2011年8月19日〜8月29日
名寄にて
（雲がなければ尚よかったのになぁ）
朝6時に起床し、外の様子を確認する。雨こそは降っていないがどんよりと曇っていて、今にも降り出しそうな気配である。道路も濡れていることから、雨が上がったのは比較的近い時間と思われる。そして、5時発表の最新の天気予報を確認すると、帯広から北は天気が回復傾向にあると報じられている。
この時を逃すわけにはいかないと、FZ-1氏に促されて稚内を目指すことに決定した。ちょっと自信が無いんだけど、ここは信頼と実績のTDMに全てを託してみよう。
こうして、周りの方々がまだお休みなっているところをガサガサと動きだす。おりしも「女っぽいチャリダー氏」が「雨の降っていないこの時間を有効に利用して、出発する」と勇ましい言葉を残し、大正カニの家を後にした。我々も負けてはいられない（別に勝ち負けは無いんだけど、気合が入ります）。
雨が降らないうちにと素早く準備を進め、記念撮影をしてから出発する。
大正カニの家全景
（左にはFZ-1氏）
まずは愛国駅近くのセイコマにて、今日はおにぎりの朝飯とする。まだ空が曇っているので、いつ雨が降るかもしれない。そんな状況に急かされつつ、急いで食事を終え出発し、川西のホクレンで給油をする。260km走行で8.4Lだから、31��/Lと計算間違いではなかろうかという数字が飛び出した。昨日は雨の走行で、エンジン回転数をかなり落としていたからだろうか。
再び国道236号線に乗り、本格的に走行を開始する。まずは、札内川の大きな橋を渡り、ちょうど通勤時間帯に入ったと思われる帯広市街地へ入っていく。もっとも、道が広いことと、人口密度がそれ程高くないのだろう。ちょっと混み合った時間帯程度の渋滞で済んでいる。
まだ太陽は雲に隠れているので少々寒さを覚えるが、すり抜けをしながら（道が広いので、4輪車と並行に走りながら）市街地を通過していく。「ぱんちょう」の豚丼や「白樺」のジンギスカンが食いたかったが、帯広を後にして士幌に入ってくる。ここは、義理の母が幼少〜思春期初期を過ごした場所で、昨年その家を訪れた。広大なとうもろこし他の畑を営んでいる、当時からの隣人さんが温かく迎えてくれたことが印象的だったことを想い出す。また忘れた頃にでもお伺いしようと思う。
そんなことを考えながら、国道と並行する道道337号線を走る方がよかったなぁと後悔しつつ、北上を続けていく。途中、ナイタイ高原の看板が見えるが、ここは天気が回復してから訪れることにして通過。おっと、国道273号線をミスして、274号線に入ってしまった。すかさず町道からコースを回復して、heading360を維持していく。
するとだんだんと道が山道になってきた。また、道路脇には旧国鉄士幌線のアーチ橋の存在を示す看板が次々と現われてくる。ちょっと気になったので、その一つに立ち寄ってみる。どうやら、今渡ってきた橋そのものが国鉄時代の遺構のようだ。関係は無いが、やけに「蛾」が多い。なぜだろうか。
第三音更橋梁付近にて FZ-1号
（ヒグマ出没の看板が見える）
さて、寒かったせいかちょっと失敬して用を足し、再び北上を続けていく。さて、この先には同鉄道の遺構で一番知られていると思われる「タウシュベツ橋梁」が見える展望台があり、また、その手前の糠平の温泉街には「上士幌鉄道資料館」もある。前者は2008年には軽いダートの糠平三股林道ですぐ近くまで行くことができたが、交通量の増加やクマの出没で危険性が高まる一という理由で、現在はこちらの道の通行は申請・許可制となっている。結局当方が2008年に訪れた時が、自由に走行できる最後の年となってしまったようだ。
そして資料館であるが一度入ってみたいと思っていたが、なかなか機会に恵まれなかったので今回は立ち寄ってみようと思う。当方は特に鉄道好きということもないが、こういう遺構が割合好きなんだよな。
こうして、雲が切れて陽も出てきた、やや蒸し暑い鉄道資料館に到着する。ここは旧糠平駅の跡地になるようで、資料館そのものは小さいのだが、建物裏にはレールと客車が展示してある。ひとまず中に入り、暇そうな受付嬢に入館料100円を支払って奥へ入る。当方はその価値はよく解らないが、行き先表示板やら職員の制服、硬券の切符などが所狭しと並んでいる。また、大画面には現役当時の車両から撮影した走行中の映像も観ることができる。いわゆるオンボードカメラによる映像だ。当方はそれほどでもないが、マニアの方なら垂涎のものではなかろうか。
これら展示を見て、次は現役当時の写真が展示されているコーナーへ行く。ここには、前述の義理の母が「よく利用した」と話してくれた士幌駅の鮮明な写真も見ることができた。その駅の写真は初春に撮影されたものと思われ、「ローカル線の地方都市の駅」という趣が存分に表現されていた。
また、様々な季節に撮影されたタウシュベツ橋梁を見ることもできた。一番見栄えが良いのは、やはり冬であろう。ダム湖にはほとんど水が無く、地面が雪に覆われていて、そこに建つ橋梁がとても目立つからだ。
上士幌鉄道資料館その１ 上士幌鉄道資料館その２
鉄道資料館を出発し、次なる目的地である「タウシュベツ橋梁展望台」へ向かう。距離としては2、3�劼靴�離れていないので、すぐに駐車場に到着する。ところで、この駐車場はいかにも「とってつけた」ものであり、地面は網状のプラスティック板が敷いてある。ここにサイドスタンドを埋め込ませてしまっては話にならないので、道路との境目ギリギリの場所にマシンを止める。まあ、あまり観光地化していない方が面白いので、このくらいで丁度良いと思う。
さて、ここから橋梁が見えるのかと言えば、そうではない。さらに林間を5分程歩かなくてはならない。ちょっと面倒だと思っていると、線路が通っていたと思われる空間に出くわす。本当に客車分の幅だけを残して、木が綺麗に切られている。士幌線が廃止になってから25年以上が経っているが、それでもこんなにはっきりと線路跡が残るのだな。
線路跡
（木が横たえてあるのは、車両進入を防ぐためだろう）
「展望台あと120m」の看板を頼りに、昨日の雨でちょっとぬかるんでいる歩道を歩いている。すると、6畳ほどのスペースから糠平湖が見える場所にやって来たのだが・・・。アーチ橋はどこだ？よくよく見てみると、左側にほんの少しだけそれらしいものが見える。北海道はお盆前まではかなり天気が良かったようなので、アーチ橋を見ることができるだろうと考えていたのだが、全くのハズレであった。まあ、こんなこともあるさ。
因みにこの橋は、ダムの水位が下がる冬が一番よく見えるようで、雪解け水や雨水が増えると水没する。今年は雪が多かったのだろうか？
完全に水没しております
歩いた成果が無かったのでちょっと残念だったが、バイクまで戻り、再び走行を開始する。まだまだ見どころがたくさんありますからなぁ。
こうして林間の国道を40ノット維持で走り、三股地区を通過する。今年も毒花であるルピナスが咲いている、そんな光景を横目にどんどんと北上し、トンネルをいくつも通過すると大きな橋が現れた。あの頂上が三国峠だ。
ここで一気にテンションが上がり、先ほどタウシュベツ橋が見えなかったことなんですっかり忘れてしまった。そして、下の方の橋から上の橋を見上げると、写真撮影をしている人達が数人見える。今日は晴れだからなおのことだろう。関係ないが、むかしNAOというエロ女優がいたっけ。
ハザードを出して橋の高い方の位置で停車する。ひゃーーーぁ、いつもながら、ここの樹海は目にやさしい光景だ。読んで字の如し、木々が海のように見えるその雄大さが良い。いまは緑まぶしい季節だが、半月もすれば紅葉が始まるそうなので、その時は一体どのように見えるのだろうか。
三国峠から見る樹海
樹海のでかさに圧倒されてテンションもちょっと落ち着いてきたので、さらに車輪を進めていく。ところで、ここから大雪湖までの間に工事区間があり、停止指示が出たので対向車線の車が過ぎるのを待っていると、でっかいトレーラーが道路脇のカラーコーンをバンパーに当てて吹っ飛ばしていった。あれが人間だったらひとたまりもなかろう。やはり人身事故には十分に注意する必要がある。
ちょっと気を締めてつつ大雪湖を通り、北見方面へ向かう国道39号線との合流点を通過。だんだんと両側の山が切り立ってくる。ご存知の層雲峡である。ここには温泉、流星、銀河の滝などちょっとしたスポットがあるのだが、今回は横目に見ながらひたすらに稚内を目指す。ただ、FZ-1氏が「大雪国道」と書かれた大きな木の看板の写真を撮りたい、と言っていたことを思い出し、上手く見つかった看板前で休息がてら写真を撮る。
層雲峡辺りの看板にて
この時点で稚内までは200km以上の距離が残っているが、時刻はまだ昼前なので到達は可能と思われる。それならばゆったりと行けばいいかと考えて、寄り道も大いに歓迎という方向性でいごくことに。
層雲峡の切り立った岩山を見ながら通過していくが、地層はほとんど縦になっている。これはかなり大規模な地殻変動があったことを示していると思われる。もともと日本はユーラシア大陸と北米大陸のプレートの境い目に乗っており、東側には海溝も存在する。ここでは少しずつではあるものの、常に2つのプレートに力が加わっている。その結果、先日のような地震が発生するわけだが、これは何も東北だけに限った話ではない。日本全体がそういう状態にあると考えて間違いないのだろう。備えあれば憂いなしというが、どこかでそういうことを考えておく必要があろう。
岩山の高さよりも地殻変動の大きさや怖さを感じつつ、国道39号線のバイパス路である、旭川紋別自動車道上川I.C.へ入り、そのまま45ノット維持で愛別を通り比布北I.C.まで走行する。ここを通れば旭川の市街地を迂回することができるので、大きな時間短縮になった。
そして蘭留から国道40号線に乗り換えて、塩狩峠を通過する。また三浦綾子の記念館に行きそびれた。別にファンでも何でもないのだが、小説の舞台となった場所や創作の過程などを知ることができるのではないか、ということに興味があるだけだ。また次回にでも。
そして峠を下りてくれば和寒の街である。ここはカボチャの作付け面積が日本一だそうで、それを表すかの如く周りはかぼちゃの畑が80％くらいを占めているのではないかと思う。となれば、やはり「わっさむかぼちゃ王国」のかぼちゃソフトであろう。そう思い、休息を兼ねて立ち寄ってみる。FZ-1氏はこのことは知らなかったようだ。
さて、店に入り、かぼちゃソフトを食す。すると、オーナーが「これを少しふりかけると尚旨いよ」とカボチャの種と唐辛子を粗挽きにしたものをかけてくれた。「おいおい、こんなもん食えるかよ」と思ったが、すっごく旨い。うん、これは意外な組み合わせだが、非常にイケている。さすがオーナー、色々と考えたのだろう。
その後、店の外で景色を見ながらソフトを食べていると、暇なのだろう。オーナーが出てきて、「時間はあるか」と尋ねてきた。特に決めてないので「はあ」と曖昧な返事をすると、「街から西へ10分くらい走ったら景色の良い場所がある」と教えてくれた。せっかくの情報なので、ひとつ行ってみましょうか。
わっさむ カボチャの王国とそのオーナー
（暇なのだろうか？）
早速教えてもらった通りに、まずバス停がある交差点を右へ（西側へ）曲がり、そのままテーの字に突き当たるまで4km程を行く。そしてそこを右へ曲がり、最初に現れた家の所を左折して、庭にお邪魔しますという感じで通りぬけていく。さらに、その細い道を上っていくとゲートが現れるが、これは側方を通り抜ければ良いと言われていたのでその通りにする。おっとっと、あまり使われていない道だろうか、コケが生えていてリアタイヤが踊っているよ。
「ちょっと走るだけだから」と言われても、結構な距離ですよ
こうして少し開けた場所へ出てきて、さらに高い場所を目指すと行き止まりになった。さぞかし良い展望が得られるのだろうと期待していたが、なんだか拍子抜けだ。オーナーの話ではここからさらに丘を登れば、和寒の街だけでなく比布、剣淵、士別、そしてその先の名寄まで見えるとのことだった。でもこの丘を登るって相当きついなぁ、ということでここで終了。あえなく下山する。
丘に登らなければこんな感じです
到着時に天気が悪かったせいもあってか、期待通りでない絶景を見終えてから元来た道を下りていく。またコケの生えた道を通るのか、嫌だなぁ。ブレーキを使わないように済むように低いギアでエンブレを利かせながらゆっくりと走行する。そして、国道へ戻るのもなんだか芸が無いなぁと思い、剣淵までは道道545号線を走行していく。途中でこの剣淵にある「絵本の館」も覗いてみたかったのだが、今日は時間の都合で通過するのみ。別に絵本のファンというわけでもないのだが、当方は子供の頃に絵本を読んでもらった記憶が全く無い。親としては面倒だったか忙しかったか、どちらかだろう。そんなわけで、この歳になっても絵本が好きなんです。ハイ。
絵本が見れなく手残念だが、剣淵の街から一旦国道40号線に乗る。本当はこの先士別まで道道536号線で行き、そこから850号線を行けば完璧なルートだったのだが、途中でミスコースしてしまった。そこで、士別からなんとか道道850号線に繋いで、頭を深々と下げた稲が並ぶ水田、かぼちゃ畑、ビート畑が広がる平野の真ん中を40ノットで突っ走る。場所によってはもう刈り入れも済んだ田んぼもある。まだ8月の内だから早場米として出回るのだろうな。もちろん、他に走行する車はほとんどいないのでとても気分が良い。こういうルート選択もツーリングの醍醐味だ。国道ばっかりなんてかったるくてやってられないよ。
本当はこのまま田んぼの中を通る、名もなき道へ繋いで平野の眺望を満喫したいのだが、今日は名寄駅前にある「三星食堂」でジンギスカンを食べようと打ち合わせていたので、国道40号線に戻り、東風連から道道206号線へと乗り継ぐ。さて、前述の「三星食堂」だが、0円マップの方に掲載があった店だ。北海道ツーリングをしたことのある方なら御存知と思うが、こちらの地図では粗すぎて場所の特定が難しい。ひとまず名寄駅でマシンを止めるつもりだったのだが、駅前の一等地にデカデカと看板が出ていたのですぐにそれとわかった。時刻は13時を回っている。やれやれ、これで昼飯が食えるよ、って「本日休業」はないでしょう。だが、定休日では仕方がない。「三星食堂」は火曜日定休です。お間違いのないように。
三星食堂・・・ 俺の負けだ
今日は昼飯を食べそびれるか。そういう時に備えて、当方はカロリーメイトを常備している。あまり用いたくない方法だが、これだけで済ませることも視野に入れつつ、智恵文のひまわり畑へ行こう。おっと、その前に郵便局へ行ってお金をおろしておかないと。色々と何かある郵便局だが、どんな街にも一軒はあるのでツーリングには重宝している。
そして、国道40号線バイパスへ名寄北I.C.からアクセス！！！、次の智恵文I.C.で下りる。おや、前回ここを通った時はこの智恵文がバイパスの終点だったが、今はこの先の美深まで延伸・開通したようだ。どんどんと地図が古くなってくるので、次に渡道する時は新しいものを購入する必要がありそうだ。
そう考えて道道252号線を方位100で走行していると、遠くにヤケに鮮やかで黄色い畑が見えてきた。
「あれだ！」
ひまわり畑が見えると、なんだか急に緊張が解けてきた。というか、ここまで結構勢い良く走行してきたので、かなり疲れているようだ。どうも花を見ることにより、それに気がついたようだ。
少々よろめきつつ？駐車場へ入り、マシンを停止させる。ここへ来て雲量が少し減ってきたので、ひまわりの黄色が非常に鮮やかに見える。ひまわりはサンフラワーだが、今ここでは一本一本がサンであるかのようだ。
さて、名寄にはひまわり畑が何カ所かに分かれていて、ここは東雲会場だ。また、この会場の周辺にも、さらに何カ所かの畑がある。今回はメイン会場を見ていくとしよう。とはいうものの、8月も終盤になってきているので、もう終わりかけの様相を呈している。しかし、少しダートを走った南側の丘の方はにも畑があり、こちらの方はまだ見ごろのようだ。いずれにしても、一番良い時期は8月の半ばだろう。
FZ-1氏と畑の展望台に上り、ひまわりを眺める。氏は3回の渡道のうち、今までの2回は走り詰めていたのであまりこういう所は訪れたことが無いということだった。125�佞離好�ーターで一日400kmも走っていたのだから、走り詰めというのも頷ける。
終わりかけでもこのくらいは咲いてます
いやあ、花を見ていると癒やされますなぁ。そんな話をしていると、FZ-1氏が焼きトウモロコシを売っていることに気が付いた。そういえば昼飯がまだだったので、何か食べておきたい。前述のカロリーメイトだけでは味気ないが、焼きトウモロコシが付くならばグッとくる。因みにここの焼きモロコシは皮ごと火にかけて焼き、熱いうちに皮を剥いて食べるというものだ。茹でていない分だけうま味が逃げていなく、トウモロコシの風味がそのまま味わえるというわけだ。これは固くなる前の新鮮なものでしか行うことができない調理法だろうか？
軽い食事をし、ひまわりを見ていたので、体力的にも気分的にもかなり落ち着いてきた。ここから稚内までは150km残っているが、なんとか日没頃には到着の目処が立ってきた。昨日は美深くらいで精一杯だと計算していたが、やや急かしいながらも観光を楽しんでここまで来れたのは嬉しい。ひとえに「FZ-1氏の関西系のノリ」のおかげであろう。
智恵文のひまわりに見送られるような気分で国道40号線に戻り、ズイズイと北上を続けていき、美深の街にやって来た。美深といえば2008年に利用したキャンプ場「びふかアイランド」で有名だが、ここのキャンプ場は北海道でも3本の指に入ると思える程気に入っている。温泉は歩いていくことができるし、木々の中にあるサイトは広く、虫もいない。また、当方が利用した時は湿度が少なくて、フライがほとんど濡れなくて済んだ。あ、フライシートと言えば、濡れたままになってザックにしまい込んでいる。どうしようかぁ。
こうして、黒いそばで有名な音威子府駅を通過し、国道40号線を追いかけて針路を270に変更する。途中で「北海道命名の碑」がある場所を通過し、佐久で国道を離脱、道道119号線へルート変更する。ここも2008年に走行したことがあるのだが、交通量が少なくて牧場の真ん中を走り抜ける「超」快走路である。ただ、離農したと思われる崩壊した家がチョイチョイと見られるので、住むには厳しい場所なのだろうなと思われた。
そして道道の終点が近くなった頃に、眼前には傾いた太陽に照らされてキラキラと光る日本海が見えてきた。よっしゃ、あとは海沿いに北上すれば稚内だ。ここまで来ればあとは勢いで走れるぞ。ただ、休息したかったので一旦機首を南に向けて、道の駅富士見を目指す。天塩まで行ってしまえばよかったのだろうが、トイレが近かったので5�匏�内にあるこちらを選択したのだ。これも歳のせいだろうか。
一旦道の駅富士見にて、トイレ休憩とする。太陽が傾いて、だんだんと赤くみえるようになってきた。余談だが、これは地平線付近に見える太陽などは、大気層を長く通過し、またその途中にある塵などで光が拡散されるからこのように見えるのだ。
夕方に見える太陽の光は大気層を通る距離が長い
管理人のどうでもよい話はこのくらいにして、道の駅富士見はとても立派な建物だ。それなのに我々とカブのライダー、合計3名の人しかいない。休日はかなりの人が来るのだろうが、明らかに過剰投資に見える。もっとも、あまりにヘボくてただの近所の集会所と化している、岐阜県恵那市の「五木のやかた・かわうえ」や、ただのスーパーの駐車場同然の「きりら坂下」みたいに使い物にならないものではないので、全くの無駄ではないとも思う。また清掃も行き届いていてゴミも落ちていないし、トイレも清潔であった。また、ご覧のようにここは高台にあるので、ここにキャンプ場を設ければかなりイケてる道の駅となることうけあいだ。現にもう一人のライダー、カブ氏は「近くのキャンプ場へ行く」と言っていた。もし。ここにあれば当然利用していただろうし、商売的にも「夕日の見えるキャンプ場」として、呼人浦などに割り込んで名乗りを挙げることだってできるかもしれない。
三角屋根の展望台が目印の豪華な道の駅
さて、トイレ＆水分補給が終了したので、いよいよ夕焼けのオロロンラインを走行する時が来た。実は狙っていたわけではなく、成り行き上丁度夕方になっただけだ。いずれにしても、ほぼ快晴で夕方にオロロンラインを走るという、貴重な機会に恵まれた今回のツーリングに感謝。
エンジン始動許可を得て道の駅を出発し、国道232号線を走り出す。そして先ほど走行してきた道道119号線との交差点を通過してどんどんと北上していく。その間にも少しずつ太陽が水平線に近くなってきて、路面に映る我々の陰が長くなってくる。いつもは一日の終わりを感じて物悲しくなるのだが、今日はハイテンションなせいだろう。なんだかカッコよく見えるから不思議だ。人間の感覚なんて気分次第で随分と変わるものだ。できるだけ良い方向へ持っていくことができるならばそれに越したことはない。
そんな事を考えて、「これからはちょっとでもそうできるとよいなぁ」と夕日にお願いしながら、天塩で道道106号線へスイッチして走行を続けていく。この後もハイテンションで走行していくが、ただ、警察の取り締まりが行われていないとは限らない。45ノットを維持としながらも十分に注意する。あ、左前方には利尻富士が見えている。だんだんと沈みゆく太陽にそのシルエットがくっきりと現れて、今までとは違ったように見える。
そして右側には、お馴染みのオトンルイ風力発電所の風車が。これも道路が少しずつうねっていたり、こちらが近づいているのでその時々で見え方が違ってくる。物事の解釈もこうして多角的に考えれば、なにかしら違ってくるものかもしれない。
そのオトンルイ風力発電所で写真を撮ろうと、一旦道路脇にマシンを止める。前述のように、この時間帯にここへ来たのは初めてで、当方もFZ-1氏もちょっと興奮気味だ。それはそうと、この風車群は道路に対して東側に位置しているので、舗装路から写真を撮ろうとするには午後の遅い時間の方が光の当たり方が都合よい。反対に午前中と午後の早い時間は逆光線となってしまう。
夕暮れのオトンルイ風力発電所にて
（疲れた顔をしてますが、かなりノリノリでした）
偶然にもこの時間にここへ来ることができたので、光の加減も良い。また、あまり人もいなかったので、良い場所で撮影ができた。時の歌で言えば、「マックス ハイテンション〜♪」ってやつでしょう。
風車群に別れを告げて、再び道道106号線を北上していく。またさっきよりも太陽の高度が下がっている。また、こちらも走行しているので利尻富士の見える位置がだんだんと前方から側方になってくる。つまり、地球の自転、自身の移動、そして文字通り動かない山、この一連の「動と静」を体感している今この時、なんとも言えない感覚だ。
おっと、道端で写真を撮るライダーやチャリダーが大きく手を振っているので、こちらも負けじと両手足を動かしてそれに応える。また、対向車線にも同様の方々が、いかにも「盛り上がってます」と言わんばかりに体で喜びを表現していた。そりゃこの状況ならば、誰だって大いに嬉しくなるだろう。当方もバイクの上に立ち上がって喜びを表現したいくらいだった。
さらに車輪を進めていくと、原野や湿原、そして牧場などが次々と流れていく。そこに映る自分の長い影、頭の中では「♪あしぃ〜もとにぃ〜、からみぃ〜つくぅ〜」とルパン三世のエンディングテーマが流れている。なんだか当該のアニメ映像に出てくる「不二子」になった気分だ。「♪るぱん〜さんせぃ〜、いぃぃぃぃ〜」と叫んでみるが、誰に聞こえるわけでもない。
こうして、丁度日没の頃に海岸線を離れて、稚内の市街地に入っていく。今日はライダーハウス「みどり湯」に泊まるのだが、確かセイコマの裏の道へ入っていくとすぐの所だったはずだけど・・・。ないぞ。「おかしいなぁ」周辺をグルグル回ってみるが、やはりない。おっといけねぇ、セイコマがこの地区には2軒あって、市街地の中に近い方の裏だった。
トロイ勘違いをしてしまったので、すっかりと暗くなってしまった後にみどり湯に到着した。う、なんか右の臀部が痛いぞ。うぁぁ、歩くのもヤバイかもしれない。今日は走り過ぎたか。
ちょっとまずい状況であるがガレージにバイクを止める。今日は宿泊者が多いようで、少し詰め気味にしておく。他にはどんなバイクがあるかとさりげなく確認していると、「日本一周中」と書かれたボックスをくくりつけたアクシスを発見。そしてこれを見た同時着のライダーが、「こういう人はあまんまりチヤホヤしない方がいいよな」とつぶやいていた。まあ当方にしてみれば、それは人によりけり
かと。
受付で宿帳に住所と名前を記入し、宿泊料1,000円を払う。そして必要なものだけをザックに入れて二階に上がり、下段のベッドに転がる。やっぱり痛い。FZ-1氏は「ぎっくり腰ではないか」と推測していたが、腰とは微妙に違うんだよなぁ。ともかく今日はベッドでゆっくり寝られるので、助かった。
この後、隣の銭湯（こちらが本業のようだ）へ行き、ゆっくりと湯船に浸かって疲れを癒やそうと思っていたが、ここの湯は常連客の好みに合わせているのでかなり熱い。カラスの行水よろしく、さっさと上がって体を冷ます。その間も臀部の奥の方から鈍痛がする。どうも股関節と骨盤を繋ぐ、筋肉か腱に関連した部位を痛めたらしい。そういえば、以前W氏のモンスターに試乗した際、逆の左臀部が同じような状態になったことがあった。どうも当方の乗り方に問題があるようだ。おそらくニーグリップを意識しすぎて、コーナリング時に股関節にきつい状態で腰を入れていることが原因だろう。日帰りツーリングならば問題にならないが、連日の走行で少しずつ疲労が蓄積してきていたのだろう。やはり歳だ。
ところで、みどり湯では21時から「ミーティング」と称した自己紹介と合唱がある。2008年の時は人数不足で合唱は行わなかったが、今日は20名以上宿泊者がいる。いずれにしても、それに間に合うように食事を終えておいた方がよさそうだ。ということで、左臀部の鈍痛に耐えながら近所のジンギスカン屋「くまげら」へ向かう。ここはみどり湯から東へ500m程行った交番の近くにあり、「みどり湯さんの紹介だ」と言うと少々のサービスがあるとか。期待して生ロースジンギスカンと焼き野菜、麦飯などを注文する。
結構待たされてた後、出てきた料理は・・・。何これ？デラ少ないじゃん！FZ-1氏も同様のことを思っただろう。いや、食べ物には厳しい関西人であるから、当方以上にいろいろ考えたことだろう。そんなことは全く意に介さず、店の人は「これはライダーサービスの量です」と。いったいどれ程の量なのか。そうだねぇ、取り皿に肉がのせてあると言えばよいだろうか。「当然これでは足らないなぁ」ともう一皿ジンギスカンを追加した。すると「二皿目はライダーサービスではないんですよ」と。もういいよ。
ただ、各テーブルに七輪を持ってきてくれて、上部から排気用ダクトも完備している。また、なかなかお目にかかれない生ジンギスカンなので、味も非常においしい。量より質を求めるならば良い店だろう。当方の評価では5段階評価で3というところか。因みに料金は、1人3,000円近くになってしまった。FZ-1氏はビールを飲んでいたので、もう1,000円は上乗せだっただろう。
少々不満が残る食事だったが、セイコマで飲み物や食べ物を購入して夜の宴に備える。そして、20時頃に宿へ戻ると綾瀬はるか似のライダーが座っており、それを取り囲むかのように男性ライダーが周りを占拠している。
誤解を恐れずに、全くの当方の独断と偏見で言わせてもらえば、「たいていの女性ライダーはどこかおかしい」と思う。何がどうおかしいのかと言われれば説明に困るのだが、当方の経験上そう思わないことの方が少ない。もちろん、当方の出会った人がたまたまそうであっただけかもしれないし、母数が少ないのかもしれない。一応参考までにFZ-1氏にこっそりと意見を求めたところ、
「私もそう思います」
とあっさり同意してくれた。ということで、当方は少し離れた所で席に着いて、メモをつけてミーティングの開始を待つことにする。一方FZ-1氏はさっそくビールを飲みながら、飲む人同士で歓談タイムに入っている。
さて、臀部の痛みであるが、相当に痛い。たまらず頭痛用に持参していたロキソニン錠を半錠飲む。これで少々楽になってくるはずだ。そうしていると部屋の電気が消されてミラーボールが回り出す。さらに、それに続いてオーナーであるおばさんから、「盗難に気をつけましょう」、「お酒は自分で注ぎましょう」、「無理やり飲ませないように」、『焼酎「大自然」は北海道限定の商品で、100円のカンパで飲み放題』、「24時きっかりに消灯しましょう」と注意事項や口上があり、自己紹介の時間となる。
自己紹介についてもおばさんから、「名前だけでなく、北海道の印象なんかも添えて下さいね。その方が盛り上がりますから」と注文が入った。これは確かにその通りで、知らない人と話す時に「XXの道はよいですね」という切り出し方ができるからだ。さすが、21年もライハを経営しているだけのことはある。余談だが、上記の綾瀬はるか氏がなぜか当方の隣にいた。
かなり人数がいたので、全員の自己紹介が終了するまでに30分くらいを要した。そしてこの後、おばさんが「最北の地の想い出に、もう少しお付き合いお願いします」と言いながら、室内後方のサンシェイドの紐を引っ張る。すると、そこには「松山千春」の「大空と大地の中で」の歌詞が書いてある。あれ、2008年はこれは無かったぞ。ああそうか、人数不足と音響機器の不具合で中止にするって言っていたな。ということは、当方これは初体験だ。
こうして、皆で肩を組んで準備をしているとイントロが流れてくる。ところで、当方はこの歌を当然知っている。しかし、最近では「松山千春って女の人ですか」という質問も聞かれるようになったとか。時代は平成23年ですからなぁ。
それはそうと、この歌は当方の声の音域と相性が良いので、最後の「・・・幸せを〜自分の腕で掴むよ、ぉ〜〜〜〜〜〜〜」と伸ばす所なんかが結構好きなんです。腹から声を出して伸ばしてしまいました。旅の恥はなんとかと言いますからな。たまにはこういうのも良いのではないかと。
8月24日宿泊のメンバー 歌詞が書かれたサンシェイド
この後は歓談の時間になるが、臀部の痛みがあまりよくならないので、オーナーに「連泊します」と早々に申込みをしておいた。どうやら天気も道北以外は悪いらしいので、ちょうどよかった。一方FZ-1氏は「明日もガンガン走ろうよ」とだいぶ酔いが回っているみたいだ。「いやいや、明日は連泊で養生しますよ。しかも天気が悪いじゃないですか」としらふで返すが、もう人の話は聞いていないようだ。
上記写真のように、今日は30名近い方々が一同に会している。中には住職、警官といったある意味特殊な職業の方も見えた。住職氏はともかく、警官氏には聞きたいことがあったので質問してみたところ、いろいろと苦労話を聞かせてくれたので、「悪いのは警官ではなく組織」というところを垣間見た気がした。
また、綾瀬氏とも話す機会に恵まれて、CBR600のミノルタカラーに乗っているとか、京都に住んでいるとか、リトルカブで来たこともあるとか、そんなことを話してくれた。もちろん彼氏持ちで、地元では一緒に走っているとか。
さて、当方はこの辺りで切り上げて寝ることに。久々のちゃんとした寝床は超快適であった。
みどり湯2階の様子
（荷物棚があり、ベッドが一人ずつ割り当てられる）
本日の走行 500km