エアロビクスインストラクターが誕生するまで

〜管理人自らが挑戦した、120日間+∞のドキュメント〜

 

 

第4回講義(5月27日)

 

4-1 学科

 

イントラ養成コースも今日で4回目、1/4を終えることになる。課題もだんだんと難しさを増してきているので、「こんなんで大丈夫だろうか」と若干の不安を覚え始めていた。しかし、そんな不安で知識が増える、または技術が上達することも無い。大切なことはそれを認めつつ、どうやって現実世界で釣り合いを取るか、ここが重要である。

 

さて、まずは解剖学の学科から。今日は骨と関節の続きである。骨はその形状によって数種類に分類される。長いもの、短いもの、平べったいもの、特殊な形をしたもの、実に様々である。そして、その骨と骨が靱帯なり、軟骨なりで結合されている。この部分が関節と呼ばれる。そして、関節には動かないもの(不動関節)、動くもの(可動関節)、微妙に動くが、場合によっては動かなくなってしまうもの(半関節)などがある。そして、この関節が動く範囲を可動域というのだが、これは人により全く異なる。ルーマニアの妖精と呼ばれた体操選手、「ナディア・コマネチ」と自分を比べてみればすぐに理解することができよう。関係ないが、コマネチ氏とビートたけしは長年、お互いに名前を知ってはいたが、実際に対面したことがなかったのだが、つい最近これが実現したと言うことだ。

 

また、関節を形状から分類すると、大きく6つに分けられる。脚の付け根や肩のように球形をしたもの、肘や膝のように蝶番になっているもの、臼のようなもの(顆状関節)、などなど。そして驚くべきは肘付近には肘関節、橈尺関節2つ関節があることだ。上記の蝶番になった部分と、前腕の骨が軸となって回転する(回内、回外と呼ばれる)部分が存在するんだよ。

 

また、筋肉は骨に付着している。そして原則、正中線に対して近い側の付着部を起始、遠い側を停止と言う。また、上記の起始を筋頭、停止を筋尾、筋肉の膨らみを筋腹と呼ぶ。我々が筋肉と言っているのは、この筋腹のことである。因みに、筋肉が骨に付着する当りの部位が腱である。

 

一方、靱帯は関節を結び付けている。ということは、腱の重度損傷は肉離れ、靱帯損傷は靱帯断裂ということになる。また、ストレッチや運動で収縮、伸展するのは筋肉であり、腱や靱帯ではない。「アキレス腱を伸ばしましょう」は便宜的な言い方であり、我々は「アキレス腱まわりを伸ばしましょう」と指示することになっている。

 

今後はこうした基礎的考えを頭に入れておき、部位ごとに筋肉を取り上げて、その機能と起始、停止を学んでいく。これにより、ストレッチやトレーニングについての理解が深まるということになるのだ。そして、こうした知識を基にしてコリオを考え、エアロビクスを指導する役割を担う人がインストラクターなのだ。ただ踊ってリードするだけではないのですなぁ。また不安が増大してきた。

 

ところで、今日は学科が盛りだくさんで、神経系統についても若干触れられた。中学の理科で学んだが、神経は大きく2つの系統、中枢神経と抹消神経に分けられる。前者は脳や延髄、脊髄など文字通り生命活動や脳からの指令を伝える中核的役割を果たしており、後者は運動神経や感覚神経に分けられ、上記中枢神経からの命令により、筋肉を動かす(遠心性伝達)、または温度や凹凸を感じる(求心性伝達)などの役目がある。

 

余談だが、人間の感覚神経は1/100mm程度、熟練工になると1/1000mmの段差をも感じ取ることができるそうだ。よって、自動車の部品を製造する金型の仕上げは職人の手によらねばならない行程がある。つまり、この点に関して、機械よりも人間の方が優れているわけよ。また、初期のホンダ製タイプRシリーズ車には、人間の手による吸入ポートの研磨、ボルト締めの行程も存在したと聞く。微妙な手加減も人間の方が優れる場合があるのだよ。

 

さらに、別な分類方法として、通常の運動などの意思による筋活動に関連する体性神経、胃腸や呼吸器など意思によらない筋活動に関わる自律神経、というものも存在する。因みに前者の神経により活動する筋肉は随意筋、後者は不随意筋と呼ばれる。内蔵は不随意筋あり、腕や足の筋肉は随意筋だ。胃の形を自由に変えられる人はいないことを考えると、すぐに理解できる。

 

さらに、自律神経は緊張と弛緩のバランスをとる交感神経、副交感神経に分けられるが、このバランスが崩れた状態で現れる種々の症状が「自律神経失調症」である。そして、ストレス等で緊張状態が続き(交感神経が興奮し続ける)と、いわゆるうつ病にかかることもあるようだ。これにはストレス発散が必要になるが、その手段として運動に効果があると言われている。図らずも、当方本人がこれを実証しているので、信憑性がある説だ。

 

4-2 実技

 

4-2-1 実技学科

 

今日は先週に引き続き、動きの変化要素について学ぶ。

動きの変化要素とは、

 

・  動きそのものを変える

・  体の向きを変える(面変化)

・  移動方向の変化(トラベル・ディレクション変化)

・  インパクト変化(着地時の衝撃の変化)

・  インテンシティ(負荷の変化であり、辛さとも言い換えられる)

・  リズム変化(四分音符を基調とした中に、それ以外の音符・休符を入れるなど)

・  速度変化(同じ音幅であるが、その中で動く速度を変える。上記リズムは変えない)

・  アクセント(強調して動く)

・  アームバリエーション(上肢の動きを加える)

・  反復回数変化(レッグカールを4回にするなど)

・  スタイル(ラテン調・ダンス調などにする)

・  レバー(関節の稼動域を大きくする)

・  回転(ターン)

・  重心移動量変化

・  エネルギーレベル(動きに対する意識のこと。肘関節を屈曲する際に、上腕2頭筋を意識するなど)

 

何でここまで詳しく書き出したかって?実は卒業の学科試験に出題されたんですよ。しかも12種類を書き出せと。当方8種類程しか思い出せませんでした。とても大事な考え方ですね。

 

そして、コリオについても一つ重要事項を教わる。普通エアロビクスでは、2、ないしは3ブロックを繰り返していくが、アップや極初心者向けのクラスでは動きを繰り返さずに、その場でイントラの指示で動くレッスンも存在する。これをリニア・プログレッション方式と呼ぶ。基本はフットワークとアームワークを交互に入れ替えて進めていくものである。実は当方、これが結構苦手なんです。

 

そして、次に先a〜d節までを順番に教えていく方法、リンク・アドオン方式に挑戦する。

 

エアロビクスは8カウントが4節あって、32カウント(リードチェンジムーブにより、左右で64カウント)を1ブロックとすることが多い。今日の方法はa節を16(32)カウント、b節も同カウントずつ行い(アドオン)、参加者が概ね動くことができるようになったところでc、d節をa、b節と同じカウントずつ行う。尚、今回のコリオでは、b節にリードチェンジムーブが入っているので、ここは通例通りにピラミッド方式で4レッグカールにもっていく。

こうして一通り動くことができるようになったら、いよいよ規定の8*4=32カウントにし(リンク)、左右リードの64カウント=1ブロックの動きを完成させていく。

 

まとめると、この方法は一つの動きを大きなかたまりに考えており、それをつなげる(リンク)、継ぎ足す(アドオン)ことにより、ブロックを完成させるので、リンク・アドオン方式と呼ばれるのだ。

 

適用法としては、動作を繰り返し教えることができるので、極初心者の方々を指導していく場合に用いられる。また、指導時の注意としては、繰り返している間に様々な知識や動きの注意点、盛り上げのかけ声などを入れていくことだ。だらだら、黙って繰り返すのでは結果は見えている。

 

また、繰り返す回数が多いので、慣れた人や中級以上の人では飽きてしまう可能性がある。

 

4-2-2 実技実践

 

先週の宿題である、指定された動きを作り上げるところを披露する。お、皆さん一生懸命練習されているようで、とても上手だ。一方、当方はというと、まあ並だね。ところで一体何がそんなに難しいのか。当時は良く解らなかったのだが、今思うと「動いてナンボ」の世界だという認識があまりにも乏しかったせいだ。

 

結局のところ、音に合わせて動いているのだから、そこからズレることはできない。つまり、指導するということは、自分が現状の動きを行いつつ、音楽に合わせて、先行して、矢継ぎ早に動きを指示していくことだと言えよう。そしてその指示相図=キューは、前の回で述べたように、「キューを出して1拍置いてから動きが始まる」ところを自分で把握して、実行しなくてはならない。本当にちょっとよそ事を考えてしまったら最後、雪崩的に崩れていく。

 

一度に何個ものことを同時に行うので、考えなくても、「体が勝手に動いている状態」でなければ追いつかない。当方はここのところを「イメトレ」でなんとかしようとしていたのだが、それは「甘い」の一言だった。逆にちょっとずつでも練習していれば、案外何とかなる。いまさら気がついても遅いのだけれど、そう思って頑張るように心がけている。

 

まとめると、課題のような極簡単なコリオでも、嫌になるほど踊りまくることが大切だ。でも、実際に嫌になってはならない。楽しくなければ絶対に続かないからねぇ。

 

さて、指定コリオができるようになったものとして、今日はレイヤリングを実践する。こいつは4-2-1で習った変化要素を指定コリオに入れていくというものだ。今日は各変化要素について、実際に先生にやってみせていただく。ここで一つ解りにくいものが「インパクト」、「インテンシティ」、「アクセント」、「エネルギーレベル」の4つである。

 

「インパクト」はエアロビクス界ではよく用いられる用語で、「着地時の衝撃」である。つまり、両足が床から離れるジャンプなどは「ハイ・インパクト」と呼ばれる。そして「インテンシティ」であるが、これは強度のことである。要するに「キツさ」のことなのだが、「キツさ」という動作はない。「キツさ」を変化させる要素により、「キツイ」と感ずるようになるのである。

 

つまり、「インテンシティ」は概念であり、それは変化要素を「手段」として駆使し、変化させるものだと考えている。間違っていたら突っ込みお願いします。

 

ところで、「インパクト」と「インテンシティ」は一見関係があるようだが、全くの別物である。クロスウォークよりもシャッセの方が「ハイ・インパクト」である。しかし、シャッセも軽く跳ぶぶんには「インテンシティ」は低い。逆にクロスウォークでも、大腿二頭筋、中殿筋、腸腰筋などを意識(エネルギーレベルを高く)して、足を大きく動かし、移動(トラベル)距離を多くする(重心移動を増やす)とかなりキツイ。さらに、4カウント目だけ強調して動く(アクセントを入れる)などを加えれば、もう心臓バクバクである。

 

さらに、変化要素は「インテンシティ」を上げるだけが目的ではない。エアロビクスの動きに幅を持たせる手段であることも、決して忘れてはならない。

 

また、これに付随して、先生から種々の現場での注意事項を教わる。

 

・  ハイ・インパクトは最高でも50%程度とする。

・  強度の弱いものからレイヤリングをかけていく(アームバリエーションは強度としては弱いので、先に行う)。

・  レイヤリングは1つずつのみ許される。

・  左足リードの時に変化を見せておき、右足リードに変えたときに一緒に行う。ただ、難しいものは、右と左両方を見せておき、次の右足リードになったら全員で行う。

・  動きの系統は変えない。

・  変化後の流れがおかしくないか、必ず確かめる。

 

そして、来週の宿題はこの変化要素を指定コリオに2つ入れてくる、ということになった。一度にこんなたくさん教わってもわけわかんないじゃん。どうしよう・・・。裏の公園で練習作戦を強化しなくては。

 

第5回講義へ続く