新機材XLR125Rのステアリングステムベアリング交換他

 

2010年3月13日、20日

 

0.いろいろとありますなぁ

 

今年に入って衝動買いしてしまったXLR125Rであるが、通勤等でKDX125SRと乗り比べ、目下評価中だ。エンジンに関しては、確かに馬力、トルクなどは大きく劣ることは間違いない。しかし、高回転域の伸びは非常に気持ちよく、さすがホンダエンジンというところだ。久々にホンダのバイクを所有しているわけだが、これは良い。先日オイル交換をしてみたのだが、さらに気持ちよく回るようになったし、クラッチの繋がりも良い感じになった。

 

期待は大きい、んが、他に悪いところが多々ある。大きくは2つ。一つ目はハンドルを切ると、ある特定の場所で「カクッ」と止まるようになること。これは、多分、ステムベアリングのレースに打痕がついてしまっているのだろう。交換以外に手はない。

 

そしてもう一つは、脚まわり。フロントフォークはオイル交換した形跡が無いし、リアサスに至っては標準装備品ではないらしく、なんだか車高が低い。スタンドを立てると傾きが少なすぎて、反対側に倒れてしまいそうだ。これは、前オーナーの意向で、「ただのバネみたいなリアサスだったので、代用品を調達した」とのことだ。幸いにもそのバネのようなリアサスを、車体受け取り時に譲り受けているので、今回装着してみることにした。

 

1.ステムベアリング交換準備

 

いろいろと考えた末、ステムベアリングの交換を決意した。そこで部品の調達をするわけだが、10年以上前に兄貴がCBR250RRで世話になっていた、「ホンダテクニカル名古屋」の長久手支店である「ウッディベル長久手」を、当研究所の指定ホンダ店として、お願いすることに。そうと決まれば、まずはパーツカタログとサービスマニュアルの入手から。早速同店に赴いて値段を確認する。サービスマニュアルについては、本当はヤフオクで安価に売られているが、今後の付き合いも考えて、店から買うことに。また、サービスマニュアルは、ヤフオクに手頃なものが無いので、やはり同店でと考えていた。

 

しかし、見積もり額を聞いてオッタマゲタ。パーカタは約5000円、サービスマニュアルは8000円という。サービスマニュアルは暫く必要ないので、まずはパーカタのみを注文し、入手後、ステムベアリング関係の部品を調べて発注した。

 

そして、交換手順と必要な工具について考えてみる。ヘッドパイプに打ち込んであるレースは、マイナスドライバーで叩き出し、旧品を用いて新品を打ち込めばよい。ただ、三つ又についているベアリングレースが問題だ。かなりしっかりと打ち込んであるので、なかなか取り出すことが困難らしいのだ。因みに、VT等の今まで所有したホンダ車のサービスマニュアルでは、「ポンチ当で外す」としか記載が無い。

 

悩んだ挙句、ディスクグラインダー購入に踏み切った。と言っても、このデフレの世の中である。1980円の日曜大工用という都合のよいものが販売されていた。そうそう出番はないので、この程度のものでよいだろう。もう一段階高い、3980円のものと同じ11,000r.p.m.の回転数で回るようだし。あとはタガネやら、大きなマイナスドライバーやら、レース打ち込み用の塩ビパイプ、当て金板も調達しておこう。 

 

2.交換作業開始

 

面倒だなぁと思いつつも、新車の状態に戻さなくてはXLRの評価をできない。また現状はオフ車がKDX、XLRの2台体制と、当方の財政状況には似つかわしくない状況になっている。結局どちらかを売却する必要があるので、そうそうのんびりもできない。

 

そう思いつつ、リアタイヤを持ち上げようと、スイングアームにメンテナンス用スタンドをかけるが・・・。チェーンガードが邪魔でかからない。これを外すことが面倒なので、いきなりエンジン下にジャッキをかけてフロントを持ち上げる。おっと、その前に一通りのボルトとナットを緩めておこう。

 

ここで登場するのが、今回の秘密兵器第一弾。なめたボルトを緩める特殊ソケット12mmだ。内部構造を見ていただければお解かりの通り、通常のコマと違い、緩める時に頭に噛み付くように、細かく螺旋状に溝が切ってある。これは2500円程の高いコマだったが、仕方なく購入した。

 

特殊ソケット

 

スピンナーハンドルに装着し、先日なめてしまった、三叉のフォークを留めるボルトにかけて、緩める。んんん〜、と渾身の力を込めてみると、「ギギギィ〜」という怪しい音と共に回転した。尚、このコマを用いれば丸くなったボルトの頭でも回すことができるそうだ。

 

そもそも、誰がこんなに固く締めたんだ。ボルトが変形して曲がっているじゃあないか。ジュOOモータース、恐るべしだ。このバイク屋はバイク屋ではなく、単なる販売店なので仕方なかろう。最近はバイク屋と販売店、用品店の区別が曖昧になりつつあるが、よくよく考えればすぐに判断可能だ。余程のことがない限りは、用品店や販売店に整備を依頼することは避けたい。

 

こうしてジャッキアップしたら、ライトや配線を分離し、フロントタイヤ、フォークなどを外していく。その後やっと本題のトップブリッジだ。ここはご存知の通り、でかいナットで締められている。こいつについては、12.7sqのコマとハンドルを購入済みなので、新たな出費は無い。力任せに緩めるだけだ。

 

3.いよいよご対面

 

さて、トップブリッジを外したら、ステムを固定している歯車状のナットを緩める。これはフック状のレンチを使用するのだが、マイナスドライバーとハンマーで軽く叩きながら緩めていく。そしてある程度緩んだら、手でに三叉の下を支えてもう片方の手でナットを緩める。決して足の上に落としてはいけない。大怪我をするかもしれないぞ。

 

 

トップブリッジ離脱

 

なんとか問題のベアリングとご対面。やや錆びが出ていて、茶色くなっている。疑念を抱いて、さらにベアリングを精査してみよう。確かに、ベアリングレースには少々打痕がついている。こんなもんでも、ガタを感ずるものなんだな。そりゃそうだ、ブレーキング時には大きく車重がかかるわけだからな。

 

 

レースには錆と打痕あり

 

 

4.さらに関門が

 

作業を続行しよう。上記のように、ベアリングレースは三叉に打ち込まれているので、これを外さなくてはいけない。一応マイナスドライバーで叩き出そうと試みるが、まったく動く気配が無い。潔くあきらめて、近所のホームセンターにディスクグラインダーを購入に出かけ、前述した1980円の安物グラインダーを購入する。日曜大工用なんて記載があるが、これで十分だろう。さらに、叩き出す際に必要なタガネなんかも調達しておく。

 

それにしても、ホームセンターにはいろいろと使えそうなモノが並んでおり、非常に楽しい。実際に手に取って、こうすればこうできるか、これならこうか、次から次へと考えが浮かんでくる。当研究所の財政状況さえ良くなれば、少しずつ資金を設備投資にまわしていきたいものだ。

 

帰宅して、作業を再開する。安物とはいえ立派な電動工具なので、怪我をしないように落ち着いて作業を進めていこう。まずはきちんとウエスを地面に敷いて、三叉が傷まないようにする。さらに、金属を高速で削り取るわけだから、破片が飛んできそうだ。バンダナで鼻と口を覆い、ヘルメットを被っておく。ところで、話は逸れるが、管理人の父方のじいさんは石屋兼鍛冶屋であったそうだ。オヤジの若かりし頃まではフイゴも自宅にあったらしい。得意は灯篭と石のカエルを彫ることであったが、ある日突然製作中のものを叩き壊して「思うように彫れなくなった」と言い放ち、現役を引退したそうだ。因みに最後の仕事は自分の墓石の製作だった。もちろんその墓石は健在である。

 

グラインダーを回して砥石を当てる。火花が飛んでいかにも作業をしてます、という雰囲気だ。なんだかワクワクしてくるが、やはり鍛冶屋の遺伝子が入っているからだろうか。これまた話が逸れるが、オヤジによると、じいさんの食べ物の好みが当方のそれとそっくりらしい。血は争えないというが、全くその通りだ。

 

調子に乗って、三叉本体まで削らないように気をつけないといかん。そう思っていたが、やはりすこしやりすぎてしまった。なかなか外れないなあとガンガンどついていたら、「パキン」と音がしてレースが割れ、やっと外れた。ああ疲れたよ。

 

               

                             安物だがグラインダー登場                                 少しやり過ぎた

 

 

5.組み付け 

 

まだまだ気が抜けない。次はレースの打ち込みだ。ここは塩ビニールの配管を用いて、これまたガンガンとどついて、三叉の底面まで打ち込んでいく。あああああ〜、しまったぁ〜。レースの前にダストシールを入れておくのを忘れた。あとの祭りだ。仕方ないので、今日はここまで。もう一回新品の部品を購入して、やり直しだ。

 

こんな風にして、レースを打ち込む

 

恥ずかしさと情けなさを抱きつつ、上記の研究所指定ホンダ店へ出向き、理由を説明してベアリングを再度注文する。ホンダは昔からパーツ供給がよく、素早い。基本的には午前11時までに注文すれば翌日入荷だそうだ。今はそんなことはないが、カワサキなんて一週間くらいかかっていたかもしれない。

 

新パーツを手に入れて、再びグラインダーでレースを削り取る。今回は2回目なので多少慣れもあり、うまく削れたが、なかなか割れが入らない。結局前回同様、少し削りすぎた頃に「パキン」と割れてくれた。

 

今度は間違えないよと、まずはダストシールを入れて、その上からレースをどついていく。ここは結構力が要るので、憎たらしい奴の名前を叫んで「死ねぇ〜M中」と力を込めていく。この際、塩ビ管の上に当て金をすると均等に力を加えることができる。しかし、偏って叩いたせいか、塩ビ管が割れてしまった。M中パワーは必要無かったらしい。

 

この後はステムにベアリングレースを打ち込んでいく。この際はまず、当て金でステムと面一まで入れて、さらに古いレースを裏返して均等に叩き込む。そして最後にポンチを使って、目一杯まで打ち込まれているかを確認しておこう。

 

こうしてベアリングの床を準備したら、その球列にたっぷりとグリースを塗り込んでいく。塗りすぎかという位で丁度良い。というのも、グリスアップのためだけにまた分解は面倒くさいので、はみ出したら拭きとるくらいの感覚でよい。

 

たっぷりと塗り込む

 

あとは三叉をステムに入れて、歯車ナットを一杯まで締める。その後一旦緩めて、適度な軽さとガタが出ないところを追求して、ナットの締め込みを調整する。まあまあに締めておけば、ガタも出ないし、固くもならないだろう。さらに、トップブリッジを乗せて、でかいナットを締めておく。

 

ここまでくればフォークを組んで、タイヤを装着。配線を元に戻して、ステムベアリング交換完了!もちろん、フォークの締め付けボルトは新品に交換しておいた。

 

6.おまけ

 

ここまでやったなら、ついでにリアサスを元々装着されていたものにしておこう。まずはサイドカウルを取り外して、さらにシートも離脱する。その後、サスのリンクやマウントのボルトを全て緩めておく。この後、ジャッキを後方に設置して、リアタイヤを浮かす。おっと、タイヤも外しておくか。

 

こうして、緩めておいたボルトを抜き取り、リアサスとご対面。ついでにリンクベアリングにグリスをたっぷりと入れておく。

 

リアサス

(上:前オーナーの交換品

       下:もともと装着されていた純正品)

 

おっと、無理やりグリスを塗り込んでいたら、ニードルローラーベアリングが少し崩れてしまった。ここはしっかりと固定されていないのだろうか?

そんな風にちょっとした格闘をしつつ、外したリアサスとオリジナル品を並べて違う箇所を探してみる。

 

・オリジナル装着されているものの方が15mm程全長が長い

・ダンパーの底が違う(純正品:溶接、交換品:かしめキャップ)

・交換品はエアバルブがある

 

どうりで、車高が低いわけだ。しかし、15mm程度でそんなに大きく変わるのかとお思いの方(当方もちょっとびっくり)。変わるんだねぇ。というのも、XLRのリアサスはリンク式のものを採用している。直付けならば単純に15mm車高が下がる(それでも大きい)のだが、リンクを介するということは、その稼動域そのものまで変化する(車高が下がる方向=スイングアームが上方へ上がる)ということになる。実際は30mm以上違うのだろう。

 

そう思いながら、純正品を装着してみると・・・。メチャメチャリアの車高が上がったよ。その祥子、いや証拠に、いままで両足べったりの足つきだったのが、足の裏3分の1程度になったのだ。なるほど、悪路の走破性がイマイチと感じたのはそのせいか。そうなると、純正ショックへの期待は大きい。ちょっとウキウキしながら作業を終えて、試走に出る。

 

なんじゃこりゃ?伸び側の減衰が全く効いていないじゃん。まるっきりのバネ状態で「ポヨンポヨン」いってるよ。これじゃあ話にならない。それにしても酷い。もともと安物でこういう設定なのか、はたまた15年の歳月をかけてこうなったのか。真相は解らないが、新品が5万円近い値段であることを考えると、やはりオーバーホールした方が得策だろう。

 

そういうわけで、TDMで実績のあるババナショックスへの依頼を考えたが、そもそもダンパーの底が溶接密封になっていることが問題だ。この型のものはオーバーホール不可ということだ。まあやれないことはないだろうと、いろいろなショップのページを探ってみた。すると何軒かは対応可能なようだ。後日やってみたい。

 

7.まとめ

 

2週に渡ってXLRの整備をしてきたが、いろいろと面倒なことが発生してくるものだ。この先の機材計画ではXLRをオフロードメイン機材とし、残念ながらKDXは売却することにしようと思っているが、整備計画予算を大幅に超えるようであればこの計画も変更を余儀なくされそうだ。

 

今後の展開は如何に・・・。

 

尚、ベアリング交換により、ステアリング操作感はまるで別物、新車同様に復活した。

 

「あ、この瞬間が整備の効果だね」

 

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