのみ、いけそうなら食事も頼むことにしよう。入店すると、ウエイターのおっさんがわざわざ窓側の席を用意してくれたので、お礼を言って席に着く。メニューを見るとコーヒーが50ドル、食事が150ドルの値段がついている。

メチャクチャ高く感じるが、1香港ドルは18円ぐらいなので思った程ではない。安心してよくよく悩んだ末、食事に「コンプレックス・ヌードル」を、そして食後のコーヒーも注文する。メニューには「食べにくいけど、その価値あり」と書かれているので、試してみることにしたのだ。

「コンプレックス・ヌードル」がやってくる。辛めのニンニクの効いた肉たれとレタス丸々1個、そして春巻きのような皮がセットになている。肉を巻いて、さらにレタスでそれを巻いて、いただきます。なかなかイケルじゃあないですか。バクバクと一気に食べてしまい、苦味重視で調合されたコーヒーを飲んで一息つく。

コンプレックス・ヌードル

窓から見える街の様子を眺めて、改めて香港にいることを実感する。超高層ビルがいくつも建ち、観覧車が見える。道路は大渋滞で車の流れは悪いが、セネガルのような危険な運転する者はいないようだ。国としての秩序は、高いレベルで保たれているように見える。

大渋滞の道路

そんな感じで国際都市「香港」を感じていたら、時刻は既に16時を回っている。ええ、もうそんな時刻なのかと残念に思うが、17時頃には空港に帰りたいので、そろそろ駅へ戻るとする。

6.とんぼ返りで空港へ

「金融中心」地区の回廊を一回りして、再び駅に戻る。電車は頻繁に運行されており、ちょうどやって来た16時30分頃のものに乗る。往路と同じく、復路も高速で滑るような乗り心地の電車は超快適である。また、乗客を見ると、国籍も様々で、東南アジア系はもちろん、ヨーロッパ系、インド系、アフリカ系とあらゆる国の人々が一同に会している。遠くに飛行機群が見えてきたので、「機場駅」はもうすぐだ。

駅を降りて、そのままターミナルへ向かう。キャセイパシフィック航空の出発便は第1ターミナルを使用しているので、シャトル電車に乗らなくてもよいらしい。また、既にメルボルンまでの航空券はセントレアで受け取っているので、今回はチェックインは必要ない。

チェックイン・カウンターを横目に、ダイレクト保安検査場である。もちろん、何もやましいものは持っていないので、あっさり通過して出国の審査場へ向かう。この時、入国時に書いたカードと同じようなものを提出しなくてはいけないのだが、それを忘れていたのでケッチンを食らう。素人丸出しで恥ずかしくなってしまうが、旅の恥は何とかということで、カードを書いて改めて審査を受ける。

慌ただしく香港を出国する

電光掲示板でメルボルン行きのCX533便のゲート番号、29を確認して免税店街を歩いていく。それにしても、香港はいかにも「金持ち」が多くいるような雰囲気だ。免税店街もやたらと高そうなものばかりが目立つ。しかし、そういうものにはあまり興味がないので、長~い廊下を歩いていく。

そして、普通の売店に入って商品を見る。この売店は様々なものが売られており、お菓子や飲み物、書籍も豊富に取り揃えてある。ひまつぶしに1冊買おうか、と思って吟味していると「IKIGAI」という題目のものを発見した。著者は脳科学者の「茂木健一郎」であり、興味を引かれたので160香港ドルで購入した。ハードカバーなので、日本円ではちょっと高めの2,000円というところだ。また、喉が渇いたので、ペットボトルの緑茶を14ドルで一緒に購入した。ただ、よく見ていなかったのだが、このお茶には「蜂蜜」が入っているらしく、少々甘かった。甘い緑茶は変ではないが、日本人なら渋い味の方が好みであることは言うまでもなかろう。当方の商品の吟味も同様に「甘かった」というわけだ。

香港国際空港第1ターミナルの様子

一通りの準備は整ったので、29番ゲートへ向かう。駐機されている、メルボルンまで連れて行ってくれる、CX-135便の機体は、エアバス社の最新型機種のA350-900である。機体番号はB-LRGであり、A350としては53番目に製造され、2016年12月に就航した新車である。こちらは荷物を載せたトレイラーや、機内食を搭載しているキャセイパシフィック・ケイタリングのトラックが付いていて、忙しく目下飛行準備中だ。

メルボルンまで飛ぶ、A350-900型機

この旅ではいろいろな楽しみがあるが、この機種に搭乗するのはメインエベントの一つと言える。これで飛行機に乗り遅れることはないので、安心してゲート付近の椅子に座ってメモをつける。しかし、今日は朝早くから空港へ行き、弾丸で香港の街へ出たせいか、かなり疲れてしまった。ちょっと眠くなってしまったので、ウトウトして時を待つ。

優先搭乗の放送で目が覚め、エコノミークラスの列に並ぶ。そして、18時50分頃からエコノミークラスの搭乗が開始されるのだが、ここでも簡単な荷物のチェックを行うようだ。ん??液体の持ち込みがダメなのか??、だって、セキュリティエリアに入った後に買ったお茶なんだから、持ち込みは問題ないはずだよ。「ダメなの??」と職員に聞くと「ダメだ」と容赦なく言われてしまった。仕方ないので、ちょっと口をつけただけのペットボトルをそのままゴミ袋に捨てることとなった。

少々残念な気持ちで搭乗橋を歩いて行くが、機内に入ると再びテンションが上がる。CAさんの案内を受けて、真新しい、新車の匂いが残る機内を進んでいく。キョロキョロして機内を観察すると、シートは3-3-3と9列横並びで、香港まで飛んできたのB777よりも若干大き目と思われる。そして、62Kの席を見つけて早速座る。もちろん、クッションと毛布が装備されているし、シートは幅があり、足もとはエコノミークラスとしては随分と空間がある。余談だが、セネガルまで搭乗した、やはり最新型のエチオピア航空のB787-8はギチギチに詰められている感じがあった。このA350は「エクストラ・ワイドボディ」とサブネームがつけられており、その名に恥じない胴体径があるようだ。

真新しい機内の様子

7.いよいよオーストラリアへ向けて

定刻は19時10分だが、窓から外を見ると結構雨が強く降っている。そのせいだろう、機長から「10分程度遅れます」というアナウンスがある。しかし、いつまでたっても出発する気配がないじゃあないか。そしてまた10分程度が過ぎると、機長から「天候が悪いため、遅れます」と放送がある。これを何回か繰り返し、結局スポットから移動を開始したのは香港時間の20時前だった。つまり40分弱の遅れなのだが、天候が悪い中を無理やり飛ぶよりはずっとマシなので、仕方がなかろう。

豪雨の香港国際機場

この間、個人モニターでメルボルンまでの飛行時間や距離を確認したり、映画や音楽のラインナップを眺める。キャセイのモニターには日本語表記が準備されていて楽ではあるが、ちょっと面白みに欠ける。そこで、敢えて英語表記を選択していく。日本の映画や音楽も割と豊富に用意されているので、楽しめそうだ。

やっと移動が始まったので、モニターを前方カメラの映像に切り替え、滑走路までの道順を確かめたり、窓の外に見える格納庫がいくつか並ぶ整備地区やそこに駐機されている機を見る。その中で、タイのオリエント航空の747が目につく。これは確か、セネガルに行った時にも同じ場所に駐機してあった。後日調べると、この航空会社は古い機体を安く購入して、法的に使えなくなると放置するということを繰り返しているようだ。そして、この機体もそのうちの1つというわけだ。

離陸待ちの機がいくらか待機しているので、滑走路手前でちょっと渋滞している。「まだかな、まだかな」とはやる気持ちで離陸を待っていると、20時30分頃に順番が回ってきて「ヒュィーン、ゴー」という控えめなエンジン音と共に離陸滑走が始まる。さすがは最新の機種なので、香港まで乗ってきた20年落ちの777と比べエンジン音はもちろん、風切音も格段に静かである。また、加速感については強力ではあるが、やはりマイルドな印象を受ける。

独特な形状をした翼端板を装備する主翼をしならせて軽々と離陸すると、明かりが煌々とともされている香港の高層ビル群が流れていく。いよいよこれから南半球へ渡るのかと思うと、興奮を抑えられない。そんな気持ちで香港の夜景を見送った後、改めてモニターに目を向ける。その情報によると、メルボルンまでは所要時間は8時間30分程度ということで、エチオピアやセネガルに比べればかなり近いと思えてしまう。いや、十分に遠いのだが、セネガルが遠すぎるのだ。因みに、香港~アディスが10時間、アディスからマリのバマコ経由、ダカールまでが9時間であったと補記しておこう。

いざ、オーストラリアへ

巡航高度に上昇中であるが、シートベルトのサインが消えておやつと夕食のメニューが配られる。このサービスは「機上のレストラン」という雰囲気を醸し出す、心憎い演出だ。ただ、最初は食事ではなく、おやつである「プレッツエル」が出される。グリコ社の「プリッツ」とは全く異なるものだ。この件について、大学の授業で取り上げられたことがあるのだが、これはドイツのお菓子だそうで、管理人の出身の市の市章のような形状をしている。また、大学と言えば授業には出ていたが、ほとんどの時間は遊び呆けていた。だから就職できなくて、こうなっちゃうんだよね。

プレッツエル

ちょっと苦い過去を思い出しつつ、塩味のお菓子を食べる。それはともかく、同時に配られた夕食のメニューを見て「牛肉か鶏肉か、どちらを選ぼうか」と悩んでしまう。うーん、どっちも捨てがたいなぁ。ああそうだ、配布されたオーストラリアの入国カードも記入しなければいけない。結構忙しいですなぁ。ナニナニ、結核にかかっていないか?とか、6日以内に中央アフリカ地域に行っていないか?という質問が並ぶ。オーストラリアは感染症などの菌を入れないように、結構気を遣っているからね。もちろん、答えは「ノー」ですよ。

カードの記入は面倒だ

おやつを食べた後、さっさと入国カードを記入し、個人モニターで、映画「家族はつらいよ」を観ながら過ごす。すると、良いにおいがしてくるので、前方の席から食事が始まったようだ。自分の番になり、CAさんに「ビーフ」と告げると、飲み物もたずねられる。カートには10種類くらい乗せられているが、なぜかトマトジュースが旨そうだったのでこれを選択した。肉はシチューのようなものであり、日本人にも好ましい味であった。また、長距離の飛行なので、ペットボトルの水もついてくる。これは良いサービスであり、ペットボトルを没収された件は帳消しだね。

今夜の機内食

尚、キャセイパシフィック航空の場合、この時同時にコーヒーを頼んでおくとよい。前述のエチオピア航空の場合は、食事のトレーを回収する時にコーヒーかお茶のサービスがあるのだが、今回はこれが無いのだ。昨年のポルトガル記でも登場した「ターキッシュエアラインズ」でもお茶のサービスは別にあるが、キャセイの場合はこれが当てはまらないのだ。ちょっと残念だ。しかし、食後にアイスクリームが出るので、これも帳消しだろう。今回はハーゲンダッツではなく、MOVENPICK社製であったと補記しておく。もちろん、味は〇である。

トレーの回収が終了した時点で、時刻は香港時間の午後10時過ぎである。メルボルンまでは残り7時間程度なので、さっさと寝て体力を温存しておこう。

本日の飛行 2000海里

第2日目(11月14日)へ続く