剣山スーパー林道ツーリング

 

2015年 9月19日~9月21日

 

剣山スーパ林道 徳島のヘソにて

9月20日(2日目)

1.起床

 

昨晩は曇り空で星は見えなかったが、今朝は快晴で眩しい朝日が差し込んでくる。しかし、少々疲れていたので、起床は7時とキャンプにしては遅くなった。今日の予定はスーパー林道をガンガン攻めまくりといきたいが、残念なことに、ファガスの森の先で通行止め箇所がある。そこで、美馬市方面へ迂回をして、分断されたスーパー林道を走行することになる。まあ、未達の目標はお得意の「宿題」ということにして、また来れば良いではないか。

 

ひとまずお湯を沸かしてコーヒーを入れて、カロリーメイトの朝食とする。ツーリングではかさばらない、このスタイルが当方のお気に入りである。また、少しでも早く出発できるように、テントのフライシートを裏返して陽に当てておいたので、食事が終わった頃にはすっかりと乾いていた。おかげで撤収は順調に進み、8時50分頃には出発準備が完了した。関係無いが、隣にテントを張っていたライダーは、トップケースとツーリングバッグを2つ載せていた。一体何をそんなに持ってきたのだろうか、と気になってしまった。

 

2.出発

 

昨日下りてきたキャンプ場へつながる急勾配を上り、県道16号線で磁方位270°で走行を開始する。昨日は通行止め箇所の雲早山登山道口の近くまでスーパー林道を走行したので、今日はその日側にある、県道253号線からの入口を目指すことになる。さて、今走行しているこの県道16号線だが、地図で見た通りのウネウネ路である。ただ、SLは軽量コンパクトな車体と、元々200ccで設計された小さめのエンジンで構成されており、こういう舗装されたワインディング路でも軽快な動きを楽しむことができる。

 

また、この県道は1.5車線の細い道なので、速度を出すことはできない。細かな加減速が得意なSLは、水を得た魚のようにスイスイとコーナーをクリアしていく。だいたいこの手のオフ車は、真に多目的利用が可能なのであるのだが、改めてそのことを知ることになった。

 

時折現れる4輪車をかわしつつ、小一時間かけて国道193号線にぶつかり、今度は360°に変針してスーパー林道の中間起点へ急ぐ。さて、この道の際には川が流れているのだが、ここも巨大な岩がゴロゴロしている。

 

またもや岩がゴロゴロ

 

これらを見ると、ここがいかに山奥かを思い知らされる。また、切り立った場所には、小さな滝も数多く見られた。その中に、日本の滝100選にも選ばれている「大釜の滝」を見つけた。なんだか凄そうなので、寄っていくことにしよう。

 

3.滝と言えば

 

道の脇にはNC700Xが止まっているので、先客がいるようだ。滝への展望台へ階段を下りていくと、途中でライダーとすれ違ったので会釈をする。この人がNCのライダーだろう。そして滝が見える展望台に到着したのだが、おおお、その名の通り大きな釜のような滝壺が見えた。滝の落差もなかなか高く、20メートルということだ。口を開けて暫し見入ってしまったのだが、他に誰もいなかったので十分に堪能できた。関係無いが、ジムのバイトの娘が「日本の滝100選」に興味があるらしいので、帰宅したら話してみよう。

 

大釜の滝

 

またまた関係ないが、滝と言えば長野県の「雷滝」であろう。今を遡ること6年前、ドルーと行ったあの場所である。だいたい「雷滝へ行くぞ・・・、お前行き方知っとるか」と言われて先導することとなり、目的地では「これを見せたかったんだて」ってそんなのアリか。この件については、友人のR1-Z氏より「滝に罪はないよ」という名言も生まれた、と補記しておこう。

 

あれから随分と時間が経ってしまったなぁ、そう思いながらエンジンを始動して先へ進んでいく。国道193号線は知らないうちに、県道253号線に名称が変更になっていた。そしてしばらく行くと、スーパー林道の入口を示す看板を見つけた。

 

ファガスの森方面への入口

 

まあ、観光林道なので気楽に行きましょうと進入すると、拳大程度の石がゴロゴロとしている。おっとっと、これは気合いを入れていかないとコケてしまうぞ。そう思いながら石たちを乗り越えていくと、前方に大釜の滝で見たNC700Xを発見した。ええー、そんなんで走れるのか。失礼ながら、オンロード車で大丈夫かと心配してしまったが、こちらも余裕が無いので人のことは言えない。

 

手を挙げてNCを追い越して、先へ進んでいく。ファガスの森までは、およそ7km、通行止めの箇所まではおよそ8kmということなので、それ程時間はかからないだろう。それよりも今日は最高に良い天気で、この時期としては暑いくらい。日差しも眩しい。また、景色も良いのだが、路面状況が厳しいので(操縦技術が未熟なので)それどころではない。マシンとの一体感を逃さないように、コーナーを抜けていく。

 

しばらく走ると路面も落ち着いてきたし、未舗装路にも慣れてきた。そうなると、ちょっと遊びたくなるものだ。コーナーリング中にアクセルを大きめに開けてみて、パワースライドしてみたり、入口でリアブレーキを強めにかけて、タイヤをロックさせて車体の向きを変えてみる。もちろん、思いっきり前乗りにして、フロントタイヤが暴れるのを抑えていなければならい。

 

走行を楽しんでいると、ファガスの森に到着した。ひとまず通行止めの場所まで行きたいので、そのまま通過して先へ向かう。1kmちょっと行った所で通行止めとなったので、徳島のヘソまで戻って休息を取る。やれやれ、夢中になって走ったので、えらく疲れてしまった。水を飲みつつ、少しひんやりした風を感じて景色を眺める。それもそのはず、この区間はスーパー林道でも一番高度が高い場所だ。当然、景色もすごく良く、空気までもがもうまいく感じて気分が良い。

 

徳島のヘソから南東方面を望む

 

ひとしきり楽しんだので、通行止め区間を迂回して林道を先へ進むことにする。因みに、通行止めの区間が通れるならば、6km程のことなのだが、迂回すると40km程度になる模様だ。ここは痛いところだが、通れないものは仕方がない。

 

来た道を戻り、ファガスの森でもう一度休息し、トイレを済ませる。ついでにこの施設をちょっと覗いてみたら、前の広場はキャンプ場で、食事もできるようだ。また、掲示板には、訪れたライダー達のメッセージボードもある。それらに記載してある、彼ら、彼女らの出身地を見ると、実に様々であったと補記しておこう。やはり、ここはオフ車ライダーの聖地なんだね。

 

4.次の区間へ

 

十分に休息したので、再出発する。おや、入口で追い越したNC700Xがやってくるではないか。よく無事にここまで来れたなぁ。かなり時間が経っているので、とっくに引き返したと思っていたよ。さらに驚いたのは、先へ進んでいったことだ。因みに彼の運転速度は、当方の1/4ぐらいだったと記憶している。コケないように、気をつけてね。

 

来た道を引き返し、再び県道253号線へ出て磁方位360°で進んでいく。この辺はかなり山深い所で、1.5車線のウネウネ道を慎重かつ大胆に進んで行く。すると「岳人の森」という施設が見えた。山岳家向けの雑誌で「岳人」というものがあるが、その名を頂く施設とは。本当に山好きの人のためのものなのだろう。

 

そんなことを考えつつ、数%はあろうかという急勾配な下り坂を下りていく。そして大中尾という集落にある、西側へ抜けるショートカット路を使おうと試みるが、酷い道で使い物にならない。いや、この道が正しいものかどうかすらわからない。そんなことで右往左往してしまい、1時間近くロスした後、結局は国道193号線を30km程度迂回して府殿、本川根といった集落を通って行く。最初から国道を通ればよいものを、余計なことをして時間が無駄になってしまった。

 

さて、集落が続くあたりはよいのだが、川井トンネル周辺ではまたウネウネ道になる。ただ、前述のように、SLの性能に助けられてスイスイと走行を楽しむことができる。持つべきものは良いマシンということだよ、ヤマトの諸君。

 

くだらないことを言っていたら、既に時刻が12時を回っていることに気がついた。人間の補給を行いたいのだが、ものすごい山奥なので店も何もない。困ったなと思っていたら、偶然にも1軒だけラーメンののぼりを出している店を発見した。ここを逃したら食事にありつくことは難しそうなので、迷うことなく駐車場に飛び込む。やれる時にやれることをやる、ツーリングの大原則である。

 

店内に入ると、同じように考えていたチャリダーがいた。年齢は当方よりも一回り程度は多いのではないだろうかと思われるので、さぞかし体力のある方に違いない。さて、何を食べようか。せっかく徳島に来ているので、中華そばを注文した。もちろん、中華そばといってもここは阿波の国徳島、徳島ラーメンが出てくることは間違いなかろう。オフロード走行をこなしてきたので、知らないうちに疲れているようだ。頭がボーっとするのも、ガタガタと頭を振られたからだろう。

 

今後のルートを検討していると、中華そばが運ばれてきた。予想通り徳島ラーメンが出てきて、早速食する。んー、醤油醤油していないのは良いが、昨日のチーアンに比べるとスープのコクは無い。こちらは化学調味料でごまかしているというところか。悪くはないが、まさしく並というところだろう。ただ、山の中の一軒だけある店としてはよく頑張っている方だろう。いや、ここでラーメンにありつけたとうことだけでも、むしろ感謝するべきだ。

 

空腹のせいもあり、すぐに完食した。ご飯も頼めばよかったくらいだが、当方も歳のせいか。若干腹回りに肉がダブついてきている気がするので、腹8分目で良いのだ。水を飲んでから、代金650円を支払う。地元の物価感覚からすると若干安く感じたので、まあ満足の一杯であった。それはそうと、ここで那賀町はじめ、関係町村が発行している剣山スーパー林道のガイドマップを手に入れた。なんだ、こんな良いものがあるならもっと配ってくれよと思うが、よくよく思い出してみると那賀町のHPにもUPされている。そこからダウンロードしておけよ、ということか。

 

中華そば

 

ふぅ、だいぶ体力が回復した。午後からも頑張るぞと思っていたら、未舗装路区間で奮闘していたNC700Xがやってきた。おお、無事で良かったね。でも、もう未舗装路はやめておいた方が身のためだと思うのは、当方だけだろうか。これから走る区間はつい先週までは通行止めになっていた区間であり、4トン車以上は通行止めという微妙な規制がかかっている。おそらく、崩れた法面をブルで片付けただけの仮復旧なのだろうと予想される。

 

山の中の一軒食堂 あら川にて

件のNC700Xと共にSL230

 

再出発し、引き続きウネウネを走行する。ちょっと走り飽きた感もあるが、こんなに走ることができる時は少ないので、思いっきり楽しもうではないか。こうして、木屋平の集落にやってきた。ここからは、今まで走ってきた国道193号線は、国道438号線と名前を変えるが、進むべき方向には変わりない。そのまま進んでいくと、林道木屋平木沢線の看板が見えた。ここで早速ガイドマップを活用すると、ここから剣山スーパー林道の川成峠へ接続できることが判明した。マップルだと細線で描かれた色のない道しか記載されていないので、これは有用な情報だ。

 

昼食を食べた店からはかなり標高を下げたが、川成峠へは再びすごい上り坂である。そりゃそうだ、マップルに示されている等高線はかなり詰まっており、その筋沿いに通る川原谷の沢を通っているのだ。上りでないわけなかろう。

 

さて、この林道木屋平木沢線は基幹林道と位置づけされており、舗装化進行中である。舗装区間が2/3で残りの1/3が未舗装である。それにしてもこれだけの急勾配の道は上るのは、SLも苦しそうだが、こちらとしては景色が良いので救われる。昨日同様に、今走行してきたつづら折れの道筋が遠くまで続いているのが見える。さて、林道走行と言うと「鬱蒼とした森」を通り抜けることが多いのだが、スーパー林道周辺は開けた場所ばかりだ。こういう場所に来ると、気持ちもどんどんと盛り上がるね。

 

そして前方の山の斜面にも長~く一筋の道が見えてきた。半ば狂乱気味?で、再び剣山スーパー林道に合流する。関係ないが「太~い」は「阿古屋」である。そして、ここにもスーパー林道の起点からの距離を示す看板が設置されているのだが、そこには「やっと着いたね スーパー林道」と添え書きがしてあった。これを見たとき「全くその通りだ」と思わず大きな声を出してしまった。だって、ファガスの森から順当に走ってくれば数kmでここに来られたのに、延々と30km以上、2時間近くの回り道をしてきたからだ。

 

川成峠の看板

(ヘリポートもあるようだ)

 

写真を撮って一息ついて、興奮を鎮める。レース走行も公道走行も同じだが、冷静になり適切な判断をしないと命に関わることもある。せっかくここまで来ているので、何かあっては事だ。「無事これ名馬」の言葉を思い出す。

 

川成峠にて

 

5.次の区間へ

 

肩の力を抜いて、走行を再開する。よくアドレナリンが出ると言うが、正しくそんな状態だったのだろう。自分でも何であんなに盛り上がっていたのか、よくわからない。頭が冷えた状態で、ちょっと粗目の石が広がる道を進んでいく。この辺りまで来ればダート路にもだいぶ慣れてきて、き◎たまをタンクに押し付けんばかりに前乗りになり、アクセルワークでリアタイヤを振ることも違和感なくできるようになってくる。もっとも、ほんの少しだけの話なので、端からみていればヨロヨロと曲がっていくように見えるだろう。

 

少し格闘にも慣れてきたところで安心していたが、19kmポスト付近では再び路面状況が悪くなる。拳大どころか、赤ん坊の頭程もあろうかという石がゴロゴロしているのだ。ここが4トン車以上は走行不可の区間だ。こんな所ではさすがに無理をしないで、2輪2足走行でゆっくりと通過していく。

 

このSL230というマシンはヤマハのセローが対抗馬となっており、低めのシート高と粘りのあるエンジン特性が特徴である。それ故に、こういう場面でも腕のない管理人を十分に補佐してくれる頼もしい相棒だ。

 

難所を抜けて、日向峠も越えることができた。このあたりまで来ると、すっかりと肩の力も抜けて未舗装路走行を楽しむことができる。クネクネと曲がり続ける未舗装路は尾根から尾根へ続いており、山の北側と南側の斜面を交互に通っている。そんなことを繰り返していると、このスーパー林道の建設がいかに大変だったかを垣間見るようだ。いや、それよりも、北斜面を通るときの風の冷たさ、南斜面に差す太陽の光と熱のありがたさが交代にやってくるので、体に堪えるような気がする。実際はきちんと上着を着ているので、問題はないよ。

 

スーパー林道快走中

 

走行中は路面に集中しているので、景色を見たい時は休息しながらとなる。ここでも例のガイドマップが役に立ち、高城山レーダー基地、剣山山頂が見えた。「先人はあらまほしきことなり」にならなくてよかったよ。ここでお節介ながら、ラーメン屋にいたNC700Xを思い出す。まさかではあるが、こんな道を走ってくるつもりなのだろうか。もちろん、腕に自信アリの方ならばよいのだが、ファガスの森周辺区間の走りを見ていると「オフ車とロード車」の区別もつかない、初心者のように見えてならない。

 

そんな要らん心配をしていたら、40.2kmポストの立つおおぼら橋に到着した。事前情報で知っていたのだが、この先は「奥槍戸 山の家」から先が通行止めである。時刻は15時、ここまで130kmを走行しているので、残りの燃料から計算して、あと100km以内の再搭載すればよい。また、前述の施設まではダート路で往復10km程度であるので、時間的にも大丈夫そうだ。しかし、ファガスの森まで往復で15km、川成峠からここまで35km程度ダート路を走行してきた。恥ずかしながら、ちょっと体力的にきつい。ここは余裕があるうちにスーパー林道を離脱して、今日の宿を探すことにしよう。それにしても、通行止め区間が無く、通しで走行できたならば楽勝でもっと走ることができたと思うが、これは宿題ということにしておこう。

 

おおぼら橋付近にて

 

6.宿探し

 

県道295号線に乗り換えて、heading090で徳島市内方向へ戻っていく。件の案内地図には「舗装してあるから大丈夫」という記載があるが、正直なところ舗装路とダート路の中間的な路面である。場合によってはこっちの方が走りにくいと考えられるので、油断しないで走行を続ける。

 

さて、今日はどこに泊まろうか。事前調査では、美波町のもみじ川温泉横の「あいあいランドキャンプ場」を予定している。距離にすれば60km程度なので、1時間半ぐらいあれば十分到着できるだろう。そう考えながら四季美谷温泉前を通過するが、営業しているように見えなかった。廃業したのだろうか。

 

舗装もだいぶ良くなってきて、走りやすくなったので速度を15から30ノットに上げて進んでいくと、国道193号線にぶつかった。ここを右折して、木沢村の市街地を走り抜ける。速度は45ノットまで上げることができ、文字通りの快走だ。毎度ながら思うのだが、ダートの後の舗装路って本当に楽だよな。タイヤがグリップしてくれるので、何も考えることはない。逆に言えば、それに助けられて本来は転倒している場合でも、何事もなかったように過ぎている場合もあるということだ。

 

日真地区から国道195号線に乗り換えて、さらに東進していく。この辺りは民家も少なく、たまに地元の人の軽トラを見かけるくらいの交通量なので、快走の上、つまりは超快走の50ノット近い速度で進むことができる。おかげで、目的地である道の駅 もみじ川温泉には16時過ぎに降り立った。さて、時間に余裕があるのでちょっと水分補給をして休息する。

 

駐車場で寛いでいると、MT-09トレイサーがやって来た。これはTDM900の後継マシンと位置づけられているが、フロントタイヤは17インチだし、ステップ位置が高いし、防風効果も低い。さらに、荷掛けフックが装備されていない。当方から見れば、これではTDMの後継とは呼べない、全く新規の機種だ。確かにエンジンはパワーもあるし、スムースだし、車体の取り回しも軽い。120%TDMよりも速く走ることができるだろう。

 

仮にTDMの買い替えをするとしたら本当に困るな、そう思いながらマシンに跨り、すぐ近くにある「あいあいらんどキャンプ場」へ向かう。しかし、駐車場には車もバイクも止まっていないし、入口にロープが張ってあり閉鎖?されている。これは困った、アテにしていた場所に振られるのは焦るものだ。しかし、飛行機の着陸に際し、必ず代替着陸空港(ダイバート)を決めているように、当方もダイバート先を用意している。それは日和佐のえびす浜キャンプ場だ。時刻は16時30分、この先も快走路が続きそうなので、日和佐までは15分もあれば到着できそうだ。

 

気を取り直して国道195号線に戻り、吉野地区から県道19号線に乗り換える。こちらも快走路であったので、40ノット維持で日和佐無線標識に対してラジアル130のコースに乗る。そして、市街地の少し北側で国道55号線に合流することに成功した。ここまででオドメーターが207kmとなったので、燃料の搭載を行う。搭載量は5.8Lであったので、燃費は35.8kmである。ダート走行が多かったが、この数値には満足である。

 

好記録に気を良くして、夕暮れの市街地を抜けて県道26号線でキャンプ場へ向かう。どこかなと注意して走行していると、一箇所だけ鮮やかな緑色の芝になっている箇所が見えた。あれだな、マシンを駐車場へ入れてサイトを見てみると、おいおい、満員でテントを張る場所なんて無いじゃあないか。管理棟へ行って聞いてみると、ご覧のとおりですと。

 

ダイバート先でも振られてしまったが、この先は考えていない。周辺にキャンプ場は無いので、マップルに掲載のある「ライダーハウスひるがお」に連絡をしてみた。しかし、電話は繋がらずで、後日廃業していると知った。

 

さて、久々の宿無しになるかと心配したが、こうなったら旅館かビジホという選択になる。こうして、情報を集めに最寄りの日和佐駅へ向かう。ほとんど人のいない駅ローターりーに入り、一つだけある電話ボックス横へSLを止める。

 

おや、なぜか日和佐市街地の旅館の、電話番号と所在位置を記した手書きの地図が置いてある。これはありがたい情報だ。こういうものはやはりアナログに限るなぁ、だっていくらスマホの検索機能が発達したとは言え、こういうものはアップされていないからね。存在しない情報を検索したって、得られるわけではない。偉そうなこと言っている管理人だが、たまたま運が良かっただけだと補記しておこう。

 

地図の中から何軒か電話をすると、どこも満員であると返答があった。その中で「きよ美」という旅館が空いていたので、料金も素泊まり税込で3,800円と手頃なこちらに決めた。ただ、複数名のお遍路さんと相部屋となることがネックだが、さっさと寝てしまえばよかろう。

 

7.何とかランディング

 

さっそく向かってみると、5分程で到着した。外観は旅館というか、仕出し屋みたいだ。ここで思い出したのが、TV東京系で放送されている「路線バスの

旅」だ。この番組をご存知の方も多いと思うが、宿を探す係の蛭子さんが「旅館は気をつけなくてはいけない」という名言を残している。彼は旅館ではなく、よく駅前にあるビジネスホテルのサンルートを好んでいるが、その理由は「旅館はピンキリで、良くないところには泊まりたくない」という持論を持っているからだ。

 

玄関前にマシンを止めて声をかけると、70歳過ぎのおばあさんが「早かったねえ」と出迎えてくれた。何でも、今日は他にも予約が入っているいるのだが、まだその人達が到着していないそうで、到着を待っているそうだ。そこへ当方がやって来たので「あなたみたいに、すぐに来てくれる人は有難い」と言っていた。

 

ギシギシときしむ廊下を歩いて、大部屋に通される。なんだか湿気っぽくてかび臭いので、もうちょっと出してビジホにすれば良かったと後悔した。ここで、蛭子さんの持論は重いなあと感心してしまう。まあ、風呂もあるしスーパーも近所にあるので、さっさと食事をして寝てしまい、明日は早くに発つとしよう。

 

早速食べ物を買いにスーパーへ向かい、惣菜を適当に選んで購入する。折しも閉店時刻が迫っていたので、おつとめ品をいくつか購入できたことは嬉しかった。旅館に戻り、テレビを見ながら晩飯とする。明日は夜から天気が崩れてくるようなので、昼まで徳島で遊んでから昼のフェリーで帰宅するとしよう。それにしても、もう19時になろうというのに、他の宿泊者がやって来ない。ひょっとしたら独りで寝られるかもしれない、運が良かったね。

 

今日の晩飯

 

食事が終わったので、風呂に入って体を温めるとしよう。もちろん、こちらの風呂はセルフサービスで、普通の家庭用の風呂である。ここは旅館ということになっているが、実際はお遍路さん向けの安宿と言った方が適切だ。お寺を巡って何日も宿泊を繰り返すならば、宿泊費を節約しておきたいのは人情というものだ。そういう人向けに、この旅館は開設されたのだろう。

 

湯船に浸かりながら、今更ながらに四国の巡礼について思い出していた。20年近く前に鳴門に住んでいた時は、あまりそういう文化に興味が無かった。いや、正確には気持ちの上で、自分のことだけで精一杯だったのだろう。今思えば腐る程の時間があったわけだし、スズキ式GT73E型、通称RF900を乗り回していたのだから、88箇所の寺を巡るのはたやすいことだったと思う。全くもって大学生活をもったいないものにしてしまった、本当に自分はヴァカの極みである。

 

今日の宿

 

後は寝るだけだが、明日は早朝に出発したいので、先に宿泊料を支払っておこう。というか、普通は前払いで請求されそうなものだが、逃げちゃったらどうするつもりなんだろうか。そう思いながら女将さんのいる部屋に行き、声をかける。「ああすいませんね」とお釣りを受け取りつつ、今日は同宿の方は見えないのかとたずねてみた。すると「連絡がないのだが、この様子ならば来ないだろう」ということだった。「何日も前から予約が入っていたので、来ないと心配してしまうから連絡してほしい」とも言っていた。確かにその通りだね。

 

布団を敷いて、ゴロゴロしながら今日のメモをつける。今日は距離的には大したことはないが、オフロードの走行を存分に楽しむことができた。オフロードライダーの聖地の一つである、剣山スーパー林道を走行するという目的を達することができ、記念するべき日となった。これでまた、当方の経歴に追加できる項目が増えたので、嬉しいことだ。

 

そう思いながら22時前には就寝となった。

 

本日の走行 215km

 

9月21日(第3日目)へ続く