苫小牧の「ぷらっとみなと市場」にて
朝は5時ごろに起床した。疲れていたせいかとてもよく眠れたし、また目覚めも良い。件の蚊の大群も、蚊取り線香の煙にいぶされて、テントの中までは入ってきていない。ひとまずトイレに向かい、用を足して顔を洗う。冷たい水が気持ちよい。また、都会の近郊といえども北海道である。熱帯夜ということはなく、20度くらいまで、気温は下がっているようだ。おおっと、なんだこのきのこは。めちゃでかいぞ。
手のひらサイズ
そうして、用を足して出てくるのだが、別のサイトに泊まっていたオッサンに話しかけられた。とびきり早起きでもないのだが、もう活動している人がいるとは思わなかった。ところでこの方、定年退職を期に日本一周を目指しているそうで、分割でいろいろと周り、今は北海道を旅しているとのこと。マシンはスクーターであるが、気合の入ったオッサンだ。
ずっと独りでツーリングしていて、話したかったのだろうか。いろいろと話題を振ってくる。北海道は初めて訪れたらしく、見たことも無い景色ばかりでとても楽しんでおられた。また、キャンプもあまり経験がないようなのだが、「あまり人に気を遣わずにいられるのでよい」、とのこと。確かに、小さなテントであるが、その夜は「俺の家」なわけで、「俺一人の空間」だ。雨降りだとライハになってしまうことも多いが、「晴れの日はやはりキャンプだね」、と元気いっぱいの方であった。
お互いの安全を願いつつ、各々のテントに戻る。そして、またまたカロリーメイトで簡単な食事を摂り、撤収にかかる。というのも、今日は午後から天気が崩れるとの予想が出ているからだ。なんとか雨の降っていないうちに、距離を稼いでおきたい。それよりも、この蚊が多い環境から早く逃げ出したい。
撤収の手順をあらかじめ反芻しておいたので、初回の撤収にしては滞りなくテントをたたむことができた。しかし、この間、何回バンダナで蚊を追い払ったことだろう。昨晩は暗くてよく見えなかったが、明るい中で作業をしていると、蚊柱が当方の動く方向へついてくる。勘弁してくれよぉ〜。やむを得ず、上着を着たまま、汗だくになって撤収を完了させた。フライやインナーがほとんど濡れていなかったのは、唯一の救いだった。
こうして7時前には青葉公園ピクニックキャンプ場を出発した。ここは静かで緑が多いことはよいが、蚊の多さが「×」であり、もう二度と使わないだろう。名前や雑誌の情報を鵜呑みにすると、こういうことになる場合がある。理解していたつもりだが、図らずも実践してしまった。敗因は、時間に余裕をもって選択をしなかったことだろう。古代・・・、俺の負けだ。
急いで出発したし、朝から大汗をかいたのでノドが渇いた。幸いにも千歳市街地から遠くないので、コンビニがすぐに見つかり、ゴミを捨てがてらに水分と新聞を購入した。チョコチョコと社会情勢を流し読みして、本題の天気図と各地の時間天気予報を確認する。やはり、各地とも午後から天気が崩れるようである。ただ、襟裳岬は一日曇りのようだが、今回はパスということで、北東へ針路をとることにしよう。
それはそうと、せっかく千歳にいるので、それほど遠くない苫小牧で、ホッキ貝を食べたい。しかし、方向は真逆である。4、5分悩んだ結果、食いたいものは食いたいと、まずは苫小牧へ向かう。国道36号線を苫小牧方面に向かうのだが、新千歳空港の手前で、道路が滑走路を避けるように、クランク状になっている。そこには石屋製菓の白い恋人の看板がある。当方は、これをいつも目印にしている。もっとも、この辺りは間違えるような道はない。ただ、北海道にいるなぁという実感が湧いてくる目印だ。こうして管制塔を右手に、離陸する旅客機と並走して苫小牧へ向けてtake off！
こうして、時折陽が差す天候の苫小牧へ到着した。今年はマルトマ食堂でホッキ貝を食べようと思い、入り口へ行ってみると、定休日だ。そうか、今日は日曜日だ。ガクっとして、昨年も利用した「ぷらっとみなと市場」内、ふじ十食堂でホッキ丼（850円）を食べる。大きめに切り分けられた貝は、歯ごたえがよく、また味も甘みと、貝の苦味？のようなものが口の中に押し寄せてくる。また、わさびも本物をすりおろしたものであろう、効きも風味も最高だ。
旨い！
なかなかこういう新鮮なものを、思いっきり食べる機会は少ないので、足を伸ばしてよかった。うーん、幸せ。そう考えながら市場から出てくると、大宮ナンバーのホンダ・シャドウに乗る方が、当方のマシン横で地図を見ていた。前から知り合いであったような顔をして挨拶して、お話を伺ってみる。すると、今日の早朝に苫小牧に到着し、朝飯を食べにマルトマ食堂へ行ってみたが、休みであったとのこと。当方も、マルトマ食堂の定休日を考慮していなかった、と共通のミスで話が弾む。また、今日の予定は考えていないということと、天気がよくわからないと言うことだったので、先ほど購入した新聞の天気欄を参考にしてもらった。すると、彼も北東方向を目指そうか、という結論に達したようだった。
こうして、シャドウ氏とは別れ、本格的に雨から逃れようと北上を開始する。まずは道道259号線から沼ノ端で国道234号線へ乗り換える。そして、追分から道道462号線、国道274号線へと繋ぐはずが、誤って由仁町まで来てしまった。仕方ないので、由仁から国道274号線へ。この区間は周りに畑や田んぼしかない、快走区間だ。そんな中で目立つのが「さくらんぼ」の露店である。通り過ぎる時にちらっと見てみると、豊富な量に比べ、値段は安いように思われた。しかし、ここで購入しても食べきれるわけではない。またの機会、この周辺でキャンプでもする際に味わうとしようかな。
大塚愛の歌の歌詞を思い出しつつ、国道452号線を用いて夕張にやって来た。ここでは、2008年に正式に見物することができなかった、「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」に向かう。特に映画好きというわけでもないし、誰のファンというわけでもないのだが、一度テレビで観た際に「ちょっと良い終わり方」だったという印象が残った。当方は、この手の古典的ハッピーエンドが好きなので、一度ファミリアの実物などをじっくり見たいと思ったのだ。
上記のように、2008年に一度訪れているのだが、ファミリア等の実物が展示されている建物には、時間の都合上入ることができなかった。今回は北東方面へ行く通り道だし、時間的にも問題は無い。天気もなんとか大丈夫だろうということで、国道を外れて道道38号でもう少し北上する。さらに看板に従って、細い坂道を上がっていくと、駐車場が見えてきた。この駐車場は未舗装で、石炭らしきものが穴ぼこに入れてある。雨に備えて、大きな木の陰にTDMを駐車して入り口へ向かう。
そして受け付けのプレハブ小屋で、入場料500円を払いさらに進んで行く。ここには床屋のセットが放置されているのだが、観光名所なので、草を刈るくらいのことはしてもよいのではなかろうか。そんなことを思いながら歩いていくと、炭鉱住宅のセットが現れた。この住宅の中にいろいろと展示品があるのだが、ひとまず奥の広場に出てみる。ここは黄色いハンカチが、こいのぼりのポールのようなものに40枚程掲げられている。ご存知の方も多いと思うが、ポールには紐が二本つけてあって、一本は地面に対して垂直に、もう一本はそやや斜め張ってあり、丁度ポールと直角三角形を形成している。この黄色は周囲の殺風景な住宅と対比されて、とても鮮やかに見える。
炭鉱住宅風の展示館前にて ご存知黄色いハンカチ
しばらく高倉健になりきって、その鮮やかなハンカチを眺めてみる。映画と同じ状況でこれを見たならば、俺だったらどんな反応をするだろうか。きっと「夢ではなかろうか」とつぶやいて、自分で顔をつねってみることだろう。
「不器用ですから」とか言いながら、建てつけの悪い扉を開けて、展示物がある建物へ入ってみる。まずは件のファミリアが目に飛び込んできて、さらにその周りの壁にはメッセージが書かれた、名刺サイズの黄色い紙が所狭しどころか、どんどん上から画びょうで貼りつけてある。何気なしに内容を見てみると、恋愛に関する願かけが多い。なるほど、映画の内容を考えてみれば、それにあやかりたいと考える人々が現れても不思議ではない。え、俺はどうしかって？一応足跡程度のものは残しておきました。
武田鉄也が乗ったファミリア
次にファミリアを眺めてみる。この型のものは、当方が子供の頃によく見かけたので、よく覚えている。友人の家の自家用車としても使用されていたし、乗せてもらったこともある。概観はもちろん、車内も当時のままだ。ドアや窓は開かないので、ガラス越しに中を見てみると、とても簡素な内装だ。運転に関係無い装備はほとんど無く、ラジオのみではなかろうか。また、フロアマットや、内装用の布はペラペラだ。ハンドルもやけに細い。唯一立派なシフトレバーが目立っている。当方はこういう簡素なものが好みだが、今の若い人達が見たら驚くかもしれない。
そして、更に奥のモニターには、映画のエンディングがエンドレスに流れていて、さらにその奥には当時の住宅のセットに、高倉、賠償の実物大人形が展示してある。また、壁に沿ってパネルが展示してあり、撮影当時の様子を見たり、監督の談話なども読めるようになっていて、映画ファンならずとも、それなりに楽しむことができた（当方が単純なだけか？）。ただ、複数回訪れるかと聞かれたら、一回でよいだろうという答えになる。
見物を終えて表にでてくると、霧雨が降り始めていた。あ、やられた。そう思っても、もう遅い。幸いにもマシンは木の陰に停車してあるので、濡れてはいない。ところで、なんだか黄色いハンカチで、ちょっと幸せになれそうな気がしてきた。お土産用のサイン入り、黄色いハンカチを500円で購入してしまった。結構ミーハーなんですよ。そしてここ以降は「幸福がありますように」と願いつつ、これをバンダナ代わりにしてツーリングを続ける。
さて、雨はちょっと待っていれば止むかもしれないと考えていたが、その気配は全くない。諦めて、初日の舞鶴まで移動する時以来、2度目の合羽装着となる。準備をしていると、ハーレーにタンデムしているお二人に声をかけられた。この人達は、初の北海道ツーリングにやってきたのだが、色々と要領が分らなくて、やや困惑しているということだった。そして、「どこそこまでは何時間かかるか」とか、「宿泊地はどうやって決めるのか」というようなことを尋ねられた。時間については、距離と平均巡航速度から計算した値がよい目安になり、宿泊地についてはライダーハウスや、比較的大きな街ならば、ビジネスホテルに飛び込むことも可能だ、という提案しておいた。しかし、究極はテントでしょうとも。いずれにしても、当初立てた計画通りに進むことが大変ということであった。
こうしている間も、雨が止むことを期待していたが、やはりダメだ。合羽を着て出発する。一旦国道452号線までもどり、その後は同国道を北上していく。雨降りなので、シューパロ湖のトラス型橋梁や、大夕張地区の除雪車などの展示は横目で見て通過する。この地区は炭鉱業が隆盛を極めていた頃は賑やかだったらしいが、今やいくつも街が消えてしまっており、廃屋が目立つ。そしてさらに、前述のシューパロ湖が容量を増やすので、目下その工事中だ。つまり、今走行している道路などは、新ダム湖に沈む運命にある。もちろん、そのための新しい道の建設もかなり進んでいるのだ。次はいつ夕張を訪れるかわからないが、これが古い街を見ることは、これが最後かもしれないな。
別に夕張には縁はないが、なんとなく寂しい気持ちになりつつ走行を続けていく。途中雨は降ったり止んだりを繰り返している。これならばさらに北上すればなんとかなるかも、と淡い期待をしつつ三段の滝を通過。チラリと横目でみえたが、なかなかの迫力だ。本当ならばゆっくり見物していきたいが、雨が怖いので先を急ごう。天気予報では、旭川近郊は雨は降らないことになっていたからだ。
予報通り、芦別近郊で雨は上がった。時刻も13時を回っているので、カロリーメイトとフルーツ＆ベジタブルジュースで昼食とする。また、合羽も脱ぐことにする。しかし、このまま雨が降らないとい嬉しいが、雲行きを見てみると・・・。やはり今日はライダーハウスか。
早々に食事をして、芦別から国道38号線、道道4号線、さらに国道12号線で旭川までやってくる。相変わらず雲の状態や空気の湿り具合から判断するに、この後は間違いなく雨になりそうだ。時刻は15時を過ぎているので、そろそろ宿泊地を決定しないといけない。さてどうするか。ひとまずコンビニに入り、現金を引き出した後、水分補給をしつつ、冷静に今夜の宿泊について考える。雨なので当方の技量ではテントは難しい。となると、ライダーハウスかぁ。この辺りだと・・・、比布かぁ・・・。いや、比布ブンブンハウスが嫌いなわけではないのだが、昨年も利用しているし、混むとゆっくりできないしなぁ。でも旭川近郊には、選択肢があまりないんだよなぁ。まあ洗濯を今日しておけば、この先はもう、その必要が無くなる。さらにバイク共々、雨を凌ぐことができて300円は捨て難い。仕方なく、今日は混まない、昨年のような勘違いオヤジもいないだろう、とまさに希望的観測で比布駅前のブンブンハウスを目指す。そう思うと少々の面倒があっても「まあよいか」と感ずるから不思議なものだ。
ひとまず国道12号線バイパスで旭川市街地を避けて、ホンダ・プルービンググラウンドのある鷹栖近郊を通過、国道40号線に乗り換える。あとはスキー場や田んぼを眺めながら、heading050で走行を続け、跨線橋を渡るとコンビニが現れた。ここまで来ればもう比布駅はすぐだ。あちゃー、また雨が降ってきた。
こうして、比布ブンブンハウスの屋根つき駐輪場へTDMを滑り込ませる。当然誰もいないので、このまま俺だけだと嬉しいな。そう考えつつ、荷をほどいてTDMを軽く拭いておく。けっこう汚れてしまったが、これも旅の味だよ。ただ、チェーンの注油は必怠ってはならない。
比布に到着してしばらくすると、急に雨が強くなってきた。間一髪だったね。すると、スズキのグラストラッカーに乗る、若いライダーがやってきた。彼も雨が降ってきたので、今日の走行は切り上げるということだ。いろいろ尋ねてみると、青森からの20歳。まだ免許を取得したばかりということだ。
そうこう話しているうちに、次々とライダーがやってくる。雨も本降りになってきた。広いスペースを一人で伸び伸びと使う、という夢は脆くも崩れ去った。それどころか、一人半畳くらいしか割り当てがなさそうな気配だ。ひとまず16時になり、管理人のオジサンが鍵を開けに来られた。昨年は原付のホンダシャリーでおじいさんが来られたが、どうされたのだろうか。
このころになると、次々とライダーがやってきて、どんどんと駐輪場が埋まっていく。ひとまず大部屋に自分の場所を確保し、洗濯をして、携帯とカメラの電池を充電をしておく。おいおい、本当に一人半畳だぞ。今日は女性客がいなくて、女性部屋が開放されることを祈ろう。
さて夕方になってきたので、腹が減ってきた。自炊はできなくもないのだが、道具をザックから出すことが面倒だ。都合良いことに、ここはまさに駅前に位置している。喫茶店もあるし、商店もある。銭湯だって徒歩で5分くらいだ。もっとも、このライダーハウスにも100円10分のシャワーがある。
外は相変わらず、やや強めの雨が降っている。生憎ツーリングには傘を持ってきていないし、昨年はあったライハの置き傘も無い。銭湯が200円そこそこなのでそちらへ行きたかったが、前述のように傘が無い。ひとまずシャワーで汗を流してさっぱりしよう。まだ時間が早いので、誰も使用していない。早速「使用中」の札を出してシャワーを浴びる。
さっぱりしたので、服も短パンに着替えて、雨が小降りにならないかと待ってみる。多少はマシになったようだが、相変わらずだ。軽い夕食を仕入れに、ほんの数百メートル離れた商店へ行きたい。ええいと度胸を決めて？小走りで行く。まずは100ｍほどある、駅の屋根付きの自転車置き場を歩いていく。そしてそこから、さらに2ブロック程を走って商店へ到着する。
いかにも小さな街の商店ということで、野菜、鮮魚、果物、酒類、とあらゆるものを少量ずつ販売している。一通り見て回り、パンとお菓子、水分を少々購入する。レジで清算していると、「今日は何人くらい泊まってるの？雨だから多いかな？」と当方がライダーハウスに宿泊している人間とすぐに解ったらしい。小さな街だからね。こうして食料を購入して、ライハに戻る頃には雨もやや小降りになってたが、気温がだいぶ下がってきた。
ブンブンハウスに戻るとさらに人が増えている。冗談ではなく、本当に一人半畳だ。ともかく自分の場所で食事を摂りつつ、今日のルートと明日の天気、目的地を確認しておく。天気図をみると東北地方に前線が残るものの、低気圧はオホーツク海に抜けるので、北の方ほど天気が良い模様だ。よし、名寄から最北端の宗谷岬を目指すことにしよう。そうなると、まずは国道39号線を北上して・・・。
溢れてくる考えをまとめていると、隣では帯広のライダーハウスについて検討している人達がいる。「安くて良い所は」、「そうだねぇ・・・」という会話が聞こえてくる。当方は、安くて広いならばカニの家だろうに、と考えるが、その答えはなかなか出てこない。ここで当方もこの検討会に参加させてもらうことに。因みにこのお二人のうち、お一人は非常に濃そうな方で、パーマをかけている。そして、なぜか部屋の中でも皮パンを履いている。
ともかく、「大正カニの家はどうですか」と発言してみ。る。すると、「え、それはどこですか」ともう一人の方が乗ってきた。そこで当方が0円マップとツーリングマップで説明する。すると皮パン氏も「ミッキーハウス」といい線を突いてくる。見た目は濃そうだが、話してみるとなかなかユーモアの解る方ではないか。ところで、もう一方の方は男性の看護師であり、10年近く働いた区切りに旅をしているということだ。マシンはなんと原付のカブである。「カブで北海道を旅するとはなんて贅沢なんだろう」と管理人は思う。なぜなら、時間余裕とやる気がなければ実行することはできないからだ。さらに話を聞いてみると、やはり一日の走行は200ｋｍが限界だが、その分いろいろなものがよく見えるし、気になるものがあれば気楽に停車することもできるということだ。当方もたっぷりと時間があるならば、実行してみたいものだ。
そう話していると、ヒョロヒョロで不器用そうな人が話しに入ってきた。人を見かけで判断してはいけないが、「いじめられっ子」にこのような人が多いように思う。さて、看護士氏と話を続けていると、「あそれ知ってる」とか「そうだよね」とか脈絡のない愛槌で、話の腰を折られてしまう。「それは勘弁してよ」と思っていたら、案の定会話が途切れてしまった。
まあ仕方ないねと思いつつ、この人につかまりたくないなぁと感じ、表の椅子へ場所を移した。すると、看護士氏も同じことを考えたのだろうか、外に来られたので、また会話が再開された。
この看護師氏とは話が弾んだ。というのも、彼は酒のラベル収集という変わった？ことをされているからだ。コレクションを見せてもらうが、当方にはさっぱりわからない。そこで、解説をお願いしたところ、地酒レベルのものを中心に味わって、今日までに飲んだ種類は、なんと1,067本ということだった。余計なお世話と思いつつも、肝臓は大丈夫なのだろうか、と心配してしまった。また、彼は酒に関する知識も豊富であった。当方が興味深く思ったものに、戦後の混乱期に醸造アルコールを混ぜた日本酒が「仕方なく」製造され、極端な場合、それがなければ日本酒自体が絶滅していたかもしれないというものだ。これは当時、穀物などが政府によって統制されていて、酒の製造に用いることが難しかった。それで、仕方なく醸造アルコールを混ぜ、味付けをしたものが流通したということであった。因みにこういう種類の酒は「本醸造」と呼ばれているようだ。これについては、マンガの「美味しんぼ」で批判されていたそうであるが、前述のように、これがなかったら、日本酒の存在が危なかったらしいのだ。なるほど、味の観点から言えば「本醸造」は邪道だろうが、日本酒が絶滅しないまでも、多くの酒蔵が経営難で潰れてしまい、ものすごい貴重品になっていたかもしれない。あながち大げさとも言えなさそうだ。
また、話題が変わって、氏がたまたま、オフロード車の方々と一緒に、未舗装路を走行する機会があったそうだが、カブではすぐに腹を擦ってしまい、また思うように走れなくて転倒したりしたそうだ。これについて氏は「非常に悔しかった」ということをおっしゃっていたので、ここは当方の出番だと、少ないオフ走行の知識を開陳してみた。まず、オフ車の特徴であるタイヤの大きさと太さ（細さ）、サスペンションストロークの長さ、乗り方の特徴など、そんなに知っているわけでもないが、熱く語ってしまった。そして、どんなバイクが良いかと聞かれたので、ちょっと値が張ることもあるが、125�佞離侫襯汽ぅ困竜‖里鯀Δ瓩討�いた。因みに当方も、125�佞離侫襯汽ぅ叉，任△襭悖味�125Ｒを所有しているので、そのインプレや維持管理費についても軽く話してみた。すると、オフロードで余程悔しい思いをしたのだろう、「旅が終わったら、普通2輪免許を是非取得したい」とかなりの本気の様相であった。当方も個人的感情から「頑張ってください」と大いに励ましたことは言うまでもない。
こうして、消灯目安時間の21時30分になったので、雑談会もお開きになった。もっと飲まれる方々は、テレビのあるホールで常識的に、盛り上がっていたようだ。
本日の走行260km