2011年8月19日〜8月29日
ライダーハウス 渡り鳥哲也にて FZ-1氏（左）と管理人（右）
朝6時に起床し、出発の準備を整える。周りの方々はまだ起きていないので、なるべく静かに荷物を階下に下ろす。遅く戻ってきて早くに出発するとは全く迷惑な話だが、これもライダーハウスなので仕方ないのか？こういうことを考えるとテント泊の方が気が楽である。
朝露に濡れたTDMを雑巾で拭き、荷物を搭載していく。しっかりと固定しておかないと荷物が前方にズレてきて着座部が狭くなるので、この作業は入念行う必要があろう。例えば、ストレッチコードを引いて荷物を締め付ける際は、憎たらしい奴の名前を叫びつつ力を込めるとか。当方の場合は、「M中〜てめぇ〜このやろぅ〜」というのが定番だ。
さて、今日の天気は快晴で、既に日差しが暑く感じてくる。上記のように荷物の固定に力を入れると汗が出てくるが、雨が降るよりはマシだ。そうこうしていると宿の奥方が出てきて、エリンギ入りの味噌汁とコーヒーを出してくれた。おお、去年はコーヒーだけだったと思うが、今年は味噌汁も付くのか。大したことではないのかもしれないが、非常にありがたい。遠慮なくいただくこととする。
さて、今日の飛行計画だが、せっかく小樽に来ており、かつ昨年も良い景色が見られたので神威岬へ行くことにする。そして、FZ-1氏もそちらへ向かうそうなので、ご一緒させてもらうことにした。ところで、軽い食事をしながら計画を練っていると、宿の奥方から「ヘラガニの燻製が食べられる」という場所を教えてもらう。え、カニの燻製ですか。ヘラガニって何？FZ-1氏と相談して、鱗友朝市で食事をした後、積丹岬、神威岬へ向かう途中に寄ってみることにする。また、これとは関係ないが、FZ-１氏が寝袋を出発早々に失うという事故に見舞われたのは前述の通りだが、それもどこかホームセンターで調達したいとのこと。
こうして、渡り鳥哲也の奥方にお礼を述べてから出発する。まずは一旦フェリー乗り場方面へ向かい、鱗友朝市を目指す。ここは昨年初めて訪れたのだが、その際食べたイカがたいそうおいしかったので、今年もイカを食べようと思ったのだ。
だいたい港までは5�卍�なので、10分も経たないうちに朝市へ到着する。今日は日曜日なので開いているか心配だったが、裏の市場のみが閉まっており、表の食事処は開店していた。
さて、イカを注文するつもりだが、さんまもおすすめということで、「いか・さんま丼(1,500円)」を注文した。そして、料理が出てくるまで「カニの燻製」を食べる予定の「南保留太郎商店（なんぽりゅうたろうしょうてん）」の場所を確認しておく。なんでも余市漁港のすぐ脇にあるそうで、近くに菊池水産という会社があるそうだ。
おおっと、イカ・さんま丼が出てきたよ。いたただきます。うーん、さんまは脂が乗っていてとろけていく。地元のスーパーでも売っているのだが、やはり鮮度がちがうのだろうか。魚臭さがほとんどなく、さんまの味を存分に楽しむことができる。そしてイカであるが、これは昨年の方がおいしかったように思う。それでも十分に旨い。さんまの味が濃いので、イカのそれが少々陰に隠れてしまったのかもしれない。
鱗友朝市 「のんのん」のイカ・さんま丼
朝市で腹ごしらえができたので、まずは国道5号を方位270、そして余市から国道229号線を310で進んで余市漁港を目指す。前述の通り、今日は快晴で暑いくらいだ。そして時折現れる、海水浴場には多くの人が出ていて、北海道の夏を満喫しているようだ。この辺りは水もきれいで、透き通っている。当方の自宅周辺にも手軽な海水浴場があるのだが、こんなことはまずない。だいたい製油所や製鉄所を遠くに見ながら海水浴をするのだから、その水質や想像ができよう。
そしてしばらくすると余市の市街地が見えてきた。関係ないが、余市と言えばニッカウヰスキー、そして宇宙飛行士の毛利さんだ。行ったことはないが、道の駅にはその関連の展示もあるとか。
市街地を迂回して漁港へ向かう。ええと、どこかな。後ろからFZ-1氏がホーンで商店を通り過ぎたことを知らせてくれた。毎度どうも。早速店内に入り、冷蔵庫にあるヘラガニの燻製を発見した。しかし、４ハイで500円と値段は安いのだが、1人で４ハイでは量が多い。そこでFZ-1氏と折半でカニを食すことにした。
（有）南保留太郎商店外観 ヘラガニの燻製と管理人
（燻製小屋が見える）
全く関係ないが、オークラ氏の「ヘラバリ事件」は傑作だ。これは、氏が免許の書き換えをしようと県警本部に出かけた時のこと。
オークラ氏：免許の書き換えはどこですか
県警警官：免許見せて
オークラ氏：はい
県警警官：（免許を見た後、オークラ氏を見て）ヘェ〜ラァ〜バァ〜リ
オークラ氏：は？？？
県警警官：（目をひん剥いてオークラ氏を見て）ヘェ〜ラァ〜バァ〜リ
つまり、県警の警官は「運転免許の書き換えはここでは行っておらず、県の運転免許センター、通称平針試験場へ行け」ということを言いたかったようだ。それならばそう言えばよいものを「ヘェ〜ラァ〜バァ〜リ（平針）」の一言で事を済まそうなどとは甘いの一言だ。ヘラガニ、ヘラバリ、ちょっと似ていると思うのは当方だけか？
そんなことを思い出しながらカニの燻製をいただく。普通は茹でて食べるところを燻しているわけだからだろう、カニの味が逃げていない。そして燻製にした際の香りがまた、カニの味を引き出している。これは旨いよ。ただ、食べにくいのはこのカニのみならず、カニの欠点だろう。
FZ-1氏も喜んでカニを食べている。ところで、氏はその昔に女性からカニの殻をむかされていたことがあるらしい。また、それに留まらず、その家族の分まで食べるお膳立てをさせられたとは。ここから当方も負けじと、元嫁が周りを見ていなくて新車を簡単にぶつけて凹ませたこと、天然な発言を大勢の前で堂々としたので恥ずかしかったことなど、応戦して盛り上がった。
いずれにしても、二人そろって大満足の一品であった。カニの燻製、お勧めしますよ。
カニを食べ終わったので、再び走行を再開する。国道229号線をheading300、速度は40ノットを維持する。ところで、当方は先月、自動車の運転免許を実質全て取得したのだが、これにより速度違反などに対してかなり敏感になった。酒を飲むことは数年に一回程度なので飲酒運転は問題ないのだが、TDMのようなバイクに乗っていると法定速度はあっという間に超えてしまうことがある。そこで、事ある毎に速度計と制限速度を確認して違反をしないように、今まで以上に気をつけるようになった。速度が遅いことが安全とは限らないのであるが、速度以外だけでなく周囲の状況などにも注意深くなるので、多少は安全運転に貢献しているのではないだろうかと推測している。つまり、免許を取得すること＝安全運転に寄与という等式が成立するのではと考えているわけだ。もっとも、当方の後ろを走るFZ-1氏はタルい走行であっただろう。この場を借りてお詫びします。
引き続き海岸沿いをゆったりと走行し、北海道の涼しげな風を受けて気分は最高だ。ただ、途中で1996年に崩落事故があった豊浜トンネルでは少々引っかかるものを感じた。自然が相手なので人間の力が及ばないこともあるだろうが、できる限り安全な道を造り上げて欲しいものだ。要らない道を造る金があったら、そういう所に資金をつぎ込んではどうかと思う。
こうして紺碧の海を眺めながら、道道913号線に乗り換えてさらに海岸沿いを走り積丹岬を目指す。ここは昨年寄り忘れた場所なので、一度行ってみたかったのだ。
道道を外れて坂を上っていくと駐車場が見えた。そしてそこから歩いて、頭をぶつけそうな狭く天井が低いトンネルを通っていくとぱっと視界が開けた。これが積丹岬の展望台だ。先ほどから述べているように、この辺りはまさに「コート・ダ・ジュール」で、とてもきれいな海が続いている。関係ないが、同名のカラオケ屋が自宅近郊にあり、「コートジボワール」とふざけて言っていたら、当方の通うジムにいる「ナカヤン」がツボったようで、それなりにウケていた。ありがとう。
FZ-1氏と美しい景色の感想を分かち合い、写真を撮る。そして、一旦元来たトンネルを戻り、さらに高台にある灯台を目指す。おお、こっちの方が数段見晴らしがよいではないか。あまり人は上がってこないが、こちらが本当に見るべきものかもしれない。
積丹岬灯台と（カッコつけの）管理人
いい気分になった後、再び上ってきた道を下りていく。こっちの方が足にくるので気をつけよう。ここで当方がトイレに用を足しに行って戻ってくると、駐車場ではFZ-1氏がハーレー乗りの女の子となにやら親しげに話しているではないか。いったいどういうことか。後で訪ねてみると「バイクの自重により、駐車スペースで立ち往生しているところを助けた」とのこと。んん、おぬしやるな。俺もやってみたかったが、その勇気は無い。
こうして再び道道913号線から再び国道229号線へ戻り、10分程離れた神威岬へと向かう。このあたりの海岸線もとても良い色をしているし、所々で海水浴を楽しむ人々が見られる。また、温泉もあるようなので、またの機会には夕暮れ時に訪れて、海を眺めつつ入浴してみたいものだ。
さて、神威岬へはトンネルの手前にある道へ入り、山を上っていく。大きな看板が出ているので間違うことはないが、昔はかなりの難所であったらしい。詳細は当ページと相互リンクを貼っていただいている『放浪のページ内のコンテンツ、「1983年 北海道ツーリング 人との出会いの旅」』を参照願おう。因みにこちらのページの主宰者であるローホー氏は味のある、読みごたえのある文章をお書きになっている。当方としてはおすすめのページだ。
神威岬の入口は、草原の中に駐車場も整備されているのだが、岬までは徒歩で細い道を15分程度歩く必要がある。疲れている場合は草原を見ているだけでも十分と楽しいのだが、やはり神威岩を拝みに行く価値は十分にある。そういうちょっと厳かであり、美しい所なのである。
それにしても今日は天気が良く、暑い。30度くらいはあるかもしれない。さらに、海沿いの風は涼やかではあるものの、少々の湿気を含んでいて、微妙なところだ。そう思いながら岬を目指して、細く、時に足元が悪い道を歩いていくのだが、上記に紹介したページには、昔はこんなもの比にならないくらいに大変な道という旨、記載があった。例えるならば、アオサギとタンチョウの大きさを比べるようなものかもしれない。
岬はまだまだ先だ
ところで、ここは昔は女性は立ち入りができない場所だったそうだ。その理由は諸説あるのだが、それくらい危険な場所だったという説が一番ピンと来るように思う。当然、現在では性別に関係なく自由に行き来ができるのであるが、いつも風が強めに吹いているだけでなく、前述のように足元も悪い。ミニのワンピースにハイヒールという若い女性も見られたが、それはいかがなものだろうか。本人は平気そうだが、見ているこちらがあらゆる意味で心配してしまう。
そんなことをFZ-1氏と話しながら、ハイキング気分で岬を目指す。尚、氏は20年近く愛用している靴がついにいかれたとのこと。踵の部分が壊れたらしい。寝袋、靴と小事故（インシデント）が続いているが、大丈夫だろうか。まあ、後で調達するつもりということで、それ程問題視していないようだ。
こうして神威岩が見える突端へ到着した。青い海、白い雲、そして威厳のある岩、これが積丹半島の真骨頂ではなかろうか。でもなぜだか浮かれてはいけないような気がする。というのも、この神威岩がとても厳かに立っているからだ。きちんとした姿勢で一礼して、写真を撮る。荒々しいというか、無骨というか、岩と海の対比でとても神秘的に見える。宗教や第六感には全く興味はないが、心理的にこういうものが信仰の対象になるのだろう。日本には、山や岩、木など、自然に対する信仰が多くあるのも納得のいく話だ。
また、今こうしてリポートを作成している途中に伝説を調べていると、積丹観光協会のページに詳しく書かれていた。それによれば、ここは北へ逃げてきた源義経に恋をした「チャレンカ」なる人物がさらに北へ逃げる義経を追って来たが、既に船が出航していたので悲しみに暮れて身投げし、神威岩になったということだ。それ以来、女性の恨みが宿るこの付近を、女性を乗せた船が航行すると必ず転覆するようになったとのこと。女の恨みは恐ろしいですなぁ。
ん、それにしても、義経には「静御前」という正妻がいるんじゃあなかったか。頼朝に追われて逃げる途中で別れたのだったか。ううむ、モテる男には女が寄ってくる構図になっているのは現代でも変わらないな。
神威岩
（威厳があります）
さて、けっこう歩いたので、心地よい潮風に吹かれて岬でしばらく休息する。こうしていると、今年も北海道に来たのだなぁ、天気が良くなって嬉しいなぁとしみじみ思ってしまう。今年は未だに復職の目処も立っていないのだが、主治医の薦めもあってこうしてツーリングに出ることができて本当に良かった。まだまだ前途は多難であるが、こういう楽しみを糧にしていけば何とかなるのではなかろうか、と少々楽観的に考えることも必要なのかもしれない。そんなことを教えられた積丹半島であった。
おっと、帰りも例の「女人禁制」と書かれた門まで歩いて行かなければならないのか。しかし、厳かな雰囲気で心地よい風を感じた後なので、足どりは軽い。遠くに見える岩や海岸線、歩道脇に咲く花、そしてミニスカの女性を眺めつつ、元来た道を歩いていく。
日差しは強いが海を渡ってくる風が心地よく、周囲の景色も良いのでなんとか「女人禁制の門」まで帰り着くことができた。ここを過ぎれば草原の中を歩いて駐車場へ戻るのみだが、少々暑さで疲れたので「しゃこたんブルーソフトクリーム」を食べることにした。これはその名の通り、ミントの色を利用したきれいな水色のソフトクリームだ。渇いたのどには丁度よい。
ソフトクリームを食べてご機嫌の管理人
日差しを避けるために、売店の日陰にあるベンチに腰かけてゆっくりとソフトクリームを味わう。月並みではあるが、疲れた後の甘いものはまた格別ですなぁ。ところで、この「しゃこたんブルーソフト」は、名称こそソフトクリームだが、舌触りはちょっとシャーベット的だ。ちょっと違和感があるが正直味は良いと思うので、これはこれでアリだ。ギ酸を出すのは蟻だ。
日陰に入ってちょっと休息すれば汗は引いていく。これぞ北海道の良いところだな、そう思いながらマシンに跨り、次なる目的地である弁慶岬を目指す。まずは国道229号線へ戻り、そこから機首を120度へ向けて走り出す。ところで、この国道は雷電国道、またはソーランラインと呼ばれているようだ。ソーランの名は御存知の「ソーラン節」に由来していることは明白だ。さて、この「ソーラン節」だが、実は当方が小学校5年の時に運動会で踊らされたことがある。ということは、当然耳にタコができる程聴いたわけで、その歌詞は今でもハッキリと覚えている。
「ヤーレン、ソーラン、ソーラン、ソーラン、ソーラン、ソーラン。ハイハイ。ニシン来たかとカモメに問えばぁ〜、私ゃたつ（発つ）鳥ぃ、波ぃにぃ聞けチョイ・・・」
今更この詩を思い出してみると、ニシン漁に出た漁師たちが魚を探して威勢よく船を漕ぐ様子や、それについてくるカモメを擬人的かつコミカルに表現しているんだと気が付いた。その舞台となった海岸沿いを走行しているんだと思うと、なんだか小学校当時にやらされたことも案外無意味ではなかったのかと思えてくる。現にこの辺りは道沿いに漁村が点在しており、丸い回転盤のついた洗濯を干すような塔で、干物がクルクルと回転する姿がそこかしこに見られた。やはり漁業の本場と言ったら変だが、ソーラン節の本場なのであろう。
そんな良い気分に浸っていたら、泊原子力発電所が見えてきた。原子力云々ということではなく、あの丸い原子炉の格納容器がいかにも人工物という感じがして残念だった。
こうして原発を見送り、一旦岩内の道の駅で休息をとる。ここでは水分の補給とFZ-1氏の寝袋の調達を試みた。前者は訳なく獲得に成功するも、期待していたニセコパノラマライン入口にある「ラッキー」というホームセンターが実はスーパーマーケットの店舗であったのだ。おっかしいなぁ、「ラッキー」と言えばホームセンターだとばかり思っていたのだが、スーパーもやっていたとは。まったくアンラッキーだった。また、FZ‐１号のヘッドライトが片方切れてしまったので電球の調達もしたかったのだが、アンラッキーではねぇ。
話は変わって、この岩内の道の駅は数区画に渡って駐車場、公園、コンビニ、バスターミナル、観光案内所がある。また、その区画を通る道路が石畳風になっていて、ちょっと面白い。さらに、その観光案内所には窓口に人がおり、インターネット環境下にあるパソコンまで完備してあるという力の入れようだ。さて、ここで本来の目的とは少し違うが、この先の天気を確認させてもらう。それによると、雨は降らない程度に曇りのようだ。しかも気象庁のページで確認したので、予報の正確さがAランク（信頼度が高い）ということまでわかった。よっしゃ、今年は道東でキャンプをしてゆっくりとできるぞと思わずガッツポーズをとってしまった。
道の駅 岩内周辺の様子
また、道の駅の隣に「木田金次郎美術館」というものがあった。ここには入らなかったのだが、このリポートを書きつつこの人物について調べてみると、WIKIPEDIAに以下の記載があった（以下引用）。
岩内尋常高等小学校高等科卒業後、上京し開成中学、京北中学に通う。京北中学時代から絵を描き始め、また上野の展覧会に通うようになる。1910年、学校を中退し札幌市郊外で絵を描き続ける日々を送る。札幌で開催されていた展覧会で有島武郎の絵と出会い感銘を受け、スケッチを携えて訪問。以後有島との交友が生まれるが、その後岩内に帰郷し漁業に従事する。
1923年に有島武郎が死去して以降、漁業を離れ画業に専念する決意を固める。1945年、後志美術協会や全道美術協会の創立に参加するが、出品はしなかった。1953年、札幌市にて初個展を開催。1954年、洞爺丸台風による「岩内大火」により作品の大多数が焼失する。
1994年に同町に木田金次郎美術館が開館し、その設計を長男の木田尚斌が手がけた。
（ここまで引用）
なるほど、岩内出身の画家で結構な苦労人のようだ。20世紀初頭の北海道では、画家という職業が市民権を得ていなかったのだろか。漁師と画家を掛け持ちしていた時もあったとは、何事も根気が必要であり、それを持ち続けた人のみが偉業を成し遂げるのだろう。また、この美術館のページには、「有島武朗が木田氏との交流を題材に『生まれ出づる悩み』という小説を書いた」とも記載があった。
さて、体力も回復したので先を急ごう。今年はニセコパノラマラインではなく、もう少し南にある弁慶岬を目指す。国道229号線のソーランラインを、点在する漁村を横目に見ながら走行していく。今日は天気が良いから、前述の干物クルクルがあちらこちらで回っている。こうやって天日干しする干物は旨いんだよなぁ。
岩内のガソリンスタンドで約23ポンドの燃料を搭載する。因みに燃費を計算してみると、27km/Lといきなり凄い数値が出ている。既に74,000kmを走行しているマシンだが、絶好調だ。
さて、海岸沿いを気分よく流していくと、突然現れたホームセンター「YELLOW GLOVE」にて、FZ-1氏が往路で失った寝袋を調達する。また、食品類も充実していたので、当方もカレー、マーボー丼、R1-Z氏推奨の魚肉ソーセージ、果物の缶詰などを仕入れて今夜のキャンプに備える。
そして寿都（すっつ）町で針路を270へ変えて寿都湾に沿って車輪を進めていくと、遠くに岬が見えてきた。「あれだ」と気が付いてからは、どんどんと近づいてくる。こういう時は気分も乗ってくるので、ついついペースが上がりがちになるが、速度に注意しながら走行を続けていく。
こうしてやや陽が傾いた頃に、ようやく弁慶岬に到着した。ここには弁慶の大きな像以外には灯台くらいしかない。ただ、ここには「弁慶が義経の到着を待った岬」という伝説があるようで、今、夕方に到着したこともあろう、なんだか物悲しい雰囲気だったことが印象的だった。「ひょっとして義経がやって来なかったのだろうか」と想像してしまった。
弁慶像と共に
（表情に疲れが出てます）
こうして今日の岬めぐりは終了したので、ここからは一気にニセコ、時間があれば洞爺湖方面へ行こうといくことになり、当方が先導で国道229号線から道道523号線を45ノット維持で快走していく。この道道は中高速のワインディング路で、TDMもFZ-1も得意な道だ。ただ、荷物を載せているので無理は禁物である。慎重にいこう。
まずは黒松内まで行き、道道9号線、国道5号線と乗り継いで快走を続けていく。この辺りも交通量が少なく、夕日を背に受けながら前方の伸びる影に引かれて、楽しく走行できた。こうして陽が沈みそうな17時30分頃にニセコのセイコマに到着した。FZ-1氏はライダーハウスの「ニセコツーリストホーム」へ行くとのことだったので、お互いの無事、再会を誓い、お別れとなった。
一方、当方は倶知安の半月湖キャンプ場を目指すことにした。さて、ここから半月湖キャンプ場まではおよそ10�劼世�ら大した距離ではない。まずはこのコンビニで米を調達して、ボチボチといきましょうか。そう、当方家から米を持ってくることをすっかりと忘れていたのだ。ただ、セイコマではちゃんと1�堝�りを置いていてくれるので、ライダーにとっては便利な店だ。
そんなことを考えながら走行していたら、半月湖への入口を過ぎてしまった。仕方ないなと、その先にある旭ヶ丘公園キャンプ場へ目的地を変更して走行を続けていく。よくよく考えてみると、こっちの方が温泉が近いのでむしろ好ましい。ちょうどよかった。
こうして何とか明るいうちにキャンプ場へ入り、さっそくテントを張る場所を選定する。因みにこのキャンプ場は無料で利用できる。また、ロータリー状になったバイク置き場から奥の方へ手入れされた芝のサイトが続いている。お、ちょうど良い所に空いている場所を発見した。ただ、隣がヌシが住んでいるようなテントだったので、思い切り離れてテントを張る。
久々のテントなので少々時間がかかり、暗くなった頃にようやく設営が完了した。次は風呂へ行こう。地図で見れば歩いて行けそうな距離に温泉マークがあるが、念のためTDMに乗って出かける。そして羊蹄ホテルに日帰り入浴可の看板を見つけて、吸い込まれるように入っていく。
入湯料700円を「ちょっと高いな」と思いながら支払い、やっと風呂に入ることができた。ああ、疲れた。今日は距離的には280km程だったが市街地走行が多かったせいだろう。全くもって疲れた。いや、ただ当方が歳を取っただけだろうか。そんなことを思いつつも、ややぬるめのお湯で疲れを癒す。ここは内風呂も露天風呂もあり、当然露天の方へ浸かっているのだが、やや雲があるものの、とても綺麗に星が見える。もちろん天の川だってバッチリだ。
今年もこうやって北海道へ来ることができてとてもよかった。一時は「今年は辞めとくか」と思ったこともあったが、医師の勧めなどもあって何とかたどり着いた。何とも言えない、幸せと言うか、嬉しいと言うか、言葉では表現できない楽しさだ。これを求めて、毎年多くのライダーが北海道を目指すのだろうか。
ちょっとのぼせ気味になったので、風呂から上がり水分を補給して風に当たる。あっと、テントに戻ったら飯の支度をしなければいけないなぁ。ちょっと億劫だが腹が減っているので仕方ない。もっとのんびりしていたいのだが、テントに戻って米を研ぎ、水加減を調整して、米を炊く。これは何度となく行っていることなので、大きな失敗はしないだろうが、今日は初日なので、固くて食えないよりは軟らかい方が都合が良いと水を大目にしておく。すると、案の定軟らか目のご飯ができた。さらに、ご飯を蒸らしつつ、レトルトのカレーを温める。やはり初日はこれに限る。
今日のメモ書きの内容を整理しつつ食べていると、なんかキャンプ場の入口付近が騒がしい。ちょっと覗いて見てみると、大勢でバーベキューをしている光景が見えた。また、なぜか生ビールサーバーから皆ビールを注いでおり、水のように飲んでいる。地元の人だろうか。もうちょっと静かにしてほしいが、まあ構わず自分のペースでいこう。こういうことがあると、名目上でも300円とか500円とか支払って静かな夜を送る方が良いと感じる。
こうして食事と片づけを21時頃には終えて、メモをつけたり、明日の天気や天気図を確認して22時に寝袋に入った。明日は晴れだが、突然の雨に注意とのことだった。ちょっと気になるのは、日本列島に横たわる停滞前線だ。この動きが今後のツーリングに大きな影響を与えることは火を見るより明らかだ。Zzzzzz。
本日の走行280km