第9日目
今日もなかなか良い天気だ。再び海沿いの道へ出て快走。今日の目当ては釧路湿原と、白糠線廃線跡だ。この廃線跡は管理人が小学生の時にテレビで、廃線間際の状況を放映していたことを思い出し、急遽予定に入れた。営業係数と呼ばれる、100円儲けるためにいくら経費がかかるか、という数値によると、なんと2000円以上かかるそうだ。マッカッカというわけで、廃線となったそうだ。さて、白糠駅から分岐していた同線は、茶路川沿いに北上していた。国道を走っていると、踏み切りを埋めた跡や橋梁がしっかりと残っている。撤去する金もないということか。敢えてのこしてあるのか。そのうちの一つに近寄ってみる。どうやら農家の人が農道として利用しているようだ。軽トラックが勢い良く走って行った。
遠くに見えるは鉄橋だ 鉄橋は農道に変身
しばし佇んで物思いにふける。何か線路と汽車が見えて走ってきそうだ。のどかな田園地帯を走行する趣のある路線であったことだろう。さらに歩を進めて、終点の北進駅付近と思われる集落へ辿りついた。小さな集落にバス停があり、「北進」と名前がつけてある。ダイヤは朝、昼、夜の3往復しかない。使う人がいるのであろうか。少々疑問だ。
次は釧路湿原だ。火事があり、相当の面積が焼けたと聞いていたが、展望台からはそんな痕跡は全く見当たらない。眺めも最高。日本にこのような未開発の場所があったなんて、全く知らなかった。目眩にも似た感動を覚えたのは言うまでもない。それにしても素晴しい。なんとも言葉にできない。いや、言葉にすること自体が意味を成さないのだ。この時に、この場所でこの景色を見る、それでよいではないか。最近は媒体が発達して、居ながらにして世界中の映像を見ることができるが、こうしてはるばる現地にやって来ることの意義はこういうことなのであろう。
2枚とも釧路湿原にて
さあ、今日もキャンプ地を探さないと。実家を出発してもう9日目ともなると、それなりに分かってくる。4時くらいにはキャンプ場入りをして、暗くなる前に飯と片ずけを終了、あとは隣人と語り合ったり、ラジオで天気を確認したりとのんびりし、22時前には就寝。こんな様式が一番よいことに気が付く。さて、天気の話であるが、北海道は広い。通常は北部、中部、南部、とか、何々地方とか3から4の部分に分けて予報がなされるが、北海道の場合は、少し様子が違う。渡島・檜山、胆振・後志、石狩・空知、日高・十勝、釧路・根室、網走、上川・留萌、宗谷という支庁という単位で予報がなされる。その内容たるや、あいまいで、「曇り時々晴れ、所により一時雨、降水確率は40%」というものばかりだ。なんでもありかよ〜と突っ込みたくなる。要は、風のにおい、湿度、雲の高低などを見極めて自分で判断するしかないのだ。おかげでかなり鼻が利くようになったことを付け加えておこう。
第10日目
朝起きて、テントを出る。今日もいい天気、、、あれ?雨降ってるジャン。おいおい、勘弁してくれよ。いきなりブルーシャトウ〜。とりあえず朝飯をテントの中で摂り、撤収計画を練る。こういう日は移動しないで、一日テントにいるか、雨が止むまで待つか、という選択をするそうだが、一路東をめざしていて、そんなこと頭になく、無理やり撤収した。何も無理することないのに。
それにしてもすごい霧だ。視界は100m以下ではなかろうか。お、なんか黄色い物体が、フォグランプを点灯した4輪車だ。「フォグランプ=霧灯」なので、このような状況下で威力を発揮するのか。妙に納得してしまった。道路中央の白線を頼りに慎重な走行をする。霧多布岬に到着した。本当に霧で何も見えない。しかも、時々霧笛と呼ばれる船舶用の大きな警報音が「ブォーーーーーー」と鳴り響く。とても悲しげな響きだ。最北の地でこの寂しさは少々こたえるが、これもまた一興。存分に楽しんできた。途中きりたっぷ岬に寄る。まさに霧たっぷで、前出の霧笛が響き渡る。
きりたっぷ岬にて(後ろが白いのは霧のせいです)
さて、浜中町から根室市にやってきた。ここでは和商市場での昼食を楽しみにしていた。市内をウロウロしているとバイク乗り達がある方向へ向っている。ついていくと、和商市場に到着した。数日前にキャンプ場でご一緒したXELVIS氏から得た情報で、ご飯を購入し、市場内をウロウロして魚介類を購入し、その場でそのご飯にのせて食すということができるというものがあった。これは「勝手丼」と呼ばれている。管理人も早速ご飯を購入し、いくらを100グラム購入した。〆て千円くらいか。思ったよりも高いなぁと思いつつも旨いのでまあいいか。昼飯を食っていると少し晴れ間が見えてきた。このまま日本最東端の納沙布岬を目指す。道はすいており、30分ほどで到着。相変わらずスゴイ霧で何も見えない。北方領土も一番近い貝殻島でさえ見えなかった。
納沙布岬 バックが白いのはやはり霧が濃いせいです
さて、今日もいい時間になってきた。無理やりテントを撤収しているので、広げたくないなぁ。今日はひとつライダーハウスに宿泊してみよう。釧路の駅前にある自由の家というところに決めた。ライダーハウスは旅行バイク乗りにはお馴染みの簡易宿である。1990年代には500円前後で床壁と屋根を提供してくれる雑魚寝の小屋で、テントを持っていなくても、寝袋さえあれば泊めてくれる。運営は管理者の善意で行われており、儲けはほとんどないものと思われる。よって、宿泊者はマナーを心得ていることが常識とされている。そういうことが嫌な人は止めて置いたほうが良かろう。さて、今日は雨だから宿泊者も20人ほどいるだろうか。やや湿気っぽい20畳程の部屋だが、屋根と堅い床で寝られるのは有難い。普段は家に暮らしているが、このような感覚は初めてだ。周囲の人たちも面白い方が多く、大変楽しい時を過ごせたことはいうまでもない。
第11日目
今日も天気がイマイチ。曇り時々晴れ、降水確率50%というお決まりの天気予報だ。しばらくウダウダしていると晴れてきた。ここぞとばかりに皆出発した。私は釧路方面へ戻り、中標津の開陽台を目指す。本当はすごい景色が見られるようだが、霧がひどくなってきて全く何も見えない。仕方ありませんなぁ。さて、今日は出発が遅かったせいで、もういい時間だ。とりあえず今日はキャンプできそうだから、XELVIS氏がバイトしている和琴半島キャンプ場に行ってみよう。おまけしてもらえるかもね。その前に、数日前にスピードメーターが動かなくなったので、修理をしておかないと。ガイドブックにあるYOU SHOPはやしサンへ電話すると、「何とかなるよ」と有難いお言葉。早速修理してもらう。ケーブル切れが原因だったので、中古のケーブルをつけてもらった。やれやれ、さて、和琴半島キャンプ場だが、湖のほとりでなかなかよいところだ。雨が心配だから木の下にテントを張る。さらに、四方に流水路を掘り、念のため防水スプレーを吹いておく。やれやれと思っていると突然の大雨。入念な準備のおかげでとりあえずは浸水等の心配はない。テントは新品だし、メーカーものの2万円のものを購入して正解だ。ここをケチると痛い目に遭うと兄の友人アカディー氏に脅されていたのだ。因みにこのアカディー氏も立派な旅ライダーで、北海道、東北と走りまわっている。身長が190cmほどあるので、VF750が小さくみえる。管理人が愛用していたNS50も彼から譲り受けたものだ。彼の話では「乗車するだけでリアサスがフルボトムして、役目を果たさない」ということであった。雨も上がり、周りの人たちもテントから出てきて、水滴を拭いている。私も真似しておいた。こういう知恵を貪欲に吸収して一人前の旅ライダーを目指そう。さて、飯を食ってのんびりしていたら、宴会の参加要請があった。雨降りで少々陰鬱な気分であったので、断る理由は無い。早速5、6名のにわかグループが誕生。ランタンを灯して宴会開始。内一人はチャリダーであった。北海道を旅する人は大きく三種類に分けられる。我々はライダー、ケッタで旅する人はチャリダー、歩いて旅する人はトホダーと呼ばれる。各々、一日の移動距離は300km、100km、40km程とされている。もっともツワモノだとチャリダーで150km、トホダーでも50km越えの人もいるらしい。いろいろと情報交換、旅の逸話を語り、夜は更けていく。何のつながりも無い人が集まって、このように盛り上がるのは旅人の性であろう。本当に楽しい。
にわか友達との宴会 皆楽しそう
第12日目
温泉へ向う途中で
今日も天気が悪いなぁ。昨日の宴会仲間に偶然にも同県の隣の市に住む方がいらして、「こういう時は無理に撤収しても仕方ないよ。温泉でも行こう」と誘われる。本当にその通りなので、皆で10分ほど歩いて和琴温泉へ出かける。ここは無料の温泉だ。北海道にはこのような温泉が多く、有難い。もっともきれいではないが、それも一興。さて、隣人氏がカメラを構えているではないか。皆ふざけてポーズをとっている。私もひとつ、、。金は無いが、アイデア満載の旅人。いやはや、本当に来てよかったよ。
ケツを出している方はなんと地元の隣町の方 左端が管理人 (2007年現在よりプラス10kg)
そうこうしているとテントも乾いてきたようだ。ようやく撤収して、記念撮影。再会を誓って、各々目的地へ出発した。
出発前に記念撮影
管理人は摩周湖を見にでるが、ここで「裏摩周展望台」の方が、第一、第三展望台よりも人が少なくていいよとのアドバイスをもらっていた。それに従い、同展望台へ。霧の摩周湖と呼ばれ、その姿はなかなか見えないと言われているが、なんだ、良く見えるじゃん。さらに、その神秘的な水色で知られる神の子池へと出かける。ちょっとダートを走ると、なんとも言えない、まさに神秘の湖が現れた。しばし見とれる。
裏摩周展望台 そうさのう、、、。 霧の摩周湖だが、良く見えました
さて、今日も天気が悪いので、早々にライダーハウスに予約を入れる。清里町のフレンド札弦というライダーハウスだ。地元の商店を経営する人のよさそうなおじさんが経営している、10畳ほどの小さな小屋だ。今日の仲間は私を合わせて三人。GSXR1100氏とゼファー氏だ。皆で飯を食べに出かける。GSXR氏は社会人で、一週間の休みで北海道を回っている。ゼファー氏は私と同じ学生だ。それぞれの人生模様が交差するライダーハウス。とても有意義だ。