早朝のマイルドセブンの丘
5時過ぎに起床、昨晩はたっぷりと旨いものを食べたし、疲れていたのでよく眠れた。ただ、今日は23時30分のフェリーで北海道を離れる日でもある。残念ではあるが、一日を大いに楽しもうではないか。
時刻は6時前、ちょっと出遅れたが、朝練に行くとしよう。水分を補給して、同宿の人に文句を言われないようにそっと支度を整える。そして1階に下りていくと、VOLTYのご主人が丁度出かけるところだった。軽く手を上げて挨拶し、VOLTYを見送った。
さて、当方もMD33型機の各所を点検する。ちょっとチェーンが伸び気味で、帰還したらオイルも交換だね。そう思いながらエンジンを始動し、メカ音などに耳を澄ます。今日も絶好調じゃあないですか、頼りにしているよ。
まずは道楽館前の道を右折し、2速で坂道を下りながら暖機運転をする。そして踏切を渡り、線路沿いに走る。んー、天気も良くて爽快だ、早起きしてよかったよ。SLもアクセルを開けると、単気筒の爆発力を感じるような力強い加速で速度を上げる。毎日乗っているので、だんだんとこのバイクの操作特性などがわかってきたよ、これでMD33型限定の技能証明が発行されるのも時間の問題だろう。因みに、管理人の主宰するツーリング研究所の規定によれば、総走行時間が100時間以上、オフ車の場合は5時間以上の未舗装路走行、高速道路走行、30時間の街乗り、一日で200�勸幣紊離帖璽螢鵐阿覆匹�必須条件となっている。
カーブを曲がり、機首をやや東寄り向けて少し標高を上げると、だんだんとパッチワーク状になった丘が見えてくる。おお、早朝に来ると、また違ったように見えるじゃあないか。さらにそのまま道なりに進み、再び線路沿いの道を快走する。もちろん早朝なので交通量は皆無なのだが、こういう時は概して事故が多いと聞く。よって、速度を30ノット程度に制限して、わき道からの飛び出し等には十分に気を配った。調子こいているときは危ないからね。
そして道道213号線に合流し美瑛の駅前（裏？）と通過して、昨日も通った道道966号線にぶつかる。このてーの字を右折し、青い池方面へ少し走り、左折して新区画の方へ行く。そこから畑の中を通る細かい道を抜けていく。あれ、ちょっと道に迷ってしまったか。方角を頼りにウロウロしていると、広大なひまわり畑に出会った。そういえば、今年は天気に追われて、北竜にも智恵文にも行っていない。こうして最終日にひまわりに出会えるとは、なんとも嬉しい話ではないか。迷った甲斐があったよ。
美瑛のひまわり畑にて
話は逸れるがひまわりと言うと、福山雅治の楽曲である「ひまわり」を思い出す。これは夏に誰かと過ごした一瞬を、夢のような日々として回想する歌詞が印象的な歌だ。当方の主観では、福山雅治の歌詞は解りにくいものが多いのだが、この曲は情景が浮かんでくるように思える。もっとも、あのくらいの色男ならではの状況を歌詞にしているのだから、管理人が想像つかないことは当たり前だ。
前にも記したことがあるが、ひまわりのような凛として、情熱的で、明るい人に出会えるなら、また恋をすることもあるかもしれない。いや、現実はそんなに甘くはないか。
しばしひまわりを眺めた後、お目当ての場所を探しに行く。だいたいこちらだろうと走行していたら、今度はダート路になってしまった。しかし、今回はマシンがオフ車のSLなので、全く臆することはない。鼻歌交じりでかっ飛ばしていく。すると、前方に農作業へ向かうと思われる方のライトバンが見えてきたが、すぐに道を譲って下さった。ありがとうございます。
迷い込んだダート路にて
迷い道をいつまでも楽しんでいるわけにもいかないので、ここで地図を出して現在位置を確認する。どうやらここまで、一本北側の道を通ってきたようだ。ということは、少しだけ南にある道を西へ向けて走行すれば、「ワインディングの丘」に到着するだろう。
南側に分岐するダートを選択して、舗装路に出てきた。道の曲がり具合や周りの地形から、ここが「ワインディングの丘」のようだ。
ワインディングの丘
写真ではあまりわからないが、この先もカーブしながら道は続いていき、左側には雲海が出ることもあるらしい。おや、先客がいると思ったら、道楽館で同宿のVOLTY旦那氏が写真撮影をしておられた。奥さんは飲みすぎで欠席かな。
当方も朝の冷たい空気を吸いながら、景色を眺める。それにしても北海道ってすごいよ、こんな牧歌的な風景が延々と続いていくのだから。思わず息を飲んでしまった。半ば呆然として立ち尽くし、時が過ぎることも忘れてしまった。まさに衝撃だ。
おっと、我に返って時刻を確認すると、6時30分過ぎだ。8時から朝飯なので、７時50分前後には道楽館に戻らないといけないのだが、まだまだ時間がある。そうだ、昨日行くことができなかった、東側に行ってみよう。
ワインディングから道道966号線に乗り換え、国道237号線を横切り、上りながらS字カーブを切れば、ケンメリーの木だ。ここは何回も来ているが、このポプラの木は寿命が近い旨、看板が出ている。それ故に、美瑛を訪れた際は必ず寄っていくことにしている。もっとも、管理人が生きている時ぐらいは大丈夫なんだと思うけどね。
ケンメリーの木
「まだ生きていてよ」、そう思いながら一旦来た道を戻り、マイルドセブンの丘へ機首を向ける。一応地図は確認しておくが、この辺りはガッチリと観光化されているので、有名なスポットは距離付きの立て看板が出ている。余程のことがない限りは、道に迷うことはなかろう。
パッチワーク状になった畑を眺めつつ、走行していくと遠くに防風林様になったカラマツの木が見えてくる。あれだ。
マイルドセブンの丘にて
ここも何度も訪れているが、早朝に来たのは初めてだ。何だか朝練っていいね、だって、空気が違う、陽の当たる角度も違う、そして他に誰もいないじゃあないですか。実は当方、今まで「バイクでは」朝練をしたことが無かったのだよ、ヤマトの諸君。なんて勿体無いことをしていたんだろう。
やはり、朝練と言えば、中学の部活だろう。今思えば、よくあんな考え方や、やり方がまかり通っていたものだ、と関心してしまうよ。時代の教育って怖いなぁ。
その部活だが、当方が所属していていた水泳部であるが、5月から10月はまでは、朝6時30分過ぎから8時過ぎまでプールで朝練だ。いや、その前に、まずは自宅からプールまで1,5kmジョギングする。そして2km程度泳ぐ。その後、持参したパンをかじりつつ、学校まで500m以上、ランニングしなくてはならない。そして、朝練の終了時刻がギリギリだから、ホームルームに遅れることもたまにある。するとなぜか我々生徒「のみ」が怒られる。何とも理不尽な話だ。
もちろん、夕方はの練習もあり、月曜日から金曜日までは16時30分から、たっぷり19時まで泳がされる。距離にして5km以上かな。そして土曜日は13時30分からたっぷり18時ぐらいまで、7〜8kmは泳いでいたと思う。
そして日曜日、終日練習して10km程度は泳がされていた。
まあ、これらはあくまでも「標準」形式であり、顧問の機嫌を損ねると「増し」という一言で、簡単に1.2から1.5倍の「大盛り」にされてしまう。さらに機嫌が悪くなると、デッキブラシや靴、その他様々なものが飛んでくる。もちろん、直撃した人は額が割れて、その生徒周辺は「血の海」と化すことは言うまでもなかろう。
あと、もう一つ。当方は級長（名称は学級委員長）をやらされていたので、土曜日午後は級長の寄り合いがあった。そして、それがアホみたいに時間かかって、15時ぐらいにプールに到着するんだけど、顧問は俺が「寄り合いをタテにサボっている」と思っていたらしく、「お前なんか来なくてもいい」、とか、遅れてすいません（すいませんでもないんだけど）と報告すると、完全に無視されたこともしばしばあった。こんな理不尽な仕打ちを受けた挙句に、俺だけ「増し」になったこともある。まったく、軍隊同然だ。
話が逸れたが、バイクの朝練は大歓迎なので、機会がある毎に行いたいものだ。
嫌なことを思い出してしまったが、気分を変えてパッチワークの道を走行していく。そして、途中に親子の木を横目にし、セブンスターの木へ到着だ。
親子の木
セブンスターの木
この時点で時刻は７時30分、そろそろ道楽館へ戻るとしよう。セブンスターの木を後にし、再びケンメリーの木を通り過ぎて、国道237号線を右折する。
道楽館に戻ると、既にVOLTY旦那氏は戻っておられた。そして、建物に入ると、食堂はいい匂いに包まれている。朝食の中華粥と7、8種類の漬け物用意されていた。早速席に着くと、ソット―さんがお粥をよそってくれた。食べてみると、米がうまい具合にバラけていて、そうかといってふやけているわけでもない。当方は朝は胃がもたれがちなのであまり量をたべられないのだが、お粥ならばサラサラと入っていく。
朝食の様子
面倒くさがりの当方のことを棚に上げて申し上げるのもナンだけど、朝は味噌汁と飯が良いと思う。ごはんも味噌汁も、寝ている間に失われる水分を補給するのには、都合の良い食べ物だと思われる。お粥も当然のことながら、水分とエネルギー源となる炭水化物を同時に補給できる。できるなら、毎朝粥でもよいか、と思う時もある。そういえば、かなり前に「朝粥」が脚光を浴びたことがあり、お粥炊き機も販売されていたっけ。
旨い旨い、２杯をさらりと平らげ満足である。朝飯をこんなに食べたのは久しぶりで、今日も頑張ろうという気持ちになる。飯とは体だけではなく、気持ちにも大いに影響を与えるものだ。2013年度後期の朝ドラである、「ごちそうさん」もまさに、そんなことを現代に投げかけているように感じるのは、当方だけではないだろう。
腹がいっぱいになったので、部屋へ戻りベッドで横になる。おや、さっきまであんなに天気が良かったのに、黒い雲がゴロゴロと雷を伴って近づいてきている。こいつはまずいなぁ、のんびりしてはいられないぞ。
本当はチェックアウトギリギリまでゆっくりするつもりだったが、天気予報でも空知地方は天気が下り坂の故、出発することにした。
荷物を持ってマシンの所へ行くと、VOLTY夫妻が出発の準備を整えていた。また、随分とたくさんの荷物を積んでいるが、キャンプをするにあたってはそんなものかもしれない。バイクが小さいからそうみえるのだろう。ただ、今回は天候が悪くて、一度もキャンプしていないということだった。
当方がパッキングをして荷物をSLに搭載していると、カッパ装着で2台のVOLTYは出発していった。当方も急がないと、雨雲がこっちに来てしまうじゃあないか。一応苫小牧周辺はにわか雨があるものの、晴れる予報が出ていたので、カッパは装着しないで出発する。ソットーさん、お世話になりました。
道楽館前にて
（左の方はオーナーのソットーさん）
早朝は天気が良かったので、富良野のうOこ発電を見つつ、ダート路を走るつもりだった。しかし、風の匂いからするとほぼ間違いなく雨が降りそうなので、そのプランはあっけなく破棄となった。そして、さらにく走行いくと対向車がびしょびしょになってやって来るではないか。どうやらこの先は大雨のようなので、学田駅付近でカッパを装着する。
走行再開、さあどこからでもかかってきなさい、そう思いながら気合を入れる。ああ、しまった。ガソリンが足りないではないか。この先の市街地にあるホクレンで給油しなくてはならない。こうして、朝の通勤ラッシュと思われる街を抜けて、件のホクレンに到着した。
昨日の当麻から250km走行して、13ポンド、7.2Lの給油なので、33km/Lとなった。美瑛周遊で、多くの短サイクル走行を行ったので、こんなもんでしょう。はい。
持久時間にして4.5時間程度の燃料を搭載したので、これで苫小牧まで無給油で行けるが、敦賀港から自宅までは150kmある。このことから、苫小牧周辺でテクニカル・ランディングを行い、給油するプランを提出しておく。
走行を再開し、新富町交差点を左折する。ここからは国道38号線に名称が変わる。右手には富良野神社、左手には宮沢りえが劇中で働いていた金物店がある。北の国からは通常の街中で撮影されることが多かったのだろう。
市街地を抜けて、機種は南を向けて走行を続ける。行く手にはかなり厚い雨雲が見える。コイツはまずいかな、と思っていたら山部付近で大雨につかまった。ひぇー、何だこりゃ〜、上陸2日目同様に雨が当たると痛いくらいだ。おそらく、時間雨量40�个阿蕕い旅澆蠅世蹐Α�たまらずセイコマに飛び込み、軒先で雨宿りする。
いきなりだったので、体が冷えてしまった。温かいココアを飲んで、雨が小降りになるのを待つとしよう。車が跳ね上げる雨水を眺めていたら、Z1000が駐車場に飛び込んできた。おや、カッパを未装着じゃあないか。ライダーは「いやぁ〜、ひどい雨ですわ」と関西弁で話しかけてきた。「まったくですねぇ」と返答する。そしてZ1000氏は「昨日上陸したが、プランを全てキャンセルして帰宅する」とのことだった。
確かに、天気予報ではこの先も雨降りが続く模様なので、致し方ないところだろう。ただ、休暇はまるまる1週間あるそうなので、九州に行こうかなともおっしゃっていた。
それにしても、待てど暮らせど雨が弱まる気配が無い。待っていても無駄なので、SLに火を入れて出発することにした。
うひゃ〜ぁ、こりゃ2日目の雨天走行よりも厳しいぜ。雨が降る勢いが桁違いだ。3日目以降はまあまあ快適な旅をしていたのだから、まあそういう日もあるさ。シールドを雨用ゴム手グローブで拭いながら走行を続けると、若干雨が弱くなってきた。やれやれ、助かった。しかし、安心したのも束の間、また雨が強くなり、今度は雷も鳴りだした。コイツはまいったなぁ、まだあまり距離を出していないが、道の駅 自然体感しむかっぷに緊急ピットインである。
ひとまず軒先でカッパを脱ぐが、もう内もも周辺が浸水してきている。やはり、バイク用に製作されたものでないとアカンですなぁ、繊維が引っ張られたり、ヨレたりすると新品でも雨が染みてくるらしい。また、気温も低いので、ちょっと震えてしまう程だ。多分15℃ぐらいだろうなぁ。
今日は早朝から走り回っていたので、ここへ来て疲れが出てきた。腹も減ってきたので、ここらで早めのエネルギー補給としよう。適当な店はないだろうか、大きな道の駅だけど喫茶店のような店、食堂があるのみで、規模も小さい。しかし選んでいられないので、カウンターテーブルへ滑り込む。そして、「十割生そば 青巌峡蕎麦」と書かれた看板を見て、盛りそばを注文した。
ところで、食堂内は暖房が効いていてかなり温かったので、外との温度差で眠くなってしまった。ここから苫小牧まではまだ100km程度の距離があるのだが、この天候では体力の消耗が激しい。現に富良野からここまででも疲れてしまった。いやはや、どうしようかなぁと思っているうちに、居眠りしてしまった。
「盛りそばお待ちどうさま」
お、その声で目が覚めた。おお、水を飲んでボーとしていると、目が覚めてきた。さて、10割そばでもいただくとするか、ん？これ本当に10割か、何だか怪しい。たいして上手くないじゃん。まあ、田舎そばだったらこんなもんか、ちょっと洗練されたものを期待していただけに残念だった。
青巌峡そば
蛇足であるが、田舎そばと言えば、徳島在住時代に池田高校で有名な池田町（当時）の田舎そば、「祖谷そば」を食べたことがある。これは見かけこそは太くてぶつ切り、ちょうど「そばがき」と「そば」の中間、というものだった。しかし、味はまさしくそばであり、なかなか旨かった。
それに比べて今回の青巌峡そばだが、その辺の冷凍ものと同等だったかもしれない。いや、今思うとつゆがまずかったのかもしれない。
何だか満たされない昼食だったので、軽食販売コーナーで見つけた「メロンソフトクリーム」を食べることにした。これはメロン味のソフトクリームではなく、皮をむいてぶつ切りになったメロンの上にソフトクリームが乗せられたものだ。今様に言えば「じぇじぇじぇ」と驚いたが、この組み合わせは相性が良かった。
メロンソフト
外へ出て雨の具合を見るが、相変わらずの土砂降りだ。こんなんじゃあ走りたくないし、土砂崩れでも起きたら嫌だなぁと恐怖も覚えたので、もうしばらく様子を見ることにした。
いやはや、土砂降りだ
雨に打たれるSLを見ていたら、スクーターが一台やって来た。ヘルメットを取ると、50歳ぐらいの方だったのだが、なんだかキョロキョロして挙動不審である。こういう場合、多分話し相手を探している場合が多いのだが、案の定こちらにやって来た。
「話してもよいですか」
いやいや、普通は挨拶からじゃあないのか、いきなりそんなことを言われてもなぁと思っていたら、ベラベラと自分のことを話し始めた。なんだか押し付けがましいし、内容もつまらない。
思うに、バイクがオヤジの趣味になってきてから、この手のライダーが増えてきたと思う。いや、バイクに乗る人が増えるのは大いに喜ばしいことだし、知らないライダーと交流を持ち、気持ちを共有することもまた一興である。しかし、この手の人は「流行」でライダーになっているのだろう。何かのアンチョコ本に「ライダーを見たら話しかけよう」とか書いてあるのかもしれない。いや、それ自体はもちろん悪いことではない。ただ、マナーや状況判断に欠けているというだけのことだ。
幸いにもおっさんは数分でいなくなり、雨も小降りになってきた。そろそろ走行を再開しよう。シートやタンク、荷物の水気を拭き取り、マシンに跨る。念のためカッパを装着していることは、言うまでもなかろう。
引き続き国道237号線を平取、富川方面へ向けて走行していく。ところで、今日は北海道最終日だが、なぜか最終日はこの237号線を走行することが多い。日高峠を越えて石勝樹海ロードを横切り、沙流川沿いを行く。だんだんと苫小牧が近くなってくるのだが、ちょっと胸が痛い。これは誰かを好きになった時に覚える感情によく似ており、届かぬ想いというか、別れが辛いというか、そういうものだ。
いい歳をして、と苦笑いしながら走行を続ける。すると、平取の二風谷付近で急に雲が切れて、太陽が照りつけてきた。もちろん、カッパの中が蒸れてくるので、さっさと道路脇に停車してカッパを脱ぐ。股やケツの割れ目に該当する部分に雨水が侵入して気持ち悪いが、これだけ陽が当たればすぐに乾くことだろう。
気分良く走行し、上陸初日に宿泊した西陣の前を通過する。ここまでの走行が140kmで、この先苫小牧のフェリーターミナルまでは20km、敦賀から自宅までが１50km、自宅までは持たないので給油することにする。幸いにも、上陸2日目に入ったスタンドが近くにあるので、そこへ向かう。給油量は4Lだから、燃費はおおよそ35km/Lである。普通でしょう。
まだフェリーまでには時間があるので、静内のレ・コードの湯に入り、展示物をゆっくり見ようとそのまま針路を東に採るが、行く手には分厚い雨雲が見える。こりゃダメだな、と引き返して、そのまま苫小牧直行とする。レコード見たかったのになぁ、残念だ。
結局、西に向けて走り出す。ただ、このまま港に行っても暇なだけなので、門別競馬場前にある牧場で馬を見物する。それにしても馬というのは敏感だ。遠くからでも当方が来たことを察知し、こちらの様子を伺っている。ただ、特に害が無いとわかったようで、また草を食べ始めた。
名残惜しく馬を眺める
今回はまあまあうまいこと予定をこなせたが、欲を言えばもっと天気が良かったらなぁと思う。特に函岳山頂が曇っていたことは、残念だ。また、多和平も天候不良で行かなかったし。色々と今回のツーリングを回想していたら、
「ゴロゴロ、ドカーン」
やばい、雷がこちらに近づいているではないか。急いでエンジンを始動し、苫小牧方面へ向けて走り出す。すると、天気が荒れる前に吹くような風も出てきたし、苫小牧港の上空には真っ黒な雲も見える。そこからは時々、ピカピカと海面落ちる落雷も見える。あ〜（にしおかすみこ風に）、完全に悪天候に挟まれてしまった。そうだ、鵡川の道の駅にある温泉に避難しよう。
今すぐにでも降りますよ、という風、匂いに急かされながら、道の駅 むかわ四季の館にある、屋根付き駐輪場に滑り込んだ。おや、今日、道楽館で一緒だったCB1300のご夫婦も見えるようだ。とにかく建物に入って、温泉にでも浸かろう。
今日もそんなに距離を走っているわけではないが、荒天により随分疲れた。急に晴れたりして気温差も大きかったことも、影響しているだろう。体を洗って露天風呂に浸かる。んー、今年もよく走ったよ。目をつむるとこの7日間で走行した、北海道各所の様子が浮かんでくるよ。今日でもう終わりかぁ・・・。
そんなことを考えていたら、いきなり「ドバー」と雨が降ってきて、ビュービューと風が吹き、ドッカーンと雷が落ちる。ヒョウでも降るんじゃあなかろうか、というぐらいの荒れ模様で恐怖を覚えたが、この土砂降りでは湯船から上がることもできない。仕方ないのでそのまま耐えることにしたが、なにやら「モンモン」の入った怖そうな人が内湯から出てきて、こちらをチラリと見ながら別の湯船に入っていく。まるで、「お前だけを注目の的にはさせないぜ」と言わんばかりだ。いやいや、俺はたまたま取り残されただけでして、できれば内湯に戻りたいですよ。
だがこのモンモン氏は、あまりの雨の酷さにやられたのか、内湯に戻っていった。いやいや、この時間雨量50mm以上はあろうかという中、戻っていくあんたの方がヒーローだよ。俺にはその気力は無い。
こうして30分程度、目も開けられない程の雨に耐えていたら、天候が回復してきて陽も差してきた。いやあ、あんな雨の中を屋外で過ごしたのは、40年の人生でも初めてじゃあなかろうか。そのくらいの土砂降りだったよ。やれやれ、と思っていたら待ちかねたように、ゾロゾロと内湯から人が出てきた。
毎度のように、のぼせ気味のところで風呂から上がった。余裕があるうちに上がってしまっては、もったいないような気がするのだよヤマトの諸君。それはただの貧乏性である、何のことかね？
くだらない寸劇を頭の中で演じつつ、温泉施設からお土産売り場に足を伸ばす。今回はここでお土産を購入しよう。今回は「白い恋人」だけでなく、きのとや製造販売の「純北海道産ミルククッキー 札幌農学校」を買い、自宅に発送した。
後は休息室で30分程ウトウトし体力も十分回復したところで、最後の目的地である苫小牧東港へ向かう。
道の駅 四季の館にて
鵡川の道の駅からはほんの15分程度で港に到着した。時刻は19時00分で、出航は23時30分、搭乗手続き開始は22時なので、まだまだ時間がある。例年ならばここで土産を調達するのだけど、今回は鵡川の道の駅で購入済みだから、軽くうどんを食べたり、売店を覗いたりして時間を潰す。ロイスの板チョコを船内で食べるおやつに買っておこう。
待合所の椅子に座りテレビを観たり、今日のメモをつけたりしていたが、眠くなってきたのでウトウトする。だいぶ疲れているようだ。
ちょっと落ちかけた頃、折り返し便で敦賀に向かう、新すいせんが入港してきた。一昨年に利用した旧のすいせんと比べて一回り大きく、塗装も新しいので「新造船」とすぐにわかる。ちょっと接岸の様子を見に行くと、高さが20mはあろうかという操縦室から、器用に船体を寄せている。おお、すげぇ。
新すいせん
（操縦室は最上階）
時刻を確認すると既に22時30分を過ぎているのだが、まだ乗船手続き開始の案内放送が流れない。いや、そもそも入港時刻が22時を過ぎていたように思うが、定刻に間に合うのだろうか。別に焦っている訳ではないが、今まで定刻を過ぎたことなど無かっただけに、機材のトラブルでもあったのかと心配する。
しばらくして案内放送が流れたが、案の定35分遅れで出港するということだった。
自分のマシンの所へ行き、乗船の準備をする。乗船券を用意し、少々雨に濡れたシートを雑巾で拭っておく。さて、周りのライダーはどんな方がみえるだろうか、実は当方、様々な工夫がなされたマシンを観察することが好きで、特に荷物の積載方法に興味がある。チラチラと見ていると、クルーザータイプのマシンに乗られる方に、案外技ありを見かけることが多い。
また、最近流行りのボックスだが、メガスポーツタイプにフル装備のボックスを装着している方をしばしば見かけるが、どう考えても重量過多ではなかろうか。現に1000ニンジャのフル装備車両を見かけたが、ミラーが両側共に折れてしまっている。どんなライダーなのだろうかと観察していたら、当方より歳上で、身長が165cmぐらいの方だった。非常にお節介だが、そりゃちょっと無理ってもんじゃあないのだろうか。1000ニンジャの重量自体が240kg、装備で50kg程度あると想像できるので、全部で300kgはあると思われるからだ。
それが良い悪いというわけではないのだが、そんなに重いマシンで楽しいのだろうか。
おっと、乗船開始だ。乗船券のバーコードをスキャンしてもらい、タラップで車両甲板へ上っていき、係員が指示した場所に停車する。管理人が荷物を網棚に乗せていると、ニンジャ氏がやってきて、つま先立ちでマシンを止めた。その重さでつま先立ちでは、前脛骨筋と腓腹筋が相当辛いだろう。立ちゴケすることも頷ける。
そんな状況を横目に客室へ行き、係員の指示で自分の寝台へ向かう。やれやれ、ゆっくりできる。疲れた走行最終日だったよ。
後はお決まりの風呂に入って、寝るだけだ。疲れのおかげでウトウトし始めた頃に、35分遅れて出港の旨、放送があった。
お休みなさい。
本日の走行 200km