2015年 夏の北海道ツーリング

 

2015年 7月29日~8月8日

 

最北端の牧場

8月3日(5日目)

その2

 

1.最北端

 

さて、宗谷岬へは国道を行けば良いのだが、当方の場合は決まり事として道道889号線に乗り換える。この道は宗谷丘陵を貫く道で何回か通っているが、そこに広がるフィヨルドはいつ見ても驚いてしまう。氷河があって、地面が削られて出来上がったという地形だが、いったいどれだけの力が加わっていたのだろうか。

 

たまには管理人も一緒に

宗谷丘陵にて

 

大地のロマンを感じつつ道道889号線を離れて北に針路を採り、牧場を眺めながら最北端を目指す。おりしも牧草地では刈り込みから牧草ロールを作っている。好天が続いているので、作業もはかどっているらしく、多くのロールが見られた。冒頭の写真がその様子だ。

 

鹿の一群を横目に、少しずつ長くなってきた影を従えて最北の地である宗谷岬へ到着する。やれやれ、なんだかやっと着いたという感じで、疲労感が重い。それもそのはずで、温度計は26.6℃を示している。この日は全国的に猛暑となったようで、最北端でもそれは例外ではなかったようだ。しかし、正直なところ、ここまで来れば涼しいと思っていたので、この気温表示は意外だった。日中がそれほどに暑かったということだろうか、それとも暑さに慣れたのだろうか。

 

こんなに暑い宗谷岬は初めてだ

 

さて、日本の南極観測船がその名を頂くこの岬であるが、夕方に来ると何とも物悲しい雰囲気だ。駐車場から堤防沿いに歩いていくと「宗谷岬」の歌碑と、ボタン式演奏機がある。ただ、ボタン式とはいうものの、実際はひっきりなしに人が来るので歌は流れっぱなしだ。因みにこちらの歌碑の歌い手は千葉紘子という人だ。後日、ダカーポ版も聞いてみたが、千葉版の方が好みであると補記しておこう。

 

2006年にR1-Z氏とこの地へやってきたが、その際は「人感センサー」に反応して歌が流れていた。それ以来、我々の間では「人感センサー」と言えば、この宗谷岬の歌碑なのである。

 

「宗谷岬」の碑

(この向こうに樺太が見えるはずだが・・・)

 

また、宗谷岬といったら「樺太が見えるか」ということが気になるところだ。今回は海全体がガスっぽくて見えなかったので、残念である。仮に見えたとしても、40㎞程度離れているので結構見えにくい。北方領土の国後島などがはっきり見えるのとは、ちょっと事情が異なるのだ。

 

最北端のモニュメントと間宮さんに挨拶して、そろそろ稚内の市街地へ戻るとしよう。時刻は17時だが、みどり湯の女将さんからは「18時までにチェックインして欲しい」と言われたので、急がなくてはならない。いつもはそんなに急かされないのだがどうしたのか、そう思いつつ、国道238号線でTDMを飛ばして夕日のある方向へ進んでいく。

 

宗谷岬の碑

 

2.みどり湯に到着

 

稚内の市街地へ戻ってくると、夕方の混雑する時間帯となっていた。多くは地元の車両だが、その中にも旅のライダーも散見される。今回は珍しくも、ホンダのヨーロッパモデルである「ドゥービル」を発見した。今まで展示車両を数回見たことはあるが、実走している機体は初めて見た。おおっと、感心している場合ではない。

 

急いで戻ってきたので、みどり湯には17時30分頃に到着した。チェックイン時に、今日は月曜日なので銭湯が定休日だと知らされる。一瞬「しまった」と思うが、そこはライダーに支持されるみどり湯である。ライハに宿泊する者限定で、20時まで風呂を沸かしてくれるということだ。別に休みならノシャップ岬の近くにある温泉へ行けば良いのだが、みどり湯の計らいは大いに嬉しい。あ、そうか。それで早く来て欲しかったわけね。納得しました。

 

今年は宮崎のバアサンがいないので、女将さんに銭湯代込で1,500円支払い、宿帳の記入をしてチェックインする。いつぞやはそのバアサンが手を出してきたので気分が悪かったが、今日は気持ちよく過ごすことができるよ。

 

そう思いながらマシンから荷物を下ろし、2階の荷物棚に一つづつ収めていく。さて、今日はどの寝台にしようかな、奥は既に一杯だったので階段に一番近い位置の上の段にした。人の出入りがあってうるさいかもしれないが、ここなら隣に誰かくることもなかろう。

 

3.ノシャップ岬へ

 

時刻はまだ18時前か、せっかくだからノシャップ岬へ行こう。空全体が霞んでいるのは前述の通りだが、ここまで来て行かないというのは何となく気持ち悪い。女将さんには19時までに風呂に入るとことわって、軽くなったTDMで道道106号線へ出る。

 

踏切を渡って北に針路を採り、市街地から寂しい海沿いの道へ進んでいく。宿も決まっているので何も心配はないが、チョット心細く感じる。この時間帯ってどうも苦手なんだよなぁ、そう考えつつ左旋回をしつつ、ツインエンジンの排気音を響かせて岬へ向かう。

 

10分程でノシャップ岬に到着した。マシンを止めた後、広場へ歩いていく。イルカのモニュメントと沈みゆく夕日、そして霞む利尻富士を交互に見ながら、花壇に腰を下ろす。ふぅとため息をついて、最北の地で脱力してしまう。あ~、今日もよく走ったなぁ。いったい俺は何で走っているのだろうか、ふとそんな疑問が浮かんでくる。特に理由はないけど、走行しているその瞬間が楽しくて仕方ないんだよなぁ。いつものことであるが、バイク好きには理由など必要ではない。楽しいか、楽しくないか、それが問題である。

 

ノシャップ岬にて

 

7.ランディングへ

 

さて、そろそろ宿へ戻るとしようか。マシンに跨り走り出し、道道254号線、通称「無事カエルロード」を南下していく。昔はカエルの人形が何十体も並んだ家もあったが、最近はずいぶんと寂しくなった。壊れたりしても新しいものを作る人がいなくなったからだろう。当方の場合、この人形を見て安全運転を再認識するので、残念である。

 

残り少なくなった人形と

 

 

再び道道106号線に乗り、みどり湯に到着した。女将さんからは「霞んで(夕日は)見えなかったでしょう」と、たずねられたので「その通りです」と返答した。女将さんとしては早く風呂に入って欲しそうだったので、早速風呂に入ることにした。

 

脱衣所に入ると誰もおらず、貸切状態だ。まずは体を洗って、慎重に湯船に浸かる。お~、いつも通りのかなり熱めの湯温だ。足を伸ばしたり、腰を反ったりして筋肉を動かす。誰もいないので気兼ねなく、念入りにストレッチをすることができた。一日の終わりに風呂に入るって、なんて気分が良いのだろうか。普段なら何でもないことだが、旅に出るとこんなことでも感激してしまう。そんなことを思っていたら、ついつい長湯になってしまい、ノボシビルスクになってしまった。

 

脱衣所で体を服が、汗がダラダラ出てくる。フランス宰相のダラディエである。我慢して服を着て外へ出ると、気温が肌寒いぐらいに下がっている。ちょうど良いなと体を冷ましがてらに、セイコマに夕飯を買いに行く。この北のコンビニは独特で、ちょっとしたスーパーのようだ。野菜、果物はもちろん、惣菜も充実している。ところで記録によると、この日はオレンジジュース、ザンギ入り焼きそば、こんにゃくゼリー、ポッキーを購入したようだ。連日の暑さで食欲が落ちていたようで、水分ものを好んでいるようだ。

 

宿に戻り、明日の飛行計画を策定したり、天気を確認して食事をする。ああ、ここで洗濯をしておけば、残りの5日間を過ごすことができる。洗濯機もちょうど空いているので、さっそく洗濯を開始だ。また、引き続き21時までのフリータイムを、ライダー諸氏と話してたりして過ごす。その中で、BMWに乗る関西出身の方と話が盛り上がった。彼はあまり口が上手い人ではなかったが、その発言には面白いものがあった。

 

「人間にも平熱があるように、バイクにも平熱がある。死んだら体温がなくなるし、病気ならば高熱が出る」

 

なるほどね、これは中々意味深い。無理してエンジンに無理させれば過熱するし、あまりだらだらしているとちょうどいい温度が出ない。人間も気合が足らないと注意力散漫になるし、体調を無視しちゃうと病気にもなる。

 

そんな話で盛り上がっていたら、21時になった。このライダーハウスでは「強制」で21時に1Fに集合せねばならない。ただ、「強制」言いつつも、別に「強制」ではない。事実、疲れて寝てしまった人も数人みえた。どういうことかと言うと、これは女将さんの「できるだけ参加してもらって、各人が最北の街の思い出をつくってもらえたらな」という優しさから出た言葉であろう。それが「強制」という照れ隠しの言葉になっているのだろう。

 

照明が落ちてミラーボールが回りだすと、「場末のスナック」という女将さんの口上で飲み会の開始が宣言される。そして、貴重品の管理は自己責任、酒はカンパ制で「宝酒造の大自然を飲み放題」、酒を無理にすすめてはいけない、ケンカ両成敗の法則に則り両名共に強制退去、などの注意事項が説明される。因みにこちらの強制は本当に強制であり、実績もあるようだ。

 

次に一人ひとりが自己紹介を行うが、良かった場所や楽しかった出来事などを話すことになっている。今年の当方も例年通りに道程を話しつつ、今年は暑いと付け加えた。

 

これが終了したら歌詞が書かれたスクリーンが「手動」で下される。松山千春の「大空と大地の中で」を合唱する時間だ。この際、皆で肩を組んで歌うのだが、当方の隣が女性になる場合がまあまあある。過去の記録を調べてみると、通算で6泊している内で2008年、2011年の2泊目、今回と3回が女性と隣になっている。え、50%の確率なんだ。これについて、泰寺管制センターのR1-Z氏はみどり湯のブログ(http://blog.livedoor.jp/midoriyu_wakkanai/)を閲覧して「また女性と肩を組んで、楽しそうにしている」と、後日感想を述べていた。

 

皆で合唱の図

(隣が女性だったなんて、意識していなかった)

写真はみどり湯の提供です。

 

その合唱であるが、管理人はけっこう好きなんですよ。みどり湯に来る理由の2番目に、この合唱の時間が楽しみだということがある。何が楽しいのか、単純に同宿の方々と歌うその一体感というか、そのあまりにも確率の少ない偶然に出くわしている、というその瞬間にロマンを感じているのだろうか。

 

さて、隣に女性がいるついでだが、ここでは過去に同宿となっり、結婚した夫婦が数組いるようだ。そして、結婚式を宗谷岬で挙げて、みどり湯で披露宴を行うという濃~い方々も。その模様を撮影した写真が壁に貼ってある。そんな偶然って存在するんだと毎度驚き、ちょっと信じられない。

 

おっと、洗濯物を乾燥機へ入れ替えなきゃ、おいおい、女モノの下着が放置してあるじゃあないか。実は1時間ぐらい前から「早く空けてくれよ」と監視をしていたのだが、もう限界だ。洗濯機に置いてあるカゴにそれらを入れて、武士の情け?でタオルをかけておく。やれやれ、やっと乾燥機を回せるよ。ついでにジーパンも一緒に入れて、乾燥させておこう。これは気持ち良く明日を過ごすため、当方がよくやることである。洗うと乾燥に時間がかかるが、乾燥だけならできた分だけ気持ち良く履くことができるからだ。

 

こうして夜も更けていき、消灯時間の30分前である23時30分になった。皆で片づけをしてそれぞれの寝床に就く。明日は北から曇りになるということなので、早めに出発しよう。

 

本日の走行 340km

 

8月4日(6日目)へ続く