8月16日〜8月25日
オープンデッキでくつろぐタイの坊さん、のような管理人
寝台に横になってからほんの数分で眠りに落ちたようだ。かなり熟睡していたようだが、午前8時頃に船内放送で目が覚める。んー、疲れているせいか、とてもだるく感じて体が動かない。やはり歳かと思いつつ、水分のみを補給してそのまま寝る。
10時頃に再び目が覚め寝台でゴロゴロしていたが、少しやる気が出てきたので風呂へ入ることにする。管理人の寝台がある部屋ではまだ寝ている人が多いようなので、静かにドアを開け閉めして廊下に出ると、元気な子供達がはしゃいでいる。今日は船体の揺れもないことだし、少々走ったりしても問題なかろう。また、これだけでかい船で旅をすると大人でもテンションが上がる、子供だったらなおのことだ。
若い者にはかなわないな、そう思いながら大浴場へ入る。誰もいないだろうと思っていたのだが、同じことを考えている人が数名のいるようだ。ただ、急かされることはなく、ゆっくりと洗い場で軽く寝汗を流してから湯船に浸かる。窓から外を見ると、晴れ渡った日本海、そして時々魚、トビウオだろうか、跳躍している姿が見えた。
すっげぇ〜、あんなに飛ぶんだ〜と夢中になっていたら、他の入浴者は上がっていった。これは写真を撮るチャンスだ。ひとまずトビウオ見学は後にして、早々に体を拭きカメラを準備する。そして慌てて滑りそうになりがから撮影したのがこの写真だ。
船内の大浴場にて
(右奥がサウナ、左奥は露天風呂への扉)
写真を撮り終えてまたくつろいでいると、奥に扉があることを発見した。おお、新造船には露天風呂もあるのか。日本海上で露天風呂、いやいや、なかなかよいではないか。扉を開けてるとやや強く、少々冷たい風が当たるものの、湯船に浸かってしまえば問題ない。風が強いのは、このフェリーが航海速力27.5ノットの高速船であることの証であり、順調に航海しているってことだ。
顔に潮風を受けつつ晴れ上がった空を見ていると、ひとりのおじさん(俺もその仲間だ)がやってきた。二人きりなので、旅の形態等をたずねてみると、家族旅行ということだった。また、「子供が大学生になったので、毎年夏休みに行く旅行も今年で最後かもしれないから」とも。そして彼の表情には、ご子息が全員大学生となり、子育ても終盤になった充足感、そして寂しさのようなものが出ていた。
毎度のように少々のぼせてしまった。エアコンのよく効いた、カフェ前のサイドラウンジで体を冷やしつつ、マップルと今はなき0円マップでルートを検討する。とはいったものの、実際は出たとこ勝負で、天気の良い所を探して走るだけなんですけどね。
今年は7年ぶりにマップルを購入しなおしたので、我ながら気合が入っているな、と呆れてしまう。やはり、SL230で走るからには、できるだけオフロードを走行してみたい。それにしても、いまさらながら気がついたのだが、北海道って未舗装路がそこらじゅうにあるんだ。それも行き止まりではなくて、開通しているものばかりだ。それにとどまらず、未舗装路を走ることでしか行けない温泉があったりする。今までオンロード車でばかりだったのであまり気にしていなかったが、改めて北海道の魅力を再認識した。
独りでうなっていると、礼儀正しい若い方が上陸後の寝床についてたずねてきた。話を聞いてみると彼は19歳のチャリダーで、大学の夏休みを利用して自転車旅行をするそうだ。それにしても管理人に情報を求めるとは、俺もベテランに見えたのだろうか。ちょっと嬉しくなって、いろいろと情報を提供する。もっとも、彼の欲しい情報があったどうかは不明だが、こういう対等な「旅人」という関係で若い人と話せることはとても楽しいし、自分と違う視点で地図を見ることができる。とても有意義な時間だ。
チャリダー氏が礼儀正しくお礼を言って去った後、しばらく地図を眺めてみる。時刻は12時を過ぎて、腹も減ってきた。そういえば今日は朝飯を食べていなかったなと、レストランへ向かう。ところで、管理人は普段の食事が貧しい?ので、いつも船内レストランを利用する。たまにはそれなりのものを食べておきたいものだ。
さて、船内のレストランは朝、昼、夜と全てカフェテリア方式であり、好きなものを選んでトレーに乗せていく。なかなかメニューも豊富であり、小鉢に塩辛とか明太子など用意されている。その中で、管理人は「タレカツ丼」とサラダを選択した。この「タレカツ丼」は新潟の名物と札が出ていた。会計1,000円を済まして、オープンデッキを見渡すことができる席に就く。「タレカツ丼は駒ヶ根のソースカツ丼みたいなものかな」と思って食べてみるが、ずっとあっさりした味付けだった。揚げだしのカツ版、というとおわかりいただけると思う。もちろん、ご飯とカツの間にはキャベツの千切りが敷いてある。
前述のように、朝は食欲がなかったが、今はスルスルと食べることができる。食事=人間の細胞(体)をつくるものだから、大事にしたい。管理人も40歳と若くはないのだが、できるだけ長く、ライダーとして生きたいと思っている。
飯を食ったら眠くなるのは世の常であり、ゆったりした時間が流れるフェリーではその傾向が顕著に現れる。食後12時30分頃に寝台に戻って、横になっていたらいつの間にか寝ていた。そして14時頃起床し、「そろそろ涼しくなってきたか」と思ってオープンデッキに出てみるが、まだまだ猛暑である。少しだけエアロビクスで体を動かしたものの、暑さに参ってさっさとエアコンの効いた船内に入る。
ところで、フェリーは退屈だと考える読者の方も多いだろうが、実際はテンションが高くなっていて、海を見ているだけでも楽しい。また、地図を見たり、上陸日の宿をどうするかも考えなくてはならないので、それなりに行うべきこともある。そして、フェリー会社としても、客を退屈させないように努力をしているようで、映画の上映をしてみたり、ビンゴ大会があったりする。その一環で、15時頃からは「やまち」という大道芸人のショウが用意されていた。あれ、この人は以前も見たことがあるぞ。こうして今もフェリーで仕事をしているのか。実に地味であるが、大変な仕事であると思う。まったくもってお疲れ様です。
体力を回復・温存させておこうと、また寝台でゴロゴロしていたら、また知らない間に寝てしまった。よほど疲れているのだろうか、今日は本当によく眠れる。いや、それだけではない。この新造フェリーがあまりにも快適なこともある。17時頃に起床し、その要因をちょっと分析してみたのだが、まずエンジンからの振動が、旧のすいせんに比べて半分程度しか感じない。これはエンジンそのものの出力が大きい上に、船体へのマウントが工夫され、さらにペラを回す軸が1軸になったからだろう。因みにペラは2重反転ペラで、カウンター側は電動モーターで駆動されている、自動車で言うところの「ハイブリッド」である。そのエンジンの出力であるが、43,000psということだ。先代のすずらん・すいせんは34,000psなので、9,000psも多いことになる。
そしてその駆動系を活かすことができる、船体の剛性そのものが、かなり向上しているようだ。例えば波に乗り上げた後、船首をが浮いた状態から水面に落ちるのだが、この時に船体からのギシギシ音が全く出ないし、横方向へねじられるような感覚もまったくない。それは船体が安定しているということでもあり、快適であるということだ。よく寝られたのは、造船所が総合的に良い船を建造したからだろう。
18時30分頃に日没を見てから寝台に戻り、横になる(もう寝られない)。快適な船旅を満喫していると、アナウンスがあり、航海速力27ノット(50km/h)で苫小牧沖を航行しており、天気は晴れということだった。今年は出かける前から天気が悪いことがわかっていたので、いきなりカッパ装着を覚悟していたが、それは杞憂だった。いや、運が良かったと言えよう。
そして定刻の20時30分に苫小牧東港に着岸した。その直前に車両甲板が開放されてたので、マシンの所へ行き、網棚の荷物をしっかりとリアシートに固定する。前述の当て板とゴムチューブがあるので、荷物の固定は本当に楽だ。
4輪車が降りた後、2輪が下船する。カタンカタンとタラップを降りていくと、ひんやりした空気とこの香り、北海道に来たのだなぁと実感する。
たまにしか来ない北海道、そして夜間の走行なので、気をつけていこう。フェリーの中で、上陸初日に事故に遭ったなんて話も聞いたことがあるので、浮かれていてはいけない。おや、所々に水たまりがあるぞ、どうやら日中は雨が降ったようだ。道路が乾いていてよかった。
国道235号線を東に向けて小一時間走行すると、富川という街があり、今日の宿である西陣さんはここにある。時刻は21時30分で、到着予想とほぼ一致した。あれ、もう店閉めちゃったの、せっかくししゃもの寿司を食べようと思っていたのに、残念だなぁ。これについてご主人曰く「最近は独りでやっているので、20時には閉める」と。
今日、同宿の方は当方を含めて3名、うち1名は同じフェリーで隣にバイクを止めていたNINJA氏だった。この方は管理人の実家近所に住んでみえるようで、地元ネタで盛り上がる。彼はもう子育てにも目処が立たので、こうして自由に行動できるようになったそうだ。軟禁開放おめでとうございます。
そしてもう一人はZ1に乗る道内の方だ。この人は少し話しただけで曲者というか、なんだか全てのことをわかったように、威張ったように話す人であった。どうもIT関連の仕事をしているようで、ディジタル的な展開で話を進めていく。当方はアナログ派なのであまり面白くない。人間ってどこまでいってもアナログですから、ディジタル的な尺度でツーリングは語れないでしょう。まあ、人の人生はどう生きようと自由なので、管理人とは合わないというだけのことだ。
それはそうと、まだ食事をしていなかったので、外へ出る。前述のように西陣さんは早々に閉店していたので、ちょっと寿司屋を探しに出かける。もちろん、お目当てはししゃもである。ししゃもといっても焼いたものではない、握り寿司だ。手前にも何件か寿司屋があったが、とても高そうな外観だったので、庶民的な外観の「正村」さんを選んだ。
暖簾も出ているので引き戸を開け店内に入るが、誰もいない。すいませ〜んと声をかけると、オークラ氏のお父様のような人がでてきた。そして並寿司とししゃもの握りハーフ(4貫)を注文する。
大将は愛想良く、どこに泊まっているのか、どこから来たのか、など旅人がよく聞かれる質問をなげかけてくる。そしてまた、名古屋圏から来た旨を告げると「暑いんだってねぇ」と驚かれる。確かに我々も暑く感じてはいるのだけど、ある意味慣れているからそれなりの過ごし方がわかっている。でも、この北海道の人達にとっては、30℃以上にもなる最高気温は想像もつかないだろう。そう、我々がマイナス二桁の数字を経験したことがないことと同じである。
おっと、寿司が出てきた。まずは並寿司から。まあ900円なのでこのくらいだろうか。
並寿司900円也
(中央の軍艦はトビウオの卵、トビッコ)
ちょっと見た目は貧素だが、味はイケル。さすがに小さいながら港町のお寿司屋だ。特にのトビッコとエビはすごく新鮮である。地元の回転寿司のものは時間が経っているからだろう、なんとなく生臭い。そして大きく異なるのは歯ごたえだ。どのネタもしっかりとしたもので、特にトビッコは本当にプチプチだ。魚好きの管理人としては大満足である。
さて、並を食べていると、本命のししゃもが出てきた。こちらのお店では既に塩が振られたものが出される。「このまま食べてください」と大将に促され、口の中に入れてみた。
ししゃものにぎり寿司
(店の紹介も兼ねて、箸入れも一緒に)
ん、口の中に旨みが広がり、塩味と相まってとても良い具合だ。そしてその塩により、甘味が一層引き立って、単純ながら深みのあるものになる。いやあ、まったくもって旨い。 因みに、大将の話では、今の時期のものは「夏ししゃも」と呼ばれているそうで、まだまだハシリだそうだ。これから秋にかけてが旬らしく、脂ものってくるということだった。いや、これでも十分に油がのっていると思うよ。
十分に満足したので、1,400円を支払い店を出る。いやあ、やっぱり北海道っていいなぁ。ひとりご機嫌になって鼻歌交じりにセイコマに寄る。これは、今回初のセイコマだ。北海道に来たら、コンビニはセイコマになってしまう、一連の儀式のようなものだ。セイコマは一人用の惣菜が充実していて、昼飯を軽く済ませたい時など、使い勝手が非常によろしい。ライダーにはセイコマ好きが多いことも頷ける。
朝飯のカロリーメイトと水分を購入し店を出ると、パラパラと雨が降ってきたので小走りに宿に戻る。すると、NINJA氏とZ1氏がサッポロクラシックを飲んでご機嫌だった。当方は酒は飲まないのでよくわからないが、「ガラナメッツ」を飲んで盛り上がるようなものだろう。管理人は疲れたので、明日の荷造りと寝る準備をしつつ、二人の会話に耳を傾けてみる。すると、Z1氏が相変わらずディジタル的な話をしていて、それをNINJA氏が聞いているという展開だった。この話に加わることはできないので、お二人にはことわって早々に寝ることにした。時刻は23時過ぎだった。
2日目へ続く
本日の走行 20km