2011年8月19日〜8月29日
緑のふるさと温泉の森キャンプ場の朝
（右の建物は管理棟、じゃあ後方のハクチョウは？）
3時頃に「何か騒がしいなぁ、ガサガサと音がする。風が出てきたのか」と思い目を覚ますと、雨がテントのフライシートを叩いているではないか！！うっそお、天気予報では雨は降らないって予報していたじゃん。現に昨日の夜は星空が綺麗だったし・・・。天気予報が外れてしまってはしょうがない。一応安物とはいえ、テントは防水仕様になっているので雨漏りはしないはず、ってなんか冷たいぞ。これはテント本体にタルんだフライシートが触れているところがあり、そこから伝って雨が漏っているようだ。これはまずいとフライシートの張り具合を調整し、雨漏りがおさまったこことを確認してから、再び眠りに就く。
そして、6時過ぎに起床。今日の作戦を考える。天気予報では北海道東部、南部は2、3日天気が悪いようなので、ひとまず道東は保留しておいて北を目指す方がよさそうだ。そうなればテントの撤収作業があるのだが、まさか濡れたテントを畳むことになるとは。雨の撤収はキャンプのフェデラル、いや難関事項の一つだ。いっそのこと雨が止むまでここで過ごすかと考えたが、雨がいつ止むかもわからない。さらに、天気図を検討してみたり改めて天気予報を確認すると、北に行くほど晴れる可能性は高いようだ。ここは意を決して撤収開始である。
幸いにも管理棟の裏側には広い軒下スペースがあるので、ここを借りて撤収作業を行う。まずはTDMを後ろから軒下に入れから雑巾で軽く拭く。その後、テント内に散乱する荷物を運び出し、ビショビショのフライシート、比較的濡れが少ないインナーテントを別々に軒下に持ってくる。インナーテントは濡れた部分のみを雑巾で拭いてからポールと共にたたむ。さて、問題のフライシートだが、何回も拭いては雑巾を絞ってを繰り返す。しかし、雨が降っていては湿度が高いのでちっとも乾かない。そこでフライシートはたたんでからビニール袋に入れて、インナーテントに水分が移らないようにしてからまとめておいた。さらに、テントを収納した袋もビニール袋に入れて、これ以上濡れないようにする。こうしておけば、次にテントを張る時には、多少やりやすいだろうか？
ひとまず撤収は完了したので、管理人のおじさんに挨拶をしてから出発する。そのおじさん曰く「ちょっと待てば晴れるよ」と。確かに雲の流れは早いし、空はそれほどどんよりとはしていない。だが、やはり、北を目指すことにする。因みに、もう一人いたハーレー乗りの方は連泊を決めたのだろうか。ずっとテントの中にいたようだ。
こうして8時45分頃にキャンプ場を出て国道235号線に乗り、heading120で襟裳岬を目指す。「北に行くんじゃあないのか」と聞かれそうだが、どうせ雨が降っているのだから、ちょっとくらい寄り道して行こうということにしたのだ。これがソロツーリングの醍醐味である。
燃料はまだ22ポンド程残しているので、持久時間にすれば3時間以上は走行できる予定だが、いざという時に困らないように静内の街で25ポンド程搭載しておく。ただ、この日は余裕がなかったのだろう、燃費の計算をし忘れていた。一応推定では、洞爺湖から320km位走行していて12.2Lの給油だから26��/L以上の数値は出ているようだ。エンジンは絶好調と言えよう。
さて、今日は厳しい一日になりそうだ。海は鉛色で土砂降りではないものの、時折風にあおられてパシパシと音を立ててヘルメットを叩く。しかし今回は合羽に加え、出発前に購入したブーツカバーが効いているので靴に水が浸入してくることはない。ただ、TDMがドロドロになってしまい、チェーンはもちろん油が飛んでしまうだろうし、ベアリング等に水が浸入しないか心配だ。もちろん出発前の点検では、シールが傷んでいる所は無かったので問題ないと思うのだが、やはり心配になってしまう。でも、こういう時の為に信頼と実績のTDMを選択したのだから、大船に乗った気持ちで走っていこうじゃあないか。
そんなことを思っていると、道端でまたまたFZ-１氏に遭遇した。停車して話してみると、彼も襟裳岬へ行く途中だと。それならば、「旅は道連れ」という言葉通りに、共に襟裳岬を目指すことになった。だいたいライダーの考えることは同じなんだよなぁ。当方の先輩でも、「会社同僚を打ち合わせた訳でもないのに3週連続目的地が同じで、現地にてご対面ということがあった」という人がいた。
雨で視界が悪く、ヘルメットのシールドも曇りがちで大変危険だ。また路面は前の車が小笠原しぶきを上げてくるくらいに、雨水が溜まっている。いわゆるヘビーウエットの状態であるので、こちらに注意が必要だ。やはり、こういうときこそ信頼と実績のTDMである。
三石、浦河、幌別、様似と海沿いの街を次々に通過していく。本来ならば、幌満辺りでは「アポイ岳」がみえるのだが、今日は完全に雲の中である。ところで、2008年の北海道紀行3でも記したのだが、「アポイ」という言葉の響きと「アッポ」と故ジャイアント馬場氏が言っていた句が、当方の中では同時に浮かんでくる。関係ないが、同氏はテレビの収録中に「ウガ」という意味不明の言葉を発したことがあるらしい。
こうして国道336号線を離れて、道道34号線に乗り換えていく。ここまでくれば襟裳岬は近いぞと喜んでいたが、この頃から雨は上がったものの、急に風が強くなり始めた。そして岬が近づくにつれてますます強さが増してきた。時々突風で足元を救われそうになってしまうほどだ。そういえば、襟裳岬に「風の館」なんてものがあったが、ひょっとしてここは風が強いことで有名なのかもしれないぞ、と今更ながらに気がつきたくない事実が頭に浮かんできた。当方もアホである。今まで計3回襟裳岬を訪れたことがあるのだが、どれも天気の良い日穏やかな日ばかりであった。つまり、襟裳岬＝穏やかな所と知らないうちに思い込んでいたようだ。
しかし、幸いにも先に進めない程ではないので慎重に車輪を進めていく。そして途中手前3�劼阿蕕い僚蠅如∨匸譴里覆�を突っ切る眺めの良い場所があるのだが、風が強いので停車せずに先を急ぐ。またいつ来るかわからないが、次回にでも。
そこを過ぎるとやっと岬の駐車場が見えてきた。「やれやれ、やっと休息ができる」と思い規定の駐輪場へバイクを止める。しかし、ここは横風をまともに受けてしまい、荷物を積んだバイクがその風にあおられてユラユラと揺れている。これは倒れる危険性が高いと判断し、正面から風を受ける売店前の駐車場へとマシンを移動する。まあ、今日は観光の人も少ないので問題はないだろう。
FZ-1氏とマシンの安全を確認してから、すぐさまトイレに走っていく。今日は気温が低いせいか（15度くらいかと推定される）、尿意を催すまでの期間がかなり短い。そしてブルッと身震いしてからトイレを出て、腰をかがめながら灯台の前を通り岬の看板へと歩いていく。こんなに辛い襟裳岬は初めてだ。FZ-1氏の言葉を借りれば「良くも悪くも来てよかったね」というところだ。
ところで、当方が一番最初に渡道した1994年には夕方に到着し、夕日のなかを突端まで歩いて行ったのだが、今日は展望台の看板へ行くだけでもちょっと恐怖だ。しかし、これも良い想い出と吹き飛ばされそうなポーズで写真に収まる。実際はここまでのことはないのだが、管理人の実測では平均30ノット（15m/s）で、瞬間は40ノット（20m/s）以上の風が吹いていたものと思われる。これはヘナチョコ台風がやって来た時くらいとお考えいただければよいと思う。
大げさにやってみました
この後、階下にある風の館前を通過しながらマシンの所へ戻る。因みにここは入館料が必要で、強風を体験やアザラシの観察コーナーがある。
強風にさらされながら岬周辺を歩いたせいだろうか、寒さを覚えてきたので温かい飲み物をすすりながらマシンの所で談笑する。それにしてもここの土産物屋は派手だ。黄色を基調にした店が並んでいるので目がチカチカしてくる。いつぞやは、「森進一」の歌が流れていたっけ。
岬を見たので目的は達成された。今日はこのあと北上するのみだ。現在時刻は11時なので、北上途中で良い店があればそこで昼食にしよう。こうして、当方先導で走行を再開する。相変わらず風は強いが雨は上がっていて、このまま降らないで欲しいと願う。
海岸沿いに道道34号線東コースを北上していくと、旧襟裳岬YHを通過する。ここも派手な黄色い建物なので目立つが、よくよく見ると結構傷んだ建物だ。さらに集落を超えると両側が草原になった区間になり、横風にあおられつつも風になびく草の流れが楽しい。そしてその向こうには海岸線が続いている。当方、ここが結構好きなんですよ。
そしてこの途中に百人浜キャンプ場があるのだが、ここも当方お気に入りの場所である。近くに温泉があり、コインランドリーも完備している。また、芝は青々ときれいに生えているし、バイクはサイトからそれほど遠くない管理棟駐車場に止めることができる。しかし、ここは道路整備に多くの殉職者を出している場所でもあり、この先の黄金道路にはアスファルトの代わりに金を敷いてもよい、というくらいの金がかかったという逸話があるようだ。「その幽霊がいる」、と言って敬遠される人もいるそうだが、そんなこと言ったら北海道なんてどれだけ開拓民の命が宿っていることか。そういう犠牲者がいたことを理解しつつ、感謝して施設を利用するということが大切なのではないだろうか。
こうして再び国道336号線に合流するが、この辺りからまた雨が降ってきた。合羽は着たままなので問題ないのだが、気分的に辛いものがある。そして所々トンネルが掘られていて、それに合わせた道路の付け替え工事が行われている。また、雨がどんどんと強くなってきて、再び道路はヘビーウエット状態になっている。そこに加え、工事個所で段差のある鉄板の上を通過したりして少々ビビり気味だ。
おっと、リアタイヤがすくわれてしまった。だが、このくらいのことはXLRでしょっちゅうあることなので、落ち着いてグリップが回復するのを待つ。ただ、臀部の筋肉が強く引っ張られてしまったようでちょっと痛い。さらに大雨の黄金道路を淡々と走行していく。目黒、音調津（おしらべつ）と集落をいくつも越えて、フンベの滝の前を通る。ここはあまり魅力が無いので当方はいつも通過してしまうのだが、この雨の中でも立ち止まっている人もいる。今度は一度止まって、よく見てみようか。
こうして海岸線を離れて広尾の市街地へ入っていく。そろそろ体力消耗してきたし、腹も減ってきた。そこで旧国鉄広尾駅に何かないか、ということで雨が当たらない、プラットホームだった場所にバイクを入れて地図を広げる。しかし、この先の大樹町まで行けば色々とあるようだが、周辺には食堂が一軒あるのみだ。また動き出すのも億劫だということで、この「海幸」という店に入り、濡れた靴と靴下を脱いで座敷に座る。ああ、疲れた。
ここではお得なランチ800円コーヒー付を注文してこの先の予定を探る。ところで、道連れにしているFZ-1氏だがSEをされているということで、当然ながらタブレット型の携帯電話を持っている。丁度電波の入りも良いので、ここで明日の天気予報を見ながら今後の予定を組み立てることに。ただ、北海道はとても広く、天気予報はいくつもの地方に分けられ、その主要都市名で表示される。そこで積極的アナログを標榜する当方の出番である。普段から地図ばかり見ているので主要な地名の所在地は完全に頭に入っている。また、同時に天気図や雨雲の動きなども表示してもらい、公式発表の天気予報と合わせて独自の予想も付け加える。FZ-1氏のタブレットを完全に自分の要望で操作してもらいました。毎度。
そうしていると食事が運ばれてきた。普通の定食だが、なかなか旨そうじゃん。ということで、えび、サケ、ほたてのミックスフライ定食をいただく。地味な定食だが、材料が割合と良いのだろう。地元で食べる同様のものよりは遥かに旨い。ただ疲れていただけかも？
普通の定食だけど、おいしかった
食事をしながらいろいろと調べるが、今日はこの後も雨が続いてしまうようだ。そこで、時刻はまだ14時前だが、かなり疲れたので適当なライハを見つけて今日はそこでお終いにすることにした。FZ-1氏はもう少し走りたいようだが、同様にするとのこと。そこで宿泊の候補を探していたところ、「大正カニの家」が候補に挙がった。もう少し行けば「PIT」、「にしな」等もあるようだが、広尾から一番近く、無料であり、綺麗そうという理由でカニの家を選択した。ここからなら中札内を経て一時間程度で到着するだろう。そう思うと気持ち的に余裕が出てきて、少々の雨なら何とかなるだろうと士気を取り戻した。
今日は風と雨で体力的に厳しい日となっているが、もう少しで宿に到着する。事故の無いように気をつけて行こう。こうして国道336号線から236号線へと乗り換え、更別、中札内と車輪を進めていく。おっと、国道236号線の帯広バイパスが中札内まで伸びてきている。ここへ入っては話が面倒になるので、このまま旧道を行くとしよう。ところで、今回のツーリングにはマップケースを新規に調達しているので、地図を確認しながら走行ができる。ただ、通常のマップルは縮尺が１/140,000であることに対し、北海道版は1/200,000であるから、地図上では近く見えてもなかなか目的地に到着しない。もちろんそれを考慮して予想到着時間を考えているのだが、そういう気になってしまうのだろう。
また、2008年に来道した時の軌跡が地図上に残っているのだが、「眺め良し」とのコメントが記載されている。さらに、この時は帯広空港へ寄ろうと道道238号線を通ったようだ。「何が眺め良しだよ、ちっともよくねぇぞ」と自分に突っ込みつつ、また晴れた十勝平野を走りたいなぁと期待を込めながら北上を続けていく。
こうして幸福駅を横目に見ながら、予想通りの1時間弱で大正本町と看板の出ている交差点を発見した。確かこの近くにカニの家があると思ったが。この交差点の50m程前に看板がありました。右折して3ブロック程進むと大きな広場が見えてきた。そしてその奥には立派なログハウスが建っている。これが「大正カニの家」である。おお、これが無料かよ。しかもシャワー付きって、人気があるわけだ。
そう考えながら駐車場にバイクを止める。幸いにも少し前から雨が上がっているので、そのまま勢いで荷物を玄関まで入れてしまう。そして丁度荷物搬入が完了した頃にまた雨が降ってきた。危ない危ない。合羽も干す手間が省けたよ。
やれやれ、と荷物を二階へ運び上げて、FZ-1氏に促されて適当な位置を陣取る。ここでは、ライハ経験の豊富な氏がベストポジションと思われる、屋根の丸太が壁に向かって降りてくる隙間のような場所を見つけてくれた。
カニの家にて
（真ん中が当方のスペース）
こうして銀マットを敷き、シュラフを広げてやっとくつろぐことができた。時刻は16時だが、今日はもう限界だ。無理は事故の元なので、こういう割り切りも必要だろう。ところで、FZ-1氏は当方が道に迷うことなくカニの家に到着できたことが不思議というか、ちょっと呆れていたというか、地図だけで精密に飛行する当方がちょっと信じられない様子だった。どうしてそんなことができるかって？そりゃ管理人は
変態
だからだよ、ヤマトの諸君。地図を見ているだけじゃないですか！何のことかね？小さい看板を見逃さなかっただけだよ、古代。俺の負けだ。
実際はコンビニやガソリンスタンド、交差点名、案内標識と目いっぱいに情報を収集してはコンパスで機首の方向を確認しているだけである。因みに旅客機のパイロットは五感をフルに活用しているようで、目で機外や計器を見て、耳で警報音が出ていないか、エンジン音などがおかしくないかを聞き、手でエンジン出力を調整、足で方向舵を踏み、鼻では電気系統やエアコン系統から変なにおいがしていないか、そして耳では無線交信を聞き、口で情報などを発信している。「千手観音」的な仕事をしているとのこと。なんだかんだ言っても、機械に指示されてその通りにしていれば良いということはなく、最後は人間の判断が必要だと思う。
FZ-1氏は天気が気になるようで、再び端末を操作しているが、当方が「天気予報は5時、11時、17時に発表される」というマニアな情報を提供したので、氏は一旦携帯を充電して備える。その後、再び端末で調べてみると、案の定予報に変化があった。どうやら道北は晴れるようなので、「明日は一気に稚内を目指そう」と促される。「ええ〜そりゃちょっと無理じゃあないのでしょうか」と反論するも、そこはFZ-1氏、関西系のノリで「大丈夫だって」と至って楽観的である。んー、確かにそうしたいが、ちょっと自信が無いので「行けるところまで」ということで了承した。
そんなやり取りをしつつも、当方は最新天気図をメモ帳に書き出して、道東へ行くタイミングを考える。このリポートの冒頭にも記したが、やはり北海道南岸に横たわる、停滞前線の動きが今後の当方のツーリングの全てを握っている。しかもなんだか北上してきているし。「頼むから消滅して〜」と祈るが、そんなものはへの足しにもならない。そうしていると、FZ-1氏が呆れて「本当に毎日書き写してるんやぁ〜」と発言された。その通りだよ、ヤマトの諸君。
ところで、この時刻で既に、ライダーやチャリダー、住人？を合わせて30名位がライハ入りをしている。また、その中には数名の女性ライダーも含まれている。もちろん女性は１階に専用部屋が用意されている。トイレに行くときにちょっと覗いてみたら、12畳以上はあろうかという畳の部屋だ。うらやましい限りである。
そしてトイレに入ろうとドアを開けようとしたその瞬間、洗面所にいた同宿の若い女性が
「今トイレに入るとくちゃい（臭い）かも・・・」
とのたまうではないか。「出ました、女性ライダー」と思わず心の中で思い、手を打ってしまった。しかし平静を装い「ああ、そうですか」と少々時間を置いてから出直すことに。
さて、そのトイレだが、その都度用を足した人が軽く掃除をしておくことが決まりのようだ。なるほど、無料ならばそれくらいのことはせねばならないだろう。そして隣接するシャワー室も見てみるが、同様に使用するようだ。おや、このシャワー室の扉、なんだか閉まりが悪いぞ。よくよく調べてみると、建物そのものが傾いてしまっていて、それでドアの端が床や壁に当たっているようだ。建造の際に地面をしっかりと固めなかったのだろうか。因みに、聞いたところによると、このログハウスは地元の商工会が、旧国鉄広尾線の大正駅跡地に建設したものだそうだ。値段は4,000万円だそうだ。なるほど、こうして人を集めて地区を活性化させようというわけだろう。商売上手だ。
自分のスペースに戻ると食事の話になり、近くに「セバ」という店があって、そこで「大正カニの家」に泊まっていると言うと豚丼900円が500円になるということだった。実際にFZ-1氏が電話して確認してみるとその通りだったので、一緒に行く人を募って4名で予約を入れてくれた。
さて、今日の宿泊者であるが、やけに声の高い、女みたいな（体は細マッチョですよ）大学生チャリダー君、徳島からの建築関係の人、栃木から来た、いわゆる「北海道浪人氏」と多彩なメンバーだ。その中でも特筆すべきは、チャリダー氏は大学の合宿の自由走行区間ということで、一日150km位のペースを維持しているということだ。俺も若いころにこんなことでもしていたら面白かっただろうに・・・、といつもの考えが浮かぶも時すでに遅し。当方、今年は38歳である。
皆で談笑をしていると、誰かがやってきた。そして「セバに豚丼の予約入れた人誰ですかぁ〜」と聞こえてきた。よくよく聞いてみると、電話してからすぐに肉を焼いてしまったので、そろそろ食べに来て欲しいとのこと。いやいや、確かに予約はしたけど「すぐ行く」なんて誰も言ってませんよ。というか、通常の感覚ならば客が来てから調理しないか？なんだかちょっとおかしな展開になってきたが、ここに泊めさせてもらているので、しばらくしてから皆で「セバ」へ向かう。こういうことがあると、やはりキャンプだよなぁ、ソロだよなぁと思ってしまう。当方がわがままなんだろう。
雨がシトシトと降る中、18時過ぎに4人で店に出向くと、なんかD.J.みたいな人が店先で音楽を流している。店の演出だろうかと思っていたら、なんとたこ焼き屋だった。もちろん全く売れている様子ではないが、至って陽気に振る舞っている。
そして、店内に入ると「ウド鈴木」に酷似した店主が、「豚丼は900円のところを500円、生ビールは400円です」と値段を明朗にしてから、件の調理してしまったという豚丼が出てきた。もちろん冷めていることはないし、非常に旨かった。その旨さの秘密がその豚肉にあるようで、抗生物質等を一切使用せず、自然のエサで育てた「薮田の豚」を使用しているとのこと。その名前は、この豚を育てている酪農家の名前だ。なるほど、豚肉というと変な臭さがあることが半ば常識であるが、この肉は一切の臭みが無く、豚肉本来の味がしっかりと味わえる。さらに炭火で焼いているので、香ばしい風味がするし、当然ながら肉質もやわらかく食べやすい。
これで500円はお得だ。そして商売上手なのは、ビールと合わせて1,000円以内で収まるというところだ。豚丼を安くしても、利幅の大きいビールでその損失を補てんするとはナイスアイディアですねぇ。もちろん当方は酒が飲めないので、豚丼のみ。
セバの外観 豚丼500円
（これで500円はお得）
こうしてコンビニで飲み物などを仕入れて、再びカニの家に戻る。そしてしばらくすると地元の商工会の人が点呼にやって来た。これは、「住人」になる人がいないように毎晩行われているようだ。そして、一応連泊は3泊までと決められているようだが、前述のように「住人」と思われる人も堂々とこのミーティングに参加している。まあ、要するに商工会としては、泥棒まがいの人がいないか、器物が破損していないか等の見回りに来ているということなのだろう。連泊は地元の商店にお金が落ちるので、むしろ歓迎しているのかもしれない。つまり、「公認の住人」は問題なしとされているのだろう。
カニの家のミーティングスペース
（なんでここに寝床があるのか？）
だが、点呼はきちんと身分証明書を提出することになっていて、当方は自慢のフルビット免許を取り出す。だが、その管理者の人は「老眼でよく見えん」とかブツブツ言って、名前と住所が確認できたのだろう、さっさと当方に返してくれた。一言くらい突っ込んで欲しかったが、それは甘い考えだった。また、それを見たFZ-1氏は「残念だったねぇ」という顔でこちらを見て笑っていた。彼はフェリーで当方の免許を見ていたのだ。
こうしてミーティングの後、「住人」の指揮の下、清掃を行う。え、この人は宿泊者では？と突っ込みたかったが、おとなしく清掃に参加する。この後周りの人にその件について切り出したところ、「俺もそう思っていた」と同調していたので、やはり皆「何かおかしい」と感じていたようだ。
そろそろ寝る時間なので、扉の閉まりが悪いシャワーを借りる。この扉が後々事件を引き起こすことになるとは、この時点では当方だけが気づいていたようだ。いや、正確には当方もほんの少し焦っていた。何のことかね？と質問がでそうだが、
シャワー室の扉どころか、鍵すら開かない！！！
だが、このライハに到着直後、下見をしておいたことが効を奏した。扉は外開きで、引っかかっている箇所は左下隅と床、右上隅と壁の二か所である。ということは、持ち上げつつ、左側へ押してやればうまく開くはずだ。一旦深呼吸をして冷静になり、これを実践したところ何とか鍵があき、扉は開いた。やれやれ、危ないところだった。これは誰か閉じ込められるかもしれんなぁ、と懸念してみたが、いままで誰もそういう目には遭っていないようなので、案外大丈夫なのだろうかと納得していた。
そしてその後、FZ-1氏がシャワーを使用すると言って一階に下りて行った。当方は栃木の北海道浪人氏と北海道情報誌「HO」の話をしていた。これについては当方は全く知らず、今回初めて教えてもらった雑誌だ。そういえば、北海道ライダー限定の「疾駆北駆’す倶楽部MAGAZINE」というものが昔あったが、それの一般向けという感じだろうか。そして驚くことに、期間限定で、掲載している温泉が無料ないしは割引料金で入湯できるクーポン券が付いている。因みにその本の値段は580円で、仮に掲載されているすべての温泉に入れば、間違いなくそれ以上の恩恵を受けられる、この浪人氏はそれを楽しみにして、温泉ツーリングをしているとのこと。
それにしてもFZ-1氏遅いなぁ。どうしたのかと思っていると、一階がなんだか騒がしい。様子を見に行ってみると、
FZ-1氏がシャワー室に閉じ込められてるぅ〜
やはり恐れていたことが起きたか！よりによってFZ-1氏とは。そう思いながら涼しい顔をして、「んーこことここが引っかかってるから、こうすれば開くのでは」と言って、前述の方法でドアに力を加えて、「鍵を開けて下さい」と言ってみる。すると、見事に鍵は開き、中から汗びっしょりになったFZ-１氏が、バツ悪そうに登場だ。そんなに汗かいたなら、もう一回シャワーを浴びたらどうですかなんて言ってみたかったが、それは失礼なのでやめておいた。
二階の定位置に上がり話を聞いてみると、氏はまだかなり動揺していたようで、「もう出られないかと思った」と真剣な表情では発言していた。笑ってはいけないが、ちょっとしたインシデント（重大事故につながる小事故）だった。
外はまだ雨が降っている。明日は止んで星井七瀬と願いつつ、今日は就寝となった。
本日の走行 250km