根室駅前ビジホにて
旅に出てからは早寝早起きの生活様式にしているので、今日も6時に起床。天気予報の好転を期待したが、昨日から変化は無く、午後からは雨が降りやすいようだ。それならば、午前中の走行をメインとし、午後は早めに落ち着く予定で行こう。昨日はちょっと頑張ったので、今日は少し緩めということで。
７時30分頃にチェックアウト、5,775円を支払った。随分と高い宿代だが、昨夜は洗濯と荷物整理ができたし、フカフカのベッドでぐっすり眠った。体力も幾分回復したので、これはこれでヨシノちゃんである。いつも楽しく接していただき、ありがとうございます。まだまだ旅は序盤から中盤である。張り切っていきましょう。
荷物をSLに搭載していると、ホテル前の歩道を小中学生が通っていく。部活かなと思ったが、ランドセルを背負ったり、または教科書を入れているバッグを肩から提げていることから、通常の登校のようだ。冬が厳しい北海道は、盆を過ぎると2学期が始まる。最近はお盆明けに渡道しているので、そんな光景を見かけることも多いな。
準備が整ったので、エンジン始動。最東端の街に別れを告げて国道44号線を西進する。しばらくするとオートバックスが見えてくるが、1994年の渡道の際、走行距離がかさんでここでオイル交換をている。あの時も丁度今頃の時期であったが、結構暑くて往生こいた気がする。
そんなことを思い出していたら市街地は終わり、原生林や牧草地、湿原が次々と流れていくき、改めて北海道に来ているんだなぁと実感する。これで天気がスカッと晴れてくれるなら、文句はないんだけどね。
それよりも、根室と厚床間は速度取締が厳しいらしい。現に2009年には、管理人も厚床市街地でポカをやらかしている。それ以来国道44号線を走行する際は、十二分に気をつけて37ノットをピタリと維持することにしている。もちろん、草むらが続くような場所でもパトカーの回転灯が頭を出していないか、ピリピリと張りつめている。
こうなると景色どころではない。厚床の街までやってきたが、どこをどう走ってきたのか記憶が無い。話は変わるが、近しい方々から「レポートはかなり詳細なメモを取って作成しているのか」とたずねられることがあるが、実はメモが3割、4割記憶を基にしている。「よくそんなに憶えていられるなあ」とよく言われるが、いやいや、地図を見ればその時の記憶はすぐに蘇るし、さらにメモで補強すれば70％ぐらいは旅を再現できる。中にはもっと詳細に、より多くを文章にしておられる方々がたくさん見えるから、管理人のレポは粗いものだ。
厚床で右折し、国道243号線に乗り換えるが、まだ市街地なので制限速度をキッチリと維持していなければならない。速度制限がかかっている市街地で信号停止すると、つい加速時に速度超過をしてしまうが、ここが当方の盲点である。
厚床の市街地を抜けて、制限速度＝法定速度になった。やれやれ、ここから先はしばらく街が無いので、景色を楽しみながら走行したいものだ。緊張感から開放されて目に見えるものは、豊かな水を湛えた湿原だ。時々小さな橋を渡るのだが、この時に川の上流側を見ると、葦のような植物がずーーっと生えていて、野鳥などがたくさん生息していそうな雰囲気である。また、琵琶瀬などで感じるいい水の匂いもあるので、魚もたくさんいるに違いない。
ちょっと疲れたし、予想以上にオホーツク海側の気温が低いようだ。トイレにも行きたい。国道243号線との分岐点に奥行P.A.があるので、ここで休息しよう。ここは駐車場とトイレのみの施設だが、一台キャンピングカーが止まっており、水道でフライパンを洗っている人がいる。用を足してマシンに戻ると、ヒゲを生やした60歳ぐらいの方が話してきた。彼は最近仕事を定年退職し、独りで旅をしているとのことだった。また、いくらでも時間があるということで、用もなく食器を洗っているそうだ。
時間があることは羨ましいが、北海道に来てまでフライパンを洗っているだけというのはどういうことだろう。温泉を巡る、廃線跡の駅をひとつづつ訪ねる、鮭釣りをする、北海道でなければできないことが山ほどあるだろうに。まあ、いろいろと事情がお有りなのかもしれないので、話を一通り伺ってから出発する。
引き続き国道244号線で北上していく。すると本別海辺りからは海沿いに出るのだが、海上は霧でやけに視界が悪い。本来この辺りまで来れば、野付半島、その先には国後島が見えるはずなのだが、真っ白である。
今日は最初に野付半島の先まで行こうと思っているのだが、これでは眺望は望めない。まあ行けるところまで行ってみて、その後の処遇を考えることにしよう。こちらもある程度時間に余裕のある、独り者の会社員だ。
尾岱沼の街を通ると、尾岱沼ふれあいキャンプ場の看板を発見した。ここも19年前に泊まったことがあり、隣にテントを張った方が知り合いの知り合いだったということがあったな。その時の写真を後日友人に見せたところ、すごい偶然だと驚いていた。
そんな若き日を思い出しつつ、いよいよ野付半島の入口から道道950号線に乗り換えて、heading120で先端を目指す。この辺りはまだ霧の中には入っていないが、進む先は霞んでいる。そして急激に気温が下がっているようで、とにかく寒い。お、サロマ湖の北勝水産に宣伝の貼り紙があった「CRAZY MACH」なるライハはこんな所にあるのか。これは宿なのだろうか。全くの漁師の倉庫だ。
さらに進んでいくと徐々に霧が濃くなり始め、体感温度も下がっていく。これはたまらんと、第2しべつ展望PAに入り、カッパを装着する。するともう一台、バイクが入ってきた。おや、赤いニンジャ、やはりそうか。北陸道で抜かされて、同じフェリーに乗船し、西陣さんで同宿だった地元の方だ。ニンジャ氏も「だいたい行くところは同じだね」と特に驚く様子も無かった。全くその通りで、行く先々で同じ人を何回も見かけることがあるし、何年か前に見かけた方を同じ場所で再び「目撃ドキュン（古い）」することもある。
野付半島 第2しべつ展望PAにて
二日目以来の再会を喜び、談笑する。ニンジャ氏はこのまま半島の先端まで行くということであった。当方はこの霧では何も見えないので、途中で引き返すつもりだ。それにしても、野付半島は縁が無い。最初に訪れた1994年は何だか道のりが長く感じられて、半島先端から3km程のトドワラPAですぐに引き返したし、2010年の時も同様で先端まで歩く気がおきなかった。
まあ、もう少し行ってみようかな。そう思って再びSLに火を入れる。ニンジャ氏に手を挙げて道道に戻り、さらに半島を進んでいく。霧はどんどんと濃くなり、カッパにも水滴が着く程だ。これではこの先もダメだね。結局ナナワラPA付近でリタイアし、マシンの向きを変えて写真だけ撮影しておく。
ナナワラPA付近にて
（霧でよく見えない）
霧もさることながら、体感温度が低すぎる。野付半島の先端はまた次回といくことにして、元来た道道950号線を戻る。途中でニンジャ氏とすれ違ったが、本当に100mぐらいに近づくまで見えなかった。フォグランプってこういう時にこそ必要なんだろう。また、1977年に起きたパンナムとKLMのボーイング747の衝突事故の時も、管制塔も含めてそれぞれが全く見えていなかったようだが、まさにこんな感じだったのかもしれない。
ようやくクレイジー何とかというライハまで戻ってきた。すると霧は嘘のように消えて、薄日も差してくる。北海道の天気は本当に気まぐれだ。
国道244号線を羅臼方面へ少々走り、セイコマを発見した。霧中の走行だったので疲れてしまったので、糖分と水分を補給しよう。こういう時はやはり、アクエリアスなどのスポーツドリンクだ。あー、うまい。一息ついて、地図を見ながらルートの検討を行う。ここからだと開陽台などが近いが、全体に曇りがちで霧も出ているようだ。景色はあまり期待できないし、昨日はちょっと欲張って走り過ぎたので、投宿に失敗した。今日は早めに走行を切り上げるとしよう。
そう考えながら天気予報を確認すると、意外にも降水確率は低い。なーんだ、これならキャンプができるじゃあないですか。ここからだとライダーに人気のある、「和琴半島湖畔キャンプ場」が近い。管制機関には、このまま国道272号線のミルクロードを走行する、屈斜路湖直行を要求し、着陸地点としよう。ただ、一昨年のように、「和琴キャンプ場」と間違えないように気をつけなければならない。
プランが決定したので、提出・承認を済ませる。さて、そろそろ出発するかと思っていたら、チャリダー君が話しかけてきた。ここ数日はあまり人と話していないので、会話をすることは嬉しい。昔は自分のペースを乱されるような気がして、うっとおしと思うこともあったが、最近はなぜか寂しさが募ってくることもある。歳のせいだろうか。
さて、そのチャリダー君だが、バイク乗りの特性？についてたずねてきた。以下はその会話の概要である。
チ：なんでバイク乗りは故障したことや事故を起こしたことを自慢するのでしょうか。
管：ああ、そういう人もたまにいるねぇ。個人的な見解なんだけど、それは自慢ではなくて「無理に納得させようと自分に言い聞かせている」のだと思うよ。そして、「それがバイクの醍醐味」とか勝手に思い込んでいるのではないだろうか。だいたいその類の人はバイクを「チューニング・ダウン」して、燃費や操作性、整備性を悪化させて、調子を悪くする。また、当然、耐久性も落ちるから故障もしやすくなるんですよ。
チ：なるほど、（そのような人達の話を聞いていると）なんだか違和感があると思っていたのですが、確かにそういう感じがありますね。
管：これも僕の主観だけど、故障しやすく、乗りにくいバイクなんてツーリングには向いていないんですよ。しかし、金をかけて改造してしまったから、そう思うしかないのかもしれませんね。
チ：なんだかモヤモヤが晴れました。
よくわからないのだが、彼の身近にそうのような人がいるか、よくそう言う人に出会っているのかもしれない。
走行を再開して、国道272号線を磁方位200で走行し、中標津市街の南にやってきた。途中に寿司ロードなどの店もあったが、腹が減っていないし、天候が大きく変化しているのでいつ雨が降るかもわからない。とにかく前へ進むことに専念し、すべてパスした。
ここでトリップメーターが230kmを越えた。そろそろ燃料が予備タンクに切り替わりそうだったので、国道沿いにあるホクレンのスタンドへ入る。ふぅ〜、ちょっと疲れた。なんだか天気に振り回されているようで、落ち着かない。女に振り回されることもかなり疲れるが、今年の天気は豪雨や雷も伴う可能性が高いので、さらにドキドキする。
さて、肝心の燃料だが6.4Lで満タンとなり、燃費は39km/Lを叩き出した。シングルの250ccだから当たり前なのかもしれないが、これは嬉しい。ただ、TDMの1.4倍程度という切り口で見れば、大したことはない。やっぱり燃料噴射のTDMは、それだけ無駄が少ないということなのだろうか。
走行を再開し、磁方位240を維持しながら道道13号線へ乗り換える。森の中を通っていく単調鶴な道であるが、速度は37ノットを厳格に維持していく。ただ、あまりにも変化の少ない道であったので、ややタルんできたと思っていたその時、対向車がパッシングしてくれた。おっと、この先に取締りか。すぐさま速度を30ノットに落とし、路肩を遠くまで見渡しながら細心の注意を払って進んでいくと、対向車線側の森の中に隠れている警官を発見した。さらにその先に、思いっきり森の中にあるレーダーを発見した。エゲツナイ取締りだ。通常ならばカラーコーンを立てているはずだが、北海道警察は容赦ない。まあ、幸いにもこちら側の車線にはレーダーは無かったので、ひとまず安心してスロットルを開けていく。
虹別の街から国道243号線に乗り換える。地図で見れば、摩周の街はもうすぐだ。しかし、実際の距離は16kmあるので、意外と時間がかかる。北海道のマップルは縮尺が200,000分の1なので、騙されてはいけない。北海道版のマップルに騙されると言えば、2010年に上士幌の国道274号線の士幌と瓜幕、鹿追までの長く感じたこと、今でも忘れられないでありんす。
天気が怪しいしあまり眺望が見込めなさそうなので、多和平もパスして弟子屈直行で街にやってきた。流石にちょっと疲れたので、スーパーフクハラで休息をとる。ひとまず今夜と明日の天気をもう一度確認すると、今後は少し回復するようだ。それならば今日の宿は予定通りに、和琴半島湖畔キャンプ場にしよう。せっかくテントを積んでいることだし、１回は使わないと気が済まない。
ということで、スーパーへ入り、晩飯のレトルト、缶詰、朝飯のカロリーメイト、インスタントコーヒー等を買い込む。また、疲れには甘いものが良いので、甘納豆も購入しておいた。ツーリング中にはタンパク質や繊維質が不足するので、努めてこういうものを食べなければならない。
ここのところほぼ毎年ロングツーリングをしているので、少しだけ考えも回るようになったのだろうか。いやいや、まだまだ甘納豆と同じだよ。と店を出る時に「摩シュー」なるシュークリームを発見した。「摩周湖の澄んだ水をイメージした水色のクリームが特徴」と店員が説明してくれた。せっかくなので一つおやつに購入してみた。
店舗内にある「更科」さんの支店で販売されている
「摩シュー」
んー、シュークリームなんだけど皮がパリパリで、パイに近い食感だ。クリームは甘さを控えたもので、洋酒の風味がする。飲酒運転にはならないだろうが、保証はできませんので悪しからず。クリーム自体の口溶けも悪くない。安物だと口の中で溶けず、海援隊の「あんたのイヤミのネチッこさぁ〜?」というフレーズがぴったりくるものもある。
相変わらず天気はすぐれないが、国道243号線で和琴半島湖畔キャンプ場へ向けて、アクセルを開ける。それにしても人間とは感情の動物だ、と改めて感じてしまう。今日の宿が決まって、そこが目前となると、バイクまでが調子良くなったように感じてしまうのだからだ。また関係無いが、異性の方と仲良くしていただくと、人生までもがバラ色に思えることもある。そんなもんですなぁ。
因みにこの摩シューであるが、のぼりも出ている。かなり力を入れて宣伝している模様だ。
「マシュー」を宣伝するのぼり
（商品の表記は「摩シュー」）
国道を走行して約10km、右手に屈斜路湖への入口が伸びている。まだ時刻は14時過ぎだが、昨日走り過ぎたので今日はここまでにしよう。躊躇なく右折して、和琴半島キャンプ場へ進んでいく。おや、対向車線には自衛隊の部隊が通り過ぎていく。北海道ではそこらじゅうで自衛隊の車両を目にするが、屈斜路湖で何をしていたのだろうか。
そんな疑問を持ちつつ駐車場の入口で左へ曲がり、舗装の切れた湖心荘の横を通り過ぎる。TDMだったら徐行レベルに速度を落とすような路面だが、今日はオフ車のSL230だから緊張を強いられることはない。TDMは舗装路での快適性、運動性はSLの比ではないが、北海道ではこのようにしばしば舗装が切れたりするので、オフ車はとても重宝する。また、道を間違えた時の方向転換がこの上なく楽だ。そんなことを思うようになったのは、歳をとってモノグサになってきたせいだろうか。
こうして湖畔のサイトを通り、管理小屋の横にマシンをつける。地面がややぬかるんでいるので、スタンドがめり込まないように小石を置いておこう。
ここへ来るのは初めて渡道した1994年以来であり、当時のことはかなり忘れてしまった。しかし、サイトや管理小屋は少しも変わっていないようだ。450円の料金はどうだろうか、これも変わっていないのかもしれない。懐かしさにひたりながら支払いをしていると、「もうすぐ嵐になるからテントの綱を張っておいてね」と助言を受けた。え？？？、そうなの？？空は青空も見えていて、日差しもあり、暑いくらいなんだけど。「そうなんですか」と聞き返すと、「対岸の山から雲がせり出してきているでしょう。あれが来ます」と。なるほどね。まあテントを張る時にはいつも綱を張るので、いつも通りに淡々と作業を行う。ただ、今日はオフシーズン中に割引で購入しておいた新品のテントを使用するので、少々時間がかかってしまった。
件の雲がだんだんとこちらに近づいてきているので、さっさと荷物をテントに入れて、SLは木の横に移動しておく。やれやれ、新調した「モンベル・クロノスドーム�供廚涼罎任�つろぐ。この前に使用していたのは、2006年にR1-Z氏と渡道した際に購入した「コールマン・ツーリングテントST」なんだけど、インナーの広さはそれ程差は無い。前室もまあこんなもんでしょう。ただ、フライシートは一回り大きいし、目止めテープもこちらの方がしっかりしている。さらに、ペグ打ちポイントが2か所多いので、インナーとの隙間は確保しやすい。そして極めつけは専用のグランドシートだ。これがあれば、フライを張ったままインナーを畳むことができる。また、テント本体の床が濡れることが少ないので、撤収も楽というわけだ。
水分補給をしてメモを付けていると、だんだん風が強くなってきたようだ。それに伴い、周囲の人達もあわただしくペグを打ち始めたらしい。ちょっと顔を出してみると、天気が急変しているではないか。空は鉛色の雲に覆われて、冷たい風が20ノット(10m/s)程度吹いている。また、湖面を見ると、雨がだんだんとこちらに広がってきている。おりしもこの時、隣のサイトでは、どこかの大学のグループが半ばパニック気味にテントの設営を行っていた。
当方もカッパを着て大学生のグループを手伝うが、雨が降り始め、風もますます強くなってきてペグを打つどころかポールを通すこともできない。
「ありがとうございます。嵐が去ったら張り直します」
彼らもお礼の言葉を残して管理小屋に撤収していったので、当方も自分のテントに戻る。この頃になると横殴りの雨、30ノットの強風、まさに嵐になっていた。ひえー、これはたまらんと思ったのだが、大学生グループの反対側にいる人たちは必死になってペグを打っている。中にはタープを必死になって押さえている人もいる。「えー、皆さん綱を張っていなかったの？」、こちらも自分のテントが飛ばされないように、今一度綱を確認してからテントに潜り込んだ。アナコンダ。
頭と顔が濡れたのでタオルで拭いていると、タイ寺コントロール、主席管制官のR1-Z氏から入電があった。幸いにも当方のテントは飛ばされる様子もないし、一滴も雨漏りしていない。しかし、ちょっとふざけて最高度合の緊急信号、「スコーク・7700、なんてことはないけど、すごい嵐になっている」と返信した。
今日の走行を振り返りながらメモをつけて、嵐をやり過ごす。すると1時間程度で雨が止み、青空も見えてきた。管理小屋のおじさんは、「ここまで極端なことはそうそうない」と言っておられたので、珍しい事象に遭遇したようだ。これも良い思い出になることだろう。
嵐が去り、周りの人たちも活動を再開し始めた。前述のように、ほとんどの方がテントを飛ばされたようで、立て直しに精を出している。中には強風で飛ばされたペグ等を探し回っている方も見えた。そりゃそうだ、台風みたいだったからなぁ。
一方、テントに被害が無かった、または嵐が去ってからテントを張った人たちは、夕げの支度を始めている。隣にテントを張っている大学の自転車部の方々もその中に含まれていて、野菜を大量に切り、割合大きな鍋でコメを炊いている。一日に100�匐瓩さ�離を自力で走行しているし、第一若いから食欲も旺盛に違いない。俺もこんな青春を過ごしてみたかった。若いってうらやましい。
いつも過去を振り返っているが、現実問題腹も減ってきた。当方も米研いで、テント横で火にかける。嵐が去り、穏やかに凪いでいる湖面、山の向こうに沈んだ太陽、雲に映る夕焼け、このように一度にたくさんの自然現象を経験することなど、街にいてはまずありえない。そして、さらに屋外でそれらを眺めてつつ食事の支度をしている。何という贅沢、幸福、人間も動物だから自然に囲まれると気持ちが穏やかになるのだ。
しばらくしたら、鍋が吹いて米が炊けてくるにおいがする。これは米を炊く時にはとても大切な現象であり、ここからは嗅覚を活用して旨いご飯に仕上げていく、戦いのようなものだ。というのも、吹いてきたら火加減を調節しなければならいし、鍋の中の水分が無くなって吹いてこなくなったら火を強め、においを嗅いで炊き上がりの時を判断するからだ。普段の生活では自動化されたものの中で暮らしているので、このような作業はとても楽しく感じる。
少々悦に入りながら、焦げたにおいの度合いで炊き上がりを察知し、すかさず火からおろし、続けてレトルトの鍋をコンロに乗せる。やれやれ、一番大事な局面を乗り越えた。ただ、本来は「赤子泣いても蓋とるな」と言われているが、鍋底が焦げているし余分な水分は飛ばした方が良いので、蓋を開けて底と上面を入れ替えるようにご飯を混ぜて、しばらく蒸らす。んー、悪くないぞ。
この間に、空はますます赤みを増して。なんとも素晴らしい色になってきた、ついでにレトルトのカレーも良い具合だ。
屈斜路湖畔キャンプ場の夕焼け
（さっきまでの嵐はうそのようだ）
蒸らし終えたご飯の上に、カレーを注ぎ込む。以前はアルミの皿を持参していたが、鍋のまま食えば済むことだし、残しておくにしても別の鍋に入れればよいだけなので、数年前から皿は家で留守番をしている。やはりバイクツーリングの荷物は少ないに越したことはないからね。
最後にサバの缶詰を開けて、いただきます。特になんてことも無い、いやむしろ貧素な食事であるが、湖畔の夕焼けの中で食べるものだから、何でも旨く思えてくる。今日はダート走行もなかったし、距離も短いので気持ちにも余裕がある。今日はこんなところでよいでしょう。
今日の晩飯
晩飯の片づけをしているうちに日も暮れて、月が上ってきた。女心と何某ではないが、今日は本当に天気の移り変わりが速かったなぁ。そう考えながら、湖畔にある露天風呂へ向かう。ここは一昨年も利用しているのだが、非常に良い温泉だ。まず、何と言ってもタダですよ。そして簡易脱衣所もあるし、お湯も沸き放題だ。床は砂利で、少々藻のようなものが生息しているが、気になる程ではない。
「んが〜〜ぁ」、いい気持ちだ。月を眺めながら露天風呂に入る。こんな贅沢ができる環境に感謝だ。目を閉じて心の中でありがとう。ついでに首をゆっくりと動かして、肩周りの筋肉を緩めていく。あー、この気持ちをなんと表現したらよいのだろうか。この瞬間だけは全てのストレスから開放されて、何の憂いもない。今年も北海道に来て良かったぁ。
そう思っていると、若い2名のライダーがやってきて、「彼女に留守番をさせている」というような話を始めた。別に盗み聴きするつもりではないのだが、彼らの話がだんだんと熱くなってきて、「やっぱり独りで自由の方がよいのかなぁ」という言葉が発せられた。これを聞いては当方はもう我慢できない。思わず、
「まったくその通りだよ」と合いの手を入れてしまった。若い二人は「やはりそうですか？」と聞き返してきたので、「そうだ。恋人や奥さんは元々他人なので色々と妥協したりすることが多いし、時には衝突することもあるからなぁ。そんなことが続くと嫌になることもあるよ」といつもの調子でベラベラと話してしまった。
「経験者の言葉は重みがありますねぇ」と言われて嬉しいのか、悲しいのか。「偉そうなことを言っているが、俺も何もわかってはいないのだよ」、ヤマトの諸君。
若い二人には話に割って入ってしまって悪いことをした。よく詫びてから上がり、テントに戻り、明日のルート確認や天気をチェックする。明日もあまり良くないようだが、雨だけ降らなければよかろう。そう思いながら寝袋に入ってお休みなさい・・・。あっという間に眠りに落ちていた。
本日の走行 200km
5日目へ続く