2015年 夏の北海道ツーリング

 

2015年 7月29日~8月8日

キムアネップキャンプ場から見るサロマ湖

(繋ぎが甘いのは勘弁)

 

8月5日(7日目)

1.起床

 

朝は6時前に起床する。昨日は疲れていたので早い時間に寝袋に入ったので、こんな時間に目が覚めた。疲労感もあまりないので、今日も頑張って走るとしよう。それはそうと、昨日の天気予報によると、午後から雨が降るようだ。気になってテントから顔を出して空を見るが、まだ降り出す気配はない。しかし、あまりのんびりしてもしていられないな。

 

最新の予報をチェエクするも、昨日と変わらずだ。朝飯のカロリーメイト、そしてセイコマブランドのゼリードリンクを腹に入れる。これが案外腹持ちが良いし、それなりに栄養素も摂取できていると思われる。さっさと食べて、東へ逃げることにしよう。

 

食事をしたら、すぐに撤収作業に取り掛かる。今日は、本ツーリング3回目のテント収納なのでコツが掴めてきた。おまけにフライシートはほぼ乾いているので、何もためらうことなく片付けができ、7時半にパッキングまで完了することができた。

 

五鹿山キャンプ場入口にて

 

TDMのエンジンを始動し、暖機しながらオドメーターの数値を写真に記録しておく。今日はどのくらい回すことができるだろうか、楽しみである。そして、18番のテント床に別れを告げて、キャンプ場の事務所で同番の札を返す。既に昨日の職員が出勤していて、対応してくれた。ところで、きのうの彼の発言に悪気はないと思うが、ちょっとキャンプ場の評価を落としてしまったようだよ、ヤマトの諸君。

 

2.出発

雨が降らないことを願いつつ、キャンプ場を出てすぐの町道を左折して、R242号線で市街地を進む。さらに北進してからホクレンで給油する。345kmで13Lだから、26.5km/Lと好燃費を記録している。少し飛ばしたので記録更新にはならなかったが、良い数値だと思われた。

 

その後、R238号線に乗り換えて磁方位は090°でを維持して走行を続けていく。道はサロマ湖沿いを通り丹頂鶴であるが、トロイミスをしないように気を付けなくてはならない。観覧車などがあるちょっとした遊園地がある、道の駅 愛ランド湧別を通過する。キャンプ場でもらった湧別町の小冊子によれば、夏期のみ営業しているようだ。ところで、道の駅本体は営業をしておらず、スタンプを押すことはできないので、そのまま通過する。

 

さらに進んでいくと、計呂地地区に入ってくる。ここは旧の国鉄計呂地駅跡地があり、そこにはツーリングトレインという簡易宿泊施設がある。これは客車に泊まれるライハだが、駅長室にも泊まれるようだ。また、SLが展示してあり、保存状態も良い。

 

黒光りしたSLを横目に走行を続けると、サロマ湖の湖面とオホーツク海の境目が見えてくる。このサロマ湖は浜名湖のように、細い半島のような土地が海側に伸びていて、少しだけ空いた空間が海と繋がっている。また、マップルによると、その半島の先にはキャンプ場もあるようだ。ただ、今日は霞んでいてよく見えない。

 

湖岸沿いを走行していくと、道の駅 サロマ湖が見えてきたので入ってみることにする。時刻はまだ9時前だが少し休息していき、開店を待ってスタンプを押せればよいかなと思う。椅子に座り水分補給をしてゆっくりするが、8時50分を過ぎてもオープンしそうにない。ひょっとして地元時間で動いているかもしれないし、この先道の駅はいくらでもあるので出発することにする。

 

3.今年もこの店へ

 

火事になって閉店中である、北勝水産の前を通過する。いつだったかホタテバーガーとアーモン、いやサーモンバーガーを食べたが、なかなか美味しかった。サロマ湖と言えばホタテだろうが、意外にもサーモンの方が好みだったと補記しておこう。それはそうと、店舗の再営業開始も間近という情報は得ていたので、また機会があったら寄りたいなと思う。

 

そのまま走行していくと、キムネアップ岬の看板を発見した。ここはサロマ湖を見渡せる場所なので、寄っていくことにしよう。国道を離れて、岬へ続く町道を行く。途中で全く人気のない民宿前を通過するが、もう廃業したのだろうか。そう思いながら、岬に到着した。

 

ここにはキャンプ場があって、その整備状況はとても良い。芝がきれいに刈られていて、目の前はサロマ湖がドドーンと見渡せて、遊歩道もある。しかも料金は無料ということなので、こちらを利用すればよかったと思った。

 

キムアネップキャンプ場

 

キャンプ場を少し歩いてから駐車場へ戻ると、国際色豊かな人達が駐車場で話している。当方が自分のバイクに歩いていくと、声をかけられた。話によると、彼らは台湾の職場の仲間だそうで、レンタルバイクで北海道をツーリングしているそうだ。またバイクは、ドカティ スクランブラ―、セロー、マジェスティとバラバラである。ペースは合うのだろうかと思ったが、予想通りに「スクランブラ―の彼が飛ばし過ぎて、先に行きすぎてしまう」ということだった。そりゃそうだろうと思いつつ、取締りには注意しなくては上納金をたっぷりと払わされるよ、と助言しておく。そんなことでせっかくのツーリングが台無しにされるのは、同じバイク乗りとしても嫌なものだ。

 

キャンプ場の駐車場にて

(多彩なバイクが並ぶ)

 

互いの安全を願って、道道858号線を通って網走の市街地へ進んでいく。この道はサロマ湖沿いを通っており、森の中を通るなかなか雰囲気のある道だ。途中にYHもあり、独特の雰囲気を醸し出している。YHは一度しか泊まったことがないが、ここは何だかおしゃれな感じがした。

 

森のトンネル858から国道238号線に復帰して、引き続き磁方位090°をキープして飛行を続ける。常呂の市街地では、道路形状がYの字になっている所で、レストハウス常呂を通る。ここもいつぞや食事をしたことがあり、ホタテを堪能できた。また行きたい店でもある。そう思いながら、能取湖に沿ってやや南下気味に進んで行く。空はくもっており、空気も湿り気が多くなってきた。雨が徐々に近づいているのだろうか。あ、しまった、女満別のメルヘンの丘を通るつもりだったが、すっかり忘れていた。網走市街地の手前で国道39号線に乗り換えてもよいのだが、雨が怪しいので網走の市街地直行を要求する。

 

なぜ網走の市街地にこだわるのか、それは「朔峰の店」に寄らなくてはいけないからだよ、ヤマトの諸君。くだらないフレーズを呟きながら進んでいくと、網走の街が見えてくる。国道238号線はここで終わっており、市街地へは国道39号線を進むことになる。

 

ええと、駅近くだったからこの辺だったかな、速度を落としつつ右手を注意しているとありました。お目当ての「朔峰の店」を発見した。Uターン気味に片側2車線の国道を右折して、広い歩道を越えて店の前にTDMを止める。うーん、この「実直に仕事をしています」という雰囲気が漂う地味な店、これこそが当方が探していた店だ。実は昨年もこちらでニポポのキーホルダーを購入しており、サービスで「網走」と文字を彫ってもらった。それが嬉しくて、今年も寄ることができたらと思っていたわけだ。

 

 

朔峰の店にて

 

店に入り、熊の木彫りキーホルダーがないかとたずねてみたが、熊はあまりやっていないということだった。ニポポは昨年購入しているので他のものがないかとたずねてみたら、ふくろうはどうかと勧められた。これも悪くないなと思い、カタナ先輩への土産として購入することにした。料金は500円だが、その際に「イニシャルでも彫りましょうか」と提案を受けたので、お願いした。また、この店は店主と、店主のお父さんとで作品を製作していると話していた。そう言えば、昨年もそう言っていたな。

 

カタナ先輩への土産

 

さて。昨年も今年も500円のものしか購入していないが、この店には何万円もするようなものから、こういう500円のものまで品揃えが豊富である。近年では大型店ばかりが注目を浴びるが、民芸品店はこういう個人店の方が良いものを安く売っていることもある。また機会があれば、寄りたい店である。

 

こうして満足気にエンジンを始動して、国道39号線を東へ進み、網走駅前で道道23号線、1083号線と乗り継いで、そのまま網走港にある道の駅 流氷街道網走へ向かう。街中で暑かったので、水分を摂りたいし、ついでにスタンプ帳の最後の枠を埋めようというわけだ。

 

道の駅では土産物屋の前を通って最後の印を押し、このスタンプ帳はコンプリートとなった。渡道前には「最終日までにすべて埋まればよいかな」と思っていたのだが、その2日半前に目標を達成してしまった。もっと苦労するかと思っていたが、あっけなかった。北海道は道の駅がやけに多いので、こんなものなのだろう。

 

そう考えつつ、土産物屋へ立ち寄る。何かあるかなと商品を見ていたら、でかでかと「指名手配逃亡中」と背中にプリントのあるTシャツを発見した。あまりにもベタであるが、こういうのが案外受けるんだよな。どうしようかと迷うが、自分の土産が一つもないことに気がついたので、思い切って買ってみた。

 

土産のTシャツでバレトンのレッスンをしました

 

4.東へ逃げろ

 

これまた満足してマシンへ戻ると、ポツポツと雨が落ちてきた。ん、こいつはマズイ、さっさと網走を離れてよう。そう思って走行を再開し、港の市道を走行してから国道244号線に合流する。また国道の番号が変わったので道を間違えたかと思ったが、そんなことはない。安心していると、今度は陽が出てきて暑くなってくるではないか。今日は雲の流れが速いようで、天候が安定しない。昨日感じたように寒気と暖気が混ざり合って、気流が不安定なんだろうと推測される。

 

オホーツク海とJR釧網本線を左手に、右手にはラムサール条約のリストに入っている涛沸湖を見ながら、国道244号線を走行していく。晴れていれば涛沸湖の向こうには斜里岳が見えるのだが、今日は生憎の曇り空でその美しい形の山を見ることができなかった。

 

景色に乏しいと人間の気持ちは沈みがちになるものであり、おまけに蒸し暑い空気にまで襲われつつ、単調な道を行くことになる。まあ、こんな年もありますわな、昨年はドが付くピーカンで、青空の下最高のツーリングができたのだから、また次回に期待すれば良い。これはこれで楽しめばよいのだ。

 

浜小清水で流氷のレポートをしている、「わしの止まり木」という宿を見つけた。本当にオホーツク海を見渡すことができる、高台にあるんだ。そう思いつつ、一旦南へ、そして再び大きく曲がって再び東へ進んでいく国道沿いに、パラレルツインのエンジン音を響かせていく。ここからはしばらく直線道路であり、それは名もなき展望台まで続いている。それはそうと、疲れてきたので休息したい。また、ついでにライダーも補給をしておきたいので、斜里の市街地にある「しれとこ里味」へ入る。

 

この店はつぶ貝のかき揚げで有名だが、地元産のそば粉で打ったそばも名物となっている。麺類も良いなと迷うが、米が食いたいのでつぶ貝のかき揚げ丼を注文する。料理が出来上がるまでは雨雲の動きを確認したり、マップルを眺めてはツーリング終盤のルートを組み立てたりして過ごす。この間にも続々と客が入ってくるので、地元でも人気の店のようだ。

 

それはそうと、この後どうしようか。雨雲が北西から南東へ少しづつ下りてきているので、知床に行っては雨に当たりそうだ。雨が降っては景色も見えないので、泣く泣く諦めかなぁ。残念な気持ちになったところで、かき揚げ丼が運ばれてきた。うぉ、何じゃこれ。えらくでかいじゃあないですか。メニュー表の写真ではそれ程ではなかっただけに、実物を目にして驚いてしまった。

 

つぶ貝のかき揚げ丼

 

早速かき揚げから食べ始めるが、具材が細切りにされているので食べやすく、歯ごたえも良い。もちろん、つぶ貝と野菜の味がしっかりと味わえる。旨い旨いとかき揚げ、丼つゆの染みたご飯を食べていく。結構腹が膨れたなと思ったが、まだかき揚げが丸々1本、ご飯も3分の1程度残っている。やはり、そばにしておけばよかったと後悔したが、後の祭りとはこのことである。最後は腹をパンパンにして完食となった。

 

天気が崩れてくるので早いとこ出発したいが、この状態でのライディングは難しい。結局、ルートを反芻しながら30分程度腹を落ち着かせて、運転ができる状態になってから店を出た。これだけ食べても、値段が850円とは誠にお得である。地元の方々にも人気があるわけだ。

 

5.拷問

 

店の外へ出ると、雨が降るぞという匂いがしてきた。これで知床行は完全に無くなり、国道224号線を伝って根北峠を越え、標津へショートカットするルートを提出する駐車場で準備をしていると、空荷のドカがやって来た。少し話してみると、別海にテントを張ったままにしているそうだ。それで空荷だったのかぁ、そろそろそういう旅に切り替えるべきだろうか。

 

昨年給油したホクレンのスタンドがあるY字の交差点を右折して、機首を130°へ向ける。Y字と言えば、エロ本付録のDVDで「響ちゃん」という娘がミニスカでY字バランスをして、股間へカメラが近づくという場面があった。

 

越川地区を過ぎると山道になってきて、中高速コーナーが次々と現れる。こういう場面でもTDMはライダーを怖がらせることなく、狙ったラインを描いてくれる。荷物を載せているから操縦性が落ちることは間違いないのだが、リアタイヤの荷重が増えている分、向きを変える能力は高いので素直さはむしろ高まっていると言えよう。

 

順調に飛ばしていると、旧国鉄根北線の越川橋梁が目に入ってくる。山の中でいきなり現れるので驚いた。これについては帰宅後に調べてみると、未成線のものだとわかった。つまり、この橋梁を列車が通ったことは一回もなかったということだ。旧国鉄の美幸線と言い、設備を完成させておいて開業しなかったという例が多く見られるのも、北海道ならではだ。

 

峠に近くなってくると、気温も下がって快適になってくる。しかし、峠を越えて標津側に下りてくると、また気温が上がってくる。暑くなってきたなと思っていると、急に冷たい空気が当たる。おそらく、暖気と寒気が撹拌されていて、場所によっては寒気が溜まっている所があるのだろう。

 

昨年行こうと思っていた、川北温泉へ続く林道の入り口を通過して行くと、国道244号線は一直線になる。何とも北海道らしい風景だが、もし天気が良いならば野付半島の方まで見通せるかもしれない。

 

暑いので水分補給をしようと、路肩にマシンを止める。水を飲みつつ、今日のランディング地点を考えるが、この調子なら根室辺りになりそうだ。雨予報なので、キャンプは避けたいのでライハになるが、それならば納沙布岬の鈴木食堂だ。早速電話して予約をしておく。人数と名前、予想到着時刻を伝えておいた。

 

国道244号線と道道975号線が交差する付近にて

 

走行を再開して、真っ直ぐな国道を進んでいく。そういえば、ここ数年開陽台に行っていないので、看板が出ている道道974号線へ右折して、一時的に機首を磁方位を200°に向ける。これまた真っ直ぐな道道を進んでいくと、道路に何かが落ちている。よく見ると「エロ本の山」ではないか。

 

さっきもエロ本のことを思い出していたので、欲しいのは山々である。しかし、道路に落ちている中古品ではイマイチだ。だが、内容が気になる。葛藤しつつも、アクセルを開けて後方に振り切った。

 

予想外の誘惑に心を乱されて、ようやく落ち着いてきたところで雨が落ちてきた。空はそれ程暗くないのですぐ止むかなと楽観視していたが、結構な降り具合となってきた。これを抜ければ雨は上がりそうだが、内陸の方が雲が発生しているようなので元来た道道を戻っていくことにした

 

Uターンをしてまた道道774号線を戻っていくと、再び「エロ本の山」ポイントが近づいてきた。心を乱される誘惑を2回も通過するとは、まるで「拷問」だよ。関係ないが、アニメ「うる星やつら」の脇役で、拷問研究会代表という肩書きを持つ「サド山」という人物が登場する。しかし、気が弱いという矛盾した性格を持っているようだ。

 

「エロ本を見たい」という誘惑を2度振り切り、国道244号線のT字まで戻ってきた。ここまで来ると、知らないうちに雨が上がっていた。安心してheading100°として野付半島の付け根を目指す。一直線の道で両脇には牧草地が広がるという、いかにも道東という景色だ。季節的に、牧草ロールも鋭意製造中と言う様子である。

 

6.目的地はまだ先に

 

国道335号線とのT字路にやってきた。ここを右折して、国道番号は244のまま伊茶仁(イチャニ)地区を南へ進んでいく。雨は降っていないが、所々道路が濡れている。この辺りでも雨が降ったようだ。まあ、どちらにしてもカッパを着ないで済んでよかったよ。

 

サーモン科学館の看板を見て、先へ進んでいく。去年はここへ行ってサーモン丼を食べたが、鮭の遡上は見ることはできなかった。因みに9月に入れば遡上が始まるということなので、そういう機会もできれば良いかなと思う。

 

野付半島への入り口である道道950号線を左に見て、30ノットを維持して進んでいく。すると、21年前に利用した尾岱沼ふれあいキャンプ場と尾岱沼公共浴場横を通った。後日ストリートビュー等でこの辺りを確認したところ、当時と変わっていなかった事には驚いた。

 

昨年は国後島がくっきりと見えたが、前述の通り今年は曇りで見えない。納沙布岬でもそうだが、北方領土は本当に近くて遠い場所だ。晴れていれば目の前に見えるのだが、ロシア人が住んでいるので、戦前に住んでいた人でさえなかなか上陸することができない。

 

さらに行くと、道の駅 おだいとうの前を通る。ここでは昨年、ZZR-400の女性と出会い、鈴木食堂の情報を提供したなと思い出した。ライハを転々として旅をしているこの古いお姉さんに、良い所はないかとたずねられたのだ。そこで、その日の前夜に泊まった鈴木食堂についてはなしたというわけだ。その際に「インディアン・サマーはどうか」とも聞かれたが、2013年に当方のミスとは言え入れてもらえず、ダメ押しされたことから鈴木食堂を推しておいたのだ。

 

そんな思い出と共に、どんよりとした空にに負けないよう、寂しい道を南下していく。本別海、走古丹など見慣れた地名の看板が目に入ってくる。これは、だんだんと東の果てに近くなっていることを示しているので、今年も来たなと嬉しくなってきた。

 

ヤウシュベツ川にかかる万年橋を渡り、路肩に寄って休息する。ここは本当に水が綺麗で、野鳥がいないかといつも思うのだが、案外何もいない。橋の中ほどで佇んでいると、一昨日みどり湯で同宿だったR1の方が、手を挙げて走っていく。向こうは気づいていないようだ。

 

さて、このヤウシュベツ川は風連湖という汽水湖に注いでいて、その河口付近は湿原になっている。これはその川の名前から、ヤウシュベツ川湿原(そのまま)と呼ばれている。

 

ヤウシュベツ湿原

 

休息を終えて走行を再開し、南下を続ける。奥行臼の駅跡地からは、国道233号線と番号が変わる。そして、湿原の中を通っていくと、厚床の市街地に入ってくる。ここでは速度を一気に25ノットまで落とす必要がある。そして、オマワリが上納金を払わせるための関所を開設していないか、十二分に注意を払って進み、国道44号線とのT字路にやってきた。

 

ここは左折して磁方位を090°とするが、気を抜いてはならない。交差点を曲がっても市街地はまだ続いているので、制限速度25ノットを堅持していく。なんだか嫌だなと国道を嫌って、道道を使うことにした。左折後すぐにセイコマのある交差点を右折して、道道1027号線、初田牛から道道142号線に乗り継いで最東端を目指す。こちらの方が遠回りになるものの、取締りに気を配る必要が無いので、結果として早く進むことができる。

 

7.着陸態勢

別当賀地区を通り過ぎて、落石地区で左折して道道を追いかけていく。そして、昆布盛付近ではユルリ島、モユルリ島を右手に見る。ここには野生の馬が住んでいるらしいが、無人島という旨、マップルに記載があった。冬は大丈夫なのだろうか。関係ないが、ジムには「酒盛(坂守)」という奴がいる。

 

昆布盛地区にて

(モユルリ島とユルリ島)

 

根室の市街地郊外で道道を離れて、根室駅の裏手を通って花咲宝林町通りで踏切を渡る。時間に余裕が出てきたので、最東端の駅である東根室駅へ寄って行くことにし、光洋町通りを右折していく。喉も渇いたので突き当りのセイコマまで行ってしまい、水分を購入した。また、ついでに現金も入手しておく。

 

少し通りを戻って、左折して少し住宅街を行けば東根室駅である。とても小さな駅だが、観光客がポツポツと途切れなく訪れている。その割には駐車スペースが貧弱で舗装されていないので、マシンを止める時に若干が心配になってしまう。

 

看板の前に自転車を置いて写真を撮る人、無人駅なので、ホームに上がり雰囲気を楽しむ人、過ごし方は様々で面白い。当方も記録写真を撮影しておく。

 

東根室駅のホームにて

 

道道35号線まで戻り、機首を磁方位090°に向ければ納沙布岬へ一直線である。前述のインディアンサマー・カンパニーの前を通り、宿無しになりかけたことを思い出した。、当方のミスなのだが、時間が過ぎているのでと断られてしまった。ここは時間に厳格なので、利用する際は十分に気をつけよう。

 

根室郊外の、全く人気が無い湿地帯を悠然と進んでいく。今年は既に宿を予約しているので、一昨年前のようなことはない。また、鈴木食堂の女将さんはとても親切であり、商売についてもよくわかっておられるので安心だ。こう申し上げるのはほかでもない、2009年に前述のインディアンに宿泊した際、女将さんがとても厳しい一言を言ったのだが、それに対して無意識に「厳しいなぁ」と返した別の宿泊者がいた。これに対して女将さんが意地になってしまい「そんなこと言うならば、XXしてやるよ」的な事(細かい内容は失念した)を言い返し、その宿泊者が困惑していたことがあるからだ。

 

確かにライハなんて儲かるものでもないのだが、皆そこで5,000円なり、10,000円なり土産を購入しているので、そんな言い方をしなくても良いと思うは当方だけだろうか。いや、お金もそうだが、最東端に来て泊まっていくなんて一期一会の事なのだから、やはり大事にしたいと思うのだが。

 

今となっては笑い話だな、苦笑いをしつつ納沙布岬を目指していく。ここまでくれば空には青空も見えているので、雨の心配は無さそうだ。安心して、歯舞地区の漁村を走行していく。おや、港に蛍光灯をたくさん装備した船が出漁の準備をしている。イカ漁に出るのだろうか。

 

さらに珸瑤瑁地区を抜けると、風車と北方領土返還の看板も見かける。以前はもっと過激なものもあったが、その手のものは姿を消したようだ。そして、その向こうにはササガワの塔こと、オーロラタワーも見えてくる。いよいよ最東端は近いぞ。

 

こうして、人影がまばらな納沙布岬の駐車場にマシンを止める。今年も来たなぁ、最果て感は宗谷岬よりもこちらの方が上だね。どうですか、吹いてくる風はいつの間にか物悲しい秋の風じゃあないですか。旅情をかきたてられられますなぁ。因みに、時刻は16時30分過ぎで、余裕を持った到着となった。

 

納沙布岬にて

 

この後、鈴木食堂へ行き、電話予約した者だと名乗り出て手続きをする。そして2回目だと告げると、詳しい説明は要らないねということで、ライハに荷物を入れる許可をいただいた。今日の宿泊客は、現時点では3名ということだったのでがっかりした(昨年のように、独りでくつろぎたかった)が、所定の棚に荷物とヘルメットを置き、店舗へ向かう。

 

椅子に座り食事をお願いするが、鈴木食堂と言えば「さんま丼と花咲ガニの鉄砲汁のセット」である。ただ、今年はまだ生のさんまが手に入らないということで、冷凍物の刺身を使用するということだった。こう言うと質が落ちるような印象を与えるが、漁獲後すぐにおろされて、液体窒素で瞬間冷凍したものである。もちろん、鮮度はほぼ維持されていて、解凍時にタレを染み込ませたヅケになっているので、この点では生モノよりも美味しいと言える。

 

きらびやかに光るさんまを食べれば、言葉も出ない。何も言わなければ生だと思ってしまうくらいだ。それにしても、さんまは近年不漁が続いているということだ。それは、中国が乱獲しているらしく、日本近海に来る前に獲り尽くされてしまっているのではないか、ということだ。うぬぬ、小笠原の近海ではサンゴが乱獲されていたそうだが、さんままでもがやられているのか。大切に、味わうように、食べていく。

 

鈴木食堂名物

さんま丼セット

 

そうこうしている間に、予約していた人や、飛び入りのライダーが次々にやってきて、最終的には6名となった。もちろん全員男である。女将さんは「息子がいっぱいできて嬉しい」と言っては、口の悪い20代の人を怒りつつ、とてもかわいがっていた。曰く「出来の悪いの程かわいいものだ」と。

 

さて、ご主人と話をしていて、昨年尾岱沼で会った女の人に「インディアンサマーではなく鈴木食堂を薦めた」ことを話したところ、そのことを覚えていた。「最初はインディアンに行ったんだけど、男ばかりの大部屋だったのでこっちに来た」ということだ。ところで、何でインディアンサマーではなく、こちらを薦めたのかをたずねられた。当方はご主人にその訳を話すことにした。

 

時を遡ること2年前、あの時も夕方に納沙布岬に到着した。根室近郊にはキャンプ場が無いので、鈴木食堂に宿を求めた。しかし、その時は団体客が入る予定だったので、断られてしまったのだ。これは仕方のないことなので、隣の武内商店を訪ねた。すると、カニを「2,000円で買わないか」と言われた。花咲ガニだったのだが、花咲港ではもっと安く売っているし、食事は準備できないということだったのでパスした。

 

困ったなと思いつつ、インディアンサマーに電話した。すると「うちは17時を過ぎたら一切受け付けない」の一点張りだった。まあ、そういうことで営業しているのなら仕方ないな。そう思ったところに「ライダーハウスなんていくらでもあるでしょ」と、ダメ押しまでされてしまったのだ。いやいや確かにそうだが、別に怒られることでもないし、商売ならばもうちょっと言い方があるんじゃあないの。お寿司屋みたいに「シャリが終わってしまいました」とか。

 

それを聞いていた女将さんが「あそこは何様なんだろうねぇ」と、ややキレ気味に言っていた。そして「せっかくこんな果ての地まで来てくれたんだから、空いていれば泊めてあげるけどね」と優しいお言葉もいただいた。

 

それはそれでさっさと水に流して、当方はグッチ1200スポルトに乗る、神戸のブーツ職人さんと語り合った。彼はにわかライダーではなく、今までにツーリングを数多くこなしてきているようだ。そして、理想のバイクについては、信頼できて、適度に快適なバイクだと意気投合する。つまり、一発の性能ではなく、ツーリング性能の高いバイクが良いバイクだと。

 

近年、派手でハイパワー、電子制御をフル装備したものが人気を博しているが、そうではない。虚飾を排した、調整・修理ができて、故障要素の少ないものの方が安心するものだ。もちろん、重量は軽いものが良い。

 

一方、若い人達の意見にも耳を傾けるが、当方から見ると「若いな」と思える内容だった。こんなことを思うとは、別に偉くなったわけではなく「当方が歳を取った」ということを意味するのみだ。もちろん、当方にも若い時期があり、そういう風に思われていたに違いない。ただ、マップルの読み方を知らなかったことには閉口した。マップルを見ても、どのくらいの距離があるか、わからないと言うのだ。「道の横に小さい数字があるよ」とさりげなく教えてみると、ちょっと恥ずかしそうに「・・・って言うか、知らなかったし」と言っていたが、よく見ろよというものだ。

 

外では20時ごろから雨が降り出し、一時的に強くなったり、弱くなったりを繰り返している。そして、そんなところに「今から泊めてもらえますか」とチャリダーから電話が入ってきた。何でも、まだ根室の市街地にも来ていないらしいのだ。結局この人は「明治公園でキャンプする」ことにしたようだ。そりゃそうだ、夜中になっちゃうよ。

 

結局24時頃まで話が盛り上がり、就寝となった。

 

本日の走行 330km

 

8月6日(8日目)へ続く