大阪屋食堂前にて
ついに北海道を走行することができる、最終日になってしまった。苫小牧東港に23時30分発のフェリーに乗らなくてはならないので、22時までに乗船手続をする必要がある。すると余裕をみて20時には港に到着したいところだ。
起床時刻は6時であったのだが、昨夜は疲れからか、消灯してから数分の記憶しかない。今日も長丁場になるので、テントの撤収作業がない、大阪屋に宿泊する作戦は結果良かった言える。ところで、まだ皆さん寝ているのだろうかと思っていたが、既に活動を開始されている方もみえる。それでは遠慮なくということで、当方も昨日購入したクラッカーやカロリーメイトなど軽い朝食を摂る。こういう時こそ食べておくことは重要だ。
こうしておおよそ6時30分頃には、ほとんどの人が出発準備にかかっていたが、当方の隣のおじさんは「まだ寝ていたい」という表情だ。もっとも寝ているのは自由なのだが、この環境下ではもはや寝ることは困難であろう。ツーリングの朝が早いことは、ライダーでは常識である。特に泊まりのロングでは尚更のことだが、このおじさんはその辺りをご存知ないようだ。昨晩はナカナカ寝れず、今日も朝早くからたたき起こされたと思っていることだろう。それならばライダーハウスではなく、テントを張るか、ビジネスホテルを利用されればよいことだ。
そうはいっても隣にいる人なのでなるべく静かに撤収をしていたのだが、彼もついに観念して起床した。そして「皆こんなに早いのか？」ということを尋ねられたので、「ツーリングは朝早くに出発して、陽のあるうちに宿泊地に到着するものですよ」と答えたら「そうなの？？」という驚きの表情をされていた。
さらにこのおじさん、いろいろと尋ねたいことがあったようで、話題はバイクへと移っていく。「タイヤが3,000kmでだめになってしまう」とか、「スプロケットが外れて往生こいたことがあるが、それはよくあることか」と聞かれた。この方は北海道在住で、屈曲路をほとんど走らないそうなので、「運転方法によってはありうるかもしれませんね」と、またスプロケについては、交換暦があるそうなので「それは恐らくその店の修理がヘタだったということでしょう」と回答し、「バイクを買うということは店そのものを買うということで、機体の価格だけで店を決めては危険です」、と生意気とは思ったが、助言をしておいた。そして最後に、「4輪と同じ考えでは2輪は乗れないですね」とお話した。
こんなやり取りをした後、大阪屋さんの駐車場で荷物を搭載していく。ところで、このおじさんのGPX250R�兇任△襪�、新車で購入して既に70,000kmを走破しているではないか。当方は正直のところ、「初心者同然のリターンライダー」と思っていたのでちょっと驚いた。また、軽整備なら自分でこなしておられ、キャブの分解なんかはお手のものだそうだ。今までそれなりの経験をされていたのに、ロングツーリングに出たことはなかったのだろうか。
さて、周りではすでに出発されていく方もいる。こちらも準備が整ったので、玄関先にマシンを移動させてから写真を撮影する。この店舗は数年前に新築したばかりで綺麗なのだが、看板は旧店舗のものをそのまま使用している。よって少々くすんでいるのだが、歴史を感じさせるものだ。きっと古くからのお客さんを大事にしているのだろう。
大阪屋を後にして、1分くらいの所にある映画「旅立ち〜足寄より〜」のロケが行われた千春の家へ。実は当方、この映画は全く知らないのだが、周辺の情報を調べていたらたまたま発見したので立ち寄ってみた。まさに足寄、なんちって。映画については、また機会があれば観てみようかな。ところで、後に調べてみたら、このロケセットの家は中に入って見学できるようだ。
映画セットの千春の家
ロケセットの家を見たので、本宅にも行ってみる。ここは2回目なので、詳細は語らないでも問題なかろう。
左の看板がちょっと傷んできたか？
足寄まで来ているのだからオンネトーの方を回って行きたいところだが、今回は士幌町に訪ねる所があり、次回に回す。こうして銀河ホールのテーの字を左折、さらに次の交差点を右折して国道241号線に乗って芽室、上士幌町へ車輪を進めていく。おや、こちら側はちょっと雲が出ているぞ。ナイタイ高原では眺望は期待できないだろうか。せっかく早朝のナイタイ高原を楽しみにしていたのになぁ。ともかく行ってみよう。
国道を離れ航空公園へ続く道を右折し、道道806号線を飛ばしていく。さすがにこの時間は全く交通量がないので、よいペースを保つことができる。が、肝心の眺望はイマ2つくらいである。すっきり晴れていれば、青空に映えるとうもろこし畑、牧草地の中を大きな輪を描くように通る道を楽しむことができるのだが、きょうはやや霞んでいる。
残念ではあるが、天気はどうしようもない。いや、むしろここまで夕張〜比布以外は快晴だったので、本当に運が良かったと言うべきであろう。そう思い、高原へのワインディング路をTDMの鼓動と共に駆け上がり、頂上の駐車場へ到着する。今日この時間のナイタイ高原は、当方の貸し切り状態であるのだが、残念ながら十勝平野を眺望することまでは独り占め、ということにはならなかった。
マシンを乗り換えて
往生際が悪い管理人は、駐車場よりも一段高い場所へ歩いていく。高度が高い方がなんとなく景色が見えそうな気がしたのだが、そんなことはあるはずもなく、やはり雲がかかってしまっている。残念。
早朝のナイタイ高原は不発だったが、今回のツーリングではどうしても士幌へ立ち寄る必要があるのだ。と言うのも、士幌町は義理の母が小学生時代までを過ごした街であり、現在も隣人の方が家を残しているという話を聞いたので、一度見てみたいと思っていたからだ。
こうしてナイタイ高原を下り、音更川沿いに道道806号線を南へ追っかけていく。
士幌町市街地へ向かう途中に
話は逸れるが、当方の大学の恩師の言葉に「現在を知るには、そのものの過去を知る必要がある」というものがある。つまり、ある人について知ろうとする場合、その人の過去を知らねばならないということであり、「人に歴史あり」というわけだ。
ところで義理の母というのは、当方の実の父親の嫁さんである。当方の実の母は20年以上前に死んでまっているので、親父は10年程前に再婚した。これは我々子供が望んでいたことであり、この話を聞いた時には随分とホッとしたものだ。親父の残りの人生は自由に生きて欲しいと願っているし、それが当方のできる親孝行かと考えている。。因みに、戸籍上に記載されている母の名は実母である。役所でそういう種類の書類を作成する場合は混乱してしまったことがあるので、一応記載しておこう。
それはともかく、士幌といっても猛烈に広いし、同じような景色が延々続いている。一応事前におおよその場所を確認していたのであるが、全く歯が立ちそうに無い。そこで、何か手がかりはないかと思い、集落の一番北にある「開拓の碑」へ行ってみる。
しかし、開拓の碑には手がかりは無い。さてどうしようかな、次原かな。そう考えていたところ、隣にある酪農家の前庭で薪を割るおじさんに事情を話してみると、偶然にもこの方は義理の母の遠い親戚に当たるそうで、家までの道順を教えてくださった。またわからないときは、街にあるタクシー（ハイヤー）会社さんがよく知っているからと助言を頂いた。
こうしておじさんの説明通りに道を辿っていくが、「〇本目の道を右」と言われてもどれがその道か、すぐにわからなくなってしまった。そこでタクシー会社を訪ねることに。ここは広い通り沿いなので、すぐに発見できた。ここへ来て思い出したのだが、このタクシー屋さんは昔、義理の母の一族が経営していたと聞いたことがある。
タクシー屋さんで事情を話すと、社長さんが家まで一緒に行ってくれるという。「ご親切にありがとうございます」と素直に好意を受け、タクシー屋さんの車についていく。ヒョイヒョイと通りを抜けて、ダートを走り、5分程で到着した。そして、このタクシー屋さんが古い家を管理している隣人さんに電話までしてくれて、その隣人さんも農作業中のところを手を休め、こちらへ来て下さった。本当はちょっと家を見るだけでよかったのだが、オオゴトになってきた。これも旅の楽しみだが、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
こうして無事に義理の母の家に到着し、詳しい自己紹介をする。すると、「ああ、OOさんの旦那さんがあなたのお父さんってことね」と納得してくれて、「これでわざわざ来てくれたの？」とバイクを見てやや驚いておられたというか、呆れておられたというか・・・。
そして、こちらの家のご主人が丁度義理の母と同じくらいの年齢で、当時のことをいろいろと懐かしむように話してくださった。「秋味（シャケ）が川に上ってきておいしかった」とか、「洪水で収穫前の小豆が全部流された」とか苦楽を共にしたようだ。そして話題は義理の母の父親、つまりは当方の義理のおじいさん（こういう言い方があるのか？）へと移っていく。当方はお会いしたことは無いのだが、「現在90歳でご存命である」とお伝えしたら、「そりゃ驚きだ」と目を丸くしておられた。さらにこちらの奥さんがトマトを下さり、持ち運べないのでその場で遠慮なく頂いた。
ところで、義理の母一家は50年くらい前に本州へ移住してきたわけだが、当時としてはかなり思い切った決断であったに違いない。事実、村の人が皆見送りに、今は無き国鉄の駅まで来てくれたそうだ。なるほど、道理で、当方の少ない手がかりでも、ここに辿り着くことができた訳だ。後日義理の母も「狭い街だから、同じ位の歳の人なら皆知っている」と話していた。
隣人さんの畑 この車両で刈り取りをするようだ
（向こうまで全部トウキビ）
こうして遠い知り合いの方々とお会いして、義理の母が過ごした時代を垣間見るという、このツーリングの一大イベントの１つを終えることができた。そして最後に「農閑期にまたおいで」とお誘いを受けてしまった。おそらく社交辞令だろうが、冬の北海道も見たいので本当に来ちゃうかもよ。
さて、安堵している場合ではない。今日の夜には苫小牧に到着していなければならない。幸いにも現在の時刻はまだ11時なので、差し迫ってはいない。また、怪しかった雲行きもだんだん回復してきた。こうなると欲が出てきてしまうのは悪い癖だ。
さてどうしようか、自制心と欲の狭間で考え、帯広・富良野経由で苫小牧のフライトプランを作成し、提出する。ちょっと距離があるが、最終日なので承認し、早速出発だ。
広い広いとうきび畑に別れを告げて、町道で音更町まで南下していく。それにしてもこの辺りの防風林は圧巻だ。きっと冬はものすごく強い風が吹くのだろう。それを想像するとちょっと恐怖感を覚えるものの、見てみたいという気もする。
こうして音更川を渡り、道道133号線で十勝牧場へ通ずる、マップルにも掲載されている白樺並木へと車輪を進める。実はこの白樺並木へはまだ訪れたことがなく、少なからず期待していた。そして現地へ着いてみると案外地味であったが、これだけ長く続く並木は珍しい。ただ残念なことに、口蹄疫の影響で牧場へは立ち入り禁止となっている。おまけに並木入り口には大量の石灰が撒かれていた。仕方ないので、この並木を走って牧場まで行くことは宿題として残しておくしかなさそうだ。そう思い、入り口で写真を撮影して暫く並木を眺める。
十勝牧場の白樺並木にて
この後、旧道の国道241号線で南下すべきところを、新道を選択してしまった為、音更川を渡った後に少々迷走して帯広の街へ到着する。そして何とか道道26号線に乗り、藤丸デパートまでやって来る。この斜向かいに「六花亭」の本店がある。店の前にバイクを停めて、店内をウロウロしながらで土産を選んでいく。いろいろ旨そうなものがあるが、ここは定番の「マルセイバターサンド」に決定した。そして自分もサクサクパイを食べようと思ったのだが、昼飯前なので今回は止めておく。
購入と配送の意思を店員に伝えると専用のカウンターへ案内されて、宅配便の伝票を記入する。そして後日工場から冷蔵便で送るとい説明を受け、料金を支払う。ここで感心したことは、店員がレジを打つ時に「OOをXX個、△△円、送料YY円」と丁寧に復唱していたことだ。これならば間違いは起こらないだろう。そして最後に、今日はサービスでシャーベットをふるまっているということだったので、遠慮なく中庭で食べた。これがなかなか美味であったことは言うまでもなかろう。
さて、土産の手配第一弾は完了した。次は「ぱんちょう」で豚丼を食べよう。数百メートル南下して、駅前ロータリーの交差点を左折すればこの店なのだが、左折前に信号待ちをしているとタレが焼けるいい匂いがしてくる。これは楽しみだ。そして店の前に来ると、10名以上の客が店外で並んでいる。ありゃ〜、こりゃダメだ。仕方ないので他の店は無いものかと国道38号線を走行していたら、「ぶた八」という店を発見。時刻が13時になっているので、ここへ滑り込む。駐車場にバイクを停めると、この店から肉を焼く良い匂いがしてくる。早く豚丼食いてぇ〜。
暖簾の表裏が逆じゃあないの？
店内は案外広く、ぱんちょうの2倍ほどはあると思われた。客数もそれほど多くなかったので、奥のカウンターでゆったりと座り豚丼「二郎」を注文する。この店は豚丼の肉の数で「一郎から四郎」と名前が付けられているのだ。
ちょっと暑かったので水を飲みつつ一息ついていると、入り口に近い方の席にはやたら大声で喋っている集団がいる。どうも中国人のようだ。日本に観光旅行に来ているということは富裕層なのであろうが、ちょっとやかまし過ぎはしないか。まあこんな人が多い国だからと気にせず、久々に店内にあるマンガ雑誌を読みつつ豚丼を待つ。
およそ15分程で豚丼が運ばれてきて、さっそく頂くことにする。松葉に刺されたグリンピースをかじり、次に本題の肉を口に運ぶ。ん、ちょっと肉が薄いか。また、タレもやや薄めか。そして、やや焼き過ぎ？の部分があるのか、なんかちょっと苦いぞ。味は並ということで、ちょっと店の選択を誤った。が、食べられないほどではないのでしっかりと完食しておいた。因みに量は十分にあり、値段はそこそこであったと補記しておこう。
豚丼「二郎」
ここから苫小牧直行では時間が余るので、富良野を軽く散策することにしよう。本当は最終夜を富良野で宿泊し、翌日散策後、苫小牧へ向かうようにしたかったが、今回はその分の時間を道東滞在に費やしたので仕方ない。さて、このまま国道38号線をheading270で40ノットを維持していく。しばらくすると帯広の街は遠ざかり、いつの間にか回りは畑ばかりだ。この田園風景も今日で最後かと思うとちょっと切ないが、また来ればよいではないかと自分に言い聞かせる。おや、畑の中で、大きな筒を横方向へ伸ばし何かを撒いている機械が見える。そりゃそうだよなぁ、こんだけ広い畑だったら手作業という訳にはいかないだろう。農業も機械化して大規模にやらないと採算が取れないと、士幌のおじさんもおっしゃっていたっけ。
そんなことを考えつつ、狩勝峠を上っていく。北海道はワインディング路が少ないので、こういう場面はワクワクしてくる。ちょっと速度を上げつつ、コーナーでは大きめにアクセルを開けてトラクションを楽しむ。また、高度を上げていくに連れて、景色もよく見えるようになってくる。
こうして峠にある休息所にて一息入れる。ここまでくれば暑さからも開放され、気分も最高だ。お、道路を挟んだ向こう側には展望台もある。昨年はガスで何も見えなかったので、今年は景色も楽しんでいこう。因みに、展望台からは今走ってきた新得や清水がよく見えた。そして遠くには日高山脈も。その向こうは襟裳岬ということか。いろいろな地名が頭に浮かんでくるようになったということは、北海道に慣れてきたということだ。しかし、今日は北海道を離れる日か・・・。
狩勝峠で休息して走行を再開し、南富良野町へ入っていく。これから土産第二弾を手配し、さらにフェリーに乗船するので、幾寅で現金を下ろしていこう。もちろん使用金融機関は郵便局である。ところで、この幾寅は2006年に「鉄道屋」のセットを見にきたことがある。若き日の広末が出演していたのだが、今やスッカリと擦れてしまったか？
この後は国道を逸れて道道465号線に乗り、金山湖沿いの屈曲路を楽しむ。ここはダム湖沿いにある道の典型で、中低速コーナーが連続する。次々に現れるコーナーを抜けていくと、湖畔キャンプ場が見えた。ここはラベンダー畑などがあり、良く整備されているので、「こういうところでキャンプするのも悪くないな」、と横目に見ながらタイヤの丸い部分を感じて、さらにカーブを走り抜けて行く。
そして踏み切りを渡り、国道237号線、38号線と繋いでいくと富良野だ。山部、布部と見慣れた地名が書かれた案内板に富良野を感じながら、土産の手配第二弾について考える。この土産は従兄一家へ送るものなのだが、事前調査では「メロン」が候補に挙がっていた。果たして良い品があるかどうか。一度店に入ってから検討しよう。ダメなら野菜でもよかろう。
こうして派手派手しくない、ひっそりと営業している農園直営の店を選んで、駐車場にマシンを入れる。するといきなり「いやっしゃい。どうぞ」とスイカの試食品を勧められた。丁度喉が渇いていたので艶姿阿弥陀如来アリガタイねぇ。すいかをかじりつつ、売られている品を眺めてみると、割合多くの種類の農産物が売られている。そして目当てのメロンを見ていると、メロンの試食品も勧められた。んー、味も悪くないし、見た目も良い。ここで決まりだね、メロン3玉で送料込み5,000円でと希望を伝えると、あっさりO.K.牧場だ。メロンは１個1,500円程度だったので、送料を若干値引いてくれた計算だ。お盆も過ぎて客も少なくなってきていたので、売る方もそのくらいの値引きは問題ないと考えていたようだ。因みにこのメロンの正式名称は「富良野赤61号？」だそうだ。
親戚の家に送るメロン
メロンを購入したお礼か、とうもろこしを一本もらったのでその場で食べていくことにする。月並みな表現であるが、本当に甘いんだよなぁ。またこのプチプチ感がもぎたての証拠だろう。ところで、店の人の話では、先週までは天気が悪かったらしい。その影響でスイカは味こそ良いが、見た目が悪くなってしまい、売り物にならないそうだ。なるほど、それで試食を勧めてきたわけか。また、今年は熊も多数目撃されているらしく、国道のすぐ向こうに一度現れたそうだ。
こうしてお世話になっている人たちへの土産を手配したので、後は美瑛・富良野を緒方挙、高倉健、周遊券、思いつきに流して、景色を見てから苫小牧へ向かうことにする。
まずは北の国からの出発点である、布部から道道544号線で麓郷地区へ向かう。この道の市街地は吉岡演ずる純が、故古尾谷雅人のトラックに乗車する場面や、中嶋演ずる蛍の結婚パレードが行われただけでなく、度々画面に登場するので見覚えがある。さらに、地井演ずる中畑の事業所である中畑木材のある交差点を左折して、今度は折り返すように道道235号線で八幡丘地区を通っていく。ここはおなじみの、岩城演ずる草太の牧場があるところだ。牧場の中を通る道は、ちょっとナイタイ高原へ繋がる道に似ているか。
そして峠を越えて下りにさしかかると、富良野の市街地を見下ろすことができる。ここには「ハートヒルパーク」という展望台があるのだが、この前のにあるカーブが「れいちゃんコーナ」と呼ばれている。ご存知横山めぐみ演ずるれいちゃんが、帰宅途中に自転車のチェーンが外れて往生こいているところへ、純のが乗車していた路線バスが通りかかる所である。もっとも、本物はもう一段山側へ入った未舗装路で、現在は廃道になっている。ところで、横山女史はこのドラマで人気に火がつき、JRのシンデレラ・エクスプレスや真珠婦人で大ブレイクすることはご存知のとおりだ。この辺りの時代はまだ記憶に新しいと思うがいかに？
さらにこの坂を下り、道道298号線を右折して、純と宮沢りえ演ずるシュウがデートした、鳥沼公園を横目に走行を続けていく。ところが、この道道がまた長い、長〜い直線道路で、一向に次に変針する、北富良野町の道道353号線が見えてこない。地図上では大した距離に見えないんだけどなぁ。
この途中には、「羊の丘」の案内板を発見。ここは中富良野の山側にある、比較的新しいスポットで、ジンギスカンを食べることができ、キャンプ場もある。実は今回のツーリングで少し気になっていたのだが、また次回にでもキャンプしてみたい。
時折見かけるキャンプ場などの看板に思いを巡らせつつ、上富良野市街地を抜けて、やっと道道353号線に乗り換えることができた。ここは高速コーナーが続くややアップダウンのあるワインディング路で、45ノット前後で気持ち良く走っていく。
こうして白金地区に到着し、インフォメーションセンターの向こうにある「青い池」を目指す。ここは2008年頃から知っていたのだが、今回が初めてだ。昔はダート路を走ってすぐ際まで行くことができたようだが、今は道道沿いの駐車場へ車両を停めてから、10分程歩いていかなければならない。「もう夕方だし、大して混んでいないだろう」と思っていたが、なかなかの盛況ぶりでちょっと残念だ。まあ熊に出会う危険性は少なくなるのでよしとしましょうか。
こうして針葉樹に囲まれた細い道を歩いていくと、林の中に青い池が現れた。今でこそきちんと柵が設けられているが、昔は何も無かったに違いない。そう考えながら写真を撮ったり、見る位置を変えたりして色の変化を楽しむ。ところで、説明によれば、ここは温泉の成分が流れ込んでいて、このような色になっているようだ。その色は青というよりは、水色と黄緑色が混ざっているような青白色と言ったほうが適切か。例えるならば、宗の時代に輸入された「青磁」に近いのではなかろうか。因みに神威岬の海は青ではなく、碧であった。青って言ってもいろいろとありますなぁ。
青い池
ところで、この池の周辺はやや足元が悪いところがある。池を見ている時にも背の高いヒール靴を履いた、ムチムチ足のネエチャンが危なっかしく歩いていた。やはり観光にはスニーカーがよろしいかと思われる。
さて、陽もだいぶ傾いてきた。そろそろと苫小牧に向かう必要があるが、そのまま国道を戻ったのでは面白くない。何ていったってここは上富良野だ。ということで、道道966号線の美瑛街道を少しだけ戻り、道道824号線で美馬牛へ向かう。この道はそれほどカーブは無く、50ノット維持で素早く通過し、国道237号線を渡り、さらに道道49号線を30ノット程度でゆっくりと流し、夕焼け色を映した丘、長く伸びる影に哀愁を感じつつ積算計を回していく。もちろん、このあたりの丘はすべてパッチワーク状に畑がつくられていて、見応え十分。しかも人がほとんどいないので、当方の独り占めだ。ウッシッシッシッシ。
十勝岳をバックに
途中で道の伸びる方角が変わってしまい、不安になったのでheading180を維持するために頻繁に道を乗り換えていく。すると偶然ジェットコースターの道へ飛び出したので、富良野八景と書かれた看板のある場所にバイクを停める。ここは2006年以来かな？と以前いつ訪問したかを考えつつ、大きく上下にうねる道を眺める。確かにこれだけ大きく上下する道は少ない。数日前に行った斜里町の道でもここまではうねっていなかった。ただ、長さはそれほどでもないね。
ジェットコースターの道
そのように分析しているとハーレーに乗る方から声をかけられ、いろいろと観光情報について尋ねられた。それにしても今回はよく人からモノを尋ねられることが多い。当方もキャンプツーリングの初心者から、中堅どころへランクアップすべき時が来たのだろうか。まだまだそんな領域ではないんだけど・・・。
この方とは写真を撮りあい、お互いの無事を祈りつつ別れた。陽はさらに傾き、そろそろ日没かという様相を呈してきている。そろそろ本当に苫小牧に向かわないと。非常に名残惜しいが、この後はジェットコースターを感じつつ、国道237号線へ誘導されていく。
こうして国道237号線で南下を始めるのだが、ルートを確認しておきたいし、ちょっと喉が渇いたので陸自の駐屯地前にあるコンビニへ立ち寄る。いつものように水を飲みつつ、マップルを見ていると・・・、ゲゲ、苫小牧って150km以上あるじゃん。そりゃそうだ。上富良野の北は美瑛で、その北は旭川だもんなぁ。現在時刻は18時前、3時間かかっても21時、まあ大丈夫でしょう。
こうしてフライトプランを承認して、TDMに火を入れる。ここからは夜間走行になるし、飛ばしていくのでTDMの性能と信頼性に全てを委ねて出発する。あと、苫小牧東港周辺は何も無いので、ここで燃料を搭載しておこう。道内では残量は問題ないが、敦賀から自宅へ向かう際にスムースに事を運びたいからね。
刈り入れ前の田に長い影を映しつつ快調に走行していく。やはり今回も、最終日が夜間走行になってしまった。昨年は雨が降ったので、苫小牧へ直行して、余った時間は銭湯やフェリーターミナルで過ごしたが、あれはあれで何となくもったいなかったような気もする。日没と同時に苫小牧東港が理想だが、そこまできれいに時間調整を行うことはかなり難しい。
陽が完全に落ちて、夜の帳が降りてきたころに南富良野町を離れ、占冠村へ入った。まだまだ道のりは長いぞ。ところで、シムカップなので「スイカップ」を思い出す。フルセアナは最近見かけないですな。バカなことを考えていると、後ろから良い速度で近づいてくるクロカンの4輪車が見えた。これは運が良い。コイツを前に出して後から付いて行こう。陽が落ちてからは当方の前後には誰もいなかったのだが、4輪車が前にいると先を見通すことができ、適正な車間距離を取っていれば、万が一取り締まりをしていても当方には影響が及ばない。
さっそくハザードを出して左へ寄り、クロカン車を先行させる。車種はエクストレイルだ。そして「付いて来れまい」という勢いで抜き去っていくが、たかだか50ノット程度の速度だし、この手の車は一段高いところからライトを煌々と点灯させているので、先々のカーブや路面状況もバッチリ目視可能だ。故に昼間に近い感覚でコーナーへ飛び込んでいける。鼻歌交じりでランデブー走行を楽しむ。「いかれたデブ（乱デブー）」のことではない。
こうして日高峠を抜けて、山間部を飛ばして平取へやってくる。この辺りまでくればポツポツと街が見受けられるようになる。この時点で時刻は20時過ぎなので、予定よりもやや早く進んでいる。そして当方は国道235号線バイパスで西へ向かい、壇レイのクロカン車は237号線を直進していった。ありがとさん。
それにしても、峠から南側はやはり湿度が高いので、さらに苫小牧が近くなったことを実感させられる。もうすぐフェリーターミナルだ。
235号線バイパスを厚真I.C.まで走行し、いよいよ道内の走行が終わろうとしている。旧道の国道を渡り、踏切を通過。さらに右折して臨海鉄道の線路も越えていけば、突如巨大なフェリーが視界に飛び込んでくる。やれやれ、何とか道内を無事に走りきった。この充足感と、北海道を離れる寂しさが入り混じった、複雑な気持ちである。
係員の指示に従って、バイクを指定の場所に停車させる。当方の前にはまだ数台しかいないようだ。案外皆さん遅くまで走っているのだなぁ。
ターミナルに入り、ちょっと腹が減ったのでラーメンをすすり、土産物を物色する。今年は既に各所で手配済みだが、万一足りなくなった場合に備えて「白い恋人」を一箱買い足しておいた。その後待合い室の椅子に座り、テレビを観て過ごす。今年はよく走ったよ。現在のところまでで2,900km以上走行しているから、自宅までには3,000kmを確実に越えそうだ。天気が良かったので停滞が無かったこと、またそれによりツーリング魂に火がついて、「走りたおしてやろう」という意欲が湧き出てきたことが原動力になった。また天気が良かった故に気温も高めであったことも幸いした。このことについて、北海道の人たちは「今年は暖かい」と表現されていた。いや、この場合は暑いではないのかと思うが、暖かいで正解のようだ。北海道には暑いという概念があまり無いのかもしれない。あるいは、暑いという場合はさらに気温が高い場合を指すのかもしれない。
色々考えていたら疲れからか、眠くなってきた。ついウトウトとしてしまう。
暫くして目が覚めたものの、寝起きでボーっとしていると2輪車の乗船指示が出た。ヨッコイショと立ち上がり、TDMの元へ向かうと・・・。既に周りのライダー達はタラップを上っているではないか。放送が遅いのか、彼等が早いのか、ともかく当方もエンジンを始動して荷物の固定をチェックし、車両甲板へ上がっていく。そして係員の指示でバイクをつけた場所が、また網棚の無い場所だ。しかし、幸いにも隣の人がほとんど荷物を船室へ持っていくようなので、当方が網棚を使用することができた。また去年のように床に置く羽目になるかと思った。
いつものようにフロントで寝台の番号指定を受けて、寝台に向かう。行きと違って帰りは下の段だ。さらに上の段はどこも使用されていない。やれやれ、よかった。こうして風呂へ入り、寝台でメモをつけてゆっくりしていたら、また眠くなってしまった。出港のドラの音までは覚えているが、それ以降の記憶がない。
本日の走行 450km