エアロビクスインストラクターが誕生するまで

〜管理人自らが挑戦した、120日間+∞のドキュメント〜

 

第8回講義 (6月24日)

 

8−1.ウォーミングアップのおさらい

 

先週はアップとダウンの概要について学習したが、今日はアップについて、具体的方法を学ぶ。

 

まずはおさらいから。アップの目的は先週習った通りで、「主運動に備えて心と体の準備をし、障害を予防する」、「より高度な、密度の高い動きへのリハーサル」である。

 

また、その効果は下記の通りである。

 

・  参加者自身が、その日の体調を把握することができる

・  心拍数を上昇させ、それによる筋温上昇を促進する

・  関節の可動範囲を広げ、筋肉の動きを円滑にする

・  障害を防止する

 

そういえば、インストラクターは、「今日の肩の調子は無いですか」、とか「痛かったり、ひっかかったりするところはありませんか」という言葉添えを行うなぁ。そうこうしているうちに、汗が出てきて大きく動くことができるようになる。なるほど、といつも受けているレッスンを思い出して納得した。

 

8−2.アップの手順

 

さらに詳細について話が進んで行く。おっと、今日もどんどん進んでいってしまう。当方は覚えが悪いせいか、なんだか置いていかれているぞ。

 

まずアップ時間であるが、季節やクラスの難度や時間によっても異なるが、基本は10分程度とする。そして、音の速さは130BPM程度とするのがよい。丁度初級のレッスン時程度のBPMというところか。その音に合わせて、リズミカルな動きで、全身の主要な筋肉を動かしていく、いわゆる「リズミック・リンバリング」から始める。下腿・下肢については、マーチからステップタッチ、マンボ、カールと基本の動きを連続的に行い、各関節を屈曲・伸展させていく。また上肢も同様に、肩、肘関節を屈曲伸展するすることにより、筋温を上昇させていく。

 

この時に、参加者の意識をそれら部分に集中させるよう指導していくと、今日の調子を感じてもらうことができ、怪我の防止に役立つ。

 

こうして一通り体を動かしてたら、ストレッチへと移行していく。ただ、ここでは柔軟性の向上よりも、むしろ今各人が持っている柔軟性を引き出すことに重きを置いているので、ダイナミックストレッチと8カウント程度のスタティックストレッチを行う。

 

繰り返しになるが、ここでは筋温の上昇・筋の動きを良くすることが目的なので、あまり複雑な動きを行わないようにする。

 

8−3.アップ時に気をつけること

 

次に、動かす部位の順番であるが、基本的には背部、肩部に始まり、胸部、腹部、そして股部、大腿部、膝部、足部となる。「肩からほぐしま〜す」ってインストラクター言うなぁ。そして、アップのパートは様々な動きを連続させて進めていく、リニア・プログレッションが基本である。ただ、順番についてはあまりこれにこだわる必要はない。常に脚は動いているので、上記の繰り返しとなるが、連続して動きを変えていくと良い。

 

ただ、当方はそれが解っておらず、自分のいろいろと試行錯誤を繰り返して、自分オリジナルの動きを考えようとしていたのだが、全くうまくいかなかった。それにより、練習する時間がなくなってしまい、来週エライ目にあうことになる。

 

あと、これはアップに限らず基本的なことなのだが、姿勢について。業界では「ボディーアラインメント」と呼ばれており、以下の通りに指導する。

 

・ 腹部は引き締める

・ 骨盤が前傾/後傾しすぎない

・ 尾骨は下方向へ向くようにする(上にしない)

・ 肩甲骨は内転気味にさせる(胸を張る)

・ 肋骨は引きあげる(胸郭を広げる)

・ 頭部は脊柱の延長線上

・ 体重を左右均等にかける。

 

これら事項を自分の言葉で伝え、参加者をリードしていくわけだが、本当に大丈夫だろうか。だいたい、当方の場合、左右均等の荷重が怪しい。というのも、何だか左足の母趾球がどうも痛い。ついでに、左臀部、腸頚靭帯も違和感がある。今度、接骨院にでも行くとするか。

 

そしてこれら姿勢が整ったところで、動きの注意とその理由に進んでいく。

 

・ 脚の裏側をストレッチする際は、踵をつけること

  →ヒラメ筋などアキレス腱周りが伸びないため

・ 股関節を90度以上屈曲せず、臀部より高い位置を保つ

  →腰椎を屈曲させないようにし、腸腰筋等の筋肉をしっかりと使うため

・ 関節の過伸展は行わない

  →体が温まっていない状態では、腱や靱帯を傷める可能性が高いため

・ 股関節、膝、つま先は同じ方向をむけること(内側へ膝を入れすぎない)

  →ハムストリングスや内転筋群に負担がかかるため

・ 支えの無い、前方への重心移動は行わない、長い時間の前傾姿勢をとらない

  →腰部、臀部の筋肉が過剰に伸ばされて、傷める可能性があるため

・ 頚椎の早い動き、過伸展(大きな首回しはダメ)を行わない。

  →頚椎を構成する骨は小さいものが多いわりに頭部が重いので、傷める可能性が高いため

・ アラインメントを崩す側方への両手挙上を行わない。

  →当然、筋肉や関節を傷める可能性が高いため

 

と7項目もある。これは後日卒業試験に出題されたのであるが、当方は3つぐらいしか正解していないようだ。恐らく、一番できが悪かった箇所であろう。

 

また、上記とは逆に、ウォーミングアップ時に行うべきこととして説明するなら、

 

・ 前屈、後屈時は頭部の重さに体をとられないように

・ 腰部保護のために、腹筋を収縮させるように

・ ハムストリングスのストレッチは、股関節から曲げるように

・ 側方ストレッチは、腰に手を当てて上体を支える

・ 頭部は脊柱の延長線上にあるように

 

と指導することになる。

 

これらは既に記載したように、関節や筋肉を傷めることがないようにするために行うべきことだ。そしてもうひとつ、

 

・リンバリングとストレッチの違いを明確にする

 

 というものがある。これはどういうことか。リンバリングは筋温を上げるために軽快に筋を収縮・伸張することで、ストレッチはその後に行う柔軟性を引き出す運動だ。これを明確にしないとどうなるか。いきなり温まっていない、動きの悪い筋肉を引っ張ると、腱や筋肉そのものに負担がかかる。ということは、それらを傷める可能性があるということだ。

 

結局のところ、

 

筋肉を温める→注意を払いつつ、徐々に伸ばして柔軟性を引き出していく

 

という過程を踏まなければならないということだろう。当たり前と言えばその通りだが、案外見過ごされがちなので大事なことであると言えよう。というのも、ジムではいきなり大きくストレッチをする方々も見受けられるからだ。本来は何をするにしても、ちょっとエアロバイクを漕いだり、ウォーキングマシンで歩いたりしてから、適度なストレッチをしなければならないのだ。

 

因みに、この後師範、師範代、我々4名でアップの練習をした。その内容であるが、16カウント毎に入れ替わりで、下肢と上肢を交互に変化させて行くというものだ。例えば、当方はステップタッチにしたら、次の人はバタフライ運動にし、その次の人はマンボにし、そのまた次の人は腕を挙上すると続けいくものだ。これで、意外にも師範代が制限時間内に次の動きを出すことができず、終了になった。師範代でもそんなことがあるのですね。

 

8−4.  実技の重要事項

 

今回までで、指定コリオ、オリジナルコリオの2ブロック分を披露し、師匠から手直しと補強を受け、また翌週披露するというように進んできた。他の受講生は皆さん、2ブロックを繰り返して回すことに成功している。しかし、当方は途中でわからなくなってしまい、終了となってしまう。

 

原因は簡単で、単なる練習不足だ。しかし、何がいけなくてそうなるかが理解できていない。根本的に何かがわかっていないのだ。今ならば、節と節の繋ぎ目の足運びについて、しっかりと検討していなかったことだと気が付いているのだが、当時はコリオを覚えることに必死であり、そこまで気が回っていなかった。節と節は繋がっている、当たり前ですね。

 

さらに、コリオそのものをもっと簡単なものにすべきだったし、ひとまず他のインストラクターのまねでもよかったようだ。オリジナルにこだわった結果、動きを決められない、練習できない、またわからない、の悪循環に陥っていたようだ。当時のノートを見てみると、いろいろ考えていたことはうかがえるのだが、結局何も決められなかったようだ。

 

師匠からも「養成コースの授業は確認・アドバイスの場であり、練習の場ではない」と胸に突き刺さる言葉も頂いた。これについては少々ショックであったのだが、解決策が見えない。うん、指針さえ見えれば何とかするのだけれども、なんともならない。困ったものだ。

 

一方、他3名は順調に技量を向上しており、「簡単なステップはブレイクダウンの過程を省く」、とか、「足運びが急に変化するので、一度中間地点にタッチを入れる」、「そこはキックは危ないので、タッチにしておく」など具体的な助言を得ていた。

 

そして、今日は基礎的重要事項を教わる。床反発と骨盤の向きについてだ。人間の体には、関節や筋肉の動きに制限がある。もっとも中国雑技団の方々はそんなものは感じていないだろうが、当方等は一般人である。

 

 

 

矢状面180の法則

 

右足リードで考える。骨盤の向きが正面とすると、その状態での矢状面右側180°へ動くことができる。但し、床反発も考慮すべき重要な項目である。例えば、後方から反力が働いた場合、前方90°が次の動きに使用できる領域である。

 

例:グレープバイン→交互にニーアップ→バックマンボ(後方から反力)→前にチャチャチャチャなど

 

また、反力により制限された動きは、間にマンボやピボット・ターンといった緩衝動作を入れることにより、制限から解放される。例えば、上記の例で考えると、バックマンボの次に後方にチャチャチャを入れるとしよう。すると、当然動きにくい。そこで、一旦前にマンボをしてから後方にチャチャチャをすれば、この動きは無理なく続けることができる。

 

わからなくなった時は、このようにひとまず正面に骨盤を向け、上記の図に従って次の動きを考えるとうまくいく。

 

8−5.  その他

 

今日は師範代が、現在自分のレッスンで使用しているコリオについて解説をして下さった。

 

これには師範代が実際に様々なことを考え、レッスンの場で実践する、修正を加える、という過程が詳細にわたり含まれていた。それに対し、我々練習生は「・・・」とその大変さに言葉が出なかった。当方なんかは、「なんだかえらいことに首を突っ込んだなぁ」とちょっと怖くなってきた。今のところは本業とするつもりもないのだが、仮に本業になったらどんなことになるのか。いや、既に本業として活躍されているイントラの皆様はこんなにも大変な苦労をされているのか。それを知ってしまった今、いつも何気に受けているレッスンには、並々ならぬ苦労が詰まっているのだと認識できる。。

 

それなのに、正直それらレッスンをタラタラと受けていたので、なんだかIRの方々に悪い気がしてきた。また、なんだかタルイなぁと思ってしまうものもあったが、仮にそう感じてもこちらから盛り上げるぐらいの気持ちを持つことが礼儀だと思われた。

 

色々と抽象的な事項を書いてきたが、ここまで来て当方が認識したことは「参加者が楽しむことができるレッスンを行う」という大題目(大目標)の下に以下のような実に様々な手段が存在するということだ。

 

・ 解剖学的観点から、関節や筋肉の構造、機能を理解し、バランスよく筋肉を動かすことができるよう動きを考える

・ 安全を考慮した動きとする(あるいは、言葉添えをして注意を促す)

・ 自然な展開(流れるような動きの連続)となるように、構成・ステップを考える(「矢状面180・床反発90の法則」など)

・ ステップを覚えやすいブレイクダウンとするために、様々な技法を用いる(リンク、アドオン、フィラーなど)

・ 遊び心も忘れずに

・ 自らが楽しく・大きく動いて、楽しさを伝える

 

など。

 

そのために今、こうして毎週日曜日に集い、講義を受けているわけだ。月並みな言い方ではあるが、エアロビクス・インストラクターは一見華やかに見えるが、それは氷山の一角であり、その見えない部分には何十倍もの苦労が付随しているのである。

 

8−6.おまけ

 

こうして本日の講義は終了したのだが、今日はこの後皆で会食が予定されている。これは師匠の計らいで、「一度中間地点で皆と交流を深め、後半戦も楽しく乗り切ろう」と開催されるものだ。当方としてもおっさん一人で、他の受講生達とあまり話もできていないことから、とてもありがたいものだと感じた。

 

ところで、その食事会の店であるが、ジムから5分もかからない場所にあった。見た目は普通の民家であるが、屋内はきらびやかである。とても当方のような凡人とは縁がなさそうな店だ。

 

食事も蒸し野菜などさっぱりとした内容であり、後から腹が減りそうなのでご飯をおかわりしておいた。我等が師範代も、食欲旺盛であり、女性というよりもインストラクターの顔であった。

 

そこで話した内容はすっかりと忘れてしまったが、おっさん好みのものではなかった。これはいわゆる「女子会」におっさんが紛れ込んでいるという様相で、ちょっと緊張して落ち着かなかったと告白しておこう。ただ、皆さんの顔を初めてゆっくりと見ながら話ができたので、なんだか嬉しく感じて、これまた落ち着かなかった。特に、一番若い20歳の方などは「女子高生だ」と言っても疑われない程に若々しく、かわいらしかった。あの笑顔で話しかけられたら、当方は自爆してしまうだろう。

 

第9回講義へ続く