二等寝台にて
(足は管理人のもの)
朝7時ごろに目が覚める。おう、もう北海道を離れてフェリーの寝台にいるんだ。エンジンの振動と20秒周期くらいの横揺れが海の上であることを知らしめる。ウダウダしながら風呂が開く時間を待ってもうひと寝入り。ところで、このフェリーは石川島播磨重工業製で最大出力が23850kw(23850×1.3=31005ps)のエンジンを2基搭載しており、巡航速度は約30ノット(30×1.852km=56km/h)という超高速船だ。長さが約200m、幅が25mもある船が車と同じくらいの速度を出しているとは驚きだ。因みに太平洋戦争末期に製造された戦艦大和は27ノット(27×1.852=50km/h)であったそうだ。
周りの人はまだ起床していないので、静かに風呂へ向かう。幸い今日は上段が使用されていないので、往路のように寝台の昇降に気を遣う必要がない。風呂には一人だけしか先客がいないので、洗い場でゆったりと体を洗い、ついでに歯磨きもしておこう。湯船に浸かって外をみると天気が悪いのが気にかかる。霧に煙っていて陸地や空がさっぱり見えないのも残念だ。それにしても昨晩ギリギリまで北海道で走り回っていたことが嘘のようなのんびりとした時間だ。いや、本来は北海道でものんびりしていないといかんかったわけで、自分が貧乏性であることを思い知る。
風呂から上がって寝台に戻り、北海道ツーリングのおさらいをしておこう。走行した道程を覚えているうちに地図に記入をしたり、メモを書き直したりして当ページの記載に備えるというわけだ(自分の備忘録であるが、楽しみにしておられる方もいらっしゃるので正確を期したい)。また、0円マップにも訪問地に評価の星印と天気を記入する欄もあるので、こちらも記録をつけておく。よくよく眺めてみると探訪した地の近隣にも良い場所がたくさんあったようだ。まあ次回の宿題としてまた訪れよう・・・。
飯の時間だ。幸いにも昨日の胸騒ぎ、いや胸やけは治まっており食欲はバッチリだ。レストランに入って今日のメニューを眺めると果物以外往路と代わり映えがしない。まあ往路と同じように和と洋二人前食べるとしよう。管理人お気に入りのアスパラ、卵焼き、米、味噌汁・・・他多数。クロワッサンにシリアル、牛乳、ソーセージにサラダetcである。風呂も入って飯も食って、眠くなるのが当然なんでウトウト。
揺れが激しく目が覚めた。往路よりも酷いようだ。放送によれば「低気圧の影響」とのことで、そういえばロビーで新聞の天気図を見た時に、日本海に低気圧がいたっけ。ちょっとロビーに出てみようと歩いていくが、右に左に大きく振られてしまう。バイクは大丈夫なんだろうか?と不安になるも、車両甲板は出入り禁止なので祈るのみ。ちょっと気分が悪いので、寝台で横になっているとまた眠ってしまった。
再び起きるも暇なので、ロビーでテレビを観ていると「きままにバイク旅」という番組が放送されていた。因みに揺れはもう収まっている。ところで、この番組にはお馴染み、清水國明と国井律子が出演しており、丁度北海道東部の回であった。内容は5日だか6日だかで北海道を横断するというもので、ゴールが知床峠というこれまた現実味の無い計画である。ただ、途中寄る場所は地元の方からのファックスで寄せられた情報を活用していたのは面白いと思う。さて、問題はゴールの場面だ。知床峠をウトロ側から上っていくのだが、まずは熊が出現。これは有りうる事態なのでよいが、途中で雨が降り出したにも関わらず峠から望む羅臼岳には雲が全くかかっていない。ウソだろオイ、と思ってよくよく見てみると上半分が合成映像のようだ。なぜ解ったかというと、カメラが動くたびに「切れ目」が見え、また出演者が一向に山を見ようとしないからだ。まあゴールで期待しているものが雨だから見えませんでした、では番組にならんから仕方ないんだけど、つい先日訪れた場所だけに番組に物申したい。思わず横にいたライダーと思しき方に「合成じゃあありませんか」と同意を求めたら「低い雲が一つもないのがおかしいですね」と指摘されていた。
まあ、テレビってそんなもんだよな。
さて、少々腹が減ったけど本格的に食べるほどではないので、売店でお菓子を物色する。すると何かの雑誌で見た「とうきびチョコ」が売っているではないか。実はこれ、まだ食べたことがなかったので早速購入して寝台で食べることに。うん、パフが米ではなくとうもろこしになっているのでややコーンの甘味も感ずる。その分チョコレートが少なくなっているというところだろうか。ちょっとねちっこく歯に引っかかるところもイカシテル。結局4分の1ほど食べてしまった。あとはジャガリコを1パック。その後はまた寝台でゴロゴロ。尚、この空き箱を北海道での証明書などを保存する「想い出箱」として活用している。
とうきびチョコに出会えました 実物
夕方目が覚める。この船旅もあと数時間だ。下船したら暑いだろうなぁと思うと一気に現実に引き戻されて、家に着いたら洗濯やら掃除やら、あさっては仕事か〜ぁ。いやいや最後まで楽しみましょ。船内をブラブラして、前方のデッキへ向かう。どうやら雨が降っているらしく、波も高いようだ。容赦なく窓に波しぶきがかかってくる。後方のデッキは人が少ない。やはり波が高くしぶきが飛んでくる。結局寝台で地図を眺めて、ツーリング記の構想なんかを思い描いて時間を潰す。
そうこうしていると敦賀に到着。二輪は下船が遅いので慌てることはないのだが、どうも四輪の台数が少なかったとみえ、30分ほどで下船指示が出された。車両甲板では荷物を搭載して、荷崩れしないように点検する。慣れたせいか、比較的早く終了したので周囲を観察していると、カップルのライダーは男が荷物搭載からバイクの移動まで全てを行うようだ。女はさも当然という様子で男の動作を観ているだけだ。まあ体力的な面で男が勝っていることは明白なので当然と言えば当然なんであろうが、荷物搭載くらいはご自分でされてはいかがなものだろうか。これは体力ではなく技術であるので、性別による障害は無い。こんなことを言っているから管理人はバツイチなんであろう。でも平等を謳うのであれば、自分でできることは可能な限り自分でするべきであろうと思うのは間違いだろうか。
タラップを慎重に降り、再び本州に戻ってきた。おや、所々に雨が降った形跡があるぞ。しかもそれほど暑くないし。しかし、湿度は高いなぁ。ゆっくり走行して港を出る時に、同じ船の方と目が合ったので手を振って走り去る。さてと、後は高速に乗って名古屋I.C.から家に戻るのみだ。最後まで気をつけていこう。敦賀I.C.から米原方面に走り、同J.C.で東へ向かう。雨が怪しいなあと思っていたら、案の定降ってきた。しかし養老辺りまでくれば止むことは間違いないと思われるので、そのまま走行する。果たして、羽島辺りまで来ると完全に雨は上がった。関が原はだいたい天気が悪いんだよね。
名古屋I.C.を降りて一般道を走行すると、周りの車の流れにより地元に帰ってきたことを実感する。地方特有の運転様式があることは間違いないのであるが、北海道と愛知では大きく異なることは言うまででもない。
22時過ぎに帰宅、ああ、狭いながらも我がアパートはよいものだ。床があって、屋根があって、布団がある。これは本当に安心だ。友人に無事帰還を知らせる為に、当ページの掲示板にその旨を記載して就寝。今日はよく寝れるぞ。
本日の走行 130km
2008年の一大イベント、北海道ツーリングが終了した。楽しいことは過ぎ去る速度が一段と早く感じる事実は既知の通りである。しかし楽しかった想い出は墓場まで持っていくことができる、同じツーリング仲間のR1-Z氏の名言である。また、その事実は思い出す度に楽しむことができ、一粒で何度でもおいしい。事実、氏と走った2006年北海道の夏は2年が経過した現在でさえ話題になる。今回こうして10回に渡りその一部を報告した本リポートにおいて、2006年の行程と共通するものについては大いに共感を覚えたと感想をいただいた。また当ページと相互リンクしていただいている「放浪のページ」の主催者、ローホー氏からも「・・・景色が浮かんできて、自分の旅の光景がよみがえったりしております。」との書き込みを頂いた。本当にうれしいことであり、またあの楽しさを共有できるということがバイク乗りとして旅をしてよかったと心底思えてくる。
ところで、今回の北海道ツーリングは移動を合わせて10日間であったが、その間3000km以上を走行した。一日平均300kmと予定通りであるが、年齢のせいだろうか大変疲れた。一度網走で連泊をして安息日とする予定であったが、結局300km越えになってしまったこともあろう。より味わい深くツーリングを行うという要素も加えていきたいが、どうも楽しさと未知なるものへの好奇心から急ぎ足になってしまう。2008年はのんびりしようかなぁと考えていたが、結果は同じであった。まあこれが私のスタイルなのであろう。次回はのんびりしたいと思っているが、おそらく今回のように走って走って北海道になることは想像に難くない。改めて認識できた。
それにしても今年は、旅行期間を盆休み終盤からその翌週としたせいだろうか、ライダーが少なく思えた。事実稚内のみどり湯オーナー、富良野はクレッセのオーナーも同じことを言っておられた。管理人も網走から北見峠経由、旭川の間はバイク乗りの少なさを感じた。まあ人気の薄いルートであったし、天候もあまりよくなかったこともあろうと思われるので、そうだとも言えないが・・・。
また、今年は14年振りに道東を訪れた。やはり北海道は北海道、さらにその魅力は道東にありと再確認できた。2006年のツーリングでは富良野より東には立ち入っていなかったので、「北海道が変わりつつあるのだろうか」と感じたが、道東エリアに入りそれは間違いであったと訂正せねばなるまい。というのも、大きく十勝平野の畑、中標津辺りは牧場、網走から北のオホーツク海側の荒涼感、と3つの顔に分けることができる。さらに道東中部は湖がいくつもあり、それぞれ違った表情を見せている。一方道央から西部はやや人口が多く、農牧の規模も異なる。2006年に「12年前と違う」と感じた理由はここにあったようだ。まだまだ北海道を語るには早すぎるようだ。そういえば、早すぎたと言えば14年前と同じ景色を今回目にしたわけだが、心の動きがまるで違った。当時はそれらの良さを理解するにはまだ若すぎたようだ。年齢を重ねて弊害が出てきたと冒頭に記したが、それはそれで違うものをもたらしてくれたな。歳をとることもまんざらではないようだ。
だらだらと記してきたが、ここいらで2008年ツーリングリポートを終りにしよう。最後に、北海道がいつまでも我々ライダーにとって魅力的な場所のひとつであり続けることを願う。
ありがとうTDM
2008年9月12日