第3日目
寒さで目が覚めた6時。早速湯を沸かして熱いコーヒーを飲む。当方はあまりコーヒーは飲まなかったが、30歳を過ぎてからやや好きになった。特にキャンプのコーヒーは好きだ。パンをかじりつつ撤収の手順を考える。冷え込んだせいでフライはベトベトだ。床面はドカシートのおかげでさほどではない。なぜか雲が出ていてフライの乾きが遅い。拭いても拭いても乾かない。結局9時前に撤収完了、出発とあいなった。今日は長崎へ行こう。私はオイルショックの年の生まれで、戦後も戦後の人間だが、広島と長崎で一度黙とうとしようと考えていた。今回のツーリングでその機会に恵まれた。雲もとれて快晴だ。佐賀の市街地をよけて田んぼの中のまっすぐな道を行く。TDMのエンジンは単調な道でも心地よいパルスを伝えてくれる。このバイクがツーリングで真価を発揮する時の内の一つだ。風もだいぶ暖かくなってきた。ガソリンを入れることにし、「九州石油」のスタンドに入る。値段は地元とさほど変わらない。それにしても昨今のガソリン価格は高いなぁ。当方が原付免許を取った1991年2月以降では最高値である。一時期はハイオクでも2けたの時もあったと記憶している。まあ、TDMの燃費性能が高いだけにさほど苦痛にはならない。この時は24km/Lだった。さて、国道ばかりではつまらないので、並行する県道を走行することにする。適度にうねっていて、楽しい道だ。TDMは単なるツーリングバイクではない。スポーツバイクとしての資質も十分に持ち合わせている。荷物満載でも右へ左へ軽快にコーナーを抜けていく。私がこのペースで走れるのはTDMのお陰だ。気分爽快だよーーぉ。
と思っていたら、突然道幅が3分の1程になってしまった。舗装状態も悪い。TDMはこのような道でも安心して走れる。慎重に走り、長崎空港のある大村市へ。ここで昼食とする。
長崎といえば「ちゃんぽん」だ。店に入りちゃんぽんを注文する。太い麺にトンコツ?のスープか。たっぷりの野菜にイカなどの魚介類。なかなか旨いではないか。量も良い。ツーリングは思った以上に腹が減る。ぺロっとたいらげた。さてこれからどうしよう。予定などあって無きが如し。ともかく長崎の平和公園へ向かおう。
長崎といえば知世ちゃんこと原田知世ちゃんの出身地だ。「時をかける」のエンドロールの一番最後の笑顔にはおじさん参っちゃうね。と思いつつ、長崎バイパスから平和公園へ到着。お馴染みの像が厳かに犠牲者の冥福を祈っている。何か特別な雰囲気が流れている。私も黙とうをささげる。像の横の木陰で厳かに想いを巡らせる。ともかく冥福を祈ることぐらいしかできそうにない。昨今の国際情勢のみならず、この国も確実に戦争へ向かおうとしているように思えてならない。
注):平和公園の像が指差す上空を捉えたの図
一礼して平和公園を後にし、野母岬を目指す。天気は快晴、潮風最高。適度にスポーティなライディングを堪能しつつ岬の展望台へ。なんか右コーナーがしっくりこない。腰を入れるタイミングが遅いようだ。二号機のKDX125SRでは気にならないことでも、TDMでは如実に現れてくる。顔、体、車体でワンツースリー。再確認をしてふと気がついたらもう2時を回っている。そろそろ今日の宿を決める時間だ。ツーリングでは3時を目安に宿泊地を決定していないとえらい目に逢う。13年前の北海道ツーリングで身についた感覚が大いに役立つ。さて、本題の宿泊地だが、昨夜の寒さにすっかり参っていたので、ひとつ旅館に泊まることにしよう。バイク乗りのバイブル、ツーリングマップルから一番安い雲仙の「望洋荘」に決定。早速連絡してみると、あっさりOK。6時までに到着してくださいとのことだった。野母岬の東側のうねった県道を楽しみながら北上してゆく。うねっているだけでなく、アップダウンも豪快だ。地方道の面白さはこんなところにある。ただ、整備状況が悪い場合はえらい目に逢うこともしばしばなので、注意が必要だ。と偉そうに思っていると、警察の取り締まりに遭遇。たまたま地元の軽自動車の後ろについていたので助かったが、危なかった。TDMはこのような道路では最高に楽しい。安心して開けられる、路面からの適度な情報入力が優しい、フロント18インチタイヤで大回りする感覚が楽しい、かつ解りやすい、そして、エンジンのトルク感が強烈で無い程度に強く感じられる。旅の供としてはほぼ申し分ないと言っても言い過ぎではあるまい。
そうこうしているといよいよ雲仙の普賢岳が見えてきた。ご存知1991年に噴火した活火山で、甚大な被害を残し1997年に収束宣言が出されたらしい。現在では平成新山と呼ばれ、観光名所となっている。いよいよ小浜温泉にやってきた。あちこちから湯気が立ち上っており、卵などを蒸している人もいる。海岸の際にも野趣あふれる温泉がある。その温泉街の一角にある望洋荘に到着。おや、香川ナンバーのグループ3台が先にチェックインされているようだ。当方もチェックインを済ませ、早速温泉へ。温泉の楽しみは露天風呂だ。
宿の露天風呂はなんと2階にあり、夕陽が良く見える。沈む夕陽を眺めながらの露天風呂、ああツーリングって最高と悦に入る。心体の疲れが癒されるのがわかるような気がする。さっぱりとしたところで、次の楽しみは飯だ。5品はあっただろうか。値段の割りにはいいじゃあないか。腹いっぱい食って部屋に戻り、ルートの確認をする。時間の割にはあまり進んでいないなぁ。まあ見どころの多い区間だったし、ワインディングも堪能したし、よしとしましょう。せっかくだからもう一回温泉に浸かり、玄関に停めたTDMにコーラで乾杯!!。思わずチューしちゃったよ。とそこへ、60歳過ぎと思われる老夫婦からお声を頂く。楽しい時間を共有させてもらいました。部屋に戻り、新聞とテレビで天気を確認しつつ、オヤスミ。明日も快晴らしい。
本日の走行280km
第4日目
ゆっくりと6時起床。早速朝風呂へ。7時に朝飯。例の香川からの一団と思われる方からお声掛けいただき、しばし談笑する。阿蘇の方へ行かれるとのこと。私も別ルートながら阿蘇、別府を目指す。19時発のフェリーに乗船することを決め、2等寝台を予約する。2000円前後高いだけで、個人の空間を得られるのだから往路も寝台にするべきだったか。さて、8時30分に望洋荘を出発。島原半島を一周するルートをとる。
途中深江地区にある、災害記念館に立ち寄り、実際の惨事を目の当たりにする。ここは当時の状況がそのまま保存してあり、とても生々しい。自然とは脅威にも利益にもなり得る。その挟間で生きておられる地元の方々の苦労や計り知れない。
半島の一番北で運行されている「有明フェリー」で熊本に入った。有明フェリーは航路開設OO年とかで歴史のあるフェリーらしい。40分程で熊本に到着。さて、いよいよ阿蘇を目指す。
阿蘇には走りたい道が山ほどあるが、時間の関係上、ミルクロード、やまなみハイウエイプラスαとする。まずはミルクロードを走って大観峰を目指す。阿蘇の道は牧草地の中をうねりつつ、アップダウンを伴うなんとも面白い道だ。景色もすこぶる良い。山のワインディングといえば林間を縫うものしか知らなかっただけに、新鮮だ。ただ、観光道路としてだけでなく、生活道路としても用いられているようで、配達中のトラックやなども多く走っているので、ペースはソコソコになるのが残念だ。
大観峰からは阿蘇のカルデラが一望でき、なんとも言葉にできない壮大な景観が広がる。また、ここまで走ってきた道が遠くまで続いているのも見える。九州に行ったら絶対に外せない地点と言えよう。この景色を眺めながらソフトクリームをナメナメ独り言をいうおっさん。周りからは「怪しい奴」と思われていたに違いない。大観峰の駐車場からは歩いてさらに高い所へ登る道もある。今回は見送ったが、次回は挑みたい。おりしも遠足か、修学旅行の女子高生たちがうろうろしており、絶景に次ぐ絶景であったことを付け加えておく必要がありそうだ。
大観峰を後にして、次なる道はやまなみハイウエイだ。こちらも交通量が多く、そこそこのペースなので、景色を存分に楽しみながらの走行となる。ミルクロードよりもやや高速コーナーが多いくらいで、基本的には同じような道だ。ただ、湯布院側は木が生い茂ってきて、景色は開けていない。
TDMは「山の二気筒」だけにこういった道では最高の性能を提供してくれる。ペースには依存していない。ゆっくりでも、速くてもとても心地よい。まさに真骨頂であると言えよう。TDMでここに来られたことに感謝。
湯布院の道の駅で一服した後、いよいよ今回のツーリングの最終目的地「別府」を目指す。時間的には余裕があるので、一風呂浴びてフェリーに乗船するつもりであった。しかし、最後の最後でポカをしてしまい、結局丁度良い時間に別府に到着。温泉の蒸気で卵や芋を蒸して食べるのは次回の宿題と相成ってしまった。
復路のフェリーはお馴染みの関西汽船「サンフラワー」だ。幼いころから時々TVで宣伝されていたことを思い出しつつ、切符を購入する。例の九州グランド割引で人、バイク共に1割得した。サンフラワーは往路の名門大洋フェリーよりも豪華で、快適だ。客層もトラック運転手と一般の人たちが半々くらいで、肩身が狭く無いのも嬉しい。エンジンは1万6千馬力を二基搭載しているそうで、巡航速度は22.5ノットだ。余談だが、北海道に行く際に利用する新日本海フェリーは巡航速度が30ノットらしいので、如何に速いかがお分かりいただけよう。また、最新の船舶用ディーゼルエンジンは熱効率が約50%と非常に高い効率を誇っている。乗用車もぜひ追いついて、寿命を延ばしてもらいたい。フェリーの乗組員の方々は社員の現場研修をしつつ業務をこなしておられた。アナウンスの練習で「、、、ごしょうりょうください」ってのが笑えた。「今日はどうゆうおやなみで?」と共通する。
二等寝台は非常に快適だ。なにより、個人のスペースが持てることがありがたい。他にも二等和室、二等A寝台といったものもあった。船がでかいので、探検して回るのもワクワクしてしまった。
本日の走行 300km
第5日目
大阪南港には午前6時15分に到着。阪神高速、西名阪、名阪国道から、東名阪、さらに名古屋高速と乗り継いで10時頃に帰宅。九州ツーリングは終了した。
TDM愛しさに、思わずチュ。(きもちわるぅ〜)
本日の走行 230km