2013年 夏の北海道ツーリング

 

2013年8月16日〜25日

 

憧れの函岳山頂にて

 

6日目(8月22日)

1.今日は行けるかな?

 

朝6時30分に起床し、備え付けのコーヒー、セイコマで購入したカロリーメイトを食べる。既に起きている方とテレビのデジタル放送で天気を確認する。んー、今日もパッとしないねぇ。ただ降水確率は40%がほとんどなので、大降りになることはなさそうだ。うまく雲を避けていけばカッパは必要ないかもしれない。

 

となると、やはり昨日断念した「美深歌登大規模林道」と「町道加須美峠函岳線」を走破するプランを実行に移したいところだ。いや、今回はそのためにSL230を購入し、渡道してきたとも言える。ここへ行かずして自宅には帰れないぞ。

 

早速支度をして、7時30分にみどり湯を出発する。お世話になりました。最初は道道106号線、通称「オロロンライン」を下っていく。実はこの道道、みどり湯から一本向こうの通りがまさにそれである。つまり、みどり湯を出て右折、セイコマのある信号を左折すればオロロンラインに乗ったということだ。

 

歩道を歩いて通学中の小、中学生の前を通っていき、海沿いに出て針路は180°になる。さて、ここで納寒布へ向かう道道254号線が分岐しているのだが、今回はパス。引き続き、道道106号線を追いかけていく。

 

ここからが「オロロンライン」の本番だ。アサイチの走行なので、体やマシンの調子を確認しながら徐々に巡航速度の37ノットまで上げていく。本来ならば、50ノット以上で走行しても何ら問題はないだろうが、やはり取締りのことを考えるとこの辺が妥当なセンと言える。近年では「オロロンライン」でも速度取締りが行われているという情報を耳にしている。規制ばかりの世の中になりつつあるが、節度も持たない人がいるということも事実である。義務を果たしてこその権利である。

 

穏やかな単気筒の鼓動を感じつつ、海沿いの直線を気分良く走行していく。これで天気が良いと文句ないんだけどね。疲れてもいないが、夕来の駐車場で休息する。因みに期待していた利尻富士は、2合目から上は全く見えません。

 

パッとしない天気のオロロンライン

 

南の方は少し青空も見えるので、今日は何とか函岳山頂へ行くことができるだろう。無理矢理に期待しながら、37ノットを維持して南下を続ける。季節的になものだろうか、天気が悪いからだろうか、今年はライダーもチャリダーも少ないような気がする。普段なら「オロロンライン」の直線に頭のネジが外れちゃったかのように、対向車線で半狂乱気味に手を振る人が何人かいるんだけど、今日はすれ違う人もあまりいない。

 

サロベツ原野を左手に見ながら淡々と走行を続けていると、背後にダンプカーが迫ってきた。こちらは急いでいないので、左ウインカーを出して先に行かせる。すると、巨体を震わせながら加速していった。おいおい、大丈夫か。何時だったか、原野に落ちたトレーラーを見たぞ。あれは多分居眠り運転だろう。

 

とりとめのないことを考えていたら、一列に並ぶ風車群が見えてきた。「オトンルイ風力発電所」だが、今日はオフ車だから直下まで行ってみよう。今まで何回か通り過ぎたことはあるのだが、近づいたことはないので楽しみだ。

 

徐々に近づいてくる風車は何かの工場のように見え、陽炎の向こうに揺れ、蜃気楼なのかもしれないと錯覚する。ところで、蜃気楼は実際にはそこに存在しないものが見える現象だ。そう考えると、俺の青春も今や蜃気楼だ。いや、実際には当方の10歳代後半、20歳代は存在していたのだが、その当時の時間の使い方が良くなかったのだろう。それが故に「本当は存在しなかったかもしれない」と錯覚してしまっているわけだ。今思うと非常にもったいないが、それが俺の青春だったのだ。また、度々記載しているが、勇気を出して当方と仲良くしようとしてくれた大学時代のあの娘、まさに蜃気楼のようだ。何でもっと仲良くしなかったんだよぉ〜、俺のバカバカ!!

 

いつものように過去を思い出していたら、風車群の真下まで来ました。おおー、羽が回るたびにビュンビュンと風きり音がする。この細長くて鋭い端を持つ形状は、風を掴む効率を最大限にした設計だろう。飛行機の翼も同様で、昨年就航したボーイング787型、今年初飛行したエアバスA350型、どちらも細長い主翼が特徴である。一昔前ならば「グライダーか??」と思う程だ。

 

風車にもロマンがあるんだなぁと感慨にふけっていたら、「ここは立ち入り禁止ですよー」と声がした。我に返って声がした方を見てみると、職員と思われる方がもう一度、「ここは立ち入り禁止だよ」とやや怒り気味「ヽ(`Д´)ノ」でこちらを向いていた。即座に、「すいません。今出ます」と焦って道道に戻った。あれ、そんなこと書いてなかったよ。しかし、これを読まれている皆さん、ここは立ち入り禁止ですから、入らないでください。

 

風車にもロマンあり

 

 まったくの不注意を反省しつつ、オトンルイ風力発電所を後にする。天塩川のシケインを通り、道の駅 てしおを通過する。ここは2006年の渡道で、R1-Z氏と共に立ち寄った場所だ。あれから7年も過ぎてしまったのか。氏とは最近あまり走れていないが、また北海道に来られるといいな、と思う。

 

そして、ここで道路名が国道238号線となるのだが、そのままheading180を維持する。その後、ちょっとした集落のところを左折して道道119号線を行くつもりだったが、ボーッとしていて通り過ぎてしまい、道の駅 富士見まで来てしまった。ここで一旦休息して、地図を見直す。4km近くは行き過ぎた計算だ、北海道はすぐに距離が出てしまうので戻ることはしたくないのだが、適当な道が無いので、また国道を戻り119号線にスイッチした。

 

超の付く快走路を、40ノット程度まで速度を上げて進んでいく。この道の両側は牧場なのだが、中には離農してそのまま放置されていると思われるものもある。TPPや高齢化の影響で、このような場所は急激に増えるのかもしれない。もっとも、酪農は当方のような街に住む会社員には、想像もつかないような辛い仕事だろうから、何も言えない。

 

咲花トンネルで峠を越えて、国道40号線の佐久地区に出てきた。ここで同国道に乗り換えて道なりに走行していくと、磁方位が090から180°になる。時刻は11時を回っているので、そろそろ腹が減ってきた。音威子府で早めに食事を摂り、スーパー林道へのアタックに備えることにしよう。

 

「北海道命名の地」を過ぎて、音威子府の市街地に入る。駅構内そばも良いが、そばだけでは腹が満たされないので、以前利用した「一路」にしよう。そう思いながら進んでいくと、・・・営業していないじゃないか。どうやらお盆を過ぎたから、お盆休みに入っているようだ。

 

黒いそばを食べることができないのは残念だが、先に進んで道の駅 びふかで食事を摂ろう。鳴き気味の腹を我慢しつつ、何とかびふかに到着した。腹が減った、何でもいいから食いたい。こうなったらすぐに食べられるものが良いので、あげいもとコロッケを露店で購入した。特にあげいもは「新ジャガを使用している」という売り文句に飛びついてしまった。

 

マシンに戻って、縁石に座りあげいもをかじる。ホクホク、ウマウマ、ころもはホットケーキミックスなのかな。ちょっと甘いところがまた良い。ところで、このあげいもは、直径が3〜4cmのじゃかいもが2個、串に刺さっている。それぞれは上記のころもをつけて揚げてあるのだから、結構腹にたまるので都合が良い。また、コロッケもおそらく新ジャガを用いているのだろう、ホクホクである。こういうじゃがいもを食べてしまうと、今まで食べてきたじゃがいもは何だったのだろうか、と考えてしまう。

 

あげいも

 

 

 2.いよいよ今年のメインエベント

 

道の駅 びふかで腹を整えたので、いよいよこれから函岳山頂を目指す。幸いにも天気が回復して青空の割合が多くなってきた。函岳山頂方面も特に低い雲が無いようなので、眺望も期待できるぞ。

 

そのまま国道40号線に戻り南下を続ける。人間用には既に「いろはす」を購入したのだが、SLの残燃料が怪しい。ここまでにトリップメーターは220kmを表示しているので、途中でガス欠になる可能性が高い。そこで、美深のホクレンに入り、燃料補給を行う。220km走行して、5.3Lの入ったので、燃費は41.5km/Lと、ここまでで最高の数値が出た。よくよく考えてみると、昨日宗谷岬で給油して、稚内市街まで、さらにオロロンラインとほとんど信号のない区間を、37ノットと控えめな速度で走行してきた結果だろう。そもそも、200km以上に渡ってこういう環境が整っているから出せる数値なので、当方はこれを「北海道燃費」と呼んでいる。

 

これで準備は完了だ、少々興奮しつつ進んでいくと、「函岳山頂まで34km」の看板が見えてきた。いつもは「行ってみたいな」と思って通過していた看板だが、今日はその場所へ行くことができる。目標などという大げさなものでもないが、それが達成できるのだからなんと感動的なことだろう。この歳になると、なかなかそういうものも無くなってくるから、特に嬉しい。

 

函岳の看板前にて

(ちょっと雲が多くなってきた)

 

いろいろな思いが駆け巡る中、県道680号線に乗り、針路を050に採る。ちょっとまた天気が悪くなり、雲が多くなってきた。できれば午前中にアタックすべきだった。次回はやはり、美深アイランドにキャンプして、朝一番で行くようにしたい。

 

そう考えていたら、舗装が途切れる地点に到達した。

 

 美深歌登大規模林道入口にて

 

 まずは恐る恐る22ノットで車輪を進めていく。なんだ、締まった砂利ダートですごく走りやすいではないか。そういえば、以前美深アイランドでキャンプした時に、「ハーレーでも行けるよ」と話していた人がいたなぁ。なるほど、我慢すればロードバイクで行けないこともないだろうが、あまりお勧めはできない。

 

前半は森の中を通り、ブラインドコーナーも多い道だ。前述の「放浪のページ」で記載されていたように、見通しの悪いコーナーではホーンを鳴らしでから進入するようにした。入口から10km位過ぎた辺りで森林限界を越え、視界が開けた。(ノ゚ο゚)ノ オオォォォ-、森林限界を越えただんだんと調子に乗ってきたので、場所によっては30ノット以上で飛ばしていく。こんなの初めてぇ〜、嬉しすぎて言葉になりません。

 

入口の看板通りに、17km走行したところで加須美峠に到着した。国道40号線の看板で懸念していた雲が、目前に迫ってきた。冷たい風が吹いてきて雨が降りそうだが、このままアタックを続行する。尚、この加須美峠にはゲートがあるが、この時期は開放になっているようだ。

 

加須美峠にて

(左が町道加須美峠函岳線)

 

左折して加須美峠からさらに標高を上げていくと、ザーと雨が降り始めた。少々悩んだが、ここは潔くカッパを着ることにする。こういうこともあろうかと、すぐに取り出せる所にカッパを積んでいるので、1、2分で準備が完了した。しかし、再びマシンに跨って走り出すと、1kmも進まないうちに雨が止み、さらにもう少し進むと日差しが強く照りつけている。もちろん、この辺は雨が降った形跡すらない。図らずも「カッパを着ると雨が止む法則」を身をもって実証してしまった。

 

よくよく雲を観察してみると、加須美峠の標高付近だけに発生していて、その動きは非常に早い。「山の天気は変わりやすい」と言われるが、全くそのとおりだよ、ヤマトの諸君。

 

雨が止んだだけならば、このまま頂上まで行ってしまえばよいのだが、陽が照ってきてとても暑いではないか。止むなく、また停車してカッパの上だけを脱いだ。なんだか無駄なことをしてしまったなぁ。再び気を取り直して、走行を再開する。

 

この辺りの道路両脇には背丈程のクマ笹が生えており、何か出てきそうな雰囲気だ。鹿なら問題ないが、クマだったらどうしよう。念のためコーナー手前ではホーンを鳴らして、こちらの存在をあらかじめ知らせておく。

 

加須美峠から5km以上進んだところで道が一直線になり、その先は大きく左へ回り込んで山頂の方へ続いている。

 

函岳手前の直線にて

 

独りで雄叫びを上げて、アクセル全開・・・とはいかないが、ワイドオープン!!!30ノット超えで突っ走る。こんなのも初めて〜ぇ。オフロード車ってこんなこともできるんだ。すげぇ〜。

 

ここで調子こいてしまったせいか、この先の右コーナーで、「あ〜しまった〜」と思ったが既に時遅し。なんと道から外れて1m50cm位落ちてしまった。そして熊笹に突っ込んで「このまま落下か」と思ったが、勝手に体が動いてハンドルを無理やり右へ切り、アクセルを開けたらノッキングスレスレで「ドド、ドド」と段差を上り、道路に復帰した。

 

一旦停車して呼吸を整える。マジでシャレにならないことになるところだった。気の緩みという言葉があるが、まさにその通りだ。バイクを寝かすタイミングが遅れ、道から逸脱してしまった。結局は何もなかったが如く復帰できたが、この様な事は2度とあってはならない。まさに「調子こいているんじゃあないよ」ということだ。

 

ふんどしを締め直して再びアタックを開始する。そして、カーブを数個クリアしたところで、いよいよ函岳の山頂にある気象レーダードームが見えてきた。「あれがそうか」と実物を見て「じぃーん」ときてしまった。いや、ドームに感激したわけではなく、この地に自分のマシンでやって来たという事実が何だか信じられないような気持ちになったのだ。

 

3.山頂に到達

 

山頂のすぐ下にはゲートがあって、その手前にある駐車場にマシンを止める。エンジンの音が消えると周りは静寂に包まれ、眼下には流れの早い雲が通り過ぎていく。冒頭の写真がその時の様子だ。ついに来た、夢にまでとは言えないが、いつかは自分の操縦するマシンで来てみたい、そう思っていた場所に到達したのだ。

 

ゲートの横を歩いて通り抜けて、さらに100m程歩いてドームの裏側に向かう。残念ながらマップルに記載してある、日本海とオホーツク海が一度に見える、という光景は見られないが、山頂を示す立札がしてある。

 

函岳山頂にて

 

ああ、雲が無く晴れ渡っていたならば、いったいどんな素晴らしい景色が見られたのだろうか。ここでは事前に調べてきたことを思い出して、想像する他に無い。まあ、しかし、何だ、また宿題ができたということに過ぎない。つまり、その宿題をやり終えるために再び渡道してくればよい、北海道に来る良い目的がまた増えたってことさ。

 

景色が見えないが、ひょっとしたら雲が晴れるかもしれないので、しばらくここで待機しよう。そう思って先に進んでいくと、数人の若者が食事をしていた。声をかけてみると、朝一番で美深を出発し、当方が来る少し前に到着したとのこと。

 

そんな話をしながら雲の流れを観察しているが、どうも晴れてくる気配はない。山で景色を楽しむには、午前中の早い時間に来なければならないようだ。これも当たり前のことで、日の出から加温された大気が上昇気流となって山の斜面沿いに上り、凝結する標高で雲になる。山は朝一番に限るということか。

 

3.下山

 

次回オフ車で渡道した時には、是非とも絶景を見ようと心に誓い、マシンの所へ下りていく。ところで、この函岳山頂には立派な避難小屋が設けられている。食料や水、寝袋等があれば問題なく一夜を明かすことができよう。もちろんトイレもあるので、ここで用を足していくことにする。

 

函岳ヒュッテ

 

 件のチャリダーさん達とお互いの安全を願って挨拶を交わし、下山を開始する。帰りは下りのなので、往路の上りでやらかしたようなミス=終了となってしまうので、特に慎重にギアを3速固定で進んでいく。

 

一通り山頂付近の急勾配を終えると、上りでぶっ飛ばした直線区間に出てきた。今回は調子に乗らないように25ノット程度を維持して、無難に走り抜けていく。名残惜しいので、ここで一度停車して、もう一度函岳山頂方向を見て「また来るよ」と呟いてからギアを入れる。

 

程なくして加須美峠峠に到着した。ところで、当方のツーリング哲学?には「一日のうちに同じ道は通らない」というものがある。そんことを言っているから、若い子とデートしても次から来てくれなくなるのだろうが、これは当方のやり方だ。

 

また、「加須美峠」といえば「霞商会」だ。これは漫画「めぞん一刻」内で主人公「五代優作」が内定を得る、架空の会社名だ。しかし、入社する前に倒産するという悲劇に見舞われた。また、当方の先輩が贔屓にしているバーに、「かすみちゃん」という可愛らしい店員がいることも忘れてはならないだろう。また行きたいものだ。

 

話は逸れたが、今度は天の川トンネルがある東方向に機首を向けて、山を下っていく。こちらも距離は上りと同じ20km弱なのだが、ちょっと時間がかかりそうだ。というのも、雨水が流れて川ができているので路面が凸凹だからだ。さらに両側の草もあまり綺麗に刈っていない。まあゆっくり行けばいいかな、と3速固定でエンブレを効かせていく。すると一台の250ccロードバイクが四苦八苦しながら対向車線を上ってくるではないか。まあ行けないことはないだろうが、お気を付けて。

 

勾配がゆるやかになってくると路面状況も改善してきて、幅広のフラットダートになる。やれやれ、ひとまずはメインエベントを終えたが、せっかくだからもっとダートを走りたい。ひとまずは天の川トンネル東側にちょとした東屋があるので、ここで水分補給をし、作戦タイムとする。

 

フラットダート区間

 

 4.風烈布林道からオホーツク海側へ

 

丁度雨が降ってきたので、東屋で休息を取りつつ、マップルを眺める。すると、天の川トンネルの際から、オホーツク海側の風烈布地区へ通じている「風烈布林道」を発見した。距離も17kmと手頃なのでこちらも走行してみよう。

 

今日は雲の動きと同じで、天気もダイナミックに変化している。しばらく待って、雨が止んだことを確認してから風烈布林道へ進入する。

 

風烈布林道入口にて

 

 風烈布林道も森の中を突き抜ける道で、マップルのコメント通りのハイスピード区間だ。ただ、時々雨水で砂利などが流れないように、スポンジのような衝立が埋め込まれている。また、路面も所々荒れており、調子こいてハイスピードで走行していたらサスペンションがフルストロークする。その時だ、「バチン」と荷物を固定しているゴムチューブが切れてしまった。一応ストレッチコードでも締めているので、問題はないが、やや積載物がグラグラとする。丁度一本余っていたので、予備として持参すべきだった。

 

また、この区間ではきつねの横断をたくさん見たのだが、皆綺麗な黄金色の長い尾だけを残して、道の脇に消えていったことが印象的だった。基本的に野生生物は人を警戒するものだ。しかし、中には餌付されて人に寄ってくるようなものもいるが、そういう個体は概して不健康そうだ。

 

見かけたきつね

 

少しペースを抑えつつもハイスピードのダート走行を楽しむ。繰り返しになるが、30ノットのダートランは貴重なものだ。それにしても北海道もオフロードという選択肢が加わると、まだまだ未開の地である。

 

ちょっと疲れてきたなぁと思った頃に、舗装路が見えてきた。そして、そのまま牛がいる牧場を通っていくと、昨日通ったオホーツク街道こと、国道238号線と合流した。ひとまずはここを右折して雄武方面へ南下し、音標の店舗跡地の駐車場で一息つく。

 

昨日に引き続いて、オホーツク海側はどんよりと曇っていて薄ら寒い。今年はやっぱり天気がイマイチなんだろうか、いつかは雄武でもカンカン照りで暑い時があったと記憶している。おっと、ここでインストラクター仲間の人妻O氏から「楽しんでますね」とメールが入った。はい、そりゃもう、楽しんでますよ。いつも仲良くしていただき、ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。

 

5.この後のプラン

 

この段階で時刻は13時30分過ぎ、さてどうするか。北隆線林道と道道60号線、奥珊瑠林道繋ぐルートを検討するが、少々体力的に厳しい。ここまでに、すでにダート走行が60km以上となっている。しかも腹が減ってきたので、残念ではあるが、道道60号線で名寄に戻り、何か食べることにしよう。

 

国道を数km南下して、道道60号線に入る。この道は片側1車線ずつの中央線が破線の快走路で、他に通行する車もほとんど無い。やれやれ、毎度ながら思うのだが、舗装路ってこんなに楽だったんだね。ただ、今日は局所的に雲が発生しているようで、途中2、3回、ザーッと強い雨が数十秒降ったが、すぐに止んで日が差してくる。先ほどの加須美峠同様に、まさに山の天気だ。

 

さて、道道を進んでいくと帆内越峠に到着する。本来はここからも奥帆内本流林道や、景色が良いことで有名なピリシヤ林道が分岐しているが、今回はパス。そして下川町へと下っていくが、どうも木の根がアスファルト下に張り出しているようで、路面がガタガタ、血液ガタガタである。北海道に限らず、こういう現象はまあまあ有りうることで、ツーリングの主体を山の道に求めている当方としては、気になるところだ。

 

そして、この下川町で国道238号線に合流し、機首を西に向けて走行すれば名寄の市街地である。本当はこの下川町の市街地にある列車の宿泊所に投宿し、「みなみ」なる地元産の小麦を使ったうどんを食べてみたかったが、今日は名寄駅前にある「三星食堂(みつぼし)食堂」へ行きたかったのだ。

 

ここは一昨年の渡道でも訪れたことがあるが、丁度定休日だったので涙をのんだことがある。また、今回はまだ一度もジンギスカンを食べていなかったので、是非とも寄りたいところだ。昼にあげいもしか食べていなかったので、腹が減った。

 

そう考えていたら、名寄駅に到着した。お、三星食堂は営業中だ。早速店舗前の駐車場にマシンを止めて、店内に入る。時刻は16時過ぎだったので、店には数人のお客しかいない。メニューを見てみると、鳥のマヨネーズ焼き、同甘酢あんかけなど珍しいものもあるが、ここはやはり「ジンギスカン定食」で決まりだ。

 

ジンギスカン定食

 

 

寒さ等でとても疲れていたので、このボリュームはありがたい。早速食べてみると、醤油ベースのジンギスカンはあまりクセも無く食べやすい。そしてモヤシがとてもたくさん入っているので、ツーリング中に不足している繊維質も摂取できる。また、浅漬けと昆布の佃煮が付いてくるが、ただのフロクかと思いきや、これが実にいい味だ。

 

卑しくもガツガツとあっという間に食べ終えてしまった。ふぅ〜、何たる満足感。今日は起伏に富んだ道を走行したので、人間のエネルギーも不足していたようだ。

 

みつぼし食堂前にて

(店のご主人撮影)

 

すっかりとくつろいで、気力も湧いてきた。店の前で写真を撮って出発しようと思っていたら、ご主人がわざわざ出てこられ、シャッターを押してくださった。その後、当方の出身地、道内の日程、どこへ行ったかなどの話をしたのだが、ご主人曰く「北海道は今が秋真っ盛りで、一番良い季節だよ」と。なるほど、やはり夏は盆前までということなのだろう。まったくその言葉の通りで、爽やかに吹く風は秋そのものだ。

 

お礼を述べて出発する。時刻は17時過ぎ、そろそろ今日の宿を探さないといけない。名寄にも士別にもキャンプ場がたくさんあるが、何となくいつもの「あの宿」へ行きたくなってしまった。

 

6.今日の着陸地点

 

駅前の道道538号線、上川北部広域農道と繋いで南下していく。この農道沿いはその名の通り、田んぼの中を貫いている。そして今は実りの秋を迎えており、黄金色の穂が秋風に揺られ頭を垂れている。日本人としてはとても嬉しい光景だ。

 

秋の田

(返す返す、天気がイマイチなことが惜しい)

 

士別からは国道40号線に乗り換えて、引き続き南下を続ける。そして、毎度寄りたいと思っている「絵本の里 剣淵」を通過する。そして、かぼちゃの生産日本一である和寒、小説でお馴染みの塩狩峠を超えると比布の街に入ってくる。

 

当ページにUPした、今までの北海道レポを読まれている方ならばピンときたと思うが、今日の宿は「比布ブンブンハウス」である。ここは予約はいらないし、屋根付きの駐輪場が完備されている、さらに料金も300円でコインランドリーやシャワーもある。いつも旅の中継地点として利用している。

 

18時過ぎに駐輪場へ滑り込み、マシンを止めて荷物を下ろす。今日は川になった砂利ダートなんかも走行しているので荷物が砂砂だから、雑巾で拭いてから室内へ入れよう。それにしても今日はお客が少ないようだが・・・、いつも暗くなってからライダーが集まるので、今日もそうなるだろう。

 

そんなことを考えていたら、入口にタバコを吹かしている若い女性が挨拶をしてきた。「あ、どうも」、当方も返答するが、これは間違いなく「変態」だろう。見るからにきままな一人旅が日常になっているような人だ。この手の方は苦手なのでさっさと荷物を運び込み、シュラフを広げて自分の場所を確保する。

 

食事は名寄で済ませてきたので、次は風呂だ。この宿に泊まる時は、5分100円のシャワーを利用しているが、今日は歩いて数分の所にある、銭湯に出かけよう。観光地図で場所を覚えて、早速出かける。時刻は19時前だが各商店は閉店準備を行っているようだ。

 

何となくその方向へ行けば見つかるだろう、そう思っていたのだが道に迷ってしまったらしい。普段はもっと複雑な道のりをたどっているくせに、小さな街で迷ってしまうとは、油断以外の何ものでもない。そこへ丁度、住人の方が通りかかったので、銭湯の場所を尋ねてみた。すると、「すぐ近くだから、一緒に行きましょう」とわざわざ案内して下さった。北海道で道を尋ねると、こういうことがしばしばあるので、概ね親切な方が多いのだろうと思う。

 

果たしてその銭湯であるが、ふれあいの湯というご老人の社交場という趣だ。料金210円を支払うと、徴収している方に「駅前にお泊りですか」と声をかけられた。ん、見知らぬ顔だからすぐにバレた、ということか。逆に言うと、ここに毎日来られる方の安否は保証付きということか。誰々さんが今日は来ていない、ということになれば、すぐに様子を見に行くこともできよう。ここなら孤独死はあるまい。貸切の風呂でくつろぎながら、そんなことを考える。

 

銭湯の様子

 

良い具合にのぼせたので浴槽から上がり、体を冷ます。結局当方の貸切風呂であった。

 

服を着て銭湯を出ようとしたら、料金徴収員からトマトをいただく。よそ者にこんなに親切してくれるとは、何とも嬉しい話だ。丁寧にお礼を申し上げて、そのトマトをかじりつつ宿に戻る。

 

今日は疲れたのでさっさとシュラフに潜り込み、マップルを見ながらメモをつけ、明日の計画を練る。いよいよあさっての晩にフェリーで帰路に就くのか。できるならば、もう一週間ぐらい滞在して、天気の回復を待ちたいところだが、そこは会社員故の縛りがあるので無理な相談だ。

 

残りを楽しもう。

 

本日の走行 400km

(ダート60km)

 

7日目へ続く