早朝の網走湖
（テント前にて撮影）
6時頃に目が覚めた。疲れていたせいか、ちょっと遅めの始動だ。少々冷え込んだので、粉末のカフェラテを飲もうとお湯を沸かす。ただ水を汲みに行って、コンロにかけるだけだが、「キャンプをしている」という気分は倍増だ。網走湖や、湖面に映る景色を眺めてカロリーメイトをかじりつつ、熱いカフェラテを飲む。安い朝飯だが、前述のように気分は最高よ。
早朝のキャンプ場
しばし遊牧民族の気分に浸っていると、もはやシジミを売る人の車がやってきて、100mくらい向こうで商売の準備をしている。北海道の夏は短く、その間に売り上げを出さないといけないので、必然的に朝早くから商売をするのだろう。
できればもっとのんびりしていたいところだが、北海道にはツーリングに来ているのだ。そろそろ撤収して今日のプランを提出し、走行を開始しよう。幸いにもフライシートは濡れていないし、いつも通りにテント床面には工事用シートを敷いている。おかげで撤収は順調に進み、7時30頃には出発準備が整った。
今日もたのむよとTDMのエンジンを始動し、女満別野営場を後にする。ん？、アクセルワークに対して、やや反応が遅いように感ずる。これはチェーンが伸びたせいだろう。今年中には交換する必要があるかもしれない。今回はグラインダーも購入したことだし、かしめ工具を購入して自社整備にしようか。
そう考えていると、すぐ近くにあるめまんべつのメルヘンの丘へ到着だ。本当は晴れているので美幌峠へ行きたかったが、知床半島の最も東の集落である「相泊」へ行く予定なので、ちょっと無理そうだ。2009年に天気が悪いながらも訪れたので、今回は残念ながら飛ばすことにする。まあ、快晴の美幌峠は宿題としておけばよかろう。
最初は残念な気持ちを引きずっていたが、メルヘンの丘を見ればすっかりと良い気分になった。というのも、ここの斜面は西側に広がっており、朝日を背に綺麗な丘を眺めることができるからだ。因みに2008年は夕方に訪れたので、逆光線で眩しかったと補記しておこう。おや、丘の大部分の畑は休耕になっているのか、既に作物が収穫されたのか、すっぽりと抜けてしまっているのが少々残念だが、頂上付近にポツポツと生える木がアクセントになっていている、牧歌的な風景に感謝。
めまんべつ メルヘンの丘にて
一通り景色を楽しんだ後、国道39号線を北上して網走を目指すが、せっかくなので市街地を通らずに天都山経由でオホーツク海岸へ出ることにする。たまにはタイヤの端も使わないともったいない。貧乏くさいことを考えつつ、呼人浦キャンプ場を横目で見て通過する。ここのキャンプ場は人気があると聞いているが、確かに。細長いサイトには撤収を終えて、まさに出発しようというライダーが多数見えた。既に出発した人もかなりいるだろうから、設営されたテントの密度は高かったかもしれない。
この後国道を離れ右折し、踏み切りを渡って山へ上るワインディングを走行する。途中に博物館網走監獄があった。1994年にここに訪れたのだが、改築されて当時よりもすっかり綺麗になっている。門前で写真撮影のみを行い、すぐに走行を再開する。
博物館 網走刑務所前にて
途中に流氷館やオホーツク公園を通過していく。ここの公園にはキャンプ場もあるようなので、少し気になるなぁ。案外良い所かもしれない。
網走の市内を迂回していくつもりだったが、駅の東側の住宅街に出てきた。丁度ライダーハウス「ランプ」の近くだ。ちょっと強烈な所だったことを思い出す。経営者のオヤジはいい加減だし、客も建物を「サティアン」とか呼んでいるし・・・。
こうして住宅地を抜けて国道244号線、通称斜里国道に合流、オホーツク海と再会する。今日は「超」がつく快晴の日で、昨日と違い、海もちょっとコバルト色というか、深い青色に見える。さて、ここらで燃料を搭載して、今後に余計な心配事をしなくてよいようにしよう。そう考えていると、2008年に利用したホクレンのスタンドが目に入った。この際は、店員は丁寧な仕事をし、さらにスタンプ10個をまるまる押してくれた台紙をくれたので、今日もここで給油することにしよう。
小さいスタンドへ入ると、まるで当方が入ってくるのを見越したように、オジサンが出てきた。そして給油している際に、「今日はどちらへ」と質問をされたので、「知床方面へ」と答える。すると「今日は天気が良いので、きっと景色が良いですよ。ただ、斜里町内の取り締りには気をつけてくださいね」とお気遣いを頂いた。このやり取りは、2008年当時と全く同じではなかろうか。
素早い仕事で給油と支払いが完了し、店の横にある市道から信号のある交差点で国道へ戻ろうとしたが、この信号が車両感応式であったので、2輪ではセンサーの下にうまいこと停車しないと反応してくれない。あ、こりゃだめだ。仕方ないので自分でボタンを押しに行こうとしたら、給油したスタンドのオジサンが走ってきて、ボタンを押してくれた。手を挙げてお礼をしたら、おじさんも気をつけて、という様子で手を挙げて返してくれた。このスタンドはまた利用してもよいな。
燃料を18ポンド、満タンまで搭載したので、この後400km以上の走行が可能だ。因みに、燃費は概算で26km/Lであった。リポートには記載していないが、昨日は28km/Lを記録している。TDMの巡行燃費は相当に良い。
国道をheading090を維持して、40ノットで走行していく。左手には濃い青色のオホーツク海、そしてそこから気持ちの良い涼しい風が吹いてくる。やはり来てよかったなぁ、いやいや、ぼーっとしていると取り締まりに遭遇するとも限らない。引き締めて参りましょう。遠くに知床連山や、斜里岳も見えてますよ。関係ないが、当方、2008年のリポートで、斜里岳と羅臼岳を取り違えていた。ま、どちらも美しい形の山であることに変わりはないんだけどね。
それにしてもちょっと日差しが強い。水分補給のために涛沸湖原生花園にて休息する。ここはには、はまなすやアッケシソウなど数え切れない程の植物が自生しており、野鳥も多数生息しているようだ。因みにラムサール条約にも登録されている湿原らしい。なるほど、180度の視界は完全に湿原になっている。霧多布の琵琶瀬ほどではないにしても、規模は大きい。また、斜里岳がきれに見えるので、景観的にもすばらしいものがある。
涛沸湖より斜里岳を望む
さて、野生の植物に見送られて、斜里町の直線道を通っていく。振り返ると地平線まで道が続いていることがわかるが、ここはちょっと我慢して、国道334号線の知床国道へ乗り換える。そしてさらに進んで行くと国道が左へ折れる場所がある。ここは真っ直ぐ走り、丘を上っていく。すると展望台があるちょっと手前、ちょうど上り坂の頂点辺りにバイクを停める。
ここは0円マップに掲載されていて、実は2008年に行きそびれてしまっているスポットだ。北海道では大して珍しくも無い光景だろうが、我々のようにたまにしか渡道しない者にとっては、ここまで真っ直ぐで、波打つ道を見る機会は少ない。なかなか貴重な景色だ。しかも、今は当方以外に誰もいない、独り占めだ。「がはははは」とトトロのように笑ってみる。
斜里町 南3号東10線にて
さてここから再び知床国道へ戻り、いよいよ知床半島の走行開始となる。脇には林道の入り口が多数あったり、山の斜面には鹿が見えたりする。それにしても、最近は柵をしっかりと設けて、鹿が道路へ飛び出さないようにしてある。公共事業で建設したのだろうか？そう思ながら、16年前の初知床半島のことも考えつつ、オシンコシンの滝を通過する。おや、落石で滝に向かう歩道が通行禁止になっている。それでもこの混雑ぶりか。毎度ここを通ると思い出すが、1994年当時は大して整備されていなかったのになぁ。
さらに気持ちのよい風を受けて、走行を続けていくとウトロの街が見えてきたので、ちょっと休息する。といっても、道の駅ではなく、手前の歩道にバイクを停め、防波堤に腰掛けて、胸いっぱいに涼しいオホーツクの空気を吸い込んでみる。遠くにオロコン岩やゴジラ岩を見つつ水分補給をし、今後の飛行計画を再検討する。どうでもよいが、よく見るとオロコン岩に登っている人が見えるぞ。
さてと、16年前に自走して行ったカムイワッカの滝は2010年現在では、シャトルバスでしか行くことはできない。しかし、知床五胡まではバイクで行ける。ここは1994年以来訪れていないので、ちょっと寄り道してみようか。こうして走行を再開し、道道99号線へ乗り換えて原生林の中を走行していく。すると前方で4輪が多数停車しているのが見えた。事故かなと思ったら、鹿の親子が草を食べていた。これだけ人がいても逃げないということは、かなり慣れた固体だろう。大抵の場合は人を見ると、一瞬固まってからピョンピョンと逃げてしまうことが多い。
さらに進んでいくと、5％くらいの急勾配が現れ、その谷底みたいな場所に岩尾別YHが見える。そういえば、岩尾別温泉もあるなぁ。冬は閉鎖するのだろうか、仮にそうでないとすると、必要物資の調達はどうするのか、などと余計な心配をしてしまった。（ちょっと調べてみたところ、12月以外は営業しているようだ。そして、綺麗な、味のあるホームページも開設されている。知床五胡など周辺を散策するには良い場所であるし、ほとんど手付かずの自然の中に「ポツン」と建っているのが印象的だ。）
「こういうところで過ごすのも悪くないなぁ」と思いながら、さらに山奥へ入っていく。するとパッと視界が開け、有料駐車場が現れた。今回は五湖すべてを見るのではなく、二湖くらいにしようと思ったので、有料はちょっとやられたという感じだ。もっとも、管理費として徴収しているので、趣旨は理解できるが、腹も減ってきたので、五湖散策は次回、この辺りにキャンプなり、YHに宿泊するなりしてゆっくりと周ってみたいものだ（後日後悔したことは、言うまでもない）。
知床五湖手前にて
（撮影ポイント後方は、カムイワッカの滝へ続く知床公園線）
知床五湖やその自然には未練タラタラで、知床峠を目指す。さっき走ってきた道道99号線から国道334号線へ戻り、木が生えていないワインディングを快走していく。それにしても今日は完璧な快晴だ。雲一つ無いというが、まさにこのことだろう。それに空の青いこと。当方のような都市近郊に住む者にとっては、とても綺麗に見える。また、TDMもご機嫌で、当方の操作にきちんと答えてくれる。前述のように、荷物満載でも操縦安定性への影響は少ないことが効を奏している。いや、むしろ、荷物の重さをリアタイヤへの荷重として、鋭い向き変えが可能なくらいだ。
軽快に屈曲路を走行して、峠の駐車場へ到着する。今日は天気が良いので、少々混雑気味か。特に大きなキャンピングカーが数台見られた。当方も適当な場所に駐車して、羅臼岳を見上げてみる。いやぁ〜、2008年の時よりもくっきりとその姿を見ることができる。また、羅臼方面へ目を向けると、国後島もはっきりと認識可能だ。ところで、この辺りは海風が入ったりして雲が発生しやすいそうなので、今日のような快晴の日は、特に貴重ということになる。雄大な山やその周りの緑に思わず見入ってしまった。
羅臼岳
別に特別な思い入れは無いが、ブラブラしてここの景色をゆっくりと楽しもう。また、看板の説明などを読んだりして知識を習得しておく。尚、この説明によると、羅臼岳は火山らしく、8合目付近から茶色になっている部分は溶岩ドームだそうだ。なるほど、以前に見た雲仙の普賢岳も同じような様相を呈していた。さらに、この辺りは温泉が多く湧いているので、納得できる。
さて、十分に羅臼岳を楽しんだので、これから峠を下っていく。そう、バイクで行くことができる最後の集落にある、相泊温泉を目指す。ところで、上りもそうであったが、この知床横断道路はとてもきれいな道で、舗装のデコボコは少ない部類に入ると思う。こういう場合はちょっと気分が高まっているので、コケないように自重しつつ下っていく。
上り同様に軽快にコーナーを曲がり、国後島を眺めつつ、羅臼の街へ下りてきた。昼前なのだが、既に腹が減ってきた。羅臼には道の駅や「純の番屋」もあるが、どうも定番すぎて面白くない。ここはやはり「味の関所」さんで昼食としよう。そう思い、市街地を走行していく。すると中学生か、高校生か、女生徒が数人歩いている。当方の住む中部圏の娘たちとは異なり、スカートゾロゾロであるが、つやのある髪は黒く長く、それとは対照的に肌は白い。数年したら美人になるのかな。それはそうと北海道では比較的多く、こういう女生徒を見かける。やはり若い娘は特に飾らなくともよいものなのだ。
さて、前述の「味の関所」さんに11時30分頃到着する。特になんと言うこともない街の食堂だが、慌しくないところが気に入っている。それもそのはずで、70歳くらいの老夫婦が切り盛りしているからだ。入店すると、厨房から大将の張りのある声で「いらっしゃい」と迎えられる。まだ早いせいか、客は当方のみなので座敷に陣取り、メニューを見てみる。2008年はいくら丼にしたから、今回はホッケ定食1,400円を注文する。
ホッケを待つ間に新聞を読んで、一応世の中の動きを見ておく。それほど大きな事件もないようなので、天気図と天気予報へ目を移す。この予報通りならば、最終日までカッパを装着する必要は無いようだ。ヤッタネ！
地図を見て今後の道程を確認していると、大将が愛想良くホッケ定食を運んできた。出ました。皿からはみ出した。30cm以上はあろうかというドでかいホッケだ。今日も朝早くから活動しており、かなり腹が減っている。早速頂くとしよう。んー、このホッケの脂の乗り、最高ですなぁ。味噌汁も小さいホタテが入っており、良い出汁が出ている。それぞれを食べてからご飯をかき込む。このイカの煮物と浅漬も程よい味付けだ。こうして品なくガツガツと食っていたのだが、ホッケがでか過ぎだ。食っても食っても減らないような気がしてきて、だんだん腹がいっぱいになってきた。しかし、こんな旨いものを残すなんてのは、罪になりそうなので、しっかりと完食した。ふぅ〜、満足だ。
味の関所さんのホッケ定食
ホッケを完食してお茶を飲んで休んでいると、昔、加藤茶の家に志村けんが家政婦としてやってくる、という設定のコントを思いだした。家政婦の志村が「夕食の魚は紅ジャケとホッケがあるが、どちらがよいですか」と尋ねると、「ホッケでいいよ、ホッケで」と加藤が面倒臭そうに答える。その後、二人は指で円をつくって「ホッケ」と言う。実にくだらないけど、笑えてくる。
暫く休んだら腹もこなれてきた。会計を済ませて、店を後にする。いよいよ知床半島の最深部にある、相泊を目指して走行を再開する。羅臼の街の中心を左折して、道道87号線に乗り、headingは050、速度は40ノット維持。
相泊へは直行でなく、まずは数分の距離にある「くじらの見える丘公園」に立ち寄ってみよう。0円マップによれば、くじらが見えるかもしれないという記載がある。ま、保証はないが、寄らないことには見えるものも見えないからなぁ、って、おい、エライ急勾配の坂だなぁ。おまけに対向車も来たぞ。
ちょっとビビリながらも駐車場へ到着し、歩いて灯台がある方へ行ってみる。駐車場にはレンタカーが停めてあったので、観光の人がいるのだろうと思いつつ歩いていく。すると、中国人がわめきながら歩いてきた。いや、わめいているのではなく、話しているだけなのだろう。
こうして木製の展望台に辿り着いたのだが、そこにいる人に「こんにちは」と声をかけられた。こちらも挨拶を返す。よくよくこの人たちを見てみると「○大学・・・」というシャツを着ているし、ラスターも下げている。どうやら研究のデータ収集目的か何かで、くじらを観察に来ているようだ。注意深く、単眼鏡を覗いている。
当方もくじらが見えないものかと目を凝らしてみるが・・・、いないですなぁ。ちょっと待ってみようか、と遠くに視線を向けてみる。国後島は相変わらずはっきりと見ることができ、山谷の凹凸はもちろん、村らしきものも視認できる。確かに近いよなぁ、ぼんやりとそんなことを考えてつつ、くじらはいないものかと再び海面を注視する。やっぱりいないなぁ。今日は不発だ。
諦めて再びTDMに跨り、道道87号線に戻る。それにしても今日は天気が良い、ちょっと暑いくらいだ。25度以上はあるかもしれない。しかし、海を渡ってくる風はどことなしか冷たく、もう秋はすぐそこという気配だ。あと一月も過ぎれば、この知床半島に流れる小さな川にも、マスやサケが上ってくるのだろうなぁ。一度季節をずらして訪れてみたいものだ。そんな風に考えていたら、「このアルバイト募集！ライダー歓迎」の看板を発見した。この看板は2008年も見たものなので、万年募集中ということか。よほど人手に困っているのだろう。なるほど、番屋のあるところでは、漁師さんが忙しそうに昆布を干している。これは羅臼昆布だ。
こうして滝のある瀬石を越えて、相泊までやってきた。知床の温泉というとセセキが有名だが、こちらは宿題にしておいて、今回は一番果てにある相泊に入ろうと思う。因みにこの集落の一番深部にある漁港には、「キケン道なし！」という看板が出ている。そう、知床半島はここから先は、船か歩きでしか行くことができない。
相泊橋前にて
（背後に国後島）
ここで写真を撮影し、ちょっと戻っていよいよ今日のメインエベント、相泊温泉だ。ここはセセキと違い、掘っ立て小屋にブルーシートが掛けてある、一応室内温泉であり、男女も別にしてある。しかし、海側は開放してある。残念ながらテトラポットが多数置いてあるので、国後島を見ながら入浴というわけにはいかない。また、駐車場も数台分しかなく、脱衣所もないと追記しておこう。
相泊温泉駐車場にて
マシンを駐車場の端らしき場所に停めて、タオルなどを入れたザックを持っていく。おお、隣の車から黄色いビキニの上に、男もののワイシャツを着た女性が出てきた。そして、ご主人と思しき方が写真を撮っている。シャツの前部から、ちらりと見える黄色のパンツ部分がエロイ。ソロツーリングでは女っ気が全くないので、案外貴重な光景だ。
おおっと、そんなもの見とる場合じゃあない。温泉だ。駐車場横の階段を降り、石がゴロゴロしている歩きにくい所を通っていく。おっとっと、コケそうだ。そして温泉小屋の横で恥らうことなく、服を脱いで入浴する。ふう〜、湯温はちょっと熱めかという程度だ。だいたいこういう温泉は熱いんだが。富良野の吹上の湯や、白老町の白老温泉なんて熱くてなかなか入れなかったもんなぁ。
いやぁー、それにしても、海こそ見えないが、青い空に野趣あふれる温泉。たまりませんですはい。ところで、海沿いの温泉は塩辛いと思われがちだが、ここは違っていた。おそらく羅臼岳の方から流れてきているのだろう。
湯船に浸かって関節やクンニクをほぐすが、そろそろ限界だ。湯から上がることにしようと考えていたら、一緒に入浴していた地元の人が、「海に入って冷やせばまた入れる」ということであったので、つられて目の前の海に入る。ここからは国後島もよく見えるし、海水の中には昆布が所狭しと生えている。「これは羅臼昆布ですかねぇ」というと、地元の人も「そうだよ」と教えてくれた。
湯船に浸かり、ご機嫌の管理人
こうして再び湯に浸かり、今度は限界になる前に上がった。何回も申し上げているように、ここは脱衣所が無い。しかるに、体を拭く時などは「丸裸」である。一応規則としては、女性は温泉小屋の後ろを通行することになっているので、安心して？海側に前のモノを向けて支度をする。そしてズボンを履いている時に、さっきのビキニのお姉さんが丁度通りかかったので少々焦った。彼女は「失礼」と言いつつ去っていったが、内心は「何してんだよ！」と思っていたに違いない。
知床の果てで温泉に入ろう、という宿題は終わった。次は16年前に、ゆっくりと見ていなかった野付半島へ向かう。こうして、一緒に風呂に浸かった方々に手を挙げて挨拶し、道道85号線を戻っていく。相変わらず天気が良く、今年は恵まれたと太陽に感謝する。昨年は行程の半分は雨にやられたのだが、今年は半日降られたのみだ。しかも、予報では帰還する日まで雨は降らないようだ。これを喜ばずにおられようか。
羅臼のセイコマが再び見えてきて国道へ戻る。この後はオホーツク海を左に見ながら、丹頂鶴な景色のなかを走行する。この辺りは道幅も広く、時々現れるスノーシェルターとだんだん見える角度が変わる国後島が、積算計を回しているという事実を証明してくれるのみだ。それにしても、風呂に入ったばかりで、すこし頭がボーッとしている。いや、それはいつものことか。こんな時は自己管制走行がお薦めだ。そりゃ何だ？
実際の飛行機における計器と、航空交通管制の指示で飛行する「計器飛行方式」では、前もって航法支援施設であるVOR/DMEなどの名前（所在地など）で、機首の向きを変えるように待機するよう指示があったりする。また、位置通報地点では、通過した旨などを管制機関に報告する。
これを真似て、自分が管制役と被管制役になって、スタンバイとか、機首方位をOOへ向けて、ルートXXを飛行せよ、などグチャグチャ独り言を言うわけだ。こうすれば、眠くならないし、道を間違えることも少なくなる。因みに道順については、あらかじめ紙に書いて、カウルに貼り付けてある、通称「紙ナビ」を使用する。アナログな方法だが、旅客機のパイロットでも、空港への進入方法や航空ルートが書かれた紙を、操縦桿の真ん中に留めている場合もあるようだ。
こうして、道道950号線に乗り換え、進行する方位が変わる「標津ビーコン」で方位を100に変更し、道道950を50ノットで走行せよと指示を出し、了解となる。本当はもっと複雑なんだけどね。
こうして野付半島へ入り、左右両側が海という光景を楽しみつつ走行していく。海上橋でもない場所で、両側が海という風景は珍しい。また、今日は涼しい微風が吹いている。まさに扇風機の微風ボタンの風だ。
さて、ここには途中にP.A.というか、駐車場が二箇所ある。ナナワラとネイチャーセンターであるが、最初の一つが見えてきた。誰もいない駐車場にてバイクを停めて、エンジンを切る。すると風以外には音のしない、静寂が訪れた。そして、目の前に広がるナナワラを見る。このナナワラとは、ミズワラが立ち枯れしたものらしい。これだけ大規模に広がっていると、背の高いマングローブのようだ。
野付半島のナナワラ
次にネイチャーセンターへ行く。ここからはトドワラが見える。因みにトドマツが枯れて立っているものがトドワラで、姿形はナナワラと似ている。おそ松。
さて、本当はさらにその先の竜神岬まで行こうと思ったが、体力的にも時間的にも難しい。そんなに急ぐことはないのだが、今日は宿題である「多和平でキャンプ」を実行したいのだ。残念だが、仕方なく、ここで引き返す。16年前も確か同じ様な感じで、この辺りで引き返したように思う。
時刻は既に15時を回っている。さて、今走ってきた同道950号線を戻り、標津から国道272号線で機首方位は200で走行していく。そしてホクレンのある交差点を右折し、道道69号線、中標津空港の管制塔が見えたら、150号線へ乗り継いでいく。
こうして中標津空港のR/W08のファイナルレグ上に、やはり着陸誘導灯より高い建造物が無いことを確認し、さらに開陽の街を通過していく。この辺りは、道路はずっと直線であり、少々のアップダウンがある。振り返ると、午前中に見てきた斜里町の道のようだ。そして、おなじみ北19号に突き当たり左折すると、開陽台はすぐ近くだ。
開陽台入り口にて、北19号
2008年以来の開陽台だが、特に大きな変化は無い。2008年に来た時には、1994年当時とは大きく変わっており、ちょっと驚いてしまった。そんなことを想い出しつつ駐輪場にバイクを停めて、展望台へ向かう。関係ないが、駐輪場では電話で、仕事の指示と思われることを長々と話している人と、白けている仲間の人達がいた。
ちょっと疲れたのでおやつにしよう。新展望台の2Fはお洒落な店になっており、いろいろと販売されているはずだ。そして北海道ツーリングのおやつの定番であるソフトクリームを、かわいらしい店員さんから購入して、窓に面した椅子に座って食べる。おや、壁一面にメッセージが書かれたカードがピンで留めてある。そして、何も書かれていないものが、小さいカゴに入っている。管理人もちょっとメッセージを残していくとしよう。因みに北側の出入り口に近い場所に貼っておいたので、見つけた方はゲストブックへどうぞ（何も賞品はありません）。
さて、展望台へ上るとしようか。お、ムチムチの足を出した、髪の長い色白の女性が2名、いやいや、展望台だ。
ちょっと雲が出ているが、遠くまで見渡すことが出来る。毎度ながら思うが、確かに地球が丸く見える。ウダウダした説明は不要だ。
展望台からの風景
景色を十分に楽しんだ後、名残惜しいが今日のキャンプ地へ向かわないといけない。今日はここでキャンプをするわけではないが、開陽台のキャンプ場は閉鎖になっている。口蹄疫の影響だろうか？そういえば、北海道中の牧場の出入り口には、必ず石灰が蒔いてある。酪農家にとっては死活問題だからな。ちょっと待てよ、これから向かうキャンプ場は大丈夫だろうか。心配になってきた。
ひとまず階下に降りていくのだが、ここに古い展望台の写真と壁の一部を埋め込んである所がある。そのプレートには「風の想？想の風？」と書かれていて、昔日の展望台の写真が掲載されている。そうそう、これだよ、この形。16年前の開陽台には、確かにこの展望台が建っていた。あの日は霧が出ていて、景色はほとんど見えなかったもんなぁ。「地球が丸く見える」と言われてもなぁ〜、となんか釈然としなかったっけ。
旧展望台の説明板
さて、現実に戻り、宿題である「多和平でキャンプ」を実行するために同所へ向かう。まあ、営業しているかどうかについては、現地へ行って考えるとしましょうか・・・。まずは北19号へ出て右折し、道道150号線に乗り、そのまま機首方位200を維持していく。
この辺りは牧草地の中を上下しつつ道が通っているので、そのまま空へ飛び立つような錯覚に陥る。関係ないが、「SAKAKKU」という位置通報点が実在する。「サッカク」ではく、「サカック」である。こんなくだらないことを考えていたら、道道150号線を見失ってしまった。地元ならとりたてて焦る必要もないが、ここは北海道であり、かつ同じような風景が延々と広がっている。果して自機の位置を把握し、コースに戻ることができるだろうか、ちょっと不安になってきた。
このような時には、方位のみを頼りに走行するしかなかろう。もちろん腕時計にコンパスを取り付けてあるのだが、幸いにも夕暮れ時であり、太陽に向かうように走行すれば間違いはなかろう。ゲゲ、しまった。西側への道は行き止まりだ。仕方ないので磁方位300で走行し、広い道へ出たら改めて機首を200へ向けよう。
ああよかった、養老牛温泉の前に出てきた。あれ？こんな立派な温泉施設があったっけか？まあともかく、道道150号線へ復帰することができた。やれやれ。さて、ひとまずこの150号線を追って、牛文字を見にいこう。別にただ山に「牛」って書いてあるだけなんだが。
牛文字を指差す管理人
あとは多和平へ向かうのみだ。気を引き締めて行こうぜよ。こうして道道150号線を戻り、右折して道道885号線、国道243号線、道道1040号線と繋いで行く。ずいぶんと影が長くなってきた。
結局多和平へは17時30分過ぎに到着した。これは1時間遅れだ。いやぁ、それにしても今日もよく走ったし、みどころもたくさんあったので疲れたぁ〜。と息をついている暇はない。早速レストハウスへ向かい、キャンプ場の手続きをして、300円を払う。
夕日が沈む所を眺めつつ、綺麗な芝生のサイトに荷物を運び、テントを設営する。ここのサイトはやや西側に傾斜しているが、よい場所はもう空いていない。仕方ないので、傾斜のある所にテントを張る。しまった、寝る時のことを考えると、傾斜の高い方を頭にするように設営すべきだった。かなり疲れていたので、もうこのままでいいやと諦める。
夕暮れの多和平キャンプ場
さて、次は風呂と食事だ。さっき手続きをしたレストハウスで近くの温泉を尋ねると、さっきの養老牛か、弟子屈まで行かないといけないらしい。往復で40kmかぁ。今日はもう疲れてしまったので、そんな元気はない。これだから16時30分頃にはキャンプ場へ入らないといけないのだよ、ヤマトの諸君。いやいや、冗談を言っている場合じゃあないぞ。食事だけでもなんとかできないか。
周りを見渡すと、ここは売店兼レストランとして営業もしている。朝はここでパンを購入しておけばよいが、夜はどうしよう。生憎米しか持ち合わせていない。レストランの営業は既に終了しているので、ダメモトで「ここのレストランのジンギスカンを一人前売ってくれないか」と頼んだところ、あっさりO.K.だった。助かった。風呂については、それほど汗をかいていないので、水道の水で体を拭いて、下着を交換しておこう。昼に温泉にも入ったことだしね。
こうして、なんとかおかずを確保することができたので、食事の支度を始める。あ、カメラのバッテリー残量警告が出ている。面倒だが、昨日使用したインバーターをTDMに取り付けて、充電をしておく。まあ、0.5A程度の電流なら、エンジンかけていなくても大丈夫でしょう。ああ忙しい。
ところで、この多和平キャンプ場には、サイトの端に1箇所のみしか水場がないし、トイレは別方向の端にあるのみだ。ちょっと不便だけども、360度丸々景色が見えるこの開放感。一度ここでテントを張ってみたかったんだぁ。今回のツーリングでの、重要な宿題を済ますことがでるので、とても嬉しい。
そう考えつつ、米を研いでからテントへ戻る。そして、バーナーにコッヘルをかけて、米の炊きあがりを待つ間、だんだんと暗くなっていく景色を眺めている。それにしても、今までに色々なキャンプ場を利用しているが、ここはちょっと別格ではないだろうか。サイトはよし、景色もよし、それほど混んでもいないし、アクセスも良い。街が遠いのはやや難ありだが、あらかじめ風呂に入って、買い物を済ませておけば問題はない。そして、まだ見ぬ星空・・・。8日目位の月が出ているが、これも早い時刻のうちに沈むことだろう。これは楽しみだ。
さて、ナベから焦げた匂いがしてきたぞ。いよいよ炊き上がりだ。次はジンギスカンを準備しよう。16年もののコッヘルセットにフライパンが付いていたなぁとひにかけて、米を皿に移して独りジンギスカンの始まりでぇ〜す。
今日の晩飯
肉を食べつつ、今日の行程を思い出す。斜里岳と直線道路、知床峠と羅臼岳、相泊温泉のある知床の端、野付も中途半端ながら見ることができた。よく走ったなぁ。いや、よく北海道に来ることができたよなぁ。6月末の入院時には、もうツーリングはできないかもしれないと思っていたし。人生捨てたものでもないのかもしれないなぁ。でも、もう結婚、いや女と良い関係になるのはご免だ。このキャンプ場と同じで、少々不便だが、こうして自由に行動できるという、特典があるから。とか言っておきながら、羅臼の街の女子生徒を詳細に観察したり、温泉の水着の姉ちゃんにドキドキしたりしてるジャン。ああ、悲しきかな、男のサガ。松雪も佐賀、公表してねぇ。
食事をして片づけていると、だんだんと星が見えてきた。後は月が沈むのを待つわけだ。さて、その間に電池の充電機を外しておこう。昨日購入したLEDヘッドライトを使用して、ショートしないよう気をつけてコードを外す。電池自体はまだ充電中であったが、1時間くらい経っているのでもう大丈夫だ。
ちょっと冷えてきたのでテントに入り、今日の出来事をメモしておく。それにしても当方は整理が下手だ。テントの中はいつもグチャグチャに散らかっている。かといってしっかり整頓すると、何がどこにあるのかさっぱりわからなくなる。結局この方が使い勝手がよいということにしておこう。
さて、体を拭いて、下着を交換しておくか。そう思い、タオルを濡らしに外へ出てみると、月が傾いて星がたくさん輝いているではないか。うぉ〜、こりゃすごい。まるで星図でを見ているかのように、たくさんの星が輝いている。琴座の暗い星や、大ぐま座（北斗七星）の二重星もバッチリだ。そして天の川もはっきりと確認できる。そして東に目を転ずると、アンドロメダ大星雲も見える。肉眼で見るのは久々のことだ。
暫し空を見上げてからテントへ戻り、体を拭いてパンツを交換する。あとはメモをおしまいまで書いて、トイレに行く際にまた星空を見上げ、21時頃に寝てしまった。明日も安全運転でいきましょう。
本日の走行 350km