ナイタイ高原にて
夜の間にもかなりの雨が降っていたようだが、今朝は曇ってはいるもののすっかり止んでいる。天気予報と天気図を確認してみても今日は晴れるとのこと。やったぜ、心ウキウキで出発準備を整える。おっと、その前にお世話になったライダーハウスを掃除しておかないと。まだ寝ている人が数名いるが、皆で手分けして掃除を進めていく。当然オヤジはサボっている。本当に昨晩のうちに追放すべきであったと思っているのは、もはや管理人だけではあるまい。その前に管理人のキャンプ技術を高めることが第一の課題であることは言うまでもないのだが。
一通りの準備が整ったライダーから順に出発していく。皆さんマチカネタンホイザ、意気揚々と手を振って比布ブンブンハウスを後にしていく。管理人も荷物積載が完了したので、コードの緩み等を微調整していく。この時に例のオヤジがなにやら話しかけてきたが、適当に相槌を打って右から左へ流しておいた。もはや相手にしてくれる人もいないようであったが、これこそ自業自得であろう。
管理人も準備が整ったので、手を振って比布を後にした。
今日のプランではまず、愛別飛行場を覗いていくことにしている。時間が早いので飛行機の離着陸はないと思うが、一応立ち寄ってみたい。国道40号線を横切り、左折して道道296号線で北上していく。途中にきのこの愛別という看板があるので、写真を撮っていると比布で同宿だったライダーが数名手を振りながら走り去っていった。
愛別の看板にて
その後、燃料を補給しておこうとホクレンのスタンドを探す。今年のフラッグは有料で1本１００円らしいが、１本くらいは立てておきたいと考えたのだ。しかし、地図で確認していたスタンドはまだ営業しておらず、特にこだわりもないのでその先の出光で給油した。燃費はおおよそ25km/L以上の数値を出している。やるじゃん、TDM。ひとりほくそえみながら飛行場へ向かう。
愛別飛行場は北陸航空が運営を行っており、以前、本気でパイロットになろうと資料請求をしたことがある。地図でおおよその場所は確認しているのだが、如何せん田んぼや畑しかないところなので非常にわかりにくい。運良く小さな看板を発見して、それに従ってズンズンと山奥に進んでいくと、管制塔と格納庫、そして燃料タンクが見えてきた。正門は関係者以外立ち入り禁止とかいてあるので、その手前で写真を撮ったり滑走路を見たりした。残念ながら飛行機どころか人の気配も全く無い。天気も悪いので、今日はあまり訓練などもないのであろう。
愛別飛行場の管制塔
ある程度予想していたとはいえ、不発であったことを少々残念に思い、飛行場を後にする。ここからは田舎道を通って国道450号線に乗る。途中に当麻ダムという看板が出ていたが、当麻と言えば「稀代の悪」と散々に言われていた当麻ミキオを思い出してしまった。そんなことを考えて車輪を進めていくと、材木を山積みにしてスプリンクラーで水をかけている光景が目に入ってきた。帰還後に調べてみると、これは愛別ベニヤ工業の工場であったようだ。
この後国道450号線を走り、上川層雲峡I.C.を降りる。この区間も後には有料道路となる「暫定無料共用区間」であるようだ。ここからは国道39号線で石狩川沿いを走行していく。天気は依然曇りであるが、明るい部分もあるので期待ができる。すると層雲峡の切り立った山肌が見えてきた。
層雲峡入り口の様子
ここは15年前に初めて北海道ツーリングで訪れて以来、久々の場所だ。確かどこかで温泉にも入ったと思う。とても暑い日で、汗がダラディエという感じであったことを思い出した。そうしていると流星の滝、銀河の滝と書かれた案内板が目にとまった。せっかくだから見ていくとしよう。と右手の細い道へ入っていく。
この頃になると雲が切れてきて、だんだんと青空が見え始めてきた。北海道上陸後は始めての青空なので嬉しいぞ。ワクワクしながら駐輪場へTDMを停めると、隣には比布で同宿だったアフリカ氏のマシンが停まっている。ライダーの、特にロングディスタンスが好きな者はどうも行動様式が似通う傾向があるので、再会することがしばしばだ。
それはそうとして、先に流星の滝を見上げてみる。落差の大きいなかなか見ごたえのある滝だ。滝となっている岩肌でチョコチョコと飛び出している箇所があり、そこに落ちてきた水が当り流星のように見える。わかりやすい名付けだ。昨年わざわざダートを数キロ、しかも熊出没注意の看板があるところを走行して訪れた「激流の滝」とは大違いだ。あんなもの滝ではなく、ただの激流だ。一方、銀河の滝であるが、こちらも岩肌の突起に落水が当り、星を形成しているのは同じであるが、滝の下部が扇状に広がっている。そこを細かく分かれて水が落ちているからまるで銀河のようというわけだ。こちらもナイスなネーミングだ。
銀河の滝 流星の滝
そう思っていると前述のアフリカ氏と再会した。彼は滝の向い側にある展望台へ登ってきて、そこでは二つの滝を同時に眺めることができるということであった。それならと当方も登ることにするが、長さが400mと看板に出ている。まあ普段ジムで鍛えているのでこのくらいなら何とかなろうと思い、登りはじめる。う、結構な急勾配だ。しかも昨日までの雨で足元は悪いし、木の階段は滑りやすくて危険だ。幸いにも250m程のところに途中休憩所があり、そこからでも十分な眺望を得ることができるので、ここで暫し流星・銀河の両滝を眺める。2つの滝を一度に見ることはできるのは珍しい光景だ。存分に楽しんでいこう。
十分滝を堪能した後、元来た道をも戻っていく。丁度下でアフリカ氏がおやつを食べていた。これは芋を細長く剥いてバネ状にし、揚げたものだ。朝飯からちょっと時間が経っており、小腹が空いてきたので管理人もゆできびを食べることにする。この甘味とほのかな塩味が調和しており、またプチプチとした歯ごたえも良い。新鮮な証拠であろう。
とうもろこしをかじりながらマップルを見て今後の針路を検討する。heading150で三国峠-ナイタイ高原とするが、はたまた090で北見-網走とするか。天気も回復していることだし、三国峠ということで結論を出した。とうもろこしの食べかすを店に渡して、TDMに火を入れる。
国道39号を大雪ダムまで南下し、さらに国道273号へ乗り換える。ここは去年上士幌から逆方向で上ってきた道だ。ここでは完全に天気は回復して、ほぼ快晴になった。ウキウキして林の中を通る国道を右へ、左へカーブをきりながら走行していく。おっと、道路脇に鹿の親子がいるぞ、注意しないと。熊でなくてよかった。そうして三国峠手前のトンネルを抜けると樹海が目に飛び込んできた。ヒャースッゲェーと思わず叫んでしまう。三国峠のパーキングはやり過ごして、樹海と橋が見えるお決まりの場所へ直行する。おや、ここには既に先約が。またまたアフリカ氏だ。
お馴染みの樹海
お互いにニヤニヤしながら挨拶を交わして写真を撮る。雑誌なんかでもよく掲載されているまさにその場所であるが、どうも様子が少し違う。というのも、雑誌の撮影はおそらく秋口に行われていると思われるからだ。事実、木々の紅葉が始まっている。それはそれで美しいのだが、この眼前に広がる青々とした樹海の方が私は好みだ。もっとも、写真に関する技術や機材が並みものであるからそれほど綺麗には撮影できない。それでも一杯までレンズを広角にして、右から左へ順に撮影を撮影していく。
そうこうしていると、道路脇におおきなフキが自生していることに気がついた。これも面白いので、傘代わりに写真を撮ってみた。これが巨大化したものが、足寄の東で栽培しているラワンブキであろう。さて、ここでふと気が付いた。写真撮影に夢中になる余り、景色そのものを楽しむことを忘れていた。これでは本末転倒だというわけで、目の写真版に景色を映して楽しむことにした。よくよく観察してみると、樹海は広大な針葉樹林で構成されており、その一本一本に力がみなぎっている。こんな風景はなかなか拝むことはできない。やはり北海道だ。
ひとしきり三国峠からの眺めを楽しんだので、先へ進む。このあたりは高速コーナーの連続で、TDMの得意な区間だ。荷物を積んでリアタイヤに荷重がかかっている故に、向変えがやりやすい。またステアリングステムベアリング交換、フロントフォークオーバーホールが完了しており、フロントタイヤは交換したばかりで、断面形状がまん丸なので、素早く反応して舵角がつくので、とても気分良く走行することができる。「あ、この瞬間が整備の効果だね」というわけだ。下手な社外品への部品交換など目じゃないよ。
その後少し下ったところに、昔は鉄道の終着駅のあった十勝三股のルピナスの花を見るために停車する。この花は毒花であるそうだが、腰くらいの高さの花が一面に咲いている。特に香りはしないのだが、薄ピンクの花は控えめで大和撫子七変化ぇ〜、絵になるね、極めつけというところだろう。別に純情愛情過剰に異常というわけではないのだが、先ほど三国峠で再々会したアフリカ氏もバイクを乗り入れて花のある風景を楽しいんでいた。
三股のルピナス
さらに軽快に走って（いるつもりで）さらに南下を続けていく。昨年は初めてタウシュベツ橋を訪れたが、今年は雨がたくさん降った直後なので、ダート4kmはちょっときつかろうと遠慮しておいた。その代わりに糠平湖本体へ行ってみる。こちらも脇道に入って2、3km走行すると眼前に堰が現れてくる。この堰の向こう側には林道が続いていて、前述のタウシュベツ橋へ行くこともできるが、残念ながらこちら側は通行止めとなっている。タウシュベツ橋を訪れる方は糠平温泉からさらに三国峠寄りから入っていく道があるので、そちらから。
糠平湖は水を並々と蓄えており、その向こう側に見える山々もきれいに続いている。フゥーと一息ついてその風景を目に焼き付けておく。なにか癒されるというか懐かしく感じるから不思議だ。糠平湖を後にして、国道273号線をナイタイ高原へ向かう。この途中の道は本当に真っ直ぐで、陽炎の向こうから対向車が現れてくる光景はなかなか面白い。ただ速度がかなり乗ってくるので、取締りには十分と注意する必要がある。
上士幌へ向かう途中
見慣れた上士幌の街にやってきた、と言っても昨年初めて訪れたのであるが・・・。昨年の記憶を引き出して中心部の交差点を右折し、セイコマの手前を右折、し忘れた。いいや、次のエネオスの交差点を右折。そして航空公園へ向かう交差点を通過してどんどんと山の方へ上がっていく。ここからナイタイ高原まではとても楽しい走行が続く。林やビート畑を抜けて、最後は牧草地を縫うように通るワインディング。この区間は特に素晴らしい。この言葉はやすやすと使いたくないのであるが、走りながらちょっと「感動」である。ところでなぜ使いたくないかというと、某福祉を食い物にした番組の司会者が番組内で安易に使用するからだ。何で普段は福祉の「ふ」の字も縁が無いようなジャニーズ事務所のタレントが出てきて、偽善をいっぱいに与えている光景が「感動」なのだろうか。さっぱり理解できない。もっとも私なんて席を譲ったりするくらいしかしていないので、文句を言う権利すらないのだろう。
ナイタイ高原では快晴とはいかずやや霧が出ていたが、それでも十分に、格子状の防風林が続く十勝平野の景色を楽しむことができた。また、少々疲れたので、草地のところに腰を下ろして休息する。草の香りは癒し効果抜群で、凝り固まった肩やそれに影響された目の疲れを幾分か解消することができた。
ナイタイ高原にて
腹が減ってきたが、なんとか天気の良いうちに納沙布岬まで行きたいなぁと考えるが、ちょっと無理っぽい。どこかで昼飯としたいが、ナイタイ高原のレストハウスはかなり混みあっている。仕方ないので、ゆっくりジュースを飲んでフライトプランを確認しておく。このまま足寄に向かって、大阪屋食堂のジンギスカンを食べることにしよう。
一旦上士幌の街へ出てきて、国道241号線に乗り足寄へ向かう。このあたりはさすが十勝平野である。格子状の道、それに沿って立つ防風林、道の両側に延々と続くビートなどの畑。この風景は何度見ても飽きない。オロロンライン沿いの原野、富良野の花畑、釧路近郊の湿原、いろいろとあるが、この十勝の風景も大好きさ。
足寄の街は突然にやってきた。大きなカーブを曲がると街が出現すると言う様相だ。さて、大阪屋食堂へ行く前にひとつ俗っぽい名所へ行ってみよう。松山千春の家である。0円マップを参考にしていると、小さい看板を発見したのでそれに従っていくと、少々迷いながら発見。某宗教施設の裏手に巨大な肖像画が2枚飾ってある。0円マップの写真通りである。門の左手に比較的最近立て直したと思われる住居があり、右手にガレージと肖像画だ。さらに表札に目を向けると、松山明、松山千春とオヤジさんと思われる名前と一緒に表示されている。なぜかガレージの外に軽トラが置いてあるので、オヤジさんが使用しているのだろうか。
松山千春の家
松山千春の家を見物していると、2組の観光客と思われる方々がやってきた。うち1組は素通りであった。さあ、腹が減ったので大阪屋食堂へ行こう。こちらは相互リンクいただいている放浪のページ主宰のローホー氏がうまいとレポートされていた店だ。こちらは足寄の中心地で右折して、国道241号線沿いにある郵便局があるところを左折、500mくらい行った美容院の隣にある。もともとは違う場所にあったそうだが、数年前に現在の場所に移転したそうだ。店は新しいが、看板は移転前と同じものを使用しているようである。時間は14時前なので、駐車場はガラガラであった。暖簾も出ているので、営業中のようだ。早速入店すると、気の良さそうなおじいさんとおばあさんが仕事をしている。さっそく品書きをみてジンギスカンライスを注文する。するとプラスティックの入れ物に入ったおろしにんにくがドンと卓上に置かれた。ローホー氏のレポートによると、好みに応じて入れるらしい。同氏の記載を反芻していると、肉と白菜、味噌が載せられた鉄鍋がコンロの上に置かれて火がつけられた。
大阪屋食堂のジンギスカン 大阪屋食堂
しばらくはどうしたらよいかわからずに放置しておいたが、するとおばあさんが「そろそろ混ぜてよ」と指示してくれた。ジュウジュウという良い音と味噌が焦げる香ばしい匂い。腹が減っているだけに食欲をそそるではないか。そうして、おおよそ全体が焼けた時ににんにくをスプーンに半分くらい入れておいた。それではいただきます。味噌の味とにんにくの風味がよく合っているし、肉は全く臭みは無い。これはうまい。いままで食したジンギスカンはしょうゆタレのものばかりだったが、味噌も同じくらいにいける。この味噌と肉、野菜を一緒に口に入れると食感といい、味といいなんとも幸福な気持ちになる。
そんなわけであっという間に完食して大満足の管理人であった。それにしても天候が回復して暑くなってきた。今日あたりはキャンプができそうかなぁと期待しつつズボンとジャケットのインナーを脱いで、また外しておく。20℃以上になっているようなので、もう必要ない。さて、食事も済んだので、走行に戻る。おっと、その前に、今日はキャンプするかもしれないので、米を調達しようと足寄のセイコーマートに入る。このコンビにはライダーの心を捉えた戦略を展開しており、米も1kg単位で販売している。また、ちょっとおやつにアイスクリームを購入した。ちなみにこれはセイコマブランドなのだが、お茶やカップめんなど独自ブランドを多く販売していることも特徴だ。もちろん値段的お得感も感じさせるところがこれまたニクイ。
アイスをナメナメ、マップルを確認する。国道241で阿寒湖方面に向かうか、それとも国道242から美幌に向かうか、悩んでしまう。とりあえず順当にオンネトーを通り、双湖台からパンケトーを見て弟子屈へ抜ける道を選択した。国道241号線の足寄〜阿寒湖間は単調な道で眠くなってしまう。こういうところに取り締まりの警官がいたりするから厄介だ。とりあえず法定速度プラスアルファのゆったりした速度で車輪を進めていこう。管理人の後ろにもツーリングライダーがいるようだが、ぴったりと同じ間合いで走っている。どうも私をペースメーカーにしているようだ。
ところでこの国道241号線沿いには螺湾というところがあり、螺湾ブキという巨大な葉をもつフキが特産品のようだ。一度見物してみようと思うが、今回はオンネトーを見物したいので、いつになるかわからないが次回に回すことにする。ところで、件のオンネトーだが、15年前に一度訪れて以来だ。このときはツアーのおばさんが丁度地元の人で、よくよく話してみると管理人の住む隣町の人がいたことには驚いた。世の中悪い事はできない（する気もない）。また、オンネトーは国道を外れ、道道64号線に入っていくのだが、途中ダートがあったと思う。地図で確認すると、螺湾側から入ると最後にダートがあるということがわかった。当時はこちらから進入していったのだろう。今回は足寄峠側から道道に入ることにする。
なにせ15年も前のことなのでよく覚えていなかったのだが、オンネトーの手前には温泉が湧いており、さらにその奥にはキャンプ場もある。ここでキャンプしてラワンブキを見に行ってもよかろうと思うのだが、急に寒くなってきた。この案は却下し走行をしていくと、不思議な色の湖が現れる。これがオンネトーだ。15年前はこんな色をしていたかどうかも覚えていない。帰還後に残っている写真を確認したところ、微妙にその様子を捉えていた。また、その写真では、看板がちょっと湖面に張り出したウッドデッキに立っている。どうやら今回はその手前の看板の前で停車したようだ。
阿寒岳、阿寒富士、オンネトー
ともかくオンネトーと再会できたことがうれしい。先に述べたように湖面はとても神秘的な色をしており、その色は神の子池とも美瑛の青池とも違う。マップルに掲載されている「エメラルド」色という表現が一番近い。そして微風が湖面をさざなみ立て、その色もまた変化する。さらに背後に見える阿寒岳と阿寒富士がアクセントをつけている。その風景にしばし息をのんでしまう。若い頃はこんな風に感ずることは無かったのだが、年月が流れると見えるものもが同じでも違う印象を受けるものだ。
それはそうと急に気温が下がってきたようだ。こっそりと人の見えない所へ行き、大阪屋食堂で脱いだ射撃の的アンダーパンツを履き、ジャケットの中綿を取り付ける。これでこの後通過する足寄峠も問題ないだろう。
さて、温泉にでも入ってゆっくりしたいが、先へ進む。足寄峠からさらに東進して、阿寒湖へやってきた。しかしどうも店なんかがたくさんあるので、興ざめしてしまいパス。15年前もどういうわけかパスした覚えがある。そして双湖台に向かう。このころになるとかなり冷えてきて、霧も出て視界が落ちてきた。双湖台は真っ白けでダメだろうなと思いながら右へ左へカーブを切りながら慎重にTDMの車輪を進める。ところで、こういう緊張を強いられる状況下でもTDMは至極穏やかな挙動で、ライダーを助けてくれる。リアタイヤのグリップを引き出す不等間隔270度クランクといい、フロントの18インチタイヤといい、アルミツイスパーフレームといい、ライダーが乗りやすいように設定してあるようだ。
そう思いながら双湖台に到着し、高台に上がってパンケトーを眺める。霧に煙っているが、その姿をはっきりと見ることができたことは幸いだ。15年前にも見ていると思うが、おそらく意識していなかったのだろう。全く覚えていない。本当はこの向こうにパンケトーも見えるのだろうか？残念ながらそこまでは見えなかった。まあ針葉樹の中に浮かぶ北海道形の湖はどこか愛嬌のある、親しみやすい雰囲気だ。霧で目隠し、見ちゃいやぁーんってところだろうか。
双湖台から見るパンケトー
このような状況になってくると、ともかく街へ降りてしまいたい。因みに双湖台の気温は体感で10度くらいだと思う。売店もストーブを焚いていた。マップルを確認すると、ワインディングを下ると弟子屈の街がある。今夜の宿をどうするかここで検討しよう。まずは国道241号線を下っていく。管理人の前には地元のドリフト走行愛好家が走行しているので、この4輪車をペースメーカーにワインディング路を走行する。おお、なかなかきついカーブもある中速のワインディングだ。いつもは北海道に来るとまっすぐな道ばかりを走る傾向にあるが、今年はこういった道もソコソコ走っているので、気持ちよくクリアすることができる。前走の4輪車も管理人に合わせているのか、程よい速度で引っ張ってくれる。
屈曲した道が終わり、北海道らしいまっすぐの道になったが、4輪車はあまり飛ばさない。何かあるのかを思っていると急にブレーキをかけた。なんだ、危ないなと思って道路脇をみるとパトカーの頭が見えている。どうやらこれを見つけたようだ。地元の人はよくご存知なので、コバンザメ走法は有効であると実感した。ところで、この取締りであるが、通過した車両に対して追尾し、検挙しようというもののようだ。まあネズミ捕りのように三角の旗をもって道路に飛び出してきたら、轢かれかねないからだろう。それにしても隠れて取締りを行うことに事故防止の意味合いがあるのだろうか。あるわけなかろう。これこそが取り締まりのために取り締まっているということの証拠だ。事故防止のために取り締まるのなら、見えるところに、しかもカーブなどの手前で指導するだろうに。こんな見通しのよいところで違反者を挙げようなんてやはりおかしい。
弟子屈の道の駅摩周温泉にて、0円マップとマップルを出して今夜の宿を検討する。かなり霧が出てきて寒い。軟弱キャンプライダーの管理人は仕方ないので、ライダーハウスを探す。温泉に入りたいので川湯温泉の「蜂の家」に狙いを定めて、連絡を入れる。空室があるとのことで、早速向かうのだが、途中弟子屈市街地でホクレンを発見する。今回の渡道初のホクレンだ。給油してスタンプ帳とプレゼント応募用紙をもらう。スタンプ帳はあと札幌のホクレンで給油するとスタンプが一杯になるようにしてくれていたが、札幌には行かないのでこれはダメそうだ。もう一つは60L分のガソリンを給油するとプレゼントに応募する権利がもらえるものだそうだ。どちらも無理っぽいなぁ。昨年のようにスタンプO個でXXが当るという方がわかりやすいがイカに？
ライハのオヤジの指示通りに国道を左折して、県道52号線に入る。すると硫黄山という山があるので寄っていくこととする。国道391号線に乗り換えて北上し左折、そして道道52号で屈斜路湖方面へ向かう。左折するとすぐに硫黄山の看板があるのでこちらへ入ると、駐車場が有料となっている。山を見ると硫黄で変色して、蒸気があちらこちらから噴出しており、そこを人が歩いている。時間があるなら料金を払うこともやぶさかではないが、今日は疲れたので写真だけでよかろう。
本当に硫黄臭い硫黄山
この後川湯の温泉街をウロウロしていると蜂の家を発見。早速受け付けをして部屋へ通される。う、なんか臭いぞ。しかも湿っぽいし。この時点で止めておけばよかったが、今から別のところを探すのも辛い。今日は温泉に入って、旨いものを食べてさっさと寝て、明日は早めに出発するすることにして、ここを今日の宿とする。ところで、当方よりも前に、既に2名の人がチェックインしていた。一人は自転車で北海道を周っている人、もう一人はスズキのSV650氏だ。どちらの人もなにか話が合わない。自転車君はテレビばかり観ていて話が上の空だし、SV氏はテントは面倒だからなるべく安いライダーハウスにしていると話していた。管理人は技術がないのでライダーハウス併用であるが、本当はキャンプの方が好きだし、それはそれで行為そのものも楽しく感ずる。粗末ながら外で調理したものを食べると、何でもおいしくし、旨いものはさらに旨い。そして風の音を聞きながら寝袋に入って眠りに就くと、それだけでも野生人気分を味わうことができて楽しい。第一テントは自分だけのスペースであるので、誰にも気を遣うこともない。
自転車君ともSV氏とも意思疎通ができないので、さっさと風呂へ出かける。同じ通りにある民芸品店からはベースのような楽器で演奏されている音楽が聞こえてくる。これはアイヌの音楽かな？さて、ライハの経営者が地図をくれたので、それに従って共同浴場とある場所へ行ってみる。川湯郵便局の隣なのだが、ボロボロの古い建物である。しかしお湯はナンバーワンという触れ込みなので、ここに決定した。
公衆浴場全景
中へ入ると最低限の設備しかない本当の銭湯だ。料金も200円と格安である。脱衣所に入ると硫黄臭がし、さらに風呂場と脱衣所を隔てる窓は硫黄で白くなっており、まさに温泉という様相を呈している。また、こちらも棚と籠しか用意されておらず、設備が更新されていないようだ。格安の料金はこういうことにより維持されているのであろう。まずは体を洗い、ついでに歯も磨いておく。続いて湯船に入ると、やや熱めのお湯で今日の疲れが癒されていくことを実感できる。やはりツーリングには温泉が必要だ。足腰を揉みほぐしつつ、周りの人たちを見てみる。どうやら地元の方々のようで、こちらを愛用されているようだ。しかし表情は暗く、あまり楽しそうではない。こういう銭湯では大抵の場合、地元の人達が一日の出来事なんかを楽しそうに話されていていることが多いのだが・・・。
肌がツルツルとよい感触になったし、よく温まったので風呂から上がる。体を拭いてちょっと涼んでいこうとコーヒー牛乳を買い、ロビーにあるテレビで天気予報を確認する。ああ、なんたること。明日は後半から天気が崩れるのか。それならば東へ逃げて、夜の間に荒天をやり過ごしてしまおうと作戦を考えた。もっともそんなうまくはいかないだろうが、理屈的には天気は西から変化してくるからね。
宿にはなるべく戻りたくないので、温泉街をぶらぶらする。すると店先で民芸品製作を実演している土産物屋があったので、立ち寄ってみる。こちらは「ながい」さんという店で、所狭しと民芸品が並んでいる。そして管理人が入店するや否や、ストーブにあたっていたオバサンがお薦めの品をいろいろと解説し始めた。手ごろなものをということで、ふくろうと鹿の骨の携帯ストラップはどうかと薦められた。なんでもふくろうは縁起のよい動物で、ものがよく見えるものの代名詞だそうだ。話を聞きつつ、店内を回っていると木製の湯のみを発見した。その色や手触り、木目がなかなか良い。これはいくらかと尋ねると、1600円だが、1500円でよいという。それならばと購入することにした。この湯飲みはエンジュという木でできていて、家の床柱にも使用されるとても硬い木だそうだ。関係ないが、腸閉塞になったのはアンジュである。
まだ宿には戻りたくないので、ついでに食事をしていくことにする。丁度三三五五というよさそうな店があり、表にはお薦めのメニューが黒板に書かれている。味に自信を持っていそうな店なので、こちらに入店した。さまざまなものが用意されており、特大ざんきの定食がお薦めだそうだ。今日は肉は重いので、ホッキ貝のさしみや十勝牛のコロッケなどを注文した。
三三五五の入り口 十勝牛コロッケ
（ホクホクのジャガイモたっぷりでウマウマ）
食事をしていると、ライダーと思われる人達が2組入店してきて、0円マップを見てきたと言ってはウーロン茶をサービスしてもらっていた。管理人もライダーなので、その旨伝えると同様にウーロン茶が運ばれてきた。後々に0円マップを確認するとこの店の代金5％割引クーポン券が印刷されていた。これを確認しなくてもサービスしてくれるとは、太っ腹な店だね。もちろん食事もおいしかった。他にもジンギスカン定食なども用意されていたが、管理人はホッケを食べ忘れたことを後悔した。
あとはシブシブ宿にもどり、地図を確認する。それにしても今日はよく走って疲れたが、温泉はよかった。特に今夜は冷えるのでありがたい。温泉で暖まったので、冷めることなく眠りに就くことができた。
本日の走行 380��