動物注意の標識前にて
朝5時に目が覚めるも、二度寝して6時前に再び起きる。昨夜はたっぷりと晩飯を食べたので、やや胃が重いか。まあ、疲れがかなりとれたので、結果良しだ。まずはお決まりの天気予報をチェックする。今日は新聞を購入しておらず、天気図はラジオの音声をメモ帳の上に書き写す手法を用いた。なんでも沿海州に大陸の高気圧が張り出してきて、湿度が低くさわやかな日になるとのこと。朝方曇っていても、だんだんと晴れてくるそうだ。本州上の前線も南下するらしい。
これを聴いて上機嫌にならないライダーはいないだろう。早速カロリーメイトを食べ、撤収を開始する。北海道に来て2回目のテントなので、手順も思い出してきたぞ。幸いにフライが濡れていないので、ドカシートの上でさっさと畳むことができる。そのドカシートが少し濡れているが、雑巾で水分を拭きとって完了としよう。うまいこといって、7時30分ごろに出発する。
このエリアは見どころが多いし、かつ初めての場所もあるのでゆったりと周りたい。まずはナイタイ高原だ。ここはキャンプ場からそれほど遠くはない。看板も設置されているので、道も解かりやすかった。途中の牧場では牛がいたりして北海道の朝を実感する。
ナイタイ高原はその名の通りに士幌の高台に位置するので、途中牧場を通る一本の屈曲路が上ったり、下ったりしながら繋がっている。2006年にジェットコースターの道を走ったが、こっちの方が遥かに楽しいし、ジェットコースターらしいぞ。
ナイタイ高原の駐車場にて。バックのトラクターは営業用。 士幌の市街地を望む
それにしても眼前には広大な景色が広がる。まるでこの高原と眼下の市街地が繋がっているかのようだ。管理人の腕ではとても写真にすることは不可能だ。まさに言葉も出ない。
圧倒されていると、キャンプ場で同宿だったSR氏がカメラのシャッターを押しましょうということで、一枚撮影をお願いした(上左の写真)。彼は今回の北海道は「いかにゆっくりできるか」というテーマを掲げているそうだ。管理人は嬉しくて、忙しく、まさに蜂の如く飛び回っているが、彼は早々に航空公園キャンプ場に連泊を決定したらしい。うーん、素適な計画だ。どうも私は貧乏性なので、先へ進みたいばっかりになってしまう。
SR氏他数人で北海道の魅力についてひとしきり語り合った後、各々目的地へ向った。管理人は上士幌でお金をおろした後、メインエベントの「タウシュベツ橋」へ向う。ところで、北海道では現金を引き出す金融機関はやはり郵便局が良いと思う。今やセブンイレブンなどでも可能であるが、郵便局ならどんなに寂れていても集落に一軒は存在するからだ。というわけで上士幌の郵便局にて現金を引き出し、国道273号を北上開始。
お世話になった郵便局
さて、件のタウシュベツ橋であるが旧国鉄士幌線の遺構であり、かつ糠平湖の水位が下がる夏の時期にしか見ることができない。さらに、かなり老朽化しており、崩壊も始まっているそうだ。しかし、その姿は美しいということで、4kmのダート路の先にあるまだ見ぬ歴史的建造物へGO。
そのダート路の入り口そのものも解かりにくいらしいので、速度を落とし気味に走行していくと、果たして小さな看板を発見した。
また、入り口には保存会の方と思われる人がパンフレットを配布しており、注意を促していた。まったく、注意しなくてはいかんよ。
さて、ダート路そのものはしっかりと締まっており、ゆっくりならばTDMはじめ大型ロードバイクでも問題はなかろう。途中に見通しの悪いカーブやアップダウンもあるので、注意が必要なことは言うまでも無い。
なんとか4kmを走りきり、駐車スペースに到着。おお、荷物満載のハヤブサもいるではないか。TDMなら大丈夫なわけだ。バイクを停めて林の道を歩いていくと・・・、ありました。
これがタウシュベツ橋。この美しさ、説明は要らないね。
もちろん渡って向こう岸に行くことは禁止されている。時の流れが止まっているこの橋は多くの人や荷物を乗せた汽車が往来していたのだろう。そんなことを想像していると歴史の重さというか、そういうものが胸にこみ上げてきた。今や役目を終えたこの橋、いつまでも存在できますように。
ダートを戻り、国道273号との交差点に出てきた。やれやれ、舗装路に戻れるよと安堵していると、京都のナンバーをつけた原付が止まっていた。ライダーは女性のようだが、居眠りをしている。荷台はもちろん、ステップにもたっぷりと荷物を載せているじゃあないか。根性あるなぁと関心していると、こちらを見たので軽く挨拶をしておいたが、反応が無い。やはり持論である「女性ライダーには・・・が多い」ということは当たっていると改めて感ずる。
さて、同国道を北上、今度は三国峠の樹海を堪能しよう。三股地区を通過して、ぐんぐんと標高を上げていく。ここは14年前にも通過しているが、「ふーん、こんなものか」と言う具合に流してしまった。今回見た感想は・・・、言葉が出ません。まさに樹海という言葉がぴったりだ。どうも14年前の私にはこの景色の良さが解かるほど大人ではなかったようだ。今回北海道に来てこのように思うことがしばしばある。14年前はさほど良いと思わないものでも、今見てみると何とすばらしいことか。歳を取ったのであろう。
操作ミスで画質が悪いっす
お決まりの映像を撮影した後に三国峠P.A.にて休息をする。
バイクを停車させると、BMWのR1200RTにのるオヤジが馴れ馴れしく話しかけてきた。いかにも金持ちという感じで、上からものを言ってくる。そして二言目にはマシンの自慢だ。どうもどこぞの重役か社長でもやっていたというところだろう。だんだんうっとおしくなってきたので、後から来た地元の方々と話をしていたら、今度はそこにオヤジが入り込んできてまた前述のような調子で話し始めた。私が話していた地元の方々もうっとしく感じたのであろう、適当にあしらっていた。オヤジもそれを感じたようで、「三股の喫茶店でも行くか」と言って出て行った。
ところで件の三股地区であるが、以前はタウシュベツ橋を通っていた国鉄士幌線の終点であったらしい。その当時は林業などで栄えており、人口もそれなりにあったので、学校や保育所などの施設もあったそうだ。先ほど通過した際はほとんど何も無かったので、にわかに信じ難い事だ。
さて、さらに北上を続けて行こう。層雲峡の手前、大雪湖で国道39号に乗り換えて北見方面を目指す。この当たりは標高が1000m近くあり、気温も20度を下回っている。もっとも今回は3シーズンの上着を新調しており、場合によってはインナーを取り付けて防寒仕様にすることも可能だが、そこまでは寒くない。そして石北峠(1040m)を超えて下っていく。このエリアはカーブ、勾配共にきついので、荷物がライディングに影響を及ぼすので、ペースはソコソコ。ちょっと寒いので休息したいたなぁと思っていると、馬がいるドライブインを発見したので休息する。店には牛乳もあるようなので、一杯飲むとしよう。
管理人以外に客はおらず、木彫りの熊やメロン、海産物の発送までやっているようだ。牛乳とメロンを頼むと、おしゃべりなおばちゃんがいろいろと質問してきた。どうやら暇だったらしい。北海道は本当に不景気で困っていて、友人の娘さんは管理人の地元に就職してきているそうだ。本当に景気の良い地域が羨ましいと切実な思いを語っていただいた。当の私本人はそれほど恩恵を受けていると思わないが、これが現実なのであろう。
話を旅の方に移すと、今日は北見の市街地はきっと混んでいて、警察の取り締まりもありそうだと有益な情報をいただいた。さらには道道の103号線が快走路だということも教えていただいた。
メロン、牛乳で一服中 それにしても馬のでかいことよ
再び北見方面へheading270で走行を開始する。北見はたまねぎの一大産地であり、おりしも収穫時期を迎えていた。北海道で行われている大規模農場でのたまねぎ収穫方法は機械で行うらしく、地表に出ているネギを全部ぶっ倒してから行うもののようだ。その畑は国道沿いに延々と広がっており、なかなか見応えのあるものだった。この壮大な光景は当然カメラには捉えきれないので、心の目で見て心の写真版に記録しておいた。
ドライブインのおばちゃんの情報を活用すべく、道道103号をやや北上気味に走る。なるほど、自分以外にはほとんど通行車両はなく、不安になってしまう程だ。おばちゃんの教え以上の快走路であったと記録してある。
そうしてホタテで有名なサロマ湖にやってきた。こちらはオホーツク海なので、今回の渡道初のオホーツクというわけだ。渡ってくる海風もなんとなく冷たく感ずるのはそのためであろう。
国道238号に乗り換え、さらに道道442号でサロマ湖沿いを西進していくと看板があったので、休息する。
サロマ湖にて
まだ昼なので陽が高いが、夕方は美しい日没が見られるそうだ。日没は良いが、腹が減った。道道を走っていくと国道238号との交差点に常呂道の市なる海産物市場があった。ここでは炭火で海産物を焼いて食べられるようだ。一通り見て回った後に、上戸彩似のネエチャンをつかまえて「1000円程食べたい」旨を伝える。困った顔した上戸彩は奥から上司らしき人を呼んできて、相談している。その上司は「1000円ね」というと適当にホタテ、青ツブ貝、ホッキ貝、殻つきの蛎、鮭、ホッケ、おまけの焼きおにぎりをザルに入れてくれた。誰がこんなに食うの??
お金を払って炭火で焼いていく。ホタテなんかは案外すぐに焼けてしまうようで、殻が開いてきた。醤油を少し垂らしていただきまーす。おう、この味、今までのホタテは何だったの??というくらいに旨いよ。貝類は概ね好物なので、どんどんと平らげていく。
これで1000円!!上戸彩ちゃん、ありがとう。
半分くらいまで食べるとだんだんと苦しくなってきたぞ。残すことなどもっての他だし、第一旨すぎ。一気に残りも食べ終わると腹はパンパン、口のなかも軽い火傷状態だ。大満足で道の市を後にする。う〜食った食った。
この時点で既に3時近くになっている。そろそろ今日の宿を探さないと。ところで、何気に荷物を点検しているとザックが縫い目からハチキレテいる部分を発見した。これはまずい。詰め込み過ぎた。嘆いても仕方ないし、だいぶ疲れも蓄積してきている。おおっと洗濯も一度しておいた方がよいな。そういうことなのでライダーハウスを探すことにすると、ここから程近い網走市に「民宿ランプ」という宿があると0円マップに記載あり。駅前のローソンで「カツゲン」なる飲み物を飲みつつ電話してみると無愛想なオヤジが営業していると返事をしたので、予約としておいた。
これがカツゲン。後味がイマイチであった。
この民宿ランプであるが網走駅の裏手にあり、民宿の本館とライダーハウスの別館が2棟、計三棟から成る。オヤジの話では今日は本館の居間を使ってくれとのこと。利用料金800円を支払うと、「朝飯はどうするか」と尋ねられた。どうも網走には観光用朝市があり、そこでの食事を割引料金で食べられるということだ。そういうことならと600円のカニ飯にしておいた。先ほど魚介類は死ぬ程食っているわけだからね。他には1000円の刺身盛定食や600円の海鮮丼があったと付け加えておこう。
宿が決まったのでまずはザックの修理に取り掛かる。丁度テント補修用の縫い目シール剤を持参しており、これとガムテープを用いて張り合わせておいた。このシール剤は非常に強力なので、おそらく雨漏りの心配も無いはずだ。
ところで、宿のオヤジは無愛想だし、言葉遣いも客商売の人とは思えない。でも管理人は特に気にしない。何故って安い宿だし、オヤジと話さなければ問題ないからね。まあライダーハウスってのはご好意で提供してもらている宿だしね。もっとも接客態度もピンキリで、同じ位の料金でもすごく良い対応をする所もあると付け加えねばなるまい。
心配事が一つ減ったし、まだ時間もあるのでちょっと女満別空港を見に行って、その後ガラにもなく、能取岬で夕日を見ようと出かけてみた。女満別空港は網走から200度の方向、12海里程に位置している。その途中にはルヘンの丘めまんべつという景色の良い場所もあるので楽しみだ。この頃になると完全に北海道の景色が心に染みるようになっていた。
まずは国道39号に乗り、呼人浦を通過。道は空いているので15分位でメルヘンの丘めまんべつに到着。余談だが、女満別町は合併して大空町の一部になっていた。
メルヘンの丘めまんべつにて。向うまで全部畑だよ〜ん。
おりしも夕日がバックから木々を映し出しており、これまた良い眺めだ。カメラの光量的観点からいえば「逆光線」になるので、上記写真は当然の如く後から補正してあると告白しておく。
ひとしきり景色を堪能した後は、女満別空港へ出かける。この辺りもヒマワリ畑などがあってなかなか良いぞ。少し高台にあるので、先ほどの丘を見下ろす形になっており、ずっと遠くまで畑が続いている。滑走路に目を移すと、着陸灯をつけた飛行機がファイナルアプローチに入っている。ターボ・プロップ機のようで、どうやらDHC‐8と思われる。空からこの景色を見るとどのように見えるのか。ああ、飛行機って素晴しい。
ダッシュ8の着陸を見た後は、能取岬へ向う。同じ道を戻れば良いのだが、せっかくなので網走湖の対岸を走ろうと道道248、591号と繋いでさらに76号に乗り換える。この道道76号が素晴しく、能取湖の東の林の中を通っている。そしてそれを抜けると、真横からだんだん沈んでいく太陽を横目に岬へ向うこととなるのだ。
能取岬は道道を少し入った牧場に先にあり、灯台と大きな看板があった。そして回りは芝生に覆われており、さながらキャンプ場のような趣だ。既に10名くらいの人が夕日を見にきており、今夜同宿のカップルもいた。このカップルの方々は管理人と地元が近く、とても幸せそうだ。結構な歳の差もあるようだ(犯罪には至らないが)。また、とても礼儀正しい方々であったことも特記しておく。
能取岬にて 美しい日没
以前は日没なんて大して興味もなかったが、今日のものは特別に美しく見えた。やはりまだまだ青かったんだなぁ。こういった感性は非常に重要なものなのに、何でいままで疎かにしてきたのだろう。まったくもったいないことをしてきたものだよ。
日が暮れたら急激に気温が下がってきた。民宿ランプに戻り、ザックの具合を確認する。どうやらうまいことくっついてくれそうだ。ところで、今日は宿泊者が少ないと言っていたが、なんだかんだで20名ほどになっているようだ。特にチャリダーの方々が多く、女性も相当数見える模様。その中に、ZZR-600という珍しいバイクで旅をする夫婦?恋人?まさか不倫同士?と思われる方が見えた。いままでかなりのタンデムライディングをこなしていると思え、息が合っている。ここ民宿ランプも数回訪れているようで、宿泊場所も「第一サティアン」でないと嫌だということだ。第一サティアンとは先に記述したように別棟のぼろい建物であり、築40年程の年代物である。奥方の方がこちらを大変気に入っているらしいのだ。
また、CB750FOURに乗るソロライダーも見えた。この方はいわゆるCB乗りではなく、たまたま気に入ったバイクがCB750FOURだったということだ。以前はクラブに入っていたが、他のCB乗りがうっとおしいので今は独りで活動しているらしい。何がうっとおしいかと言うと、やれこの部品はこれでないといかんとか、ここはこう改造しろとか、ヘルメットはこれだとかいう掟が面倒だったそうだ。これはテリー伊藤がハーレーを購入せず、「ウォーリアー」にしたようなものだ。
語り合いながら洗濯も忘れない。乾燥には乾燥機を使うわけだが、この際フィルターを清掃することは常識中の常識であろう。調べてみると5mm近くはほこりが蓄積しているではないか。どうりでなかなか乾かないと前に使用した人が嘆いたわけだ。この方は能取岬で夕日をみたカップルであるが、なんのことはない。乾燥機は全部で3台あった。宿のオヤジは今更ながらにそんなことを言っている。もっと早くいってあげなさいよ。商売っ気まるでなしであった。
今夜も「濃い」人達が集まって、語り合い夜を過ごした。各々の人生模様が偶然にも交差するライダーハウス。自分の暮らす領域なんて本当に極限られた世界であることを思い知らされる一瞬だ。
本日の走行 400km