フェリーから見る日没
昨晩は疲れていたのでさっさと寝てしまったが、どうも寝台の中が変に明るい。起床後に調べてみると、カーテンのレールについている、カーテンの金具を掛けるローラーが壊れていてしまっていた。これではカーテンが「タル」んでしまい、外の明りが入ってくるわけだ。どうにもならないので、セロテープで補修して「修理希望」と札を付けておいた。
さて、とりあえず風呂に入って目を覚まそう。いつもの行動様式である。当然がら空き貸切状態で、ゆっくりと体を洗ってから手足を思いっきり伸ばして湯に浸かる。外をみると天気はイマイチであり、梅雨前線が停滞していることがうかがい知れる。ところで、冒頭のトムラウシ山の遭難事故もそうであるが、西日本では大雨による浸水やら土砂崩れやらで甚大な被害が出た。今年はペルー沖の西経120度辺りの海水温が、平年値よりも高く推移する「エルニーニョ現象」が発生しており、その影響で太平洋高気圧の張り出しが例年よりも日本から離れている。ということで梅雨明けも遅れ、また日本列島全域が気圧の谷にある為に雨が多いようだ。ツーリングの時は「晴れてほし〜の」といつも思っているが、こればかりは人間の力では何ともならない。こんなことを考えてボンヤリと航行中の日本海を眺めていたら、本当に頭がボンヤリしてきた。いかん、のぼせてしまうぞ。
ややふらついた足どりで一旦寝台に戻り、朝飯を食べに行く。やはり提供される食事の種類が昨年よりも減っている。昨日の網棚の件といい、食事の件といい、寝台のカーテンといい、新日本海フェリーの印象がややマイナスに振れたことは言うまでもない。
食事の後は昼寝をすることはいつもの慣わしである。極楽のような時間の使い方であるが、その引き換えに仕事をしているのでご勘弁を願いたい。別に合法的に休暇を取得してきているので問題はないが、やや罪悪感を覚えてしまう。
昼頃に再び起床して、後方のデッキへ出てみる。すると、風がやや生ぬるくなっていたので、だんだんと南へ降りてきた＝現実への帰還が近くなってきていると実感する。こういう五感を通して状況を知るという行為は万人共通と考えていたが、実はバイク乗りに特有の捉え方のようだ。雨が降ることを嗅覚で予測することがあるが、これもわりと特殊な部類の能力にあたるようだ。この間もヨシノチャンに「雨が降りますかねぇ」と聞かれたことがあるが、「あまり匂わないので大丈夫と思いますよ」と答えたら、「匂いでわかるのですか」と変人扱いされそうになったことがある。当方は変人なので一向に構わないが、相当に不思議だったようだ。
後方デッキにて
前述のように蒸し暑くなってきたので、ロビーでテレビを観て過ごす。丁度往路に朝ドラの「つばさ」を一週間分が放送されていたので、土曜の分を観ようと考えたわけだ。これも一度観ると続きが気になる構成になっているので、なんとなく観てしまう。そういえば、中学の頃に初代スケバン刑事の斉藤由貴や樹木希林が出演していた「はね駒」や、今やバラエティにも出演しているが、当時は清純派女優の最右翼であった「沢口靖子」主演の「澪つくし」なんかも夏休みになると観ていたと懐かしく思った。
夕方になると、携帯電話が通信可能な領域にやってきたので、R1-Z氏に敦賀目前と発信しておく。すると花火を見ているということであった。「接待」でしょうかと再び発信すると、まさにその通りであった。この接待というものは、R1-Z氏の夏の風物詩である。要は母上様と鮎料理を食べに出かけたり、温泉に行ったりして「2輪生活の予算確保」に努めることである。もっとも、氏本人が楽しむことができるものに限ることは言うまでもない。
何回か通信した後、フェリーが敦賀港に接岸した。昨日ドロドロの床に置いた荷物がやや気になるが、ビニールを敷いておいたので大丈夫と自分に言い聞かせて、車両甲板へ降りていく。とりあえずビニール袋が用を成していたことを確認すると、安心した。後は荷物をTDMに積載し、安定性を点検、再び本州に降り立った。
どうやら雨は降っていないようである。やれやれと一安心だが、遠足のように「帰り着くまでツーリング」と独りでつぶやいてから皆々と国道8号線へ向かう。ここで積算計を確認すると、丁度55,555�劼鮖悗靴討い拭�これはよい記録だと、上着のポケットに忍ばせておいたカメラで記録写真を撮影しておく。
説明は無し
この後、敦賀I.C.から米原J.C.方面へheading180で走行する。所々の路面が濡れているので、直前まで雨が降っていたことを知る。さらに前述の「雨降りの前兆」を嗅覚から感じたので、「米原越えは雨かな」と覚悟していた。
ところが、米原J.C.を通過して標高を上げて、天下分け目の戦いで知られる関ヶ原になっても雨は落ちてこない。雨が降らないことはよいことだが、できれば北海道で降って欲しくなかった。
こうして元死刑囚が、名古屋で奪った拳銃を使用した養老S.A.を通過。飛行ルートを順調に飛び、小牧J.C.を通って名古屋I.C.で高速を降りた。後は自宅までを慎重に走行するのみで、23時前に自宅到着となり、今年のメインエベントは終了した。
管理人の夏はこれで実質終了したわけだが、この時点ではまだ日本列島の大部分は梅雨明けしておらず、「夏が始まる前に終えてしまった私っていったい・・・」。ひょっとしたら梅雨明けが無いかもしれないなぁと心配していたが、8月にようやく梅雨が明けた。夏はこれから、まだまだ走りますよ。
本日の走行 170��
全行程の走行 2,200��
まずはオフ車で渡道と豪語していたにもかかわらず、いきなり機材変更したという失態をやらかした件について。全くもって計画の妥当性検証が甘かったとしか言いようがない。詳細としては、携行する荷物の選別を誤ったことが原因だ。キャンプ道具に加えて、何日分かの着替えや食料を積むわけだからそれなりの重量やカサを成す。それにオフ走行用のプロテクタやパンツ、ジャージを「別もの」として積載したことが失敗の大きな原因だと分析する。もともとKDXはモトクロッサーKXの思想を基に製造されており、積載性はあまり高くない。それをよく理解していなかった。一度は1泊程度の泊まりを予行演習として行っておくべきだった。
因みに、近頃DT125Rを試走依頼があり、そのシートの快適さや幅の広さ、エンジンのマイルドさ、正立フォークの優しさを実感する機会に恵まれた。何のことは無い、最初からこちらを購入しておけばそれほど考えずにすんなりと計画を遂行できたかもしれない。残念。
今回はフェリー泊2日、ライダーハウス泊6日、テント泊1日と、テントを広げた日が異常に少ない。実際に大雨などで、管理人の腕ではテントを張ることができない日はもちろん課題だが、5日目の夜はもう1泊はいけたと思う。しかも場所は屈斜路湖付近に滞在していたのだから、なんとかなったのかもしれない。この周辺は温泉がそこらじゅうに湧いており、地熱があるから気温もそれなりだ。まあ双湖台で凍えて気力が萎えてしまったわけだが、もうすこし現状に合わせ冷静に判断するべきであろう。
今回はライダーハウス（以下ライハ）の利用割合が高かったのは前述の通りだが、それを反省するだけでなく、今後のデータとしてライハの利用方法も考えてみたい。ところで、基本的にライハは食堂や居酒屋等の本業を持つ方々の善意で、空いている部屋を格安で提供していただいていると定義される。本業で儲けることができるから、空き部屋でその還元をするという概念で構成されていると考えられる。さらには、オーナーが旅好き、人好きという要素も見逃すことはできないだろう。
しかし、現在ではトホ宿が誕生して、ライハとの境界線がはっきりしなくなったり、オーナーが高齢化されたり、不況により店を畳んでしまって、ライハのみ細々と趣味程度に経営されている場合も見受けられる。また、自治体が地元活性化への一環として、公民館クラスの建物を活用してライハにしてみたり、あるいは本当にご好意でライハを立てている場合も見受けられる。ということは、昔は売り手市場であったライハも買い手市場に移行しつつあると思われ、事実今回のツーリングでも基本的には選んで宿泊することができた。つまりライハの選択はライダーの腕がモノを言うことになる。
ではどのようなライハが良いライハなのだろうか。それは各個人の考えであるので、ここではハウツー的な内容でなく、管理人の考えを示すこととする。もちろん矛盾点、批判は大いに歓迎だ。
管理人の場合、ツーリングに求めるものは「脱日常生活」である。つまりしがらみ、変な人間関係、疑問のある業務要領など全てを置き去り、我一人のライダー也と行動することだ。そうなれば、宿泊も自然と個人スペースを重要視することになる。そうなればテントが一番良いのであるが、それには気力や技術が伴わなければならない。よって、気候的に厳しい時にはライハを利用することとなる。
テント的な快適性に耐候性をプラスした安いライハがあれば一番よいのだが、大抵のライハは大部屋だ。よって今後は「少々高くとも、数人毎にに分かれた部屋のライハ」を選ぶことが基本になりそうだ。今回でいくと、直別のミッキーハウス（1800円）がよかった。また、別料金であるが、ジンギスカンもメチャ旨なので、今後も是非営業を続けていただきたい。
今回は宿泊しなかったが、富良野のクレッセ（1500円）はまさに管理人の考えに合致する。3人用のコテージは至極快適であり、別料金300円の朝食は隣のでかいログハウスのオーナー宅で食することができ、優雅なひと時を実感することができる。また、富良野と美瑛の間に位置しているので、連泊して周辺散策なども可能だ。疲れが出てきたころにここで連泊して、体調を整えることができる。
また、稚内のみどり湯（1000円）は少し趣向が異なり、おもしろい。大部屋なのであるが、各人にベッドが用意されている。仕切り等はないが、半個人スペースとして考えるとこれもアリかな。なにより、銭湯が隣にあることが嬉しい。また、ちょっと孤独に疲れた場合は夜の会合に参加して、いろいろと他のライダーと話すこともよい。どういうわけか、このライハは国際的ガイドブックにも宣伝されているので、海外の人も時々宿泊している。管理人も昨年利用日には、ウクライナ出身の女性がみえたと追記しておく。
あとは全て大部屋雑魚寝のライハであったが、根室のインディアンサマー・カンパニーは別格だ。ものすごく部屋がでかいので、気の合わなさそうな人やムカツク人の所を避けることができるし、土産を発送すればデッカイ花咲ガニが１ハイサービスされる。管理人の場合、全て食べるまでに１時間近くを要したのではなかろうか。また、土産の発送先である親戚も大喜びであると後日報告があった。
さらにこの近所にも居酒屋を本業とする、お母婆というライハがある。直別で同宿となったCBR氏によると、この居酒屋がとてもお得に食事ができるということであったし、みどり湯同様に大部屋ながらベッドが各人に割り当てられるそうだ。こちらもおもしろそうだ。
以上のように考えると、料金が素泊まり1500円前後で、ある程度人数が絞られるようなライハなら実用に耐えうるように思われる。事実、上記に挙げたライハは、比較的「勘違いオヤジ」や、「たかりを目的とした貧乏旅人」を目にする機会は少なかった。逆に言うと、ワンコインのライハはその日のメンバー次第ではえらい目に遭遇する可能性が高い、バクチに強い方やそういう要素を好む方にはお薦めと言えよう。
まだまだ知らない宿も山ほどあると思われるが、今回はこの辺りで打ち止め。
延々10回ものツーリング記にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。