2014年 夏の北海道ツーリング

 

2014年 8月22日~31日

 

宿の前にて、出発前の一葉

(左からバリウス氏、パッカー氏、管理人、津田塾氏、立命氏)

 

 

8月26日(4日目)

 

1.起床

 

7時30分ごろに起床した。ちょっと眠いのは、昨晩24時過ぎに床に就いたせいだろう。さらに、牛乳やお茶を飲み過ぎたせいか、3回もトイレに起きてしまった。歳だからということも多少あるが、普段はこんなことはない。恐らく、お茶が利尿作用の高いものだったのだろう。

 

2度寝していると、一階より「ご飯の準備ができた」と呼び出しがあったので降りていく。ここは1泊2食付きなので、今朝はカロリーメイトじゃあないよ。食事の内容的であるが、焼き魚や生卵子(生卵)、納豆、味噌汁と普通であるが、品数は多い。もちろん、ご飯のおかわりは自由で、朝から2杯半も食べてしまった。繰り返しになるが、内容を考えると、3,000円という料金は十分に競争力がある。

 

食事後は少し休んで、出発の準備を始める。荷物を階下に下ろして外へ出ると、雲が多めながらも爽やかな青空が見えている。今日は気圧の谷もさらに東へ遠ざかり、北からの高気圧に覆われてくるようだ。ただ、晴れが安定するわけではなく、所により急変する場合もあるとのことだった。

 

ともかく、目先の天気が良いと嬉しくなるのが人情ってものだ。ウキウキしながらSLに荷物を搭載していく。この作業は毎日行うことなので、毎日少しずつ慣れてきて手際も良くなる。これから先、ロスタイムの短縮ができることだろう。

 

2.出発

 

皆で記念撮影をした後、オーナーはパッカー君と女子大生2名を最寄りの駅まで送っていく。当方はヘルパー君に挨拶をして、9時頃に宿を後にする。さて、今日も気温は平年よりも低いという予想なので、昨日と同じく首巻き、フリース、ももひきの3点セットは外せない。

 

まずは国道243号線まで行き、左折して磁方位110°で走行する。前述のように今日は天候もまずまずなので、多和平へ向かう。5,6kmで道道1040号線に乗り換える。この国道と道道の交差点にはドでかい看板が出ているので、道に迷うことはなかろう。それよりも、次に道道から多和平へ向かう弥栄農免道路への左折ポイントの方がわかりにくい。かく言う管理人も、2010年以来の来訪なので少々不安になってしまったが、迷うことなく到着することができた。

 

マシンを止めた後、誰もいなくなったキャンプサイトを歩いて展望台へ向かう。ここのキャンプ場は芝生のサイトで見晴らしも良く、夜には星がたくさん見えるが、サイトそのものが傾斜しているところが何とも惜しい。また、近所に温泉もコンビニも無いので、あらかじめ買い出しや風呂は済ませておかねばならない。もっとも、管理人個人としてはかなり気に入っている場所で、また機会があれば泊まってみたいと思っている。日の出や日の入り、星を同時に楽しむことができるキャンプ場は少ないからね。尚、今日はちょっと遅めの出発だったので時刻は10時ちょっと前、キャンプしていた人は1名を残して既に出発済みであった。

 

ここでキャンプした時のことを思い出しつつ、展望台を登ると・・・、雲が多いのが残念。まあ晴れているのでヨシノちゃんとしましょう。先日は当方のレッスンにご参加いただき、ありがとうございます。

 

多和平の展望台からの眺め

 

上記の組み継ぎ写真では伝わらないが、景色が攻めてくるというか、その視界の広さに圧倒されるような感じがするのだ。そしてまた、同時に自分という存在の小ささも実感させられる。こういう場所に来るといつも思うのだが、旅に出るということは自分を客観的に見つめ、さらけ出し、それらを全て受け入れるという作業をすることでもある。しかし、これが嫌だということはなく、かえって肩の力が抜けて、開き直ってまた前を向くということにも繋がる。ものごとを正確に理解するということは、とても大切なことだ。

 

柄にもなく哲学的なことを考えたので、喉が渇いた。売店へ下りていきコーヒーを購入する。この時、店員のおばさんから唐突に「絵は得意ですか?」と尋ねられた。「え、絵?」という感じで驚いたら、「このナスの絵を描いて欲しいんだけど、私じゃあイマイチ雰囲気が出ないので」と長さ約25cm、直径は15cm以上もあろうかと思われるナスがカウンターに置いてある。ああ、これね。

 

「じゃあお願いするわね。お兄さん頼みやすそうだから」って問答無用に画伯にさせられた。その結果がこれだ。

 

まあ、こんなもんでしょう

 

また、おばさんから「標茶産って書いてね」という注文もあったので、「私、こう見えても標茶産です」って書いておいたら、おばさんが大喜び。「いやぁ、お兄さんに頼んでよかったわぁ。私じゃあこんな上手に描けないわぁ」と。いや、当方、実は美術の成績は、5段階評価で「2」以上になったことはないのだよ、ヤマトの諸君。

 

まあ、本心かわからないがおばさんが喜んでくれたので、こちらとしても腕前?を披露した甲斐があったというものだ。また、この後、おばさんからお礼として飲むヨーグルトを頂いたので、その場でゴクゴクと飲んだ。小さな容器だったけど、旨かったよ。

 

3.今日は南下

 

多和平で良い思い出ができたところで、走行に戻ろう。いつもなら元来た道を戻ることが多いが、今日は弥栄農免道路で南下し、さらに道道13号線で標茶の市街地を目指す。この辺は本当に牧場が湿地しかない、いかにも北海道という場所である。ここでも改めて、北海道を走っている小さな人間を自覚する。

 

そんな感じで景色に飲み込まれそうになっていたら、川べりの湿地に鳥がいるのをみつけた。これはタンチョウではないか。よくよく見ると3羽おり、そのうちの1羽はアマサギのように見えるが、発育中のヒナだ。やっぱりでかい、普段見ているアオサギなんて目じゃないよ。

 

ところで、アマサギと言えば当方の無知を表す逸話がある。アマサギはその名のように、首や頭が亜麻色になっている。そこで何を間違えたのか、当方は「ダイサギが餌を取るために、泥に頭を突っ込んで汚れている」と思い込んでいたのだ。これは、W氏からの指摘で八角部屋になったことであると補記しておく。

 

タンチョウの親子

 

タンチョウの場合、卵(卵子ではない)を2個程度産み、そのうち羽化して、成鳥になるのは1羽いるかいないかだそうだ。ヒナが無事に大人になってくれるとよいな、そう思いながら再び走り出す。

 

道道13号線から標茶の市街地で、国道391号線にルート変更する。予定ではここで燃料を搭載することにしており、マップルに記載されているホクレンの給油所を探す。しかし、どんどん街から離れていってしまうので、コスモのフルサービスのスタンドに入る。すると、まだ仕事を覚えている途中の娘が出てきて、慣れない手つきで給油してくれた。ちょっと化粧が粉っぽいので、お肌の具合もよろしくないのだろうか。余計なお世話だと言われそうなので、黙ってサービスを受けたことは言うまでもなかろう。

 

さて、SLは燃費性能は高い方だと思うが、タンクの容量が10Lと少ない。そして、6.5L消費したところででリザーブ切り替えになる。ダートを走らないならば250km近くはいけるのだが、オフ走行が増えるとちょっと多めの燃料を消費する。よって、オフの予定がある場合は、なるべく直前で給油しておくようにしている。今回は167km走行して5Lの再搭載、燃費は33.4km/Lとイマイチかな。

 

地図を確認して走行を再開する。おや、カーブの先にホクレンのスタンドがありました。なんだ、少し待てばよかったのか。ちょっと残念な気持ちになりながら、国道391号線で南下を続、昨年見た景色をもう一度見ようと、釧路湿原の細岡展望台を目指す。しかし、今レポートを書きながら思ったのだが、他にも二本松展望台やコッタロ湿原展望台など、オフ車の能力を発揮しなければ到達が大変そうな場所がいくつもあるじゃあないですか。どうせならば、違う所も見てみたかった。

 

まあそれよりも、細岡展望台の景色がとりわけ良かったわけでして、わき目もふらずに達古武で国道を離れる。そして線路を渡るのだが、そこからもう一度線路を渡るまでは、湿原の際を走行することになる。澄んだ水に爽やかな風が吹いていて、水面が少しだけさざ波立っている。そして、その風に乗ってくる水の匂いに驚く。この五感に訴えてくる景色が、ずっと遠くまで続いているのだ。既にこの辺りで息をのんでしまった。

 

前述のように線路を渡り、標高を上げていくと展望台に到着する。マシンを止めて森を2分程度歩いた先には・・・、おーーー、この眺めだ。もうのむ息がないかと思ったが、やはり息をのんでしまう。

 

細岡展望台からの景色

 

木があまり生えていない広大な草地、そしてそこを自由に蛇行する川、ちょっと言葉にはできないよ、この景色。

 

4.さらに海沿いへ

 

壮大な景色に魅せられてボーッとした頭を冷やしつつ、マシンへ戻る。ここからはダート路を8.5km走行し、遠矢地区へ下りていく。昨年は逆に同地区から上りでここへ来た。このダート路はとても走りやすかったので、ゆっくりと楽しみながら走行したい。

 

走行を再開して2kmぐらいの所でキツネが道路で寝ていたが、こちらに気づくとこちらをチラリと見て、草むらに走っていた。とても綺麗な黄金色の個体だったので、餌付けされてはいないようだ。今年の渡道では、今のところ健康体にしか出会っていないので、とても嬉しい。

 

ダート路で見かけたキツネ

 

さらに下っていき、鉱山跡みたいな場所が見えてきた。さらにそこを越えて、線路を渡ると舗装路になった。ここを左折して遠矢の駅を見ながらもう一度線路を渡り、国道391号線に出てくる。この先は、道道142号線の北太平洋シーサイドラインを走行したい。そこで、このまま国道を南下しようと思ったが、地図を見たら道道1003号線で別保地区へ出て、林道をショートカットするルートがあることを発見した。

 

これはよい飛行計画だなと自画自賛しつつ国道を走行していくと、早速上記道道の看板を見つけたので、すかさず左折していく。因みにこの道の沿線は住宅街であるから、人の飛び出し等には気をつけなくてはならない。

 

道道から国道44号線に出て別保の市街地方向へ右折し、地図に従って線路と川を渡りダート路へ向かう。すると、公園の中に入ってきたなと思ったらゲートが見えてくる。近づいてみると「クマの目撃情報」の看板が出ていて、通行禁止となっている。それによれば、7月にクマが出たらしい。「これでは通行できなくても仕方ない」とマシンの向きを変えていると、そのゲートの向こうで散歩をしている人がいる。おいおい、大丈夫なのか。

 

余計なお世話だと思いつつ、恐怖におののいてさっさと退散する。そして元の国道44号線を3km程度西へ戻り、いよいよ道道142号線へ乗り換える。これが北太平洋シーサイドラインである。この辺りは雨の兆候は全く無く、気持ちの良い風が吹いている。そこで、ちょっと寄り道をして奇岩を見に行くことにした。マップルによると、タコ岩、ローソク岩があるようだ。ただ、これらを見るには本道を外れて、少し歩かなくてはならないだろう。

 

そう思いつつ、看板を探しながら走行を続けていくが、どうもそれらしい看板も雰囲気もない。わかりにくいなぁ、あまり人が来ないからこんなものなのだろうか。そう思っていたら、いつの間にかセキネップP.A.に到着した。どうやらあっさりと素通りしてしまったらし。

 

ただ、ここはちょっと高台にあり、遠くを見渡せられる。よって、遠くからこれら奇岩を見ることができた。感想は・・・、まあただの岩だね。

 

左から立岩、トド岩、タコ岩

 

最初は勝手に、左がタコ岩かなと思っていたが、よくよく調べてみたら以上のようになりました。因みにローソク岩は手前の山陰に隠れているようだ。因みに南海キャンディーズのしずちゃんのあだ名は、

 

「しゃべる岩」

 

だそうだ。そんなことを考えていたところ、パラパラと雨が降り始めた。ただ、とても雲の流れが速く、青空と雲が混在している状態なので、本降りにはならないだろう。事実、岩を見ている間に雲が通り過ぎたのか、また日が差してくる。

 

セキネップP.A.を後にして、次は尻羽岬(しれぱみさき)へ行くことにした。道道142号線を進み、突き当たったら右折して「知方学(ちほまない)」小学校手前を左折する。ところで、この辺りの地名は、北海道でも一番難しい部類に属すのではないだろうかと思われる。「老者舞(おしゃまい)」、「去来牛(さるきうし)」など、ほとんど分からないものばかりだ。

 

さて、そのチホマナイからは、片側1車線ずつの道幅がある未舗装路になる。普通はダート路といえば1~1.5車線なので、かなり広く感じる。また、交通量はほぼ皆無なので、腕に覚えのあるライダーならば、舗装路と変わらない速度で走行することもできるだろう。管理人の場合は概ね35ノット程度を維持して、4kmを走破した。

 

広いダート路

 

終点には駐車場があり、岬まではさらに15分程度歩かねばならない。結構な時間がかかるのだが、どんな景色が見えるかは行ってみないとわからない。まあ、どんなものでも受け入れようではないか。

 

まずは丘を上り、さらに下りながら左、右、と曲がる遊歩道を歩いていく。周辺には草花が自生しており、小さな可愛らしい花が秋の北海道で最後の力を出して咲いている。これらは例えると、朝ドラで言う「かよ」みたいなイメージだ。

 

岬へ続く道

(左端が岬の突端)

 

ボチボチと歩いて、最後の曲路を行くと岬に到着だ。おや、看板が壊れているじゃあないか。それだけ自然が厳しいということか、そう思いながら断崖絶壁になっている下を恐る恐る覗いてみる。最近は少しマシにはなったが、当方は基本的に高いところは苦手だ。また、今日はバサバサと穏やかな波が打ち寄せている程度だが、これが荒波だったらそれだけで怖くなってしまうだろう。

 

岬から霧多布方面を望む

 

波の音だけが聞こえるこの全く知らない場所で、俺は全くの孤独だ。そう考えると「なんだか遠くへきたな、旅だな」と自己満足に浸る。こういう瞬間は嬉しい半面、とても不安になるものだ。だって、俺は今、何の保証もない。ひょっとしてクマにやられるかもしれない。

 

いつもこういう場合には「どうしようか」と落ち着かないものだったが、最近は「それも良いじゃないか」と受け入れられるようになった。俺は今、旅を楽しんでいる。その事実だけで十分だよ。

 

不安も消えて、清々しい気分で駐車場に戻る。また来るよ、尻羽岬。元来た道を歩いて帰る。

 

5.不安定な天候

 

この時点で既に14時を回っているので、適当な時に食事を摂ることにしよう。少々腹が減って集中力も落ちているので、知方学小学校までのダート区間4kmは特に注意して走行する。ま、道幅も広いので時々現れる、深砂利に注意するだけのことだ。ただ、パンケコロニベツ林道での一件もあるので、深砂利には十分な注意が必要だろう。

 

無事に小学校までたどり着いたので、町道を戻って道道142号線に戻り、少し北上して尾幌の街に到着する。ここで国道44号線と合流するので、右折しheading090で厚岸へ向かう。

 

それにしても、行く手には雨を降らせていると思われる雲が見える。今朝確認した天気予報の通りだ。まあ、前述のように流れが速いので、当方がそこに着く頃には雨も上がっていることだろう。そんなことを考えつつ厚岸の街に入っていくと、道路がビチャビチャだ。前の車や自分のマシンのフロントタイヤが巻き上げる小笠原しぶきが酷く、ズボンのスネの部分がかなり濡れてしまった。もちろん、靴は防水機能が効いているので、浸水はない。

 

さて、ここで道道123号線を使うか、このまま国道44号線を行くかの選択を迫られたが、海岸方面は丁度厚岸に雨を降らせた雲が移動中なので、このまま国道を走行することにした。これについて、珍しく当方の判断は適切だったようで、ある地点から道路が乾いてきて、茶内の市街地に着く頃にはすっかりとズボンの裾も乾いていた。たまたまとは言え、今日は幸運だったよ。

 

天気がやや安定してきたので、ここでおやつタイムとする。時刻は15時前であるが、朝飯をたくさん食べたからだろうか、今日は昼飯を食べていなかった。セイコマに入り、この旅でお気に入りのこんにゃくゼリー、シュークリーム、大福などを補給して腹を落ち着かせる。

 

だいぶ東へ来たせいか、陽が傾く時間がやけに早く感じる。既に16時半ぐらいの感覚だ。そうか、走行に夢中になっていて気が付かなかったが、そろそろ今日のランディング地点を決めなければならない。天気が良ければ霧多布岬キャンプ場という選択が無難だろうが、「雲の流れが早くてぇ~♪」キャンプの気分ではないので、ライハにしよう。それならばギリギリまで走行できるな。そうだ、納沙布岬の鈴木食堂に泊まり、明日の日の出を見ようじゃないか。

 

早速電話をして、予約を入れておく。そう言えば、昨年はこの辺の判断が甘くて、ギリギリでビジホを決めたっけなぁ。一応同じ失敗は繰り返さないで済んだ。独りで安心していたら、FJR1300が目の前にやって来た。首都圏のナンバープレートを付けているが、ライダーはメッシュジャケットだし、荷物もあまり積んでいない。その代わりに、カメラを始め、ハンドル周りにゴテゴテした電装品をたくさん装着している。

 

そんなもんに金を使っていないで、上着を買えよと要らんことを考えてしまった。そして当方に「カメラが・・・」と自慢げに話しかけてきた。そして言いたいことを言って「良い旅を」ってあんたは楽しい旅をしているのかと突っ込みたくなってしまった。

 

今日のランディング地点も決まり、目標が明確になった。これだけでも気持ちが楽になるし、冷静に考えを巡らせることができる。まずすべきことはと、早い時間し閉まってしまう郵便局で現金を調達することだ。郵便局はどんな小さな街でも必ずあるので便利だが、閉店が早いことが少し残念だ。ただ、昔は銀行だって早い時間に閉まっていたし、コンビニで現金が下ろせるようになったのは最近のことだ。人間のわがままには終わりがないものだ。

 

国道44号線から道道599号線に乗り換えて、茶内地区にやってくる。当然ここにも郵便局があり、お金を下ろすことができる。これだけでも十分の便利なことだよ。時刻は15時45分なので、取り扱い終了までには十分余裕がある。

 

茶内郵便局前にて

 

現金も入手できたので、あとは気をつけて納沙布岬を目指すのみだ。地図でこの先の航法を確認していると、小学校1年か2年ぐらいの小さい女の子が、興味深々でこちらにやって来た。そして当方と目が合うと「こんにちは」と元気の良い挨拶が返ってくる。余談だが、管理人は大人の女性の相手は極めて下手だが、小さい女の子の相手は割合と得意だ。特に小学校の低学年ぐらいには抜群にウケが良いらしい。子供側もそれを見抜いているのだろうが、このようにしばしば寄ってくる子がいる。

 

「おじさんはどこから来たか知ってるか?」と尋ねてみると、ナンバープレートを見て「わからない」と言う。「名古屋だよ。車の豊田も近いよ」と教えてみたが、よくわかっていないようだった。そして、学校の話や家族のことを話した後、自宅に帰っていった。最近は連れ去り事件が多く起こっているようだが、街の人達から見れば管理人は明らかに不審者だ。

 

子供はかわいいなぁ、そんな家族がいる生活も悪くはない。そう考えながら、市街地から駅の裏側へと回り込むように道道を走行する。そして808号線に乗り換えると、だんだんと視界が開けて、湿原の中へ入ってくる。おおお、このアフリカのサバンナのような景色は地元ではまず見ることはない。珍しい風景に心が動くよ。

 

速度を落として湿原の風を感じつつ、道道142号線の北太平洋シーサイドラインへ再び合流する。今日の残りは納沙布岬まで走るだけの予定なので、ちょっと余裕がある。そこで、霧多布岬へ寄っていくことにして、道道1039号線にスイッチ。

 

さて、霧多布岬はちょっとした島のような所にあり、最初に海上橋を渡るのだが、その時、進行方向に虹が見えることに気が付いた。あ、綺麗だなと一瞬思ったが、虹が出ているということは、そちら方面は雨が降っているということだ。幸いその虹は海上部に出ているので問題はないが、今日の天候が不安定なことを示す有力な証拠だ。

 

あまり冷静になっても楽しくないので、楽しみつつ先へ行こう。道道1039号線を追いかけて行くと、市街地や温泉を過ぎて草原を走り、やがて岬に到着する。ここへ来るのは2010年以来だろう。駐車場にマシンを止めて、灯台の方へ歩いていく。ここの案内板によれば、正式名称は「湯沸岬灯台」で、昭和26年に立て直しされたものらしい。

 

湯沸岬灯台

 

さらに歩いていくと、霧多布岬へと続く道がある。今でこそしっかりとした柵ができているが、20年前の写真を見るとかなりいい加減なものしかなかったようだ。いや、それよりも管理人の若いこと。これは21歳の時のものだ。オッサンになってしまったなぁ。

 

霧多布岬にて

 

ところで、2010年の映画「ハナミズキ」ではここでロケが行われており、灯台の2階でガッキーと生田斗真が仲良くしている場面がある。ただ、一般人はこの灯台に入ることはできないので、悪しからず。

 

この時点では気持ちの良い青空が広がり、もう雨は降らないかなと思われたので、「霧多布岬でのキャンプ」という長年の宿題をやってしまおうと考えた。事実、目の前にあるキャンプ場には大勢のライダーがテントを張っている。しかし、これは一時的なものである可能性があるし、北海道最東端の日の出も重要な宿題だ。少々悩んだ挙句、やっぱり後者を優先することにした。こういうことはタイミングが合わないと、なかなかうまくいかないからね。

 

再び地図を見て航法を確認し道道1039号線を戻っていくと、馬の牧場を発見した。そして道沿いの水飲み場では、数頭がくつろいでいる。これはチャンスだとちょっと離れた場所にマシンを止めて、馬の方へそーっと歩いていく。すると馬もこちらに気が付いたので「ちょっと写真を撮らせてくれよ」と話すと、「これでどうだ」という様子で横に向いてくれた。

 

道産子でしょうか

 

当方は「ありがとうね」と話し、さらに近づいて「頭を触っても良いか」と尋ねたところ、こちらに顔を近づけてきた。「おお、かわいいやつよのう」と顔や頭を触っていたら、カメラのケースを食おうとしているではないか。

 

やはり馬はでかい

 

しまった、ニンジンと同じ色だった。目的はこれだったようで、馬さんがそうそう言葉を理解できているはずもない。「これはニンジンじゃあないんだ」と謝って、再びお礼を言って馬から離れた。少し歩いて馬さんを再び見てみると、既に水飲み場を離れ「なんだよ、エサじゃあなかったのか」という様子で草を食べていた。悪いことをしたな。

 

6.ラストスパート

 

マシンに跨り、道道1039号線を進んでいく。浜中町の市街地を抜けて、090°に機首を向けて、再び142号線のシーサイドラインを行く。時刻は既に16時を回っているので陽も傾いてきており、少々風もあるので寒い。一応装備は万全なので問題はないが、8月でのこの寒さには毎度驚かされる。斜め後方から太陽に照らされているので、反対側斜めに長く影が伸びてきた。横から光が当たれば影が長くなることは当然だが、こういう場面に遭遇すると必ず、ルパン三世シーズン1のエンディングテーマである「♪あしぃ~もとにぃ~・・・」の音楽と共に流れる画像を思い出す。なんか「走ってるぅ~」という気分になるのは俺だけだろうか。

 

話が逸れたが、シーサイドラインの浜中湾沿いには、砂浜を走ることができる区間である「渚のドライブウエイ」がある。関係無いが、管理人の従兄の子供も「渚彩」である。今日は走ってみようかなと思ったが、後々洗車したりと手間がかかりそうなので今回もパスすることにした。

 

長くなる影と共に海沿いの道を走っていくと、時々道路が濡れている区間がやってくる。ただ、雨に降られるわけではないので、カッパの装着は検討しない。恵茶人(えさしと)地区を通り、根室市に入る。すると道が向きを変えて、360°方向になる。そのままいくと初田牛(はったうし)の駅前に出てきて、そこを右折して再びheadingは090となる。

 

海沿いを少し離れて林の中を走行する。ところで、この夕刻の時間帯は鹿の活動時間に当たるらしく、飛び出しも多いそうだ。もちろん、今走行している辺りも例外ではないようで、至る所に注意を喚起する看板が出ている。あんなでかい動物とぶつかったら、バイクなんてひとたまりもない。4輪でも一発廃車になることがあるそうだ。

 

昔、みどり湯に止まった時に教えてもらった鹿の実態にビビリつつ、視界を広く持って別当賀、落石、昆布盛と林間をハイビームにして、速度30ノットで走行を続ける。

 

かなり緊張した走行を30分程度続けて、西和田地区で森は途切れた。この先は比較的街中を通るので、鹿については心配は無くなった。安心して空を見ると、大きな虹が出現しているではないか。しかも、真横から見る形なので、とてもでかい。

 

大きな虹が出ていました

(よく見ると、2重になっている)

 

マシンを止めてしばらく眺めてみる。今日は太陽を右に見ながら走行しているので、海岸方面に虹があるならば、それは過ぎ去った雨雲の名残だ。上記鹿に気をつけた林間走行では雨が降ることはもちろん、路面も濡れていることはなかった。それで、勝手に「この先はもう雨は降らないか」と希望的観測を持っていたが、何のことはない。この先もまだ雲がやってくる可能性はあるということだ。

 

いずれにしても、根室の市街地周辺は結構な雨量があったと思われるので、路面ビシャビシャは覚悟せねばならない。そう考えてから走行を再開する。そして、花咲から東根室に入るころには予想通り、路面がビシャビシャになっていた。ただ、雨は降っていないので、なるべく乾いている部分を選んで走行する。

 

話は変わるが、1988年のF1日本グランプリは雨が降ったり止んだりする難しい天候だったのだが、当時ロータスF1チームに所属していた中嶋のおとっつあんは、スタートでエンストをして最後尾に落ちた。しかし、勝手知ったる鈴鹿のコースで、雨が降る中をなるべく濡れていない場所を選んで走行していたそうだ。その結果、7位と惜しくも入賞を逃していたが、1コーナーの大外刈りやシケインの突っ込みなど、所々で見せ場を作っていた。

 

さて、ここで丁度燃料がリザーブに切り替わったので、燃料を再搭載せねばならない。道道142号線から道道35号線に乗り換えて、根室駅前にある大きなホクレンに入る。以前はオリジナルフラッグが貰えたりしていたので、ここはよく利用している。240km走行して6.6Lなので、36.3km/Lと好燃費を記録した。舗装路を一定速度で走る区間が多かったのが、要因と思われる。

 

ここから納沙布岬までは23kmだから、だいたい20分もあれば到着する。鈴木食堂に予約した時に告げた予定到着時刻、18時はぴったりである。ん、管理人の勘もまだまだ衰えていないな、と自惚れながら夕暮れの根室半島を東へ向かう。ところで、根室半島には大きく北回りと南回りの道があるが、夕方なので人が比較的多く住んでいる南側ルートを選んだが、集落といっても漁村ばかりなので、すっかりと静まり返っている。漁村は朝が早いので、夜も早いのだろう。歯舞地区にあるセイコマを通り、さらに進んでいくとオーロラタワーが見えてきた。納沙布岬は近いぞ。

 

7.ランディング

 

こうして薄暗がりの納沙布岬に到着し、鈴木食堂さんの前でマシンを止める。すると女将さんが出てきて「ごめんごめん、いま白髪染をしていてさあ」となにやら頭をいじっている。そこでこちらも「ああ、忙しいところをすいませんねぇ」と返す。そして、そのまま店舗裏のライダーハウスを案内してもらうが、別に頭を流してからでもよいのになぁと笑ってしまう。

 

建物の中に入ると布団が10組程度並んでいて、どこでも好きな所を使って良いということだった。また、トイレも建家内にあり、ドアを2枚隔ててあるので安心である。ただ、水道が建物の外、店舗裏にしかない。まあ、そんなに困ることもなかろう。風呂は当然無いが、今日は寒いくらいだったので汗はかいていないので、こちらも問題なし。また、どうしても入浴したければ、23km離れた根室市街に銭湯があるし。

 

ライダーハウスの様子

 

ひとまず荷物を下ろして、飯を食べに店舗へ向かう。店内には2名の方が食事中だったので同宿の方かなと思ったが、各々帰って行かれたので今日は貸切ということが判明した。また、予約の時にさんま丼を頼んでおいたので、10分程で提供された。

 

お馴染みのさんま丼セット

 

このさんま丼セットであるが、付け合せの鉄砲汁も、手の大きさぐらいの花咲ガニが半分入っており、かなりのボリュームがある。いたたきます、うん、一年ぶりに味わうこのさんま。脂がのっていているが、あっさりと食べることができる。

 

それにしても、さんまの刺身ってなんでこんな旨いんだろうか。塩焼きも当然美味しいが、刺身は格別だ。もちろん新鮮なものを食べているからだけど、それにしても旨い。このさんまの魚としての味に加えトロ味、それを引き立てる生姜醤油、その味が染みたご飯、旨いとしか言いようがない。

 

そして鉄砲汁もカニの出汁がしっかり出ている。もちろんカニ本体も身がしっかり入っているが、でかい上に食べにくい。結局完食までには30分以上を要してしまった。

 

カニを食べることに集中していて、ご主人と話をすることを忘れていた。まずは日の出の時間であるが、明日は4時20分ぐらいに外に出れば大丈夫ということだった。しかし、ずっと天気が悪かったので、ここ一週間ぐらいは見えていないとのこと。「明日はどうですかねぇ」と尋ねてみたが、「わからんねぇ」とのことだった。因みに、ご主人は毎日その時刻には既に起床しているということだ。

 

夕方は寒かったでしょうと聞かれて、確かにそうでしたと答えると、

 

「今年は夏がなかったよ」

 

と発言された。つまり、暑い日がほとんどなく、8月に秋になってしまったということだ。そうなんですかぁ、管理人の地元は、最高気温が35度以上になる日もしばしばなんですよ。

 

あと、今のご主人は2代目ということらしい。そう言えば、20年前に初めて来た時には違う方が厨房に立っていたような。よく覚えていない。あと、2010年に来た時とさんまの切り方が違うが、これは何か意味があったのだろうか。

 

時刻も19時30分近くになったので、さんま丼の代金1,600円、宿泊料600円の2,200円を支払って店舗を出る。おお、風が冷たくて寒いよ。もう冬なんじゃあないだろうか、と錯覚

してしまうよ。部屋に入り、早速ファンヒーターを点火する。

 

さて、ライダーハウスの常識では、このような食堂併設の場合は、食事をすれば宿泊料は免除になる場合が多い。しかし、ここは別料金を徴収されたのだが、これは燃料代が含まれていると考えると納得できる。ここは年中、夜はヒーターが必要だと思われるからだ。

 

納得して部屋の掲示を眺めたり、テレビを見たりする。また、宿泊記録ノートがあるので、こちらも記入しておく。そして、今日の走行を思い出しながらメモをつけていく。カッパを着ることはなかったが、天候が安定しなかったなぁ。こんなことは8回目の渡道で初めてのことだ。何回雨の切れ目を見たことだろう。明日はどうだろうか。天気予報によれば、今日よりも安定してくるとのことだが、引き続き気温は低めということだった。股引とインナーは必須だな。

 

疲れたし、明日は日の出を見たいのでさっさと寝よう。21時30分頃には床についた。

 

本日の走行 300km

 

次の日(8月27日)へ続く